「泥棒じゃあなさそうだが……誰だ、おめーら……」
目の前にいる白髪の老人……もしかしたら、この爺さんが村枝正一……その時、2階の方から階段を降りる足音が聞こえてくる。
「おじいちゃーん、お客さ〜ん?」
2階から降りてきたのは、ポニーテールの黒髪の女性。年齢は20代くらいだろうか、大人しそうな印象を受ける。
「さぁな……姫香、茶ぐらいは出してやれ。」
村枝さんは壁に立てかけた制作途中と思わしき刃物を手に取り、炉の前に座った。
「あ、あの、村枝正一さん……ですよね。」
「銀座のシェフに包丁を納品しねぇといけねーからな……少し急ぐか……」
私達の話をよそに、村枝さんは包丁を作り始める。
「あ、あの……」
「おじいちゃん!」
無視して作業を続ける村枝さんに、姫香という女性は大声で村枝さんを呼んだ。すると村枝さんはため息を吐き、こちらを向いた。
「確かに……俺は村枝正一だ。俺に何の用だ。」
「えっと、どこから話せばいいのか……」
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その頃、
「あはははははは!!なにコイツ!?イキって突撃してきたクセに弱〜!」
家族を殺された雄輝は逆上してギャング達に向かって特攻した……が、多勢に無勢……逆に返り討ちになり、瀕死になってしまっていた。
「お〜い、僕ちゃ〜ん!さっきまでの勇気はどうしたんでちゅか〜?」
「聞こえまちゅか〜?ギャハハハハハ!!」
心のないギャング達はゲラゲラ笑いながら瀕死の雄輝を蹴り飛ばしていく。だがその時、雄輝は力を振り絞ってギャングの1人の足にかみついた。
「いって!?てめぇ何してんだゴラッ!!」
噛みつかれたことに激怒したギャングの1人は、雄輝の頭をサッカーボールのように蹴り飛ばした。鋭い一撃に脳が揺れ、雄輝の意識は遠のいていく……
「チッ、調子に乗りやがって……」
「あれ……そういやミキは?」
ギャングの1人が、一緒にいた女性がいないことに気づいた。
「トイレいくって言ってただろ。」
「けど、いくらなんでも遅いんだよ……」
ギャングの1人が様子を見に廊下へ出た。
「ミキ〜?ミキ……」
ギャングの声が止まった。目の前に探していたミキがいたからだ……死体となって。
ミキの身体は全身血で染まり、その暗がりからグチャ、という音や何か食べる音と啜る音が聞こえ、
「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不……」
さらにはお経が聞こえてくる。その暗がりをよく見ると……ミキの身体に刃を突き刺し、肉を食いちぎる袈裟姿の坊主の姿が……
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その悲鳴はリビングの方まで響いた。
「な、なんだ!?」
「ヨっちゃん、どうした〜?」
ギャングの1人が悲鳴が聞こえた方へ行こうとした次の瞬間、そのギャングの首に長い鞭のようなものが巻き付いた。
「がっ!?」
「ククク……どうだ。恨みを抱いたまま死んだ女達の髪を使って作った鞭『髪切丸』の味は……」
その鞭は部屋の陰から伸びてきた。その陰にいたのは、着物を着た女性にも見える美丈夫……天草四郎だった。
「がっ、が……!!」
「な、なんだこいつ!?」
困惑するギャング達……そんな中、女性の笑い声が部屋の中に響いてきた。同時にキラリと光るものがあった……と思った次の瞬間、ギャングの側にあった椅子が真っ二つにきり裂かれた。
「ひっ!?」
「あらあら……狙いがずれた……もっと薙刀の修練をしないと……ふふふっ……」
着物を着た女が、口が裂けそうなほどの禍々しい笑みを浮かべ、薙刀を手にしていた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!!」
そこからは早かった。ギャング達はまたたく間に突然現れた天草四郎達によって惨殺された……だが、倒れている雄輝にはどうでもよかった。それよりも、両親が殺され、自分の命も尽きようとしていることの方が重要だった。
「大丈夫……ではないな。」
惨殺を終えた天草は雄輝の前で屈み、上半身を抱き上げる。
「どうしてこうなったと思う?」
「……ギャングが、強盗したから……?」
「……そうだな。あの悪党どもがお前の両親を殺した……だが、何故そうなったか……分かるか?」
息も絶え絶えな様子で、雄輝は首を横に振って答える。
「それは、この世が弱者に寄り添っていないからだ。こいつらも元々は弱い立場であったであろう……だが、この世の決まり事、政治が弱い者に寄り添わない構造であるが故に、このような結果が起こった。」
「な、なら……弱者には、術はないのですか……?」
自分でも不思議に思っていた。目の前にいる男は仮面ライダーと戦う敵……なのに、天草と話していると何故か心が落ち着く。
「あるさ……我々が、楔を打つのだ。」
天草はフッと笑うと、顎に手を触れ持ち上げ……顔を近づけてくる。
「そのために……君の手を貸してほしい……」
顔が青白くなり、すぐに息絶えそうな雄輝の唇に、天草は自分の唇を重ねた。まるで、風船に息を吹いて膨らませるように……
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「話は分かった……だが、俺ァもう刀は打たねぇよ。」
私達は村枝さんに全ての事情を伝えた……だが、村枝さんは首を横に振った。だが、普通に断るのではなく、村枝さんは「刀は打たない」と言った。
「そんな……お願いします!村枝さんの刀が必要なんです!」
「しつこいな、俺は刀を打たないって決めたんだよ。包丁なら作ってやるよ。」
タケルくんの頼みにも村枝さんは何度も断り続ける。だが、タケルくんは食い下がる。
そこで私は尋ねた。
「何故……刀を打たないんですか?」
「……嫌気が差したんだよ。刀を打つことに。」
「それはどういう……」
刀を打つことに嫌気が差した……それがどういうことなのか問いただそうとしたその時、
「お頼み申す!!」
外から部屋にまで通るほどの大きな声が響いてきた。……その声には聞き覚えがある。
「この声……まさか」
チラリと窓の外を見ると、そこにはあの本多忠勝の姿があった。
最悪だ……ただでさえ、目的を達成していない上に相手があの本多忠勝とは……
「忠勝……!なんでここに……!」
「村正殿!否……村正殿の魂を継いだ者よ!お頼み申す!!」
忠勝の言葉を聞くに、忠勝……いや、天草の方も村枝さんのことを嗅ぎつけたらしい。
「マズイ……これじゃ刀どころじゃない……!」
「とにかく、忠勝を追い返しましょう夏油さん!」
そう言うとタケルくんは部屋の窓を開けて外へ飛び出した。私も続いて外へ飛び出した。
「貴様ら……貴様らもここにいたか!」
私達2人の姿を見るなり、忠勝は槍の柄をドスン!と地面に叩きつけ、全身に力を込める。
「ムゥゥゥン……ハァッ!!」
忠勝は鎧姿を着た怪人へと変身し、私たちを睨みつける。とても勝てる相手じゃないが……やるしかない。
「いこう、タケルくん!」
「はい!」
私達も腰にベルトを出現させ、眼魂を取り出す。
だがその時、忠勝は目を見開いた。
「……っ!!?
忠勝の視線は私達……ではなく、その後ろ……村枝さんの孫娘、姫香さんに向かれていた。
姫香さんを見た瞬間、なんと忠勝は槍を地面に落とし変身を解いた。忠勝の行動に、私達も変身する手が止まる。
「
どうやら姫香さんを誰かと重ねているようだ。忠勝が発している「いな」という言葉……おそらく、忠勝の娘である稲姫のことだろうか……
「……ここは退こう……」
忠勝は槍を拾うと背中を見せた。すると……
「貴殿らに伝えておこう……天草殿はそう遠くない内に日ノ本を混乱に陥れる。そのとき……貴様らがどう動くか……見定めさせてもらおう……」
忠勝は背を向けたまま、その場から立ち去っていった……
「行っちゃった……」
「なんとか助かったか……」
私とタケルくんはほっとため息を吐いた。今回はなんとか退いてくれた……今の私達じゃあの男を倒すことはできないからだ……
「刀、打ってやるよ。」
その時だった。村枝さんが私達の後ろで呟いた。
私達は空耳かと思い、村枝さんに尋ねた。
「今、刀を打つって……」
「今まで何十年も生きてきたが……本物の本多忠勝に会えるなんて思いもしなかった……お前さん達が言ってたことも本当なんだろうな……姫香!」
その時、村枝さんは姫香さんに向かって呼びかける。
「白装束用意しな!お前も着ろ!」
「……っ!はいっ!」
姫香さんは嬉しそうに笑うとすぐに2階へと上がっていった。
その間に、村枝さんは準備を整えていく。
「もう5年ぶりか……刀を打つのはよ……」
久々に刀を打つ高揚感からか、村枝さんはニヤリと笑った。それと同時に、村枝さんの背後に何かが浮かんできた。白装束を着た、黒いゴーストが……
「あれ、まさか……」
「村正……!?」
白装束に着替えた村枝さんの動きに合わせ、ゴーストも一緒に動いていた。釜に鉄を入れ、赤熱化したところを金槌で打った。
その動きは、まるで村枝さんと村正のゴーストが一体化したかのようだった……
じゅじゅさんぽ「教育実習生ふたたび」
「いやー、前回の教育実習生は失敗だったね。」
「どっからどう見ても失敗でしたよ。」
「でも、次は大丈夫!超大御所連れてきたから!塾長、お願いしまーす!!」
その時、教室の扉が勢いよく開き、男が一人入ってきた。その男はかなりの巨漢かつ太い眉毛にスキンヘッドのいかつい顔をしている。その男の名は……
「ワシは男塾塾長、江田島平八であーーーーーーるっっっっ!!!!!!!」
自己紹介をした瞬間、あまりに大きな声のせいで教室の窓ガラス全てにヒビが入った。
「こ、声でっか……!!?」
「というか、この人本当に教育実習生ですか……!?」
「明らかに教育実習生って年齢じゃないじゃない……!!」
「まあまあ、これでも実績ある人だから。」
五条の言葉に、ものは試しと虎杖は手を上げて質問しようとした。
「すいません!先生って何歳ですか?」
「ワシは男塾塾長、江田島平八である!!」
江田島の返答に、教室が一瞬静かになっていた。
「……え?い、いや、名前聞いたんじゃなくて……」
「ワシは男塾塾長、江田島平八である!!」
「また話通じない系じゃねーか!!」
また話が通じない教員が現れたことで、温厚な虎杖ですら声をあげた。
「五条先生!どうなってんのこれ!?」
「ふざけてんのバカ目隠し!!」
「ふざけてんのはいつものことですけど、真面目にやってくださいよ……」
「あれ〜?」
結局、この日も教育実習生による授業は行われなかったのだった……
「ワシは男塾塾長、江田島平八である!!」
『それはもうええっちゅうんじゃい!!!』
おわり