雷神は見届ける。少女達の行く末を   作:nalnalnalnal

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 勢いで書いちゃったけど後悔はない。


生き方を変えるってのもアリだな

  

 

 

 

 

 ──愛など下らん。

 

 

 ──他者に満たして貰おうなどと考えたことも無い。

 

 

 ──食らいたい時に食らう。目障りならば殺す。面白ければ遊んでやるだけだ。

 

 

 ──俺は俺の身の丈で生きているに過ぎない。それを測れないのは俺以外の連中の問題だ。

 

 

 

 

 

 ──完膚なきまでの敗北。俺の四百年越しの悲願は完全無欠によっていとも容易く打ち砕かれた。だが、後悔などしてはいない。ただ宿儺と戦り合う事……それが目的だった。

 俺が生きた時代じゃ誰一人として相手にならなかった。俺以外の人間はただの脆い土塊でしかなかった。

 

 

 俺はただ更に強く在り続ける者達と戦いたかっただけだ。そこに理屈なんてねぇ。俺がやりたいようにやる──俺に挑むのなら当然対峙し、強者と立ち会えるのなら全身全霊で挑む。今思えば、俺に挑んで来た奴らも俺に認められたかっただけなのかもしれないな。

 

 

 

 ──俺達は強いというだけで愛され、愛に応えている。

 

 

 ──それでも尚孤独を憂うから、贅沢者だと言ったんだ。

 

 

 

 愛──慈愛……か。俺には持ちえなかった考えだ。俺に挑み敗れた奴らも俺という強者への渇望を満たし、自身が存在する意味を己に問う為に挑んで来たのか──理解出来たようで出来ていない。

 俺は無意識の内に愛とやらを既に持ち、他者へ分け与えていたのか? 他者を慈しみ、満たしていたのか?

 

 

 全てにおいて敗北したのか、俺は。

 

 

 自身の身の丈で生きているに過ぎない──確かにその通りだ。俺は宿儺への悲願を果たす為に羂索と契約し、現代にまで渡った。

 俺が宿儺に強さの意味を問うたのも、俺が俺の身の丈で生きているに過ぎなかった訳か。

 

 

 成程な──面白ぇ。俺が憂いた孤独も、強さの意味も……理解出来た。強く生まれたのなら、ただ強く在れば良い。他者と関わり、高め合う事、価値を認め合う事が愛だと言うのならば。

 

 

 まぁ、今更自分の人生を振り返ったところで何かが返って来る訳でもねぇか。悲願を果たせたなら、悔いはねぇさ。

 仮に次があるなら、同じようにやってやるよ。だが多少は──生き方を変えてみるのもアリかもしれねぇな。いつまでも同じじゃ飽きるだろうからな。奴が俺に説いた事を鑑みながら第二の人生を歩むのも、悪くない──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オギャア!! オギャア!!」

 

 

 ──は? 

 

 

 オイ、何だこれは……どうなってやがる? 

 

 

 俺の身体が──赤子になっているのか? 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「……退屈だ」

 

 

 俺が現代──()()()()()()()()()()に生まれ落ちて早十四年の歳月が経った。俺が生きた江戸の世や術師が存在した現代とは異なる現代──呪力が存在しないのなら、当然術師も居る訳がない。強者と対峙する事を願うのなら、武術を極めた者同士の催し事や娯楽で互いに競い合うものに自ら出場しなくちゃならねえ。

 (豪運)や五条悟が居た時代よりも、遥かに平和ボケしている。誰かと決闘をしようものなら奉行所……じゃなくて警察に捕えられてしまう。だが今更そんな暴虐の限りを尽くすつもりは俺にはない。俺に喧嘩売る事が既に自殺行為だからな。見逃してやってんだよ。

 

 

 そう──俺には()()()()()()()()()。それはこの世界においても変わらなかった。呪力の特異体質も。術式も持たない家に生を受けたのに何故身体に術式が刻まれたのか、理屈なんざ知らんがな。まだ身体も小さい所為か、全盛期の五割にも呪力効率諸々が満たない。当然か。

 それが今まで謎だった。また羂索が余計な事をしたのかと疑問に思ったが、呪力が存在しないのなら奴も居ないのは当然の摂理だ。奴も居ない所為で現代の生活に適応しなくちゃならねぇし、術式や呪力なんざ使えば目をつけられる。不便で仕方がない。そもそも術式や呪力なんざ使うタイミングがねぇ。

 

 

 現代において電気という力は中々重宝されるものだ。生活において必要不可欠なものだ。仮に俺が呪力を見せびらかしたら世界から注目されそうだな。死んでもやらんが。

 そして誰しもが電子機器に夢中で自らを鍛え上げようとはしない。居たとしても少数派……そいつら同士が高め合うのを見て楽しむのみ。全く無粋な時代になったものだ。もっと筋トレをしろ筋トレを。

 

 

 ──鍛える事は当然俺は好きだが、それだけじゃ前と同じだ。そしてこの世界の学校は九年義務として通わされる為、色々な学びを得られる。

 当初は面倒だったが慣れてみたら意外と新鮮味があって楽しめる。俺が居た江戸の時代を自分で学ぶという訳の分からない場面もあったのだから。友人関係を築く必要があるが、一人しか居ねぇからな……人に恵まれたとは言えんな。俺に問題があるのかもしれんが。

 

 

 娯楽として確立されている漫画やゲームを楽しむ事ぐらいだ。最近の暇潰しと言えば。秤が漫画脳だとか言っていたが、俺も割とそうなり始めているかもしれねぇ。

 やはりバトル漫画が至上だ。弱者から強者へと成り上がる過程を見ると、心が湧き上がる。俺になかった感情を教えてくれる。

 ゲームは漫画よりも時間の浪費が激しくて睡眠時間を削れるからそんなやらん。

 

 

「……何を今更振り返っているんだ俺は。こっちにも大分慣れて来たんだからこっちで楽しむのが一番だろ」

 

「まぁんな事より朝飯にするか。適当にパンでいいか……朝はかったるくて料理なんてする気になれねぇ」

 

 

 俺の肉親は海外へ長期出張している為この家には俺一人だ。洗濯や食器洗いが面倒だが、機械が発展しているからかなり楽だ。雑用をこなせるようになるとは思っちゃいなかったぜ全く……

 ちなみに肉親の額に縫い目はなかった。

 

 

「……今日は早めに出るか。()()()と鉢合わせる可能性が高ぇ……」

 

 

 飯を平らげ、今日の学校について考えると隣に住む奴が脳内に現れる──よし、今日はとっとと出て睡眠時間を学校で確保してやる。アイツと鉢合わせるのは御免だ。どうせ学校で顔を合わせる事にはなるが、朝の怠さにアイツが混ざるのは面倒なんだよ。マジで。

 

 

 この世界に生まれ変わっても、肉体は受肉体のままだった。割と気に入ってるから有り難ぇ。苗字も何の因果か同じだった。変に別の名前を付けられるよりかは以前と同様の方がこちらとしても慣れているからやりやすい。

 

 

 ──っと、モタモタしてる場合じゃねぇな。さっさと着替えを済ませて出ねぇと。

 

 

「この時間ならまだ居ないだろ」

 

 

 準備を終え、玄関の扉を開いてマンションの廊下へ出る。ヒヤリとした空気が肌を刺し、周囲を見渡す。

 ──よし、アイツは居ない。ここは廊下ダッシュで距離を稼いで──

 

 

「──あっ、鹿紫雲君! 今日は早いのね。奇遇だわ」

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

 

 なんでコイツ居るんだよ。いつもの三十分は早く出てるんだぞ? 俺の行動を監視でもしているのかよ。時間をズラしてもダメなのか……クソが。

 

 

 コイツは巴マミ──俺の一応名目上は唯一の友人だ。だが俺はコイツが苦手だ。話は長ったるいししつこいしうぜぇ。家が隣じゃなけりゃ未来永劫関わる事のなかった人間だろう。

 友人関係を築くというのはまだ分かる。宿儺にも贅沢者だと言われたからな。多少なりとも誰かと関わるのはアリだという考えはある。だがコイツはまた違うだろう。

 

 

 女だし趣味も合わん。俺がここに転居したら突然友達になって欲しいだとか言い出す始末。馬が合わねぇのなんてすぐに理解出来た。秤と違って俺は悉く運が悪いみたいだ。コイツの隣に引っ越しちまったのだから。

 チッ……もうコイツを差し置いて学校まで突っ走るか?

 

 

「ほら、行きましょう」

 

「……そうだな」

 

 

 突き放すつもりはないが……コイツが考えている事が分からん。以前も自分が孤独だと考えていた所為なのか、他者の感情を見透かすのがどうやら俺は苦手なようだ。単純に肉親が不在だから寂寥感を感じているだけかもしれねぇが。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「それでね、茶柱が三本も立っちゃったのよ! だから試しにまたお茶を淹れてみたら──」

 

「……」

 

「──聞いてる?」

 

 

 朝はもう最悪仕方がないが、何故下校時間でもコイツと一緒に帰らなきゃならねぇんだよ。女の友人と帰れよ。コイツは多少なりともクラスの人間とは良好な関係を築いているだろうが。ついてくんじゃねぇよ。

 明日からは終礼サボって先に帰るか。面倒だ。

 

 

 それにしてもコイツ……よく飽きねぇな。殆ど返事なんて返しちゃいないってのに。ちょくちょく面白い話があるのが余計にムカつくが。

 

 

「聞いてるっての」

 

「そう? いつも素っ気ないから不安なのよ……?」

 

「よくお前それで俺に話しかけ続けられるな。ほぼ毎日だろ」

 

「ふふ……そんな事言いながら付き合ってくれるあなたもあなたよ?」

 

「そうかよ」

 

 

 何故コイツは嫌な顔一つとして見せないんだ。何一つとして馬が合わないのなら友人関係を築けるかどうかと言われたら当然無理だ。

 性別の違いもあるのだから余計にその無理難題さに直面している筈だと言うのに。訳が分からねぇ。

 

 

 生き方を変えるってのも中々難しい──長い年月を戦いに費やし、他者と関わる手段がその戦いしかなかった俺には特に。

 大体初対面で俺にビビって距離を置く奴ばっかりなんだよ。他者と関わるのは必要だと感じてはいるが、少しは骨のある奴を選びてぇんだよ。

 

 

 その点で言うとコイツもある意味骨があるのかもしれないが。だがしつこい。その所為で苦手意識があるんだよコイツには……

 

 

「──っ!?」

 

「……?」

 

 

 なんて考えていたら──突然コイツの顔色が変わった。驚愕した表情を見せているが、何に驚いてんだ? 幻覚でも見えてるのか? 

 

 

「──ごめんなさい鹿紫雲君! 話の続きはメッセージで聞かせてあげるから!」

 

「──は? おい待て……って、足速ぇなアイツ」

 

 

 何なんだ……血相を変えたと思ったら突然切り上げて走り去って行きやがるし。しかもメッセージで続きを聞かされる事が確定してしまった。だがまぁ無視しときゃいいだろ。返すの面倒だし。

 

 

「……それにしても。あの表情の変わりようは何だよ」

 

 

 余りにも唐突過ぎやしねぇか? 何か嫌なモンでも見たような反応を示していたが。

 行き先は──コンビニ付近の路地裏っぽいな。コンビニ方向に向かったが、流石にあの表情でコンビニに用事がある訳ではねぇだろ。トイレとはまた別の反応だしな。

 

 

「……」

 

 

 ……何故俺はアイツを気に留めているんだ。一人の時間がようやく出来たんだ。解放された気持ちになる筈だろ。

 ……アイツのあんな顔初めて見たな。余程の急用なのか? そもそも路地裏付近に用事ってどういう訳だよ。

 

 

「……はぁ……しゃーなしだな」

 

 

 アイツを気にかけている自分が気色悪い。この気色悪さを発散させる為だ。他意なんざねぇ。

 そして俺は巴の後を追い、路地裏付近へと向かった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「アイツ……犯罪にでも加担してんのか?」

 

 

 巴が向かった筈の路地裏付近を歩き回ってアイツを探すが、見つからねぇ。こんだけ探しても見つからねぇなら居ないも同然だろ。

 これだけ探してやったんだ。気色悪さは多少なりとも解消された筈だ。

 

 

「時間の無駄だったな。そうと決まれば帰──ん?」

 

 

 足音……? 近ぇな。

 

 

 アイツも歩き回ってんのか? だとしたらマジで酒で酔っ払ってんのかと思ってしまうが。あの焦りようも謎だ。

 まぁ、近くに居るなら話しかけるくらいはしてやるか。別に何かを手伝うつもりはねぇよ。

 

 

 だから足音が聞こえる方は向かったのだが──

 

 

「──は? お前何してんだ?」

 

「──!? か、鹿紫雲君!? 何でここに!?」

 

 

 巴が居たのだ。一応……だが。余りにも予想外の格好をしていた所為で腑抜けた声が漏れてしまったじゃねぇかよ。

 ベレー帽によー分からん漫画に登場しそうな格好をしていたのだ。

 

 

 ああコレって…… コスプレイヤーって奴か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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