「最後くらい呪いの言葉を吐けよ」
───そう言って、私の命は終わった。なぜ、私がそんなことを言って死んでいったのか、今となっては一時の夢のようなもの……だが、あの時私が言われた言葉は……
『────────』
「……とる……さとる……悟……」
目を開くとそこには、見知らぬ天井があった。木の天井の木目が波模様に歪んでいる。
私はどうやら床に敷かれた布団に寝かされているらしい。上半身を起こして周りを見渡してみる。
……部屋の様相的に和室、外に出る廊下、そこから見える庭の景色……どこからか聞こえる御経……ここはどこかの寺のようだ。
「っ……!」
起き上がろうとした瞬間、身体に激痛が走る。自分の身体を見てみると包帯で巻かれている。誰かが手当てしてくれたのだろうか……
その時、部屋の障子がゆっくり開いた。
「あっ、気がついたんですね!」
障子を開けたのは、黒髪で派手な柄の着物のようなジャケットを着た青年だった。
青年は私を見るなり笑顔を浮かべている。
「よかった〜!もう3日も寝てたんですよ。」
「私は……いったい、なぜここに……?」
「ウチの階段下で倒れてたんですよ。身体中傷だらけで……」
どうやら、傷だらけで倒れていたところを保護してくれたのが、目の前にいる青年らしい。
その時、「グゥー」という音が鳴った。……私の腹から。
「お腹空いたんですね!ちょっと待っててくださいね!」
青年は一言断って私の元から離れると、数分して坊主と一緒に戻ってきた。
「いやはや、目を覚ましましたか!本当によかった……この御成、心配心配で……」
御成という坊主は食べ物が載ったお膳を座っている私の前に置いた。
「
お膳に乗っていたのは卵が入ったうどんとお漬物……私は「いただきます」と会釈してそれを食べる……気遣ってくれたらしい。うどんが柔らかめに茹でられている。
「よかった……食欲はあるみたい。」
私が食べてるのを見て、2人はほっとため息をついている。
食事の後、私は2人にお礼を言った。
「ありがとう……私は、夏油。夏油傑。」
私が名前を名乗ると、2人も名を名乗り始める。
「拙僧、
「俺は天空寺タケル!この寺の住職……になる予定です。」
お互い名乗り終えると、2人は私のことについて色々聞き始めた。
私の名は夏油傑……元呪術高専の特級呪術師であり、呪詛師……人間の負の感情から作り出されるエネルギー「呪力」を持ちて戦っていた。呪霊や……共に生活していた仲間と……
だが、こんなことを言っても信じてはくれないだろう。
「えっと、私は呪術高専っていう、宗教系の学校に行ってたんだ。倒れてたのは……その、あまり覚えてなくて……」
これは本当だ。なぜ、私は寺の外で倒れていたのか分からない。なぜなら私は、あの時、五条悟に……
「タケルさん!!」
その時、メガネをかけた修行僧が部屋に飛び込んできた。
「ま、街で
「なんですと!?眼魔が……!?」
「そんな、眼魔はもう敵じゃないはずなのに……」
なにやら街で異変が起きているらしい。「眼魔」……というのはよく分からないが、3人は慌てている。
「俺、行ってくる!」
「せ、拙僧も様子を見にいきますぞ!夏油殿はここにいてくだされ!」
タケルくんと御成は私を置いて外へ飛び出していった。
ここで待ってろと言われたが、私も少し気になる……傷の痛みもないし、私も街へ向かった。
────────────────────
街へたどり着くと、そこには右手が剣になった青い目の怪人と、赤い髪に馬と斧が合体したような同じく青い目の怪人が暴れていた。
「なんだあれは……?」
初めて見る異形の怪物に私は思わず驚愕した。呪霊とは違う異質で異形の怪物……少なくとも私は見たことがない。
「やめるんだ!どうして今さら眼魔達が……!」
「我ら、眼魔にして眼魔にあらず……」
「我ら、復讐の権化にして復讐を果たす畜生……」
2体の怪人はなにやら重々しい口調でタケルくんを指差す。
「天空寺タケル……!貴様に倒され、消滅させられた恨み……」
「晴らさでおくべきか……!!」
眼魔という怪人はタケルくんに襲いかかる。タケルくんはまるで合気道のように攻撃を受け流し、かわしていく。
「タケルくん!呪霊操術……っ!」
このままだとタケルくんが危ないと思った私は、体内に取り込んだ呪霊を呼び出そうとした……が、出ない。
(そうか!あの時……!!)
脳裏に浮かぶ、あの時の戦い……あの時に全部の呪霊を使ってしまい、体内にはもう呪霊が残っていない……
これでは助けられない……そう思っていたその時、タケルくんは腰にベルトのバックルのようなものをつけていた。
タケルくんはさらに小さな球のようなものを取り出すと、それをベルトの中に入れた。
《アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!》
すると、ベルトから奇怪な音が流れるとともにパーカーを羽織った幽霊のようなものが飛び出してくる。
「な、なんだ……?」
幽霊が宙を舞う中、タケルくんは印を結ぶような動作を取り、
「変身っ!!」
一声とともにベルトのレバーを引いた。
《カイガン!オレ!》
《レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!!》
音楽と音声が鳴り響き、パーカーを着た幽霊がタケルくんと融合し、仮面をつけ、黒にオレンジの差し色が入った戦士に変身を遂げた。
「ゴースト……!」
「仮面ゴースト……!」
「仮面ライダー……?」
「命、燃やすぜ!!」
変身したタケルくん……ゴーストはベルトから出現した大剣を片手に突進し、眼魔に向かって攻撃する。眼魔達は武器で攻撃を防ぎ、逆にゴーストへ攻撃を繰り出す。
「はっ!」
ゴーストは幽霊のように空中を浮遊し、眼魔を翻弄しながら着実に一撃を入れていく。
「タケルくんのアレは、なんだ…?呪霊でも、呪術でもない……」
「あれは仮面ライダーの力だ。」
戸惑う私に、聞き覚えのない声が後ろから聞こえてきた。振り向くと、そこにいたのは黒いボロボロのローブをまとった男(?)だった。
「仮面ライダー……?」
「人ならざる力を持った、人を守る仮面の戦士……この世界では彼らをそう呼ぶ。そして……」
ローブの男は懐からあるものを取り出した。それは、タケルくんが巻いているものと同じ物……
「お前もライダーとなる資格がある……」
「これを、私に……?」
これを巻いて変身しろ、ローブの男はそう言っているのだ。チラリとタケルくんの方を見てみると、眼魔達と戦いを続けている。見ている限り優勢に見える。私の手助けなどいらないくらい……だが次の瞬間、
「おのれゴーストォォォ!」
「怨、怨、怨、怨、怨ッ!!」
眼魔2体の身体に、赤く黒いオーラのようなものが渦巻いた。この感じ……どこかで覚えがある……いや、私には分かる。あれは……
「まさか、呪力!?」
『ハァッ!!』
眼魔達は溜め込んだ呪力を黒い渦として放ち、ゴーストを襲った。
ゴーストは剣で防ごうとしたが、黒い渦は剣をよけてゴーストの身体にまとわりつき、しめつけていく。
「うっ……!うあぁぁぁぁぁ!!」
「タケル殿ー!!」
仮面ライダーの装甲がどれほどのものか分からないが、呪力が彼の身体に食い込み、じわじわと侵食しようとしている。
このままでは不味い……そう思った私はローブの男が出したベルトを掴んだ。
「これがあれば、彼を助けられるんだな!?」
「もちろんだ。お前はこの世界で唯一、呪力を扱える人間だ……」
私はベルトを受け取り、腰に巻いた。さらにローブの男はタケルくんが使っていた球を私に投げ渡した。
「
私は言われた通り、ベルトのバックルを開き、中に眼魂を入れた。
《アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!》
音声とともにベルトから黒に白の差し色が入ったパーカーを着た幽霊が出現した。幽霊が私の周囲を舞い、私は見様見真似でタケルくんのように印を結ぶ。
「変身っ!!」
叫ぶとともにバックルのレバーを引いた。
《カイガン!ダークライダー!》
《闇の力!悪い奴ら!!》
パーカーの幽霊が私と融合し、白い仮面と黒と白のパーカーをまとった仮面の戦士へと変身を遂げた。
「タケルくん!!」
変身して私はすぐさまタケルくんの元へ駆けつけた。
「アルゴス!?いや、でも…その声……まさか、夏油さん!?どうして夏油さんが……」
「話は後だ!タケルくん、抜け出せるかい?」
タケルくんは私の姿を見て驚いたようだが、そんな暇はない。私はまず、この黒い渦から抜け出せるか尋ねた。
「大丈夫です!この黒いやつ……なんとなく力の流れが分かってきましたから……」
驚きだ……まさか、この短時間で呪力の力の性質を理解しかけてる。だが、自力で破るにはまだ時間がかかりそうだ。
「わかった。私が時間稼ぎをする!」
私は2体の眼魔の前に立ちはだかる。
「なんだ貴様は?」
「ゴーストの仲間か……貴様も呪ってくれる!」
眼魔達は私に向かって同じく黒い渦……呪力を放った。私はそれを両手で受け止める。
「防ぐつもりか?無駄なことだ!ゴーストでさえ手こずる力だ!そう簡単に……!?」
眼魔達は驚いている。それもそのはず、私が両手で受け止めた呪力は……私が吸収してしまったのだから。
「質の低い呪力だな……こんな呪力なら、乗っ取るのも容易い……」
私に吸収された呪力は、赤みがかった黒から、緑がかった黒に変わり、私の両手に纏った。
私は拳を力強く握りしめ、構えた。
「やってみようか……七海ほど上手くはできないけど……!」
私は斧の眼魔目掛けて駆け出した。懐に入ったところで私は拳を突き出す。斧眼魔は同時に斧を振るってくる。
だが、次の瞬間、黒く光った呪力が稲妻のように轟き、拳に乗って斧眼魔の顔面に炸裂した。
「う、ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
斧眼魔は悲鳴とともに遠くへ吹き飛び、地面に倒れた。
「黒閃……いや、本物の黒閃にはほど遠いな。」
「グッ……ふんっ!夏油さん、スゴイ……」
その時、ちょうど呪力から抜け出したタケルくんが私の隣に立った。
「後はアイツだけです、夏油さん!後は任せてください!」
《ダイカイガン!》
タケルくんはそう言うと、バックルのレバーを引いた。
《オメガドライブ!!》
「ハァァァァァ……!!」
タケルくんが印を結ぶと同時に、その背後に巨大な紋章が浮かんでくる。するとタケルくんの身体が宙に浮かび、そのまま眼魔に向かって勢いよく飛んでいく。
「デヤァァァァァ!!」
飛んでいくとともに飛び蹴りを繰り出し、剣の眼魔を蹴り飛ばした。
「ぬあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
眼魔は吹き飛び、斧眼魔とともに地面に転がった。
「やった!」
「おの、れ……ゴーストォォォ……!!口惜しや、口惜しや……!」
「我らは消えても……恨みは消えぬ……あの方が、必ずや……」
断末魔を上げ、眼魔達は消滅していった。すると、消滅したはずの眼魔が球体に変化した。それは私がよく飲み込んだ呪霊の塊に似ていた。まさか、と思いながら、私はそれを回収した。
その時、御成が駆けつけてきた。
「タケル殿!大丈夫ですか!?」
「うん、大丈夫。夏油さんが助けてくれたから……」
「夏油殿?こ、この方がですか!?」
私とタケルくんは変身を解いて元の姿に戻った。するとタケルくんと御成は私に詰め寄ってくる。
「夏油さんもライダーだったんですか!?」
「ま、まさか、夏油殿も死んだことがあるのですか!?」
「うーん、どこから説明すればいいか……」
私が説明に困っていると、私達に話しかけてくる男が現れた。
「タケル!」
振り向くと、そこにいたのは……パーカーを被った黒い人……としか言いようがない。変身の時出てくるあの幽霊に似ているが……
「ムサシ!どうしたの?」
「大変なことが起きた……あの男が……英雄の中でもっとも危険な男が蘇ってしまった……天草四郎時貞……!!」
これが、私とタケルくん……仮面ライダーとの出会いだった。まさか、この出会いから、また呪いと呪いがぶつかり合う戦いに巻き込まれるとは、思いもしなかった……
第1話はいかがだったでしょうか?今まであとがきに書いていたおまけコーナーも次回から書いていこうと思います。