録画も失敗した!?
アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ-――
身体情報は、身長約5.4フィート。センチ計算で凡そ164㎝、体重は未公開
ミスルギ皇国の元第一皇であり、鳳凰院に席を置く16歳。洗礼の儀の際、『ノーマ』だと発覚し、周囲から掌を返される形で立場は急転落し、『アルゼナル』に送還される。
その後の詳細は不明だが、彼女が『パラメイル』に搭乗している事から送還されて数か月の間、ドラゴンとの死闘を繰り返し今まで生き残る
現在の彼女は、当時長かった髪を短く切り落とし『アルゼナル』の生活が堪えているのか体重も落ちているかに見て取れた………補足事項なし
「…ミスティお嬢様に報告したら大喜びしそうな情報だが、俺にとっては何の価値もない」
改めて保護してしまった少女の情報を整理してみたが、真新しい情報が全くない古い情報しか浮かび上がってこなかった
………情報を多く仕入れたい俺としては、生きた情報を得る為に、尋問するか拷問するかの選択を取りたい所だが、タスクが許してくれないだろう
直接、彼女から聞き出す手もあるが、デメリットが大きい
偽名と素顔で接触していたとは言え、フロリア学園エアリア部のマネージャーとして俺の事を覚えていた場合、俺がココにいるのは不自然であり、『黒百合の悪魔』としての俺を知っていた場合、『アルゼナル』に情報が洩れ今後の行動に支障がでる
上手く行けば『アルゼナル』の情報、如いてはヒルダちゃんの情報を得る事ができるかもしれない
が、ここは無闇に動かない方が得策と判断できる
「なにを考えているんだい、アキト?」
先程、俺が狩ってきた海蛇を調理するタスクが不思議そうに尋ねてくる
もはや慣れた手つきで調理をする姿から海蛇の調理は初めてではないのだな
「今後の行動についてだ。彼女に俺の正体を知られるのはマズイと思う」
「ん~、そうかな?」
俺の答えを聞いてタスクは、手を止めて首を傾げた
………どうでもいいが、その仕草は男がやったら気持ち悪いぞ?
「何がおかしい……それと手を動かせ、焦げるぞ」
「あ、ごめん。別に彼女に君の正体がばれても問題ないんじゃないかな?」
「……なに?」
タスクの答えは俺が、アンジュリーゼと接触するのに肯定的だった為、思わず眉間に皺を寄せてしまった
「アキトは、潜伏先の正体バレを気にしているんだろ?……この子は『ノーマ』だから『アルゼナル』から出る事ができない。それにテロリストとしてバレても『アルゼナル』が動くとは考え難いよ…アキトは、『ヴィルキスの甲冑師』でもあるし尚更、手を出してこないと思うよ」
開いた口が塞がらないとはこの事だった。
どうにもアンジュリーゼが『アルゼナル』から出てくるのではと警戒していたが、そもそも『アルゼナル』は脱走困難な要塞であり、脱走するにも『パラメイル』が必要だ
昔の事例もあるし警戒は強化され、更に脱出が困難になっていると思われる
……そんな要塞を世間知らずな元皇女が脱出できるのか?
答えは、限りなくゼロに等しい
「簡単な事を見落としていた………が、ゾーラは嬉々揚揚と仕掛けてきたがな」
「アキトは、難しく考えすぎたよ」
「警戒していると言ってくれ」
ゾーラの件はタスクに聞こえないように呟いたが、まさか、弟分に教えられるとは……俺もまだまだ精進が足りないようだな
「うぅ…う~ん…」
「彼女が起きたみたいだ」
「そのようだな」
気の張り過ぎは些細な事を見落とす……今後、そのような事が無い事を心懸けようと決心し一命をとり遂げた眠り姫の目覚めを横目に俺は森の中へ姿を消したのであった
◆
クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~
第十五話 黒百合と少年と少女
◆
タスクは、ああ言っていたがゾーラを始め第一中隊は俺に好戦的な姿勢を取って来ていた事実は、司令官であるジルから捕獲もしくは撃破の命令がくだっていたと推測でき、アンジュリーゼが第一中隊に所属している可能性も考え俺は姿を現さない方が良いと判断した
タスクは、いきなり姿を消した俺をアンジュリーゼの相手をしながら探しているが、余所見をする度にアンジュリーゼに指摘されている事が窺える
……遠くから観察するのもいいが、なにか味気ない。
ここは、タスクに仕掛けて置いた盗聴器で話を盗聴する事にしよう
そっと耳にスピーカーを当て二人の会話に耳を傾ける。そして第一声は……
『痛あああああああああああ!!?』
「ッ!?」
弟分の悲鳴だとは誰が予想できるであろうか?予想外な音量に鼓膜が刺激され耳鳴りが、引き起こる。
一体、何が起きたのかと双眼鏡で除いてみると………アンジュリーゼがタスクの鼻に噛み付いていた
…………なぜコイツ等はイチャついているのだ?
出会って間もないと言うのに、甘噛みされるほどの仲になるとかどういう展開ですか?ラブコメですか?このヤロー……
その後、観察するのも嫌になるほど、二人はイチャイチャし俺の精神ダメージをごっそりと削っていった
俺は、そっと盗聴器の電源をOFFにしブラック・サレナの元へと向かったのであった
ここから数日はダイジェストで観察の結果を語ろう…決して二人のラブコメに嫌気がさした訳ではない
アンジュリーゼ漂流一日目
タスクが『ヴィルキス』の修復し始める
『甲冑師』として手を貸してほしいと依頼されたが、断固拒否した。誰が下着を機体に入れる馬鹿の『パラメイル』を修復するモノか……
その後、アンジュリーゼも合流し機体修復を手伝っていた。と言ってもタスクが指名した工具を手渡す程度である為、彼女には『ヴィルキス』や『パラメイル』の知識がない事が窺えた
その夜、タスクは、木に縛り付けられ寝床を奪われていた。……まことに哀れだ
アンジュリーゼ漂流二日目
機体の修復は午後に回し、二人は食材調達の為に釣りに出かけていた
傍から見ればデートを満喫しているカップルにしか感じられない、アンジュリーゼの様子を見るからにサバイバル知識は皆無の様に感じられた
元皇族と言う事もあり、自然から食材を調達する事にたいする知識がないのだろう
その夜、タスクは、彼女の信頼を勝ち取ったのかカーテンで仕切られていたが、同じ場所に寝袋で寝る事を許されていた………ベッドは取られたままであった
アンジュリーゼ漂流三日目
アンジュリーゼが朝からダークマターを作り上げていた。あれは毒物いや爆破物なのだろう。現に小規模な爆発が引き起こっていた。
被害者はアンジュリーゼ。作成者が被害に遭うとは間抜けな話だが、原因はタスクにあり、誤爆した際にタスクはアンジュリーゼに抱き付き、転倒。……彼女の股間に顔を埋めたのだ
裁判の天秤にかけ、爆破物を作った彼女より女性の秘部に顔を埋めたタスクの方が罪は重いと判断する。刑罰は………アンジュリーゼに発砲されていたから無しでいいだろう
だが、硝煙の臭いを落とす為、水浴びをするタスクの姿に顔を赤める彼女を見ると満更でもないのかと疑いたくなる
アンジュリーゼ漂流四日目
朝から雨が降りだし、剥き出しとなった『ヴィルキス』の内部伝達路に水が入るのを危惧し朝から作業を行う
蕗を傘替わりにするアンジュリーゼに風流が判っているな?と好感度を上げるが、マイナスからゼロになっただけで手を貸そうとは思えない
だが、疲れて作業中に眠りについたタスクに毛布を掛ける姿を見て考えを「わかっているのよ!出てきなさい!」………評価を改める必要があると判断した
どこに潜伏しているのかはわからない。だが、俺の存在は感じている………タスクと違い警戒心は強いようだ
俺は、双眼鏡を懐にしまい、木の上から降りるとアンジュリーゼの元へと足を向けたのであった
◆
俺が姿を現した瞬間に、銃を向けてくるアンジュリーゼ
引き金に指をかけ、いつでも発砲出来る体制になっているのは頂けない。相手が重要なファクターであった場合、確実に情報を聞き出せる事が出来なくなる
「………何時から気づいていた」
「私がタスクを銃で撃った時よ……森の方から変な感じがしたわ」
変な感じ、か……
確かにあの時、タスクに向い発砲するアンジュリーゼに対し殺気が漏れてしまったのは事実だが、それだけの要素で人間と判断するには材料は弱い。動物も音が響けば殺気を出す
………しかし今後の成長具合では大いに伸びる可能性がある
「その感覚を覚えて置け。それは……殺気だ」
「そう、覚えておくわ、ありがとうって言えばいいのかしら?覗き魔さん」
アンジュリーゼの返答に心外だと肩を竦めた
「俺は、覗き魔ではない。貴様を見張っていたのは怪しげな行動をとれば直ぐに殺せるように警戒していたからだ」
「……姿を現したって事は、信用してもらえたと考えてもいいのかしら?」
「昔の……皇女だった頃の貴様よりは好感は持てる」
「………私の事を知っているのね」
俺の言い分を皮肉だと感じたのか、眉間に皺を寄せて睨み付けてきた
「昔の貴様は警戒心も抱かない人を疑わない、世間知らずなお嬢様だった……皇女アンジュリーゼを暗殺する事は容易であるが、今の『ノーマ』アンジュリーゼを殺すのは難しい………それが、俺の評価だ」
暗殺と言う言葉を耳にして、更に警戒し一度下げた銃を構え直すアンジュリーゼ
「……私を殺すの?」
「殺さん。タスクが自分の道を見つける為にも貴様には生きて貰わなくてはいけない」
「……タスクの為?」
タスクの名前が出た瞬間、気が緩んだのか銃口が下がった。俺はその隙を逃さず再び森へと歩み始めた
「精々、生き残れ。アンジュリーゼ」
「あっ!ちょっと待ちなさいよ!」
そう言い残し俺は、アンジュリーゼの停止の声を無視し森の中へ姿をけしたのであった
◆
翌日、アンジュリーゼはタスクに俺について問い詰めていたが、事前にタスクに伝えた通り、俺とは最近出会って何も知らないと返していた
案の上、タスクの答えに不満があるようで今日はタスクの手伝いをする事無く森へ入って俺の捜索をしていた。……無駄な努力だ、捜索する人物に既に見張られていると言うのに
捜索は夜になり辺りが見えなくなるまで続けられた
タスクは、アンジュリーゼに労いの言葉をかけながら河原へデートを誘い、アンジュリーゼはそれを受けて一緒にデートへ向かって言った
・・・・・・・・・・俺が見ている事を忘れていないか?
星を眺める二人は、恋人同士であるように見え、盗聴器からは『星が綺麗』『君も綺麗だよ』と歯が浮くような言葉が交わしていた
……アンジュリーゼはタスクに被害を出さないと判断、俺は足早にその場を離れた
…………決して今にも行為に及ぶかも知れない二人を見たくないからと言う訳ではない
そもそも、アンジュリーゼは性格変わり過ぎだろう?
エアリアの決勝で出会った清純派皇女様がどう変わればツンデレ上等!高飛車女に変わるのであろうか?
これが『アルゼナル』に送還された事が原因なら『アルゼナル』には高飛車な女が多い事になるな
そんな女ごめんだ。と首を振るが………俺の頭に電撃が走った
あの清き礼儀正しかったアンジュリーゼが、『アルゼナル』に送られて性格が変化したと言う事は………ヒルダちゃんも性格が変化している可能性が浮かび上がってきたのだ!
あの天真爛漫で天使の様な笑みを浮かべるヒルダちゃんが、ガサツで礼儀知らず誰得?ツンデレに……いや、俺が得するから良いとして、昔の天使だったヒルダちゃんではなくなっている可能性が出て来てしまった
有り得るかもしれない、可能性に俺は膝をついた
…人の性格は変化するとは言え、11年前のイメージを守り抜いてきた俺にはダメージが大きい!いや、彼女を守ると誓いを立てた日に、どんな事があろうと彼女を守ると誓った……
河原でラブコメを繰り広げている『パラメイル』に下着をぶち込むような女と同じで常識が無い女になっていたら……俺はヒルダちゃんを受け止めてあげる事は出来るのか?
自分ひとりで生活も出来なく、料理洗濯掃除を全くしてなさそうな女を俺は受け止めてあげる事ができるのか!?……将来的に一緒に暮らす事が出来るのか!?
・・・・・・・・はっ!?
俺に再び電撃が走った
俺は、自分ひとりで生活も出来なく、料理洗濯掃除を全くしない風呂上りには下着でうろつく女と一緒に暮らしていたではないか!
むしろ、そこの女より生活出来ない女と暮らしていた俺には死角はない!
まさか、ここで博士との生活が生きてくるとは誰が想像したであろうか!?
これを見通して博士は堕落した生活を送り、俺に支える事の大切さを伝えようとしていたのではないか!?
流石博士!俺は貴女を心底尊敬します!
俺は晴れ晴れとした表情を浮かべながら、空を見上げた
「博士、答えが出たよ。俺は―ドガァァァンッ!!!――ッ!なんだ!?」
悟りを開きかけた俺の思考を壊す様に、河原の方から墜落音が鳴り響いた
音のする方へ向かうと巨大な何かが墜落した跡と、木々を倒し移動した痕跡が見て取れた
俺は、移動した物の跡を追い、森へ踏み込む
なぎ倒された木々には血液が付着し、ゲガを追っている事が窺え、更には浜辺の方から発砲音がなり響いた為、更に足を速めた
そして森を抜けた先には――――
「あぁぁぁぁぁぁ!死ね!死ね!死ねェ!!!」
「ッ!」
ドラゴンの喉元をナイフで刺し続けるアンジュリーゼがいた
俺は湧き上がる感情を抑えきれずに、ドラゴンに跨るアンジュリーゼへ向かい加速し蹴り飛ばした
返り血で砂が体に纏わりつくのも気にせずに、今度は俺にナイフの刃を向けてくる
「何をするのっ!」
「自身の欲情を満たす為に過剰殺戮を行う馬鹿を蹴り飛ばしただけだ」
「……え?」
俺の言葉に、自分の身体が火照っている事に気づいたのかアンジュリーゼは背を向け、湧き上がる闘争本能を抑え込むように両手で体を抱きしめていた
「………アキト」
「今は何も言うな………死者を伴うぞ、手を貸せ」
「あ、うん……」
いまだに、興奮を押さえつけているアンジュリーゼに背を向け、ドラゴンと向き合う
後に聞いた話だが、このドラゴンは捕獲された大型種の奪還を試みて撃退され落ちてきたそうだ
……サラマンディーネとの会席がなかったら俺もアンジュリーゼと同じく何も思わずにドラゴンを殺していただろう。だが、ドラゴンの真実や目的も知ってしまっている俺にはドラゴンを殺す事に対し抵抗を感じるようになってしまった。
殺人鬼としては失格だが……それを真実も何も知らない人間に蹂躙されている所を見て黙っていられるほど人間を捨ててはいない
残虐な殺害に会い瞳孔が開いたまま死んだ彼女の眼をそっと閉ざし、海まで連れて行き……黒百合を抱かせ水葬した
抱かせる花は、違うモノの方が良いのだが、生憎『黒百合』しか持っていない
沖へ流れていくドラゴンの死体を見送っていると既に朝日は昇りはじめ、一筋の陽光が辺りを照らしていた
「仲間を助けようとしたんだ。帰りたかったんだね。自分の世界に……」
「ドラゴンはただ、人間を喰らう化け物だと思っていたけど、仲間意識があるなんて…」
後ろからタスクとアンジュリーゼが近づいてくる
ドラゴンの事を知らない二人にして見れば化け物であるドラゴンに仲間意識があること自体が珍しい発見だと思っているのだろうが、彼らは、この世界に住む人間より美しく綺麗な心を持った人間なのだ
柄を返しブラック・サレナへ戻ろうとしたが、『ヴィルキス』から通信が漏れ出した……何時の間に修理したんだ?
『…ザザ……アンジュ…ますか?……アン……生きてますか?』
「ッ!こちらアンジュ生きています」
漏れ聞こえる声に覚えがあるのか、『ヴィルキス』の通信を開き応答するアンジュリーゼ
……どうやらお守もここで終わりの様だ
「……タスク」
「あぁ、彼女は戻るみたいだね…」
タスクの横顔は、別れの寂しさや返事を貰えていない案件で悩んでいる様には見えなく、何か決意を決めたかの様に凛々しかった
救難信号を出し終わったアンジュリーゼは、此方に戻ってくると深く息をついてから俺の方を睨み付けてきた……席を外して欲しかったらそう言えばいい。素直じゃない…
2人から離れ岩礁に腰を卸し、盗聴器の電源をONにする
……話を聞かれないようにしたかったのはわかるが、警戒心がたりないぞ?
内心ニヤ付く顔をポーカーフェイスで隠しスピーカーに耳を傾けた
『私、帰るわ。今はあそこしか、私の戻る場所はないみたいだから・・・』
『うん、お別れだね』
別れの挨拶にしては味気なさすぎる気がする。ギャラリーの為にもせめてキスとかハグとか何らかのアクションをしてほしいものだ……
だが、流石アンジュリーゼ!この滞在中に何度も俺の期待を上回る行動をとってきた彼女は、俺の期待を裏切ることなくタスクに顔を近づけた
『いいこと?私とあなたは何もなかった。何も見られてないし、何もされてないし、どこも吸われてない。全て忘れなさい!!いいわね!?』
『わ、解ったよ・・・』
…が、色気も何もない会話を聞くと、はやりアンジュリーゼは皇女で色事には疎かった事が嫌でも判ってしまう
『アンジュよ、タスク』
『良い名前だよ。またいつか・・・アンジュ』
『・・・それと、あの覗き魔は何者なの?本当は貴方、何か知っているんでしょ?私に罪悪感を持っているなら教えなさいよ!』
『えぇ!?それは…その…』
俺を放したのは、先程の羞恥心を隠す為と、俺の情報を掴む為か……
確かに俺は、アンジュリーゼに何も話しても語ってもいない、そんな奴にずっと監視されてと思うと不思議でしょうがないのだろうが……タスクに聞くのが間違っている
「俺の名は、アキト。何処にでもいるテロリストだ」
「「!?」」
その場で声を上げ、俺の正体を告げる。いつまでも覗き魔扱いはさすがに嫌だ。ここは訂正を求めよう
タスクに袖を見ろと伝え盗聴器の存在を知らせる
先程の話を聞かれていたとわかり顔を赤くさせるアンジュリーゼに背を向けながら森へと戻っていく
別れを惜しむ仲ではないし、救助隊にゾーラもしくは第一中隊が参加している可能性も考慮して俺は姿を隠す事にした
森を抜け、アンジュリーゼ……アンジュと『ヴィルキス』を回収しに来た輸送機を墓標が経つ崖から見送り一段落した事による安堵の息をこぼす
サラマンヴィーネとタスクは俺に有益な情報を与えてくれたが、アンジュは俺に有益な情報を与える所か世話をする羽目になってしまった
……この出会いが後々、俺に有益な情報を与えてくれる事を祈りながら近づいてくる足音に向って言葉を問いかける
「……お前は『ヴィルキスの騎士』になるのか?」
「ならないよ。……俺は『ヴィルキス』じゃなくて彼女の騎士でありたい。『リベルタス』とは関係なく彼女の為に戦いたい」
「そうか」
俺には有益な情報はなかったが、タスクにとってはこれからを決める大切なモノをアンジュから与えられたようだ
弟分の成長に口元が緩みそうになるが持ち前のポーカーフェイスで堪え俺は、虚空に向って指を鳴らした。すると空間は歪み中から漆黒の機体が現れた
突如、姿を現したブラック・サレナにタスクは驚いているようだが、『ヴィルキス』は乗り手が搭乗していないのに関わらず遠隔で動いた事を考えればブラック・サレナに不可能な事ではない
「………短い間であったが、有意義な時間だった」
「……行くんだね」
「あぁ、殺戮と血の世界が俺を待っているからな」
思えばローゼンブルム王国のイザコザに巻き込まれないように、距離をおいたと言うのに最初の方でしか碌なテロ活動が出来ていない事を思い出した
……別世界に飛ばされ帰還すれば無人島でサバイバル。テロ活動とは何も関係いたって普通の休暇になってしまっている。……ここは遅れを取り戻す為に帰ったら積極的に動こう
ブラック・サレナに手をかけ操縦席へ上がろうとしたが、タスクが声をかけてきた
「ま、また!会えるよね?」
ここで縁を切ってもいいのだが、『ヴィルキスの騎士』になったタスクとはドラゴン関連で接点が多くなる。それに、なにかと有能なタスクを手駒として置いておくのは今後のプラスになるかも知れない……
そう判断した俺は、ブラック・サレナから俺が開設したサイトのURLとブラック・サレナへの連絡先が書かれたディスクを取り出しタスクに投げ渡した
「何かあれば呼べ」
「あ、あぁ!」
今度こそ俺はブラック・サレナに乗り込み次元跳躍システムを起動させていく
低く唸る機械音が、ブラック・サレナが全快だと伝えてくれている様であった
「―――ジャンプ」
イメージと座標を固定しお決まりの言葉を呟き俺は、三人で貴重なサバイバル生活を過ごした無人島から姿を消したのであった
「ッ!?………アンジュにヒルダちゃんの生存安否を聞けばよかった」