ラーメンが食べたくて 異世界転生ハードモードとんこつ味   作:ぱちぱち

96 / 100
サニム半島近隣地図

【挿絵表示】



第94話 血染めのリーゼント

 ロゼッタの唇を通して、口の中にラーメンが注ぎ込まれる。俺に咀嚼する力が残ってない事に気付いたロゼッタが、口移しでラーメンを食べさせてくれたのだ。ラーメンは口内を通り、食道を通って胃にラーメンが降りていく。

 

 胃袋の中に落ちたラーメンはその場で胃液に触れて消化されていく。消化されたラーメンはその身に秘めた莫大なエネルギーを、瞬くほどの間に俺の身体へと吸収させていく。オーバーフローするほどのエネルギーによって淡く輝き始めた俺の身体は、欠損したり故障した部分を修復。二度と壊れないようにより強靭で、頑丈な肉体へと作り変えていく。まずは口。ラーメンを食べるために必要な口が修復され、ズタズタになっていた口内とボロボロの歯、ついでに喉を含めた食道周りが修復された。

 

 ロゼッタの口が再び俺の口と繋がった。ラーメンが再び、俺の中へと注ぎ込まれていく。命の元とも等しいと思われるラーメンの力は凄まじい。その内ガンにも効くと思っていたが、半死人すら蘇生するほどの力をラーメンは秘めているのだと今回の件で確信を持てた。

 

 ダリルウさんがとんでもないマッチョになったのもまぁ頷ける話だ。これほどのエネルギーを毎回注いでいたら、鍛えればああなるだろう。

 

 体の中で消化されたラーメンが、置き換わる様に傷ついた全身をより強く作り変えていく。三度、四度。口移しでラーメンを咀嚼するたびに、体の機能が戻っていく。

 

 右目が治った。俺を抱きかかえていたロゼッタに、ラーメン器を持ったエメラルダさん。アリアさんは、こちらを覗きこんでいる。三人とも心配そう半分、驚愕半分といった表情。

 

 エメラルダさんに向かって右手を伸ばして、ラーメン器を受け取る。ここからは、もう、自分でできる。ラーメン器を受け取り、なおも俺の身体を心配そうに抱きかかえるロゼッタを安心させるために、頬に親愛のキスを送る。

 

 もう大丈夫。耳元でそっと囁いて、力が抜けたロゼッタの腕から体を抜き出して、そして、俺は、ラーメンを食べ始めた。

 

 ズル、ズルズル。食べるごとに体の奥が熱くなる。ブオンブオンとエンジン音が耳元でなり始める。この音は聞いた事のある音だ。店長の青春時代。これだけは手放せなかったと見せてくれた、彼の愛車のエンジン音。

 

 麺を食べきり、具材も食べきり、スープを飲み干す。この段階で、俺の身体には大きな異変が起きていた。明らかに食べている最中に体が大きくなり、衣服が破け、そして変わる様に真っ白な生地に憂国烈士だの全国制覇だのと書かれた衣服が体を覆っていく。

 

 これは、おそらく特攻服だろう。店長の写真で見た覚えのあるものだ。信力でコンビニで売っていた手鏡を取り出して、自分の顔や体を見る。

 

 そこに移っていたものは、凡そ想像していた通りの物だった。

 

 

「これは、いけねぇな」

 

 

 口から、俺の物とは思えない野太い声が出る。何度も何度も聞いた事のある声だった。あの人は、やり残しを見つけることが出来たのだろうか。感傷に浸りそうになる感情をねじ伏せて、俺は立ち上がる。

 

 まだ足りないのだ。こんなボサボサ髪じゃあ、あの人に笑われる。

 

 

「ロゼッタ、手を」

 

「はい」

 

 

 俺の言葉にぽおっとした表情で頷き、ロゼッタは両手を俺に差し出した。俺の血でせっかくの綺麗な衣装は血だらけになってしまった。申し訳ないが、今はありがたくこの好意に甘えさせてもらおう。

 

 彼女の前で跪き、彼女の両手を頭に添える。たっぷりと信力がこもった俺の血が、俺の髪を真っ赤に。燃えるような赤に染め上げる。

 

 特攻(ぶっこむ)んなら、身だしなみは整えないといけない。何度も何度も、興味が無いというのに俺に語ってくれた店長の持論。たっぷりとついた血で頭の形を作りあげ、俺は完成した。

 

 血染めのリーゼントを頭に頂いて、俺は今、完成したのだ。

 

 

「タロゥ、行くの?」

 

「タロゥじゃねぇ」

 

 

 ロゼッタの言葉を否定する。俺の言葉に応えるように、影の中から一台のバイクが飛び出してきた。エンジン音を高らかに、店長の相棒がその姿をこの世界に初めて見せた。

 

 今の俺はただのタロゥじゃない。ちょっと器用な前世を持った、どこにでもいるような8歳児であり、特攻服を身に纏い、愛車YAMADAーYDZー1ベアナックルを駆る、ラーメン屋の店長でもある。

 

 だから、あえて名乗るとするならば。

 

 

「金太郎」

 

 

 すっと自然に出てきた言葉が、やけにしっくりと来るような気がする。俺とお前、並べりゃ金太郎だなと笑っていた店長の言葉につい口元を歪めながら、その名前を口にした。

 

 

「サニムの金太郎だ」

 

 

 ロゼッタの血まみれの手にキスを落として、俺はベアナックルに飛び乗った。戦いはまだ続いている。あそこには妹分と、恐らくこの場には居ないタロゥの相棒があの場には居る。

 

 なら、行かなきゃいけない。ブオンブオンとエンジンをふかしながら、俺はハンドルを握り締める。

 

 フルスロットルにしたエンジンがけたたましい音を鳴らして叫んだ。YDZー1ベアナックルの水冷4気筒エンジンが唸りを上げ、タイヤがギュルギュルと空転した後、猛烈な勢いで前へと弾かれたように突き進む。開け放たれたままのドアから飛び出し、村の凸凹とした道もベアナックルには関係ない。多少の衝撃波全て頑丈なサスペンションで防ぎ切り、そのまま村の外へと飛び出す。

 

 山巨人の姿が目に入る。赤い頭の大きな熊と格闘しているようだった。周囲には自由を取り戻した使用人たちと、ハサウェーさん達冒険者の姿も目に入る。アリスは何故か山巨人の子供に抱きかかえられたまま冒険者たちに囲まれているようだが、少なくとも遠目では無事に見えた。

 

 なら、やる事は一つ。

 

 俺が出来ることは、一つしかない。

 

 

特攻(ぶっこん)でくんで夜露死苦(よろしく)!」

 

 

 周囲を巻き込む怪獣決戦と化した山巨人と赤い熊の戦いに、全速で突っ込む。

 

 最後の戦いが、幕を開けた。

 




タロゥ(8歳・普人種男) 

生力??
信力??
知力??
腕力??
速さ??
器用??
魅力??
幸運??
体力??


技能
市民 レベル3 (100/100)ー
商人 レベル3 (100/100)ー
狩人 レベル3 (100/100)ー
調理師 レベル3 (100/100)ー
地図士 レベル3 (100/100)ー
薬師  レベル3 (40/100)
我流剣士 レベル4 (100/100)ー
木こり レベル2 (70/100)
楽士 レベル3 (35/100)
教師 レベル3 (38/100)
パチン・コ流戦闘術 レベル5 (100/100)ー
テイマー レベル1 (13/100)
絵師 レベル3 (51/100)
語り部(紙芝居) レベル5 (58/100)
水兵 レベル1 (1/100)
執事 レベル2(49/100)


スキル
夢想具現 レベル3 (15/100)UP
直感 レベル4  (32/100)UP
格闘術 レベル5  (46/100)
剣術 レベル5  (100/100)ー
弓術 レベル5  (99/100)
小剣術 レベル5 (99/100)
暗器術 レベル5 (99/100)
斧術  レベル4 (97/100)
飛行術 レベル1 (47/100)
フォークダンス レベル5(40/100)
フォークマスター  レベル0 (40/100)
念話 レベル1 (25/100)
女たらし レベル5 (23/100)UP
サニム流マナー レベル2 (3/100)


英雄スキル
夢想具現仏恥義理(ぶっちぎり)NEW!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。