ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

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第63話 夢を見ている。

 夢を見ている。

 

 夢の中の風景は、市場のような場所だった。市場といってもサニムの市場のように開かれた場所に思い思いに屋台を置いているようなものじゃない。地下街の中、雑多な明かりの下には合法な物品から非合法な物品まで所狭しと並べられたそこは、活気とはまた別の熱を持った場所だった。

 

 東南アジアのある港町にある、金さえ積めばどんなものでも揃うブラックマーケット。取引先の罠に嵌められた俺は破滅するか商品を用意するかの二択を迫られ、このブラックマーケットに足を踏み入れたのだ。

 

 

『日本人のビジネスマンがこんな所に何用だい?』

 

『命が惜しけりゃとっとと帰んな。これは親切で言ってるんだぜ』

 

 

 ブラックマーケットに足を踏み入れた俺はそこら辺を歩いている奴に小金を掴ませて、ここの顔役の居場所を突き止めた。もちろん素直に会えるような相手じゃないが、顔役が開く店の前で商談があると大声を上げたら、武装した警備員二名に連れられて店の中へと通されたのだ。

 

 そして顔を合わせた顔役、張と名乗る男は俺に向かってそう口にする。これは半分は本当で、半分は面倒くさがってるのだ。日本人はちょっとしたことでもすぐに大きく騒ぎ立てる。国家がバックに居るどこぞの国なら兎も角、攫ってバラして売りさばくには面倒ごとが多い連中なのだ。

 

 

「この場に来たらやる事なんざ一つだろ。このブラックマーケットならどんなものも揃うと聞いてきた。だからわざわざきたんだよ」

 

『あぁん? まぁ、金さえ積むならアメリカ人だろうが日本人だろうが商売はするがね。なにが欲しいんだ。銃か女か? それともドラッグか? 良いもの揃ってるぜ』

 

「竹の割りばし、5兆本」

 

 

 張の言葉に俺は右手を広げて5本の指を見せた。言葉にした瞬間の反応はなかった。俺の言葉が呑み込めなかったのか、少し時間が経った後、張は胸元に手を入れて拳銃を取り出し、俺に向かって突きつけてきた。

 

 

『お前、舐めてんのか? ここにきて割りばしなんざ』

 

「金を積めばここはなんでも揃うと聞いてきた。だから、来たと言ったろう」

 

 

 突きつけられた拳銃を掴み、グイっと胸元。心臓の真正面に引き寄せる。情けなく破滅するか死ぬかの二択なら死ぬ方が万倍マシだと思っていたからだ。俺の行動に張がぎょっとしたような表情を見せる。

 

 

「竹の割りばし5兆本。とっとと持ってこいやコノヤロォ!」

 

 

 

 

神聖歴580年 夏の始め月 20日

 

 

「若かったなぁ、俺も。今はもっと若いけど」

 

 

 見慣れた孤児院の天井を眺めながら、思わず口からそう言葉が漏れる。懐かしいな。張さん元気だろうか。あの一件で何故か気に入られたらしく、彼は俺の要望通りに竹の割りばしを用意してくれた。といっても流石に一括で用意は出来なかったからとりあえずの手付として1000億本を日本に持ち帰ったら、発注元が悲鳴を上げたため結局5兆本は用意しなかったんだけどね。

 

 発注元の担当者は俺が気に入らなかったらしく、無理難題を言ってこちらを潰そうとしていたそうだ。もちろん竹の割りばし1000億本の代金と残りの4兆9000億本のキャンセル料はきっちりと取り立てたけどね。張さんはこの売上で東南アジアでも有数の富豪になったらしく、地元じゃ割りばし長者と呼ばれていたっけな。

 

 この1件で俺は随分と張さんに気に入られたみたいで、海外に行く際はよく彼の助けを借りたもんだ。狩猟が好きだという張さんに、一度お礼代わりに鷹狩りに連れていったら泣いて喜んでくれたのをよく覚えている。

 

 あ、俺がテイマーのスキル持ってたの、あの時の経験が元だったのかな。数か月とはいえ鷹匠に弟子入りした経験が転生してから役に立つなんて、見抜けなかった。このタロゥの目をもってしても……!

 

 

「いや、タロゥはわりとふしあなじゃないかなー」

 

「なんだとぅ……!」

 

「おっにく! おっにく!」

 

「良いにおい!」

 

「皆さん、食事前に騒いではいけませんよ。エリザ、手伝いは必要ですか?」

 

「いいえ、神父様。すぐに終わりますので大丈夫です」

 

 

 孤児院の食堂はガヤガヤと騒がしかった。食べ盛りの子供が20人から居るんだから、これはまぁしょうがないだろう。炊事担当のエリザがテキパキとした動きで皿を並べていくのを、年少組の小童どもがよだれを垂らしながら見つめている。

 

 うん、目の前に料理が来たのに誰に手を付けていないな。孤児院に来てすぐの子はこのタイミングで勝手に食べ始めて、近くに座る年長組の子供にしばき倒されるんだ。前世の記憶が戻る前、俺はそれをザンムにやられた。死ぬほど痛かった記憶だけは残っている。

 

 配膳が終わりエリザが席に着くと、皆が一斉に静まり返った所で神父様が食事前の御祈りを口にする。それが終わったら食事開始だ。

 

 

「うめっ……うめっ……」

 

「おいひぃ!」

 

 

 隣に座ったザンムがどこかで聞いたようなセリフを言いながらアホ鳥の半分焼きを口にする。隣に座る妹を見るのに忙しくてそっちは視界に入らないが、恐らくいつもみたいに骨ごとバリバリ食べてるんだろうな。

 

 妹の今日のご飯は醤油味の小ラーメンが付いたオムライスだ。さっぱりとした小ラーメンの麺をささっと食べた後、妹はケチャップで『システィ』と書かれたオムライスをにまにまと眺めながらスプーンで食べ始める。

 

 この小ラーメン付きオムライスは夢想具現で創り出したんだが、レベルが上がってからはこういった細かい部分なら創り出すときに調整が出来るようになっていた。お子様ランチを創り出したら旗を付けるか付けないかを決められたりするんだよね。

 

 まぁ、お子様ランチに旗を付けないなんて鬼畜の所業だ。出来るからって取り除いたりはしないがね。

 

 

「ああ、そうだタロゥ。実は君に相談したい事があってね」

 

「? はい、なんですか神父様」

 

 

 食事が終わったタイミングで神父様に声を掛けられた。はて、神父様が俺に相談というと……もしかして金か? この神父様、一個人としては規格外の武力を持ってるのに経営者としては落第点以下の実力しかない人だからな。孤児院の運営に穴でもあけたかな。

 

 そう思いながら首をかしげていると、レンツェル神父は憂いを帯びた表情でその相談事を口にした。

 

 それは思っているよりもずっと重大な事で、食後のひと時に相談する内容では決してなかった。なかったが、確かにレンツェル神父にはキャパオーバーになる案件だ。相談したくなるのも頷ける。ただ、俺に言われても正直手に余る内容だったけどね。

 

 なんせ新築する教会のデザインを考えなければいけないんだから。

 




タロゥ(7歳・普人種男) 

生力28 (28.0)UP
信力99 (99.9)ー
知力28 (27.0)UP
腕力34 (34.0)UP
速さ28 (28.0)UP
器用29  (29.0)UP
魅力28 (28.0)UP
幸運19  (19.0)UP
体力31 (31.0)UP


技能
市民 レベル3 (100/100)ー
商人 レベル3 (81/100)UP
狩人 レベル3 (100/100)ー
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル2 (60/100)UP
薬師  レベル2 (21/100)UP
我流剣士 レベル3 (46/100)UP
木こり レベル2 (45/100)
楽士 レベル2 (46/100)UP
教師 レベル1 (83/100)UP
パチン・コ流戦闘術 レベル3 (45/100)UP
テイマー レベル0 (40/100)UP
絵師 レベル2 (45/100)
語り部(紙芝居) レベル4 (43/100)


スキル
夢想具現 レベル2 (92/100)UP
直感 レベル2  (79/100)UP
格闘術 レベル2  (11/100)UP
剣術 レベル3  (100/100)―
弓術 レベル2  (63/100)UP
小剣術 レベル2 (63/100)UP
暗器術 レベル2 (63/100)UP
斧術  レベル1 (51/100)UP
フォークダンス レベル5(35/100)
フォークマスター  レベル0 (35/100)
念話 レベル0 (40/100)UP
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