もしユメ先輩が居なくなった直後のホシノが現代のアビドスに来たら   作:気弱

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追憶の欠片を繋いで、明日の景色へ

未来で教わった記憶をなぞるように、アビドスに次々と危機が訪れる。 未来の情報を知っているはずの私は、どこか焦っていた。

 

「……あ」

 

轟音とともに、柴関ラーメンから火の手が上がる。 爆破されることは聞いていたのに、正確な日時までは分からなかった。燃える店を前に呆然とする私と、泣き崩れるセリカちゃん。 けれど、事態は思わぬ方向へ動く。 爆破の犯人である「便利屋68」が、お詫びとして大金を届けたのだとシロコから聞かされる

 

(……え? あれって、おじさんたちが銀行強盗した時に捨てた、あのお金……?)

 

あの時、私が「こんな汚いお金、使えない」と投げ捨てたはずのものが、回り回って、今度は「お詫び」として私たちの元へ帰ってきた。「あはは……。あのお金、こんな使い方をされるなんてね」 皮肉な運命に少しだけ笑みが漏れる。お店の建物自体は失われてしまったけれど、大将は届いた資金を元手に「屋台」を仕立て、再起を誓ってくれた。

 

けれど、本当の危機はこれからだった。 阿比留理事長からの不敵な呼び出し。私は無意識に、一人で部室を出ようとした。

 

(……もう、二度とあんな悲しい未来になんかさせない。おじさんが、全部終わらせてくるから)

 

あの日、クロコちゃんが泣きながら教えてくれた絶望。それを守れるのは、未来を知っている自分だけだと思い込んでいた。 重いドアに手をかけた瞬間、背後から柔らかな温もりに包まれる。

 

「ホシノちゃん、一人で行こうとするなんてメッ!だよ。……先生も、みんなも準備はできてるんだから」

 

ユメ先輩の、すべてを見透かすような優しい声。 ハッとして振り返れば、そこには仲間たちと、先生がいた。

 

(……あぁ、そうだった。私はまた、一人で抱え込もうとしちゃったんだ。未来のみんなにあんなに大切なことを教えられたのに……おじさん、何してるんだろ)

 

自分の未熟さに、自然と自嘲気味な苦笑いがこぼれる。

 

「……うへへ、私の完敗だね。……うん、行こう。みんなで」

 

理事長が自ら乗り込む有人兵器「ゴリアテ」との決戦。 かつての孤独な私なら、圧倒的な質量に押し潰されていたかもしれない。けれど今は、先生の的確な指揮があり、背中を守る仲間がいる。 私の盾は一度も砕かれることなく、最後は私たちの「絆」が理事長の野望を完全に打ち砕いた。

 

騒動が一段落し、柴関ラーメンの「屋台」から美味しそうな匂いが漂い始めたある日の夕暮れ。 部室のソファで、先生が優しく切り出した。

 

「お待たせ、ホシノ。……明日、みんなで水族館に行こう」

 

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥に澱んでいた「後悔」が、温かい光に溶けていくのが分かった。 未来の先生と約束した水族館に…ようやく、本当に辿り着いたんだ。

 

「……うん。おじさ――」

 

自然と口を突いて出た言葉に、私は慌てて自分の口を抑えた。 先生は不思議そうに首を傾げている。……今の私はあっちの私と違って「おじさん」という一人称を言わないようにしていた。それなのに先生の前だと自然と未来の私のように「おじさん」と言いかけてしまう

 

「……あ、あはは。……私、楽しみにしてるよ。先生」

 

言い直したものの、耳の先まで熱くなるのが自分でも分かった。 昔の癖というか、先生に甘えたくなるとつい出てしまうこの呼び方が、今は妙に恥ずかしくて。俯いた私の視界で、鞄につけたクジラのキーホルダーが、夕焼けを反射してキラリと輝いていた。

 

翌朝、アビドスの空は抜けるように青かった。 鏡の前で、私は3年生の制服に袖を通す。 「……おじさん、だって。あはは、ほんとに何言ってるんだろ、私」 昨日の言い間違いを思い出して、また少し顔が熱くなる。 それでも、鞄に揺れるクジラのキーホルダーを見つめると、自然と背筋が伸びた。 今日は、最高の一日にしなきゃ。あの日の先生と、隣で笑う今の先生、そして……。




水族館編まで思いつかなかった…!!明日水族館編を書くつもりなのでしばらくお待ちください
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