もしユメ先輩が居なくなった直後のホシノが現代のアビドスに来たら 作:気弱
良ければ最後の方にアンケート?のような物がありますので最後まで見て貰えると嬉しいです
1年生のホシノが2年後の自分の体に入り大切なことを学ぶ。そんな物語が始まる前日のお話
全ての始まりは3年生のホシノがいつも通りの学園生活を終え、今日も楽しい1日だったと振り返りながら眠る所から始まる
「……うへぇ…なんだか懐かしいところに来ちゃったね…」
気がつくと、ホシノの視界を支配していたのは、砂まみれのコンクリートだった。
吹き溜まった砂が、風にさらわれて足元を虚しく通り過ぎていく。 当たりを見回してすぐに、ホシノの心臓が小さく跳ねた。
――ここは、知っている。
自分がテラーとして暴れ、色彩の深淵に沈みかけたあの時。 闇の底で、ほんの短い時間だけユメ先輩と再会を果たすことができた、あの境界の場所だ。
「もしかしておじさん…気が付かないうちにまたみんなに迷惑をかけてる…?」
不安に駆られる彼女の背中に、いたずらっぽく、けれど何よりも温かな声が届く。 「ううん、大丈夫だよ。ホシノちゃんは今、自分のベットでとーっても幸せそうにスヤスヤ眠ってる最中✨」
振り返るとそこには、もう二度と会えないはずだったユメ先輩がいた
「あはは…またおじさん変な夢を見てるのかな…もうユメ先輩の事は吹っ切れたはずなのにねぇ…」
自嘲気味に呟きながら、ホシノは目元を腕で覆った。あの日、すべてに決着をつけたつもりだった自分の甘さに、喉の奥から乾いた笑いが漏れる。
「もう!ちゃんと私はここにいるよ!」
そう言うと、ユメはホシノを包み込むように抱きしめた。 幽霊ならば冷たいはずなのに。夢ならば、触れ合えるはずなんてないのに。 服越しに伝わるその温もりは、ホシノが二年間ずっと心の奥底に封じ込めてきた、陽だまりのような優しい記憶そのものだった。
「……でもユメ先輩は死んで…あの時消えましたよね…?なんでここに?」
ユメ先輩の腕の温もりに、ホシノはしばらくじっと身を預けていた。けれど、ふと我に返ったようにその体を引き離すと、照れ隠しをするように隣に並び、フェンスの先にある砂塵の空を眺めた。
テラー化して、最後に言葉を交わしたあの日。ユメ先輩は確かに光になって消えていったのを、この目で見ていたはずだ。なのになぜ、また温もりを持って目の前に現れたのだろう。
「……うへ〜。先輩、さっきの温もりは何? 霊体っていうなら、もっとこう、ひんやりしてるもんじゃないの?」
ホシノの恥ずかしさを隠すようなぶっきらぼうな問いに、ユメ先輩はフェンスに肘をつき、楽しそうに足を揺らした。
「えへへ、不思議だよね。たぶんそれは、ホシノちゃんの中に残ってる私の記憶が、一生懸命その温かさを再現しようとしてるからじゃないかな。私の実体というより、君の心が私に触れてくれてるんだよ」
そう言って先輩は、透き通るような瞳で遠くを見つめた。
「実はね、今の私はあの時ホシノちゃんの中に微かに残っちゃった、『霊体』みたいなものかな。……それで今日、ホシノちゃんを呼んだのは、私の最後のお願いを聞いてほしいからなの」
遠くを見ていたユメ先輩は、いつの間にか私の方を向いていた。
いつもの緩い表情ではない。射抜くような、真っ直ぐで真剣な眼差し。 先輩の瞳に自分の顔が映り込んでいるのが分かるほど、二人の距離が近く感じられる。
「……お願い、ですか?」
ようやく絞り出した私の言葉に、先輩は小さく頷いた。 そして、どこか遠い場所を見つめるような目で、とんでもないことを口にする。
「私の最後の神秘を使って……別の過去のホシノちゃんを、助けてあげてほしいの」
「……は?」
思わず、変な声が出た。 そんなこと、できるはずがない。一度決まった過去を、それも自分自身を救ってくれなんて、あまりに荒唐無稽で、あまりに――。
「……うへ〜。やっぱり先輩は、おじさんの想像を軽々と超えていくね」
私は深く溜息をつき、わざとらしく首を振った。 あんなに真剣な顔をしていたから、何を言い出すかと思えば。自分のことなんて後回しで、いつも突飛な理想ばかりを追いかけていた、あの頃の先輩のままだ。そんな力があるのなら最後くらい自分のために使ってもいいはずなのに
呆れ果てて、なのに胸の奥が少しだけ温かくなる。 ……やっぱり、私の大好きなユメ先輩だ。
「いいよ。先輩の頼みじゃ、おじさん断れないし。……で、具体的に何をすればいいの? おじさんの記憶でもなんでも、好きなだけ持っていきなよ」
私が肩の力を抜いてそう言うと、先輩はパッと花が咲いたような、いつもの緩い笑顔に戻った。
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意識の狭間。ホシノは、自分の精神世界に迷い込んできた「1年生の自分」を見つめていた。 尖った眼差し、こわばった表情。二年が過ぎても、その痛々しいほど孤独な姿は記憶に焼き付いている。
現実世界では先生はもちろん、後輩達ですら過去の私の信頼を勝ち取るのは難しいようだ
「起きて〜」
ホシノが声をかけると、1年の私はやっと目を覚ました。そして、私の姿を見るなり絶句する。「……私!?」と驚くあの子に、ホシノはいつもの調子で応じた。
「んーおじさんにも分からないけど夢の中かな?」
困惑する私をよそに、ホシノは「過去の私に今の私の体を貸してるって感じかな」と、現状をのんびり説明する。あの子は戻ることしか考えてなくホシノの話し方やこの状況に苛立ちを隠せないようで、「どうしたら戻れるの」と鋭く問い詰めてきた。
「それは過去の私次第かな?」 「何言って……」 「まぁまぁ安心して。さっき私も見てたけど先生なら必ず元に戻る方法を見つけてくれるからさ」
ホシノを締め上げてでも聞き出そうとする、かつての自分の危うい強さ。それを受け流しながら、ホシノは終わりの時間が近づいているのを感じた。
「そろそろ起きる時間だね」
1年生が銃に手を伸ばそうとするが、夢の主導権を持つホシノがそっとその力を抜いていく。抗うあの子に、おじさんは大きな「ヒント」を託した。
「先生やみんなを信じて。こっちで進んだ時間はあっちには影響はないみたいだから。ユメ先輩の事は一旦置いといて、貴方が本当に気づいておかないといけないことを先生やシロコちゃん達と学んできて。それが近道だよ。それじゃあ頑張ってね〜」
その言葉が届いたのかは分からないまま、1年生の私の意識は「現在」へと戻っていった。3年のホシノは一人、静かになった夢の中で「私の自慢の後輩たちなら大丈夫でしょ」と確信しながら、現在の光景を眺めた
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苦しくも最高の時間を過ごし、先生と別れたあと。 1年生のホシノの意識が、白い光に包まれていく。 「うへへ……。本当、最高の誕生日だったよ」 そういうホシノの顔は初めて見た時のような危なかしさはなかった。
次に目を開けた時、待っていたのは境界も奥行きもない白一色の空間だった。
「うへー、おつかれー。……よく頑張ったね、私」
ホシノは、1年の自分と向き合う。 「私は頑張ってません、ダメダメだった私に後輩や先生達が気づかせてくれただけですから」と 自嘲する私に、ホシノは優しく微笑み、二年の歳月をかけて辿り着いた『奇跡』を説いた。そして、自分の額を1年生の私の額にコツンと合わせ、一生届かなかったあの場所の「地図」を託す。
「行ってきなよ、1年生の私。……この歴史の事は、おじさんがちゃんと引き受けてあげるからさ」 「……任せて、私」
1年生のホシノは、時を遡る奔流へと飛び込んでいった。
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過去の私を送り出し、静かになった白い空間。ホシノの背後に、柔らかな気配が立つ。
「ホシノちゃん、お疲れ様!大成功だね」 「……ユメ先輩。これで、良かったんですよね?」
ユメ先輩は満足そうに微笑む。この世界の「現在」が変わることはなくても、別の世界線で自分たちが幸せに過ごせる未来を作れた。その事実に、先輩の姿はゆっくりと光に溶け、消えていく。
「さようなら、ユメ先輩。……違う世界の私を、よろしくね」
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翌朝。アビドスの校舎に爽やかな朝陽が差し込む。 部室の扉を開けると、そこにはいつもの賑やかな後輩たちの姿があった。
「あ、ホシノ先輩! おはようございます!」 「ん、先輩。おはよ」「ホシノ先輩〜髪はちゃんとセットしないとダメですよー?」「ホシノ先輩!今日こそ真面目に会議してよね!」
セリカやシロコ達の声に、ホシノはおじさんらしい、穏やかで晴れやかな笑みを浮かべた。
「うへへ、みんなおはよ〜。……今日もいい天気だね」
ポケットの中のクジラのキーホルダーが、チリンと小さく音を立てた。 書き換えられた「あの日」の先で笑う自分たちの姿を、確信しながら。
閲覧ありがとうございます!!これにて話数は短いですが完結となります!
しかし自分の中ではもっと過去ホシノやユメが現在のアビドスと絡んで欲しい気持ちがあったりするんですよね…そこでコメントなどで過去ホシノにこんな事を体験して欲しいなどがあれば番外編で書きたいと思っているので気軽にコメントして貰えると助かります!
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