もしユメ先輩が居なくなった直後のホシノが現代のアビドスに来たら 作:気弱
撃沈したホシノを見かねてクロコが先生に注意をするも…?
昨日のクロコの忠告――『次に先輩が「私」って言ったら、ちゃんと「可愛いね」って言ってあげて』。 先生はこのアドバイスを、手帳にメモするほど真剣に受け止めていた。
(なるほど。ホシノが「私」と名乗る時は、自分を女の子として意識してほしいというサインなんだな。よし、教師として、生徒の自己肯定感を高める言葉を贈らなければ!)
そして翌日の放課後。チャンスは意外な形で訪れた。
部室のソファで、ホシノが珍しく真剣な顔で自分のポスターを眺めていた。昨日の失態を反省し、今日こそは「私」という一人称を定着させようと、一人で予行練習をしていたのだ。
「……ん。よし。……先生、私、今日のパトロール報告書をまとめておいたよ」
ホシノが独り言でそう呟いた、その瞬間。 「……素晴らしいよ、ホシノ! 今の君、とっても**『可愛い』**ね!」
「ぎゃあああああああ!!?!?!///」
背後から(クロコの忠告通り)完璧なタイミングで現れた先生が、満面の笑みでホシノの両手を握りしめた。
「えっ、せ、せせせ先生!? なんでここに!?」 「いや、廊下を通りがかったらホシノの『私』という凛々しい声が聞こえたからね。クロコに言われた通り、しっかり伝えようと思って」
「ク、クロコちゃんに……!?(あの子、余計なことを――っ!)」 ホシノの顔面は、熟しきったトマトのように真っ赤に染まる。
しかし、先生の「実践」はここで止まらなかった。 「いやぁ、本当だ。普段の『おじさん』なホシノも親しみやすくて素敵だけど、そうやって背筋を伸ばして『私』と言っている君は、一人の女性として本当に……なんて言うか、目が離せないくらい可愛いよ」
「っ…………~~~~~~っ!!/////」 ホシノの頭頂部から、シュゥゥゥ……と蒸気が出る幻覚が見えるほどの限界突破。
そこに、聞き捨てならない言葉を聞きつけた「野次馬軍団」が雪崩れ込んできた。
「ちょっと! 今、先生がホシノ先輩に『一人の女性として目が離せない』って言わなかった!?」 セリカが叫び、ユメ先輩が「あらあらあらあら〜〜!✨」と拍手しながら入ってくる。
「ん。先生。……タイミングが極端。直球すぎて先輩が死んじゃう」 クロコが呆れたように、けれど自分のアドバイスの威力が想像以上だったことに少し満足げに呟く。
「ホシノ先輩、息をしてください! 心停止しちゃいます!」 アヤネが血圧計を持って駆け寄るが、ホシノは完全に意識が半分飛んでおり、先生に手を握られたままガクガクと震えている。
「えっ? あれ、私、何か変なことを言ったかな?」 先生は不思議そうに首を傾げた。 「クロコに言われた通り、ホシノが『私』って言ったから、精一杯の褒め言葉を贈ったつもりなんだけど……」
「先生ー。そういうのは、もっとムードがある時に言うものだよー?」 ユメ先輩がクスクス笑いながら先生の肩を叩く。 「でも、おかげでホシノちゃんの『私』呼び、今日でまた封印されちゃうかもね♪」
「あ……あぅ……あ…………」 ホシノはようやく震える唇を動かすと、魂の抜けたような声で絞り出した。
「……お、おじさん……もう……砂漠の砂になりたい…………」
「あはは! ほら、またおじさんに戻っちゃった!」 賑やかな笑い声が部室に響き渡る。
先生の「教育的配慮(という名の天然タラシ)」と、ホシノの「乙女心」。 二人の距離が本当に縮まるまでには、まだまだアビドスの愉快な仲間たちの協力(と邪魔)が必要なようだった。