まじサラマンヴィーネ様女神!
ホテル『
醸し出す雰囲気から内装、更には使用するベッドの硬さまで多種多用に選択できるお客のニーズを最大限に答えた不可能を可能にするホテル
その人気は、不能なお年寄りから不能な子供まで幅広く、100年経っても子作りを!と言う馬鹿げキャッチフレーズを掲げるラブホテル………と言うのが俺の前世の記憶にある知識だ
昔の俺は、100年も経営してねぇだろ!とあざ笑っていたのをよく覚えているが……馬鹿にしていた事を謝罪したい
外装は崩れているが室内は当時のまま最高な状態を保った不可能を可能にしたホテルに少女を連れ込み、倒した機体から採取したデータを確認していく
「パラメイル、いや龍神器と言うべきか?……従来のパラメイルを上回る性能、どちらかと言うとブラック・サレナ、いやブラック・サレナ以上のポテンシャルを誇っているが、OSがボロボロだ。このOSであれだけの戦闘が出来るって……化け物か、こいつ?」
視線を動かした先には、先程まで戦闘を行っていた機体の操縦士である少女が、両手足を縄で縛り拘束した状態で寝かされている。……しかし、視線は直ぐに背中と尻へと向いてしまう
「翼と尻尾……確かに化け物だったな」
煙管を吹かしながら彼女の持ち物だと思われる刀に手をかけた。鋭く研がれた刃は俺の顔を写し出すほど、綺麗な刃をしていた
「装備品は、直刃の刀。服装は、巫女服の面影がある。………これでコイツが日本人なら俺はデミウルダスの趣向を疑う事になりそうだ」
上司になる予定の悪魔が、実はコスプレフェチで世界を救った後、崩し巫女服を広めたと思うと頭を抱えてしまう……だったら、全裸の方がデミウルダスのセンスを疑わなくてすんだかもしれん
「……どちらにせよ、彼女が目を覚ましてからだな」
再び視線を送ると、呻き声をあげながら目をあける少女と視線が重なるのであった
◆
クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~
第12話 黒百合と龍巫女
◆
「こ、ここは……ッ!これは!………そう、ですか」
目を覚ました少女は自分の置かれている現状を瞬時に把握し、解放するように騒ぐ事無く、俺に鋭い視線だけを送りつけてきた
騒ぐ様であれば尻尾を切り落としてやろうと思っていたが、コイツ……
「……察しがついたか?」
「えぇ、私は貴方に敗れ、現地人である私を情報収集の対象にする為に捕虜にした。……違いますか?」
「……ッチ」
思った通り、頭の回転が速い奴。……直ぐに殺さず捕虜にした理由も察しがつき、その後の処遇も感づいている……先手を取られてしまった
いっその事、喚いてくれていた方が、脅しが効いて事を運び易かったと言うのに、自分の処遇を悟って覚悟を決めたモノほど真実を偽る可能性が大きくなってしまう
それに、解せない事もある……
自分の処遇が判っていると言うのにコイツの眼は『諦め』を感じられない。死中であっても『生』に縋り付き、隙あらば俺の首元に噛みつき道連れにしようと思っている眼だ。
こんな眼をする奴が安々と『死』を受け入れるモノなのか?
彼女が、『死』を恐れていない理由。それは―――
「…救援は無駄だ。大方、仲間の二機に救援要請を自動発信できる装置でも発動したのだろう?……貴様の機体はここから500km移動した場所へ捨ててきた。」
「なっ!?」
「貴様がドラゴンを使役する事は知っている。取りに行かせようにも貴様の機体のエネルギーは全て、俺の機体に移させて貰った。ドラゴンが補給できるとは思えない、本拠地で補給を行う、又は仲間の二機にエネルギーを分けてもらう手もあるが……」
「……」
「時間がかかるのは明白。尋問には困らない」
表情も変えたのは最初だけ、此方の脅しにも動じない、下手に口を開いて隙を見せる事はしない。それどころか、俺の質疑から此方の意図を読み取り、逆に優位に立とうとしている………侮れない。だが、ポーカーフェイスは常にしていなくては効力無いぞ
一向に口を開こうとしない少女に、俺はタメ息をつきながら、懐から煙管を取り出した。
「……吸っても?」
「………」
俺の質問に無言のまま、眼を細める。……喫煙者は嫌いか?
肺に取り込んだ煙を大きく吐きだし、少女を見据えるが眉を顰めたまま……これでは埒がいかない
「ふぅ、俺はツキト……貴様は?」
「…………ッ!」
いまだに黙秘を続ける少女に対して俺は刀を振り抜いた
太刀筋は、彼女の首元を掠め切り、薄らと赤い線を作り出す
「沈黙は『死』だ」
「………」
驚きで目を見開いていた彼女であったが、覚悟を決めたのか眼を閉じ首を差し出してきた
情報を与えて『仲間』を危険に曝さすより、『死』を選ぶとは恐れ入った
「……死ね」
「……」
一向に口を開こうとしない彼女の意思に答えるが如く――――彼女を拘束する紐を断ち切った
「俺の負けだ」
「半信半疑でしたが……どうやら私の思った通りの人でした」
「アキト・ミルキーウェイだ、今度から俺を信じるな」
「サラマンヴィーネと申します。そのようにしますね」
俺達は、先程の殺伐とした雰囲気が嘘だった可の様に握手を交わした
俺が、サラマンヴィーネを殺すメリットは無い。あるとすれば『贄』を一人捧げるだけ大きなメリットにはならない。それよりデメリットの方が大きくなってしまう
彼女が唯一、表情を変えたのは『機体』と言う言葉のみ。あとは、憎悪や驚きを露わにするだけで表向きの表情しか俺に向けてこなかった
そこから察するに、あの『機体』は彼女達にとって大切なモノ、壊されてはならないモノと言う事がわかり、その重要な機体の操縦者であるサラマンヴィーネは有益な乗り手、もしくは地位の高い人物だと察しがつく
そんな人物を殺してしまったら、彼女の仲間全てから敵に見られる可能性が浮き出る
彼女の所属している組織がどの程度の規模か不明だが、ドラゴンと言う強力な生物を使役しているだけでも脅威だ
多少、強引になってしまったが、『脅し』で揺さぶり彼女の勢力を計ろうと仕掛けたが、サラマンヴィーネは俺の更に上を読んでいた
俺が拘束した理由が、情報を得る事だと早い内から察していた彼女は、あえて俺の要求を無視し俺を焦らせ、俺から歩み寄ってくる事を態度で要求してきた
一歩間違えたら、自分の首が飛ぶかもしれない状況だと言うのに、俺の言動から無益の殺傷はしないと判断し、逆に煽って俺が折れる様に差し向けて来たのだ
………首が飛んだ時の保険はかけていたと思うけどな
「まずは謝罪しよう。偽名や拘束、更には傷をつけた事に対して」
「構いません。貴方は何も知らないのですから、あのような行動をとるのは当然です」
「…そう、言って貰えると助かるが言い方が癪に触る」
「貴方は、無抵抗な同胞を殺そうとしました。…と言えばよろしいでしょうか?」
「その事に対して謝罪はしない。ドラゴンは敵だ、殺すべき存在であり俺の糧になる」
敵と言う言葉に眉を顰めたが、直ぐに思考面になり、手を顎に添え怪しむように俺を見つめてきた
「ならば貴方は偽りの民なのですね?…いえ、匂いがどこか違うような」
「偽りの民があの時代の住人を示すなら俺は、偽りの民だ。……が、少し特殊な生い立ちをしている」
「特殊……そうですか……」
ある程度、歩み寄らなければ情報を流してくれないと感じてはいるのはお互い様だが、デミウルダスとの契約の事まで話す気はない
むしろ、話したからといって信じて貰えるとは思えない
「サラマンディーネ」
「はい」
「俺は、この地域を散策したが、人の気配も動物の気配も感じなかった。それは何故だ?この地に暮らしていた人や動物は、みんなドラゴンの餌となったのか?」
俺が、何を質問するか判っていたかの如く、サラマンヴィーネは事前に用意していた説明文を読み上げる様に口を開いた
「違います。そもそも、ドラゴンとは未知の生物ではなく汚染された環境に耐えられる様に遺伝子を自ら操作して産まれた人間なのです」
やはり、ドラゴンは人間であったか……
『アルゼナル』やゾーラの反応、それにブラック・サレナの『贄』のスコアから薄々気づいてはいたが、明確な証拠がなかったし特に俺の行動に支障が出ないから放っておいたが……やっと喉に刺さった魚の骨が取れた気分だ
「環境に耐えられる……川も大地も汚染されている様には見えないが?」
「それは『アウラ』を始め、私達が世界を浄化しているからです」
「……『アウラ』?」
俺の疑問に対しサラマンヴィーネは、ベッドから抜け出し窓から外を眺めながら語り出す
「昔話をしましょう……当時、世界は深刻なエネルギー問題を抱えており、いつ争いが起きてもおかしくない状況でした。しかし、22世紀末に新たに発見された強力なエネルギーによって事態は一変しました。超対称性粒子『ドラゴニウム』」
「『ドラゴニウム』だと?」
ドラゴニウムは覚えがある
原子番号34番、ネオ元素記号Drのネオ元素であり、ニラニウムの中に入れると、泡を出して溶ける。体内に入ると有毒だが、触ったりしただけでは特に害は及ばないが、水素の飛沫が多く気流の激しいところでは人体に害を及ぼす可能性があるネオ元素だ
比較的に新しい元素ではあるが、エネルギー問題を解決するような元素では無かった筈だ
「ご存じなのですか?」
俺の表情を見て首を傾げるサラマンヴィーネ
彼女の知っている『ドラゴニウム』が俺の知っている『ドラゴニウム』と同じであれば、俺の驚愕を理解できるはずだ
それが疑問として帰ってくると言う事は、俺の知っている『ドラゴニウム』とは全くの別物として考えた方がいいだろう
「いや、知らない。続けてくれ」
「?……『ドラゴニウム』の発見は世界のエネルギー問題を解決したかに思えましたが、強すぎる力は直ぐに兵器に運用され世界の崩壊を進めたに過ぎませんでした」
よくある話だ
生活基準を上げる為に開発されたモノが兵器に運用されるなど昔から行われていた事……いまさら驚く事ではない
「戦争により大地は汚染され、世界は崩壊しました。……残された人間は環境に耐えられるドラゴンに姿を変え、汚染の原因となった『ドラゴニウム』を体内で浄化、長い年月をかけて今の環境まで元に戻してきました」
「一度、崩壊した自然環境を元に戻すのに500年は必要だったと言う事か……」
「はい」
『ドラゴニウム』は俺の知る元素とは別物であり、世界崩壊の原因になったエネルギー
ドラゴンは、汚染物質を含む植物などを体内で浄化する役割を持った人間
そこから導き出されるのは……
「…アウラとは、ドラゴンの祖龍。それも強力な力を持つドラゴンか?」
「ッ!?」
俺の言葉に今度は、彼女の方が驚きを露わにした
「驚く事はない、貴様から『アウラ』を敬う意思を感じられた。それなりの地位に就くオマエが敬う。そして汚染浄化にも一役かっていると考えれば容易に想像できる」
俺の推測が正しければ『ドラゴニウム』の浄化を担当しているのは大型種のドラゴンであり、『アウラ』も大型種だと断定できる。そして今までの経験から大型種は強力なエネルギー元素である『ドラゴニウム』を体内に宿している為、捧げた『贄』のコストが高かったのだ
「驚きました。そこまで考えているとは……」
「お世辞はいい。………『アウラ』が今、どこにいる?」
そして中型種で50を稼ぐ事ができ、大型種で100を稼ぐ事の出来る『ドラゴニウム』を体内に宿したドラゴン、ならば祖龍である『アウラ』はどれほどの価値があるのかが気になった
もし、大きな価値を生むのであれば俺は『アウラ』を……殺す
殺意を押さえながら、期待の眼差しをサラマンヴィーネに送るが、返ってきた答えは俺の期待を裏切るモノであった
「『アウラ』は、この世界にはいません」
「そう、か……」
落胆を隠せず肩を下げる俺に、新たな衝撃が走った
「『アウラ』はエンブリヲ……偽りの世界を作った創造主によって連れ去られました」
「……は?」
「聞こえませんでしたか?エンブリヲは、貴方の世界の力『マナ』を作り出す為に私達から『アウラ』を奪いました」
「………ブレイクタイムを要求する」
俺は思わず頭を抱え込んだ
世界を創る?『マナ』の力は『アウラ』の力?エンブリヲ?
サラマンヴィーネの話によると世界が二つあるように感じられる、いや実際にあるんだろう。
俺はドラゴンが、異世界から召喚されていると思っていた。そして、ココに訪れてドラゴンは過去の地球から未来へ召喚された存在だと考え方を変えたが……彼女の話によると新たな世界を創る為に、エンブリヲがここから『アウラ』を連れ去ったと言っていた………ならば、ここが本来の地球であり、俺が住んでいた星は、エンブリヲが作り出した世界。ドラゴンは侵略者ではなく、新しい星の誕生の犠牲になった『アウラ』を取り戻しに来ているだけ?
俺は、大きくタメ息をつき、もはや灰だけになってしまった煙管に新しい葉と火を入れ、煙を肺に満たす
「……世界は二つあり、ドラゴン達が世界に侵略してくるのはアウラ奪還の為、だな?」
「そう取ってもらって構いません」
サラマンディーネが、肯定した事により俺はいっそうタメ息をついた
知りたかった情報は得られた。いや、知り過ぎたと言う所まで知ってしまった
誰が世界創生の秘密まで知る事が出来ると思うだろうか?……俺はドラゴンと現在地の情報だけ得る事が出来ればいいと思っていただけなのに……
「貴方の知りたい事は知れましたか?」
「あぁ、満足だ……」
「では私からも質問して構いませんね?」
「出来る範囲でなら」
手に入れた情報の大きさに圧倒され気が緩んでいた。まさか、サラマンヴィーネから俺の存在を見破る程の質問がされるとは思ってもいなかっただけに肺の煙を全て出し、せき込んでしまった
「では………貴方は何者ですか?」
「ゴホッゴホッ……人間だが?」
「いえ、違いますね。貴方からは
「……なにが言いたい」
俺は、銃口をサラマンディーネに向けた
俺の目的の妨げになる様であれば、メリットデメリットなど知らない。即刻、危険分子と判断し排除するまでだ
しかし、銃口を向けられていると言うのにサラマンディーネは笑みを浮かべていた
「そう警戒しないでください。だからと言って貴方を殺そうとはしません。私は、いえ私達は貴方に力を貸して貰いたいだけなのです」
俺は、自然と銃を降ろしていた
あの時の顔は、おそらく安堵の表情を浮かべていたのかもしれない
◆
「どちらへ、向かうのですか?」
「黙ってついて来い」
翌日の早朝、俺はサラマンディーネを連れたって拠点にしていたホテル『
あの夜、思いも掛けないサラマンディーネからの共闘の提案に驚き、何も言わずに部屋を出て行ってしまった為、逃亡の可能性を配慮していなかった。最悪、仲間を呼ばれて戦闘になると構えていたが、彼女は何事も無かったかのようにベッドで寝ており、逃亡する気などなかった事が窺えた……まぁ、寝顔がどうとかで殴られたのは納得いかないがな?
「ここだ」
「……ビル?」
俺が足を止めた先には、三階建ての幅広のビル。
なんの変哲もない周りのビルと同じ廃墟ビルに彼女は不思議そうに首を傾げるが、俺が指を鳴らすと廃墟ビルは揺らぎ、漆黒の機体と紅の期待が姿を現した
「焔龍號!?……この場には無いのではなかったのですか?」
「貴様と同じだ。本当の事と嘘を交えた方が信憑性はでる」
「……なんのことでしょう?」
「白々しい」
貴様が本当の情報も嘘の情報も俺に言っている事などお見通しだ
俺は、白を切るサラマンディーネの横を通り過ぎると焔龍號にプラグを接続し、OSを立ち上げた
「四肢の念の為に破壊したが修復は容易だろう。しかし、OSがボロボロだ。……運動性や反応速度に支障が出ている。コンマ3で誤差が出ていると思うが……どうだ?」
「………どういう意味ですか?」
ふむ、この場合の『意味』とは俺の質問ではなく、俺の行動に対する答えか……
俺はタイピングを止める事無く、流れる画面を見ながら答えた
「昨日の質問の答えだ……共闘はしない。だが、目的が同じだった」
「でも、協力する意思があると?……判りました、ですが、その目的を聞かせてもらっても?些か貴方の行動が読めない事があります」
「世界を壊す。それに一番近い道がアウラの奪還だと結論を出した」
「本当の事と嘘を交えた方が信憑性はでる……貴方が先程、言っていた言葉ですね?」
「……」
……本当に頭の回転が速い奴だ、とてもやり難い
俺は、タイピングする手を止めて煙管を取り出し火を入れた。……少しでもニコチンを体の中に入れなければボロが出そうで怖かった。なにより羞恥心が思いが浮き出てしまいそうでならなかったから……
「………幼馴染を助ける為だ。」
「……なんと?」
「幼馴染を助ける為だ。……アイツは『ノーマ』と言う事だけで、世界から拒絶された。いくら『ノーマ』の扱いを良くしたって本当の意味で受け要られる事はないだろう……なら、世界を破壊し、『ノーマ』でも差別されない世界を作った方がアイツを助けられると思ったまでさ」
聞き返されて頬を真っ赤に染めたと言うのにサラマンディーネは更なる爆弾を投下してきた、
「その幼馴染は……貴方のツガイですか?」
「ぶっ!?」
サラマンディーネの言い方に吹き出してしまった俺はどう考えても悪くない。何処をどう考えたら幼馴染を『ツガイ』として考えるんだ
俺の行動が読めないと言うが、俺にとってお前の言動の方が読めない!
「……幼馴染だ。それ以上もそれ以下も無い」
「ふふふ、貴方の意思は判りました。ですが…貴方に焔龍號を弄れるほどの知識があるとは思えないのですが?」
絶対に判っていないな?さっきから微笑ましいですよ?と言う表情を浮かべていやがる
そして、俺を舐めるな!博士から叩き込まれた技術は何も戦闘技術だけではない事を教えてやろう!
「それこそ要らぬ世話だ。俺は『ヴィルキスの甲冑師』だ……名だけのな」
「……ヴィルキス」
「なんだ?」
「なんでもありません。……私も手を貸します、焔龍號は私の機体ですから」
俺に聞かれていまいと整備を手伝うと言う彼女であるが、俺はしっかりと聞こえていた
『ヴィルキス』―――
マナ世界の機動兵器であるパラメイルを何故、旧世界出身の貴様が知っているかは知らんが、関わりがあるのは間違いない
そもそも、彼女は俺に伝えていない事が多い。
伝える必要がない、義務が無い事も理解しているが、共闘する意思を見せたのだ。
もう少し、情報を提供してほしかったモノだな……
それは、今度期待するとして俺は、サラマンディーネと共に作業に移る
スラスター熱量分散配賦、反応プログラムの構築、脚部運動性気圧など次々と構成・再構築していくが、、僅かな作業で判明した事がある………サラマンディーネ、マジで天才
プログラムの構成は勿論、作業の速さ、応用力、そしてプログラムに隠された意図を読み取るのが途轍もなく上手かった……柔軟性がないのが些か欠点ではあるが、それを補う程の力量を感じ取られた
もはや、主導権は彼女に移りつつあり、俺は主導権を取られまいと必死に手を動かした
競うように作業を進み、気付けば二人して飲食もせずに作業に没頭した結果、太陽は沈みかかり、辺りをオレンジ色に染め上げていた
「これで…終わりです。アキト、貴方は?」
「此方も軌道修正は終了した。後で確認してくれ」
結果、主導権は完璧にサラマンディーネに握られてしまいましたまる
『甲冑師』の名を継ぎながら、この有様に俺は子供みたいに皮肉を言う事にした。決して悔しかった訳ではない
「俺が手伝わなくても貴様一人で組み上げられてだろうな?……
「そうですね、感謝します、アキト。貴方のおかげで焔龍號は更に強くなりました」
やべぇ、皮肉が通じない!?むしろ、感謝の言葉まで言われてしまった!?
「……俺を信用するなと言った筈だ」
「幼馴染を思う貴方に信頼したまでです」
ぐっ!これはデジャブを感じる!ヒルダちゃんと言い争いが起きた時と似ている!?
どう切り替えしても覆せない一方的な信頼と言う名前の暴力であり、パワーバランスを崩壊させる言い包み!このままだと、全てを話してしまいそうで、後ずさりしてしまうが、ブラック・サレナから敵の接近を知らせる警戒音が鳴り響き、その場から離脱する事が出来た
画面には、二つの熱源が高速で此方へ向かって来ている
「……蒼龍號に碧龍號。どうやらお迎えのようだな?」
「そうですか……アキト、今宵は我が館にお越しください、歓迎します」
ドラゴンが住む街に興味がないと言えば嘘になるが、ブラック・サレナのエネルギー残量を確認するに普通の跳躍をするには問題がない程には、回復はしていた
「遠慮する。俺は貴様達の仲間を殺した言わば殺人鬼だ。…俺が行くと厄介事が起る」
「確かに貴方の行った行為は、仲間を傷つけるモノでしたが、人間は許す事の出来る生き物です。これからを見据えてください」
「これから、か……」
サラマンディーネの懐の深さには感服するが、別に俺は許しをこいている訳ではない
むしろ、真実を知りながらも『アウラ』をエンブリヲから奪還するのではなく、殺す為に協力すると言っているのだ。
………とてもではないが、許しを得られるとは思えない
俺は、何も言わずにブラック・サレナに乗り込んだ。サラマンディーネも俺の行動が答えだと理解し何も言わずにこちらを見つめている
………俺が支払ったモノは機体の整備の手伝い、彼女が支払ったモノは世界の真実。なんとも釣合の合わない等価交換だ。ならば、此方は、もう少し支払う義務があるよな?
「……サラマンディーネ、俺が何者か知りかがっていたな?」
「?」
閉じかかっていたブラック・サレナのハッチから顔を出し、サラマンディーネに問いかける。案の定、彼女は突然の俺の問に不思議そうに首を傾けた
「俺は…………お前達の先祖であり、悪魔の使徒だ」
「……え?」
俺の言葉を聞いて驚き顔を浮かべるサラマンディーネを尻目に俺は、一回の跳躍に必要なエネルギー以上のエネルギーをシステムに注ぎ込み、強く目的地であるマナ世界を思い浮べながら―――――――跳躍した
残された彼女はただただ、虚空へと消えた漆黒の機体があった場所を眺めるのであった
「サラマンディーネ様、ご無事で!?」
「えぇ、怪我も穢される事もありませんでした」
「うわぁ!焔龍號が!」
「四肢の関節部を破壊したと言っていました。修理は容易にできるとも」
「……サラマンディーネ様、落ち着いていられますね?」
「えぇ、かの者は、優しい悪魔でしたから」
「「……優しい悪魔?」」
次回!テロリストVSエロリスト