奈良県奈良市白毫寺町にある宝蔵院墓地……ここには宝蔵院流槍術の歴代が眠る場所……歴代の魂は寺の僧達によって手厚く葬られ、天国へと送られた……だが、ただ一人、まだ天に召されぬ魂がいた。それこそが、胤舜だった。
(なぜ……なぜ未だにワシは天に召されぬ……)
胤舜の魂はかつて自分が槍術を学んだ寺を彷徨っていた。
なぜ自分が成仏できていないのか、疑問に感じていた。
(ワシはこれまで、槍に命を懸け、ありとあらゆる欲を絶ち、信仰を裏切ることはなかった……なのに何故……)
その時、寺に来ていた若い女が目に入った。ほどよく肉がつき、足がスラッとしており、フケが一つもない美しい長髪……気がつけば目で追いかけていた。
(おお……!)
だが、我に帰って首を横に振るう。女を目で追うなど、欲を捨てた僧にあってはならぬ行為……だが、胸の中で沸々と何かがこみ上げてくる……
「宝蔵院胤舜……」
その時、目の前にいる美しい女が胤舜の名を呼んだ。女は魂だけの存在となった胤舜を見て、ニヤリと笑みを浮かべていた。
「何故、女を目で追う?」
(此奴、ワシのことが見えて……!?)
「何故、己の欲望に素直にならない……?本当は欲望のままに女を抱きたいのだろう?喰らいたいのだろう?」
心の奥底で秘めていた欲望をあっさりと言い当てられた……驚きとともに怒りが湧いてくる。
それを煽るように、女は上着のボタンを緩め、胸の谷間を胤舜に見せつけた。
「触りたくないのか…?女の身体は美しいの…柔らかいのよ……」
「………っ!!!おのれ女ァァァァァ!!」
心中を見透かされ、煽ってくる女に胤舜は怒りのままに突進していった。しかし、今の胤舜は魂だけの存在……女に触れることなどできず、すり抜けるだけだった。
「うっ……くっ……!!情けなや……!!己の煩悩すら、振り払えなんだ……!!」
自分でも情けないと感じていた。僧ともあろうものが煩悩を振り払うことができない現実に……
すると、女は魂だけの存在のはずの胤舜に近づき、頰に触れた。
「かわいそうな胤舜様……」
「あなたの本心……欲望、我らが叶えてさしあげましょう……」
女の言葉に続き、男の声が聞こえてきた。そこには、女と間違うほどの美丈夫……
「某は天草四郎時貞……こちらは細川ガラシャ様……」
天草から紹介されたガラシャは立ち上がり、元の着物を着た姿へと変貌し、フッと笑う。
「お心に正直になされ……さすれば私が願いを叶えましょう。」
「本当か……!?」
「お見せしましょう……」
天草は印を結び、呪文を唱え始めた。すると、たちまち魂だけだった胤舜の身体が肉体を得始め、人間として復活を遂げる……
「さぁ、胤舜殿……」
天草は腕輪の石を輝かせると後ろに黒いトンネルを作り出し、その中から縄に縛られた女を引き出した。
「欲望のままに、食らいなされ……」
「女……!」
肉体を得た胤舜は目をギラつかせた。ふくよかな胸と尻、雪のような白い肌、美しい黒髪……これを食らってもよいと、自分を蘇らせてくれた天草は言った。ならば、もはや我慢などする必要はない……
「女ァァァァァ……!!」
「いやあぁぁぁぁぁぁ!!」
胤舜は生まれて初めて女を知り、貪った。舌を身体に這わせ、歯を食い込ませて肉を喰らう、槍を身体のいたるところに突き刺し、その反応を楽しんだ。
もうそこには、かつての僧…宝蔵院流槍術の使い手、宝蔵院胤舜はいなかった……
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「村正……あった!」
大天空寺へ戻った私達は、偉人録でさっそく村正のことを調べた。
刀匠・村正……名前だけは聞いたことがある人も多いだろう。彼が作った刀は精強で知られる三河武士、かの徳川家康などの戦国武将に業物と称されるほどの刀を打ったことで知られている。
そして、彼が作った刀は「妖刀」と称された……
「妖刀か……そんな刀が実際にあれば、奴らも倒せるかもしれないが……」
「でも、今も村正が生きてるわけありませんよね……」
タケルくんの言う通り、村正は戦国時代の人間……偉人…死人なのだ。
だが、子孫がいるとすればまだ可能性はある。
「子孫も刀鍛冶だったりしないかな。」
「いや、さすがにそれは……」
子孫が全て刀鍛冶とは限らない……もしかしたらみんな別の仕事をしている可能性だってある。第一、見つける手だてがない。
そんな時、後ろから声が聞こえてきた。
「大事なのは血の繋がりではない。魂の繋がりだ。」
後ろを振り向くと、そこには宮本武蔵のゴーストが腕を組みながら立っていた。
「武蔵!魂の繋がりって……?」
「人間と英雄の魂は惹かれ合うんだ。俺達がタケルに惹かれたように……魂の波長が合えば、俺達ゴーストは人間に取り憑くことができる。」
「……そうか!」
その時、タケルくんが何かに気づいて声をあげた。
「村正の子孫を探すんじゃなくて、村正の魂が取り憑いてる人を探せばいいんだ!」
「その通りだ。」
確かに子孫を探すよりかは幾分か探しやすい……が、問題はどこを探せばいいかだ。すると、佐原雄輝が手を上げていた。
「あの……俺、実家が京都なんですけど、京都に腕のいい刀鍛冶がいるんですよ!」
「京都で刀鍛冶……ああ、観光スポット?刀作り体験って聞いたこと……」
「いや、それとは違って……話すと長くなりますし、移動しながら話しますよ。」
雄輝の提案で、私達は明日から列車で京都へ行くことに決まった。行きの列車の中、雄輝は私達と一緒に駅弁を食べながら話してくれた。
「俺、地元の高校に通ってた時聞いたことあるんですよ。謎の刀鍛冶の噂……」
食べる手を止め、神妙な声を出す雄輝。
「比叡山の麓に小さい小屋があるんですけど……その中が工房になってるんですって。その工房に『
「話を聞く限りだと…もぐっ……普通の刀鍛冶だけど……」
私がシウマイを食べながら言うと、雄輝は話を続けた。
「それが、村枝は他の刀鍛冶が集まる場所で刀を打って、博物館とかに展示されるような綺麗な刀を打ってたらしいんですけど……ある日を境に人里から離れるようになって、比叡山の麓に移り住むようになったって……」
「何があったんだろうね……」
説明する雄輝をよそに、私とタケルくんは駅弁をパクパクと食べ続けている。
「う〜ん、東京駅で買ったシウマイ弁当……おいしいねぇ。」
「こっちの深川めしもおいしいですよ!」
「二人とも……せっかく話してるのに……」
美味しそうに駅弁を食べている私とタケルくんを見て、里香子ちゃんと雄輝は呆れた顔で見ていた。
「それにしても、タケルくんは美味しそうに食べるねぇ」
「はいっ!みんなとご飯を食べれるのが…嬉しいんです!」
タケルくんの言葉に私は首を傾げた。
「俺、一度死んでからみんなとご飯食べることできなくて……でも、無事に生き返って、ようやくみんなと一緒にご飯が食べられて……」
「みんなで一緒に……」
その時、私の脳裏に昔の光景が浮かんできた。
『あ〜、任務終わった〜』
『傑ー、硝子ー、帰りにラーメン食べていかね?俺、街のラーメン屋って行ったことないんだ!』
『さすがお坊ちゃま。』
……ああ、そうだ。昔は任務帰りに買い食いとか外食したっけ……今になってこんなことを思い出すなんて……もう戻れるわけもないのに……
「……もうすぐだね、京都。」
「?」
昼の1時を過ぎた頃、私達は京都駅にたどり着いた。
すると、雄輝はポケットから4つに折りたたまれた紙を取り出した。
「これに住所と詳しい地図が書いてます。地図アプリにも載ってますから。じゃ、俺はこれで……」
「君は来ないのかい?」
「久々に京都に来たから、親に顔を見せようと思って……」
雄輝は私達に頭を下げると、その場から立ち去っていった。残った私達3人は地図に書いてある場所へと向かった。
京都駅からバスに乗って1時間……比叡山近くのバス停で降りる。
「地図だとバス停から……あっちだ。」
そのまま地図と地図アプリをたどっていくと……見つけた。雄輝の話通り、小さな工房が……
「ここか……」
タケルくんは玄関ドアに近づくと、インターホン……はなかったため、ドアをノックした。
「ごめんくださーい……!」
ノックしても返事がない……タケルくんはドアノブに手を触れ、回す……鍵が開いている。ドアを開けておそるおそる中へ……
「誰もいませんね……」
「不用心な……」
奥へ進んでいくと、そこには本格的な刀鍛冶の工房があった。
「雄輝くんのいうことは本当だった……ここは村枝正一の工房……」
その時だった。
「おい、誰だ!」
物影から声から響き、私達はビクッと身体を震わせた。
振り向くとそこには、長い白髪にヒゲをたくわえた細身の老人がいた。
「泥棒……には見えねえな……ウチにはなんもねぇぞ。」
「あの、あなたが……村枝正一さん……?」
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その頃、雄輝の方は実家へと戻っていた。
「あっ、やべ……鍵忘れた……でも、今日日曜だし、父さんも母さんもいるよな。車もそのままだし……」
雄輝はインターホンを押し、呼び鈴を鳴らした。だが、返事がない。何回か押しても何も返ってこない。
「あれ……?父さーん!!母さーん!!」
ノックして大声を出しても返事がしない……変だと思い、ドアノブに手を触れると、鍵が開いていた……
「え……」
何故、鍵が開いているのか……訳がわからず、おそるおそる中へ入る……床を見ると、靴の後がこびりついている。
「父さん……?母さん……?」
嫌な予感がこみ上げる。ゆっくり、ゆっくりとリビングへ進んでいくと、そこには……
「……!!」
血の海……目の前に血の海が広がっている。その中心に、雄輝の父と母が倒れている。無数の刺し傷とともに……
「あ、あ…あああぁぁぁぁぁぁ……!!!」
声にならない声が家中に響き渡った。すると、2階から足音が聞こえてくる。
「なんだぁ?うるせーなぁ」
「あれ、なんか変なのいる〜」
2階から降りてきたのは、チャラチャラした服装にピアスや指輪をたくさんつけた、所謂カラーギャングらしき男5人と女が1人……ギャング達は両親の亡骸を前に泣いている雄輝を見て、ゲラゲラ笑い始めた。
「あっ、もしかして〜、このジジババどもの子ども?」
「マジか〜!俺ら〜、お小遣い欲しくて〜、プチ強盗しかけたんだよね〜!」
「でも、そのババアが警察呼ぶとかうるせーから黙らせた〜♪」
「あれマジでウけた〜♪」
ギャング達のふざけた態度を見て、雄輝の中でプチンと何かが切れた……
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
近くにあった瓶を手に取って、ギャング達に襲いかかった……
「フフッ……ではガラシャ様、胤舜様、行きましょう。」
「よかろう……」
「南無八幡大菩薩……」
じゅじゅさんぽ「教育実習生」
「教育実習生を〜〜〜〜!!紹介します!!テンション上げて!みんな!!」
両手でピースサインを作り、ポーズを決める五条に対し、1年生達は無反応だった。
「先生ー、教育実習生ってどんな人〜?」
虎杖は手を上げて五条に説明を求めた。
「せっかく仮面ライダーとのコラボ作だしね〜、たくさんの仮面ライダーから選んでお願いしてきたんだ〜。それでは、どうぞ〜!」
五条の言葉とともにガラッとドアが開き、赤いバイクのような仮面ライダー……アクセルが入ってきた。
「教育実習生、仮面ライダーアクセルさんでーす!」
アクセルは教壇の前に立ち、腕組みをする……が、何も喋ろうとしなかった。
その様子に、虎杖は手を上げて質問を始めた。
「アクセル先生ー!アクセル先生はどんな……!」
「俺に質問をするな。」
その瞬間、教室の空気を静まり返った。
「えっ、いやあの……アクセル先生は……」
「俺に質問をするな。」
「……あの」
「俺に質問をするな。」
おわり