もしユメ先輩が居なくなった直後のホシノが現代のアビドスに来たら 作:気弱
砂漠に照りつける太陽が少しだけ和らいだ、静かな午後。アビドス高等学校の屋上では、ホシノがいつものように「うへ〜……」と微かな寝息を漏らしながら、心地よい昼寝を貪っていた。
その頃、部室に残った対策委員会の面々は、午後のパトロールに向けた準備を淡々と進めていた。カチャカチャと銃器を整備する金属音だけが響く中、不意に、シロコがその手を止めて口を開いた。
「ん。……私、気づいたことがある」
その声があまりに真剣だったため、ユメ先輩が不思議そうに首をかしげる。
「どうしたの? シロコちゃん。急に神妙な顔をして」
「ん。ホシノ先輩の、隠された『嗜好』について」
シロコの鋭い視線が、室内にいた三人の人物を正確に射抜いた。「……クロコ。ノノミ。そして、ユメ先輩」
指を差された三人は、きょとんと目を丸くする。
「シロコちゃん、私たちに何か共通点でもあるの?」
ノノミがいつものおっとりとした笑みを浮かべたが、シロコは表情一つ変えず、断崖絶壁から飛び降りるような潔さで断言した。
「ん。ホシノ先輩は……**『巨乳好き』**」
「「「…………ええええええ!?」」」
部室にセリカとアヤネの驚愕の叫びがこだました。
「ちょっと、シロコ先輩! 何を根拠にそんなこと!」
「そうですよ! 先輩がそんな、破廉恥な……いえ、露骨な基準で人を判断するなんて不謹慎です!」
「ん。根拠はある」
シロコは淡々と、まるで学会で論文を発表する学者のような口調で分析を述べ始めた。「ホシノ先輩が、普段から自分から擦り寄ったり、甘えたり、……あるいは弄ったりする相手。それは統計的に見て、決まって『胸部装甲』が厚い人物」
シロコはまず、自分と瓜二つの姿をしたクロコを見た。
「ん。同じ『私』なのに、ホシノ先輩はクロコを相手にする時、ときどき視線が泳いでる。そして、わざとらしく体格の話を逸らして銃のスペックに話題を変える。これは明らかに意識している証拠」
「……ん。言われてみれば、先輩、ときどき私の正面に立つと、じーっと見てから『はぁ……』って深い溜息をつく。……なんだか、切ない顔で」
クロコが少し照れ臭そうに、かつてより少しだけ成長した自らの胸元を、守るように押さえた。
「さらに、ノノミ。ホシノ先輩はノノミに抱きつかれる時、口では『暑苦しいよ〜、おじさん溶けちゃうよ〜』と言いながら、顔は絶対に離そうとしない。ん。あれは感触を存分に楽しんでいる。吸い込まれている」
「あら、ふふっ。私はただ、先輩が可愛いからハグしてるだけなんですけど……そんな戦略的な理由があったのかしら?」
ノノミが楽しそうに頬に手を当てるが、その豊かなボリューム感は、シロコの説を裏付けるには十分すぎる説得力を放っていた。
「そして、決定的なのはユメ先輩」
シロコが真面目な顔で、アビドス最大のボリュームを誇る生徒会長を指差した。「ホシノ先輩がユメ先輩に執着していたり、子供のように無防備に甘えたりするのは、その……『母性という名の質量』に本能で惹かれているから。間違いない」
「えぇーっ!? ホシノちゃん、私のことそんな風に見てたの!? ただの仲良しだと思ってたのに、まさか重力に負けてたなんてー!」
ユメ先輩は顔を真っ白にして、自分の豊かな胸元を隠すように抱え込んだ。
「ん。つまりホシノ先輩は、自分にない『大きさ』を本能的に求めている。いわば、救済を求めている。……だから私やセリカ、アヤネに対しては、どこか余裕がある。女子力対決で私たちがボロボロにされたのも、先輩が私たちの『薄さ』を心のどこかで侮っていたからかもしれない」
「ちょっと! それは聞き捨てならないわよ! 私だって今に見てなさいよ!」
「シロコ先輩、それは飛躍しすぎ……というか、ただの悪口です!」
セリカとアヤネが血相を変えて反論しようとした、その時だった。
「…………うへ。誰が、誰を侮ってるってー?」
部室のドアが音もなく開き、寝起きの目をこすりながらホシノが戻ってきた。
一瞬で、部室の空気は真空になったかのように凍りついた。シロコの頬を、一筋の冷や汗が伝う。
「ん? 今さっき、面白い話してたよね。……で、なんか私の『好み』の話をしてたみたいだけど。……シロコちゃん、もう一回言ってくれるかな? もちろん、さっきみたいに**ニヤニヤしながらね**」
ホシノの瞳からはハイライトが消え、底の見えない不気味な光が宿っていた。
シロコの分析が「真実」を突いていたのか、それとも「完全な言いがかり」だったのか。その答えを知る者は、その後一時間の「本気のホシノ」による愛の地獄教育(物理)を課せられたシロコの悲鳴の中に、砂塵と共に消えていったのである。
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