クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~   作:誤字脱字

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第十七話 再会

「そうか……博士は『甲冑師の末裔』だったのか」

「うん!遠い親戚って事になるけど、私もお姉もツキヨさんに可愛がってもらった感じがするよ。あはは、私はその時は3歳であまり覚えていないけどね」

 

煙管を吹かしながら、少女から伝えられた博士の出生を頭の中で飲み込んでいく

自分の事をあまり話さない人であったが、まさか政府に捕虜され人体実験の上で生まれた『甲冑師の末裔』の子供だったとは……想像を遥かに超えた出生である

 

少女が言っている事が、嘘の可能性も捨て難いが博士と瓜二つ容姿を見てしまうと嘘だとは思えないでいた

 

「……俺にも『甲冑師の血』が流れているとは驚きだ。てっきり、博士はアレクトラに賛同し技術屋の腕を見込まれて『甲冑師』になったのだと思っていたからな」

「うん、それもあったと思うけど『甲冑師の血』が『ヴィルキス』に惹かれたんじゃないかな?非科学的だけど…」

 

技術屋としてオカルト的な迷信を認める訳ではないが、ブラックボックスの塊であるブラック・サレナに乗っている俺には信じなくてはいけない程の根拠に感じ、現に俺も『甲冑師の血』が『ヴィルキス』に惹かれてしまった結果、『アルゼナル』に足を踏み込んだと心の片隅で納得してしまっている自分自身がいる

 

「……私ね?『アルゼナル』から出た事がないから『アルゼナル』にいるみんなが家族だと思っていたんだ。だけど……外にも家族がいるって知れて嬉しいんだ」

 

眩しい程の笑顔を浮かべながら自分の思いを告げてくる少女を見ていると妹と言う存在も満更ではないと思えてしまう。いや、大いにアリだ!

 

「それでね……お兄がよければ、お兄もここに残って欲しいんだ。け、決して黒百合の悪魔として力を貸して欲しいとかじゃなくて…その……お兄が近くにいてくれたら私は嬉しいなぁ~って、思う」

 

妹のお願いを無碍にする程、人間腐っていませんよ!お兄ちゃんは!………と、人間なら言うのだろうな?しかし、俺は人間ではない

先程から『良心』と言う名の心が締め付けられる痛みに耐えながら煙を吐きだした

 

「血の繋がりがあるのは認めるが、今の俺には関係ない」

「え!ど、どうして!?」

「貴様は『ノーマ』、俺は人間……それが全てを語っているだろう」

「ッ!?」

 

彼女が、俺の力目当てで協力してほしいと言っている訳ではないのは、重々承知だがデミウルダスの使徒として呑気に世界へ喧嘩を売っている暇はない。そもそも、俺は名だけの『甲冑師』であり『リベルタス』に賛同している訳ではないのだ

 

「そう、だよね……お兄は、向こうでの生活もあるんだし我が儘言っちゃダメだよね。………私、行くね?ヴィヴィアンと約束があるんだ」

「あぁ」

 

顔を伏せながら背を向け歩きだした少女

これから年に一度の祭りに参加するのにそんな表情じゃ楽しめないだろうに……

 

「メイ」

「ッ!?………煙管?」

 

立ち去ろうとした少女を呼び止め、金色の煙管を投げ渡した。少女は、いきなり渡された煙管を不思議そうに眺めながら俺を見返した

 

「それは、博士が使っていた煙管だ。俺の宝であり見ていると博士を思い出して落ち着く」

「?」

 

いまだ不思議そうにしている少女に更に語りかける

 

「……博士を思い出したくなったら、見に来るかもしれん。例え『アルゼナル』でもな?」

「ッ!」

 

俺の考えが伝わった様で、メイは眼を大きく見開き驚きを露わにした

 

「友達が待っているのだろ?早く行け………楽しんで来い」

「うん、行ってくるね!お兄っ!今度は、ゆっくり話を聞かせてね!次元跳躍とかDFとか!」

 

先程とは打って変わって大きく手を振りながら離れていく少女を見送りながら、本人には聞こえない様に空に向かって呟くのであった

 

「妹……アリだな」

 

 

 

クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~

 

第十七話 再会

 

 

 

俺に妹属性があった新事実が発覚したせいで、思いのほか時間が立ってしまい太陽が頭の上まで昇っていた。……これ以上、護衛の仕事を放棄するのは怪しまれる

 

当初の目的であったヒルダちゃんの確認は出来なかったが、博士の出生を知れた事と俺に遠縁だが親戚、それも兄と慕ってくれる子が存在したと言う情報を得る事が出来たのは、ヒルダちゃんの確認を取る事と同等の価値がある結果だと言って過言ではないだろう

 

幸い、滞在期間はまだある。今日がダメでも明日、お嬢様が労いの言葉を告げる際に、警備と言う口実を使い捜索すれば見つけ出す事は出来るだろう

 

まだ始まったばかりだと気持ちを切り替え、お嬢様が待つ屋敷へと足を進めたが屋敷を目の前にして不可解な点が浮かび上がってきたのだ

 

………屋敷の扉が開いたままなのだ

誰か外出した際に閉め忘れたとしても部屋の前に護衛が立っているのだから当然の様に閉める筈なのだが、開きたまま扉が揺ら唯らと揺れていた

 

嫌な予感に足を速め、屋敷に踏み込むと護衛であった2人が地に伏せ倒れていた。

2人に怪我らしき怪我は無く、脈もしっかりある事から命に支障が無い事が、判断できる

2人の無事を確認し、焦る気持ちを押さえながらお嬢様と監察官殿がいる部屋に入ると2人の姿は無く、代わりに護衛と同じ様に床に倒れたメイドだけが、その場にいたのであった

 

急いでメイドに駆け寄り、脈を計る。脈は正常に動いており、外傷もない。護衛と同じ様に気絶させられただけだと思っていたが、メイドの方は微かに顔が動き、俺の存在に気づいた様であった

 

「何がおきた?」

「お、お嬢様が……攫われて…」

「なん……だと!?」

 

嫌な予感は的中してしまった

メイドが意識をなんとか保ちながら必死に口にする単語を読み取るに、俺が場を離れた後、アンジュを探しに監察官殿が外出、監察官殿の帰りを待っていたら突如、熊らしきキグルミに襲撃されたとの事……襲撃されたのはわかったが、なぜ熊?

 

「私が付いておきながら、すみません。ツキトさん……」

「もういい、話すな。後は俺に任せろ」

「は、い……お嬢様を…お願いし……」

 

俺の言葉を聞いて気が緩んだのか、メイドの意識を失ったようだ

……意識が戻るまで傍にいた方がいいのだろうが、暫く休めば、体調も元に戻るであろうし、お願いもされてしまった

メイドをソファーに寝かせ、いまだ扉の前で意識を失っている、役立たずな護衛も壁に寄り掛け『アルゼナル』内部へ向かい屋敷を飛び出して行った

 

犯人がお嬢様を狙った理由は子供でもわかる……『アルゼナル』からの脱走だ

孤立した岩礁に無理やり造られた『アルゼナル』から『ノーマ』が脱出する手は、3通りの手段が考えられる

 

一つは、パラメイルの奪取

博士みたいにパラメイルを強奪し、大陸まで行ける燃料を注ぎこみ脱走を計る

だがこれは、パラメイルと近い立場にいなくては出来ない手段である。一回分の戦闘に耐えられる燃料しか入れられていないパラメイルに大量の燃料を仲間に気づかれずに入れられ、剰えパラメイルの操縦に長けたモノしか出来ない手段だ

……パラメイルの操縦士が大半を占める『アルゼナル』だが、燃料関係は上層部が握っている。一介の操縦士には無理だ

 

二つ目、輸送機に忍び込む

誰にでも実行できる手段ではあるが、見つかり次第、殺される危険性がもっともある手段だ。パイロットや警備員には常にマナで動く銃が持たされており何かあった際に発砲の許可も出ている……現に俺も『ノーマ』が脱走、侵入してきた際には、重犯罪として射殺の許可もおりてしまっている。

脱走する『ノーマ』は、あちらに未練があって脱走するのに命を取られてしまったら元もこうも無い

 

そして最後……人質を使い脱走

いくら万能な力を持つ『マナ』であっても使い手次第では宝の持ち腐れになる

何の抵抗も無く捕まり、『マナ』始動の機械で脱走を計られたら、まず人手で捕まえる事は不可能だ

 

………犯人がお嬢様に眼を付けたのは、パラメイルの追撃を危惧してだろう

高性能を誇ったパラメイルなら直ぐに追いつけ撃墜できるが、王族が載っているとなれば話も変わる。高貴な人間が『ノーマ』に殺されたとなれば社会問題に成りかねなく今後、『ノーマ』の生活を脅かす要因になってしまう……云わば『ノーマ』全てを人質に取っているようなモノだ

 

最強の剣(ミスティ)最弱の剣(ノーマ達)、か……洒落にならんな」

 

犯人が、そこまで考えて行動したのかは知れないが、厄介な事に変わりない

『マーメイドフェスタ』が開催されている為、無人となった基地内を走り回る

基地内は、思ったよりも複雑になっており、なかなか滑走路に辿り着く事が出来なく、開けた扉の先が『ノーマ』の部屋であったり、シャワー室、食堂。しまいには、やっと見つけたと思っても女同士で乳繰り合っている見知らぬ二人組など……

 

当然、乳繰り合っている二人には仲良く気絶してもらい夢の中で続きをしてもらう事にしたが、正直、焦る気持ちだけが先行していった

 

そして、『ノーマ』達の買い物をする所だと思われる場所に、辿り着いた時に、二つの影と山盛りのハンバーガーに食らいつく犬を見つける事が出来た

 

犬は兎も角、二つの影の内、一つは俺の探していた人物であり、もう一つの人物は最近、無人島で出会った少女で会った事に頭を痛めた

 

「誘拐犯ってアンジュなのかよ……」

 

焦っていて気が付かなかったが、まかりなりにも王族、『マナ』の扱いを心得ているお嬢様が何の抵抗もしないで人質になるような人物などアンジュしかいないのだ

 

気配を消してアンジュ達に近づく……物陰から窺うにアンジュはショッピングカートに銃器や手榴弾を沢山詰め込んでいた

 

……一人で戦争でもするつもりか?

戦争をするのであれば喜んで手を貸している所だが、生憎いまの俺は『黒百合の悪魔』ではなく『ミスティ・ローゼンブルムの護衛』と言う立場……仕事を遂行させて貰おう

 

「そこまでだ」

「ッ!?」

「つ、ツキトさん!」

 

アンジュの後頭部に銃口を構え、声をかける

いきなり現れ、銃口を突きつけられたアンジュはたまったモノではないが、相変わらず目先の事に集中すると周りが見えなくなる癖は治した方がいいぞ?………あとお嬢様、俺の名前を言わないでください、ばれます!

 

「こ、この声…最近きいた覚え「無駄口を叩くな、大人しく両手をあげろ」……」

 

俺に言われるがままに、両手を上げるアンジュ。しかし、いつでも動けるよう気を張っている事から足払いを試みて体制を整えようとしているのが、丸判りであった

 

「膝立ちしろ……妙な行動をすれば殺す」

「ッ!」

 

いらん事をされる前にアンジュの口と行動を封じる。……拘束したのはいいが、今の俺は、この状況をどう打破するか悩んでいるのだから余計な事はしないでほしい

 

護衛としての任務はお嬢様の身の安全の確保。お嬢様の安全が確保できたこの状況では誘拐犯である『ノーマ』は、射殺するのがベストなのだろうが……誘拐犯がアンジュなので話が変わってくる

見知らぬ『ノーマ』なら迷わずに殺すのだが、『ヴィルキス』の乗り手であり、お嬢様の友人、そしてタスクの思い人と複雑な環境にいるアンジュ。なにより、ツキト・アンダーリバーとアキト・ミルキーウェイと言う同一人物を知る二人がこの場にいる事が大変よろしくない

 

アンジュには素顔を見られてはいないが、先程の反応を見るからに声で俺だと認識しているし、お嬢様に至っては俺の名前を口にしてしまっている

……アンジュを生かせば『テロリスト』アキト・ミルキーウェイがお嬢様にばれ、アンジュを殺せばお嬢様やタスクから恨みを貰う事になるだろう。

いまさら恨みなんて数えきれない程、貰っているが雇い主と弟分から貰うのはさすがに堪える

 

三竦みの硬直状態にこのまま時間だけが過ぎるかと思われたが、解決案を導き出し硬直状態を打破したのは……お嬢様であった

 

「ツキトさん、アンジュリーゼ様を解放してください」

「いいのか?こいつは、君を誘拐した罪人だ」

「罪人の前に友人です。それと……アンジュリーゼ様を手伝ってあげてください」

「ッ!……君は何をいっているのかわかっているのか!?」

 

それはつまり、お嬢様と共にアンジュ脱走の共犯になれと言う事……

とてもではないが、王家のするような判断ではない!

 

「…脱走後の処理、すなわち殺されるかもしれないのだぞ?」

「アンジュリーゼ様はそのような事をしません。それに、護衛の貴方も一緒なので大丈夫です」

「……君は大丈夫かもしれないが、俺は間違いなく雇い主に首を切られる。本当の意味でもな?それも考慮してか?」

「うっ!それは……」

 

王女の護衛を失敗して受けるペナルティーは100%護衛の首、50パーセントで処刑

人の人生を棒にする程の選択をしたのだぞ?……それをわかっているのか?

 

俺の反論に、顔を伏せていたお嬢様であったが何かを決心したようで勢いよく顔をあげて驚愕の言葉を口にした

 

「では、ツキト・アンダーリバーをこの場を持って私の護衛任務を解雇します。そして、アキト・ミルキーウェイにアンジュリーゼ様の脱走の依頼をしますわ」

「なっ!」「えっ!?」

 

驚きの声は二つ、一つは拘束されているアンジュ。まさか、お嬢様を護衛していたのが、無人島で出会ったテロリストだった事に対する驚き

そしてもう一つは、俺の正体が、お嬢様にばれていたと言う俺の驚きであった

 

「………いつからだ?」

「ツキトさんの休暇する日に限って『黒百合』のテロ活動が多く行われていたので、もしかしたらと思いまして……あ、安心してください!この事は誰にも言ってませんから!」

 

あ、安心できるかぁぁぁぁ!

貴様のような世間知らずに俺の正体がばれたと思うと他にもバレているかもしれないんだぞ!?どこに安心できる要素があるんだよ!

 

「偶然、かもしれないぞ?」

「私もそう思いましたが……なんでしょう?私の感がそうだと言っている様な気がしまして……?」

 

感って……

いや、女の感は馬鹿に出来ない。現にヒルダちゃんや博士は、女の感をフルに使い俺を悉く追い詰めていった思い出がある

これが、一般人なら笑い話で終わるが、王家であるお嬢様が口にしたら身元の洗い直しがされて俺の正体がばれる可能性が出てくる

 

…………ここで、大国に追われるのは痛い。一番ベストの判断は―――

 

「俺の事を公言しないと約束するなら、アキト・ミルキーウェイとして依頼を引き受けよう」

「っ!ありがとうございます!」

 

王家に感謝されるテロリストとは皮肉なモノだが、これが一番のベストアンサーなんだよな?

自問自答しても出てこない答えに判断を誤ったか?と後悔しながらもアンジュから銃口を降ろした

 

「もういいかしら?ずっと銃を向けられて肩が凝っちゃったじゃない。それに時間も押しているんだから早くしてよね」

「申し訳ありません、アンジュリーゼ様……」

「ふん!まぁ、いいわ。はやく滑走路に向かいましょ!……アンタはこれを押して行って」

「……は?」

 

拘束を解かれたアンジュに渡されたのは武器が大量に入ったカートと……カートに乗せられたお嬢様。……要するにこのカートを引いて行けと?

 

「ことわ「手伝ってくれるんでしょ?早くしなさいよね!」……てめぇ」

 

俺の意見など最初から聞いてないとばかりに、アンジュは先行して走り出した

カートの上で申し訳なさそうに頭を下げるお嬢様に見えないところで拳を握りしめながらアンジュの後を追い掛けた

 

……テロリストが全力でショッピングカートを押す奇妙な光景を作り出しているが今は知らん!あの女に一言いわなくては俺の気が収まらない!

 

限界と常識を越え一気にアンジュに追いつくとアンジュに向かって呪いの言葉を吐く

 

「貴様…ッ!貴様の命は脱走するまでだと思えっ!」

「はぁ!?手伝ってくれるんでしょ!男が小さい事、気にしているんじゃないわよ!」

「ッ!殺す!絶対殺すッ!」

 

俺達のやり取りを目に涙を溜めながら耳にするお嬢様には申し訳ないが、俺の本能がコイツを許してはいけないと訴えかけているんだ!幸い、契約は脱走の手伝い!脱走後に命を狩り取ればいい!

 

悪魔の使徒として契約や約束を絶対守らなくてはいけないと、いや俺自身の性格なのかそういう事は絶対に守らなくてはいけない様に思っている為、今は生かしておいてやる!

だから今は我慢だ!

 

「……おい、アンジュ」

「なによ」!まだ言うつもり!?」

「違う。……脱走にローゼンブルムの輸送機を使うのだろ?アレスティング・ギアはどうするつもりだ」

「はぁ?なによそれ!?」

「……ッチ」

 

アレスティング・ギアとは、機体を整備点検する為に機体をロックするシステムの名称であり、滞在期間中に『アルゼナル』において点検整備をする予定になっている輸送機には当然つけられおり、無理に外そうとすれば警報、警報が鳴らなくても外す音が大きい為、直ぐに周りに知れてしまう厄介なシステムなのだ……そんな事も知らないで脱走を計ろうとしていたのかよ

 

「……システムの解除を俺がするとしても誰が輸送機の操縦をするつもりだ?あの輸送機は『ノーマ』では操縦できないぞ」

「ミスティに決まっているじゃない!」

「えぇ!?」

「……墜落だけは勘弁してほしいモノだな」

 

圧倒的に人手が足りない。輸送機の操縦は『マナ』の力を使えば簡単に出来るが、一通りの技術を身に着けて、と言う条件がある。いくらエアリアと言う機体に乗っていたとは言え素人が直ぐに操縦できる品物ではない

 

「他に協力者はいないのか?せめて『パラメイル』の操縦者かマナの使える者が…」

 

俺の質問に苦虫を潰した様な顔をしながらアンジュは答える

 

「……一人いるわ、でも時間がないの。なんとかしなさいよ!」

「無計画にも程がある!糞がッ!システムの解除は俺がする、貴様は離着だけ動かせ!後は戻り次第、俺が操縦する」

 

いくらお嬢様を脱走に使うにも操縦出来ないのであれば意味がない!本当に他力本願な作戦だ!

アンジュの評価を下に見直しつつ、コーナーを曲がり輸送機が収納されている格納庫へ飛び出した

輸送機は来た時と変わらずのまま、そこに鎮座していたが、二つの影が輸送機の近くに存在していた為、カートから手を放しゆっくりと銃に手をかけた

 

「アンジュリーゼ様!」

「これはアンジュ……私を止めるつもり?」

 

逆光の為に顔は確認できないが、二人の声質から一つはアンジュと好意を向けている者、もう一つは嫌悪に向けている者であった。……前者はアンジュが先程、言っていた協力してくれる人物だとすれば後者は必要ない。こんな所で時間もかけられん、目撃者の口封じの為にも殺しておくか?

 

2人に感づかれない様に、レーザーサイトを女の額に定める。妙な動きをしたら即座に射殺できるように相手の動きに集中するが――――

 

「なにをするつもり!ヒルダ!」

「なっ!」

 

アンジュの言った名前によって気が散って行った

そして、雲が太陽を隠し光が遮られて見えた女の顔は………長年、思い続けていた少女と同じ赤い髪と紫の瞳を持った女性であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれれ~?メイって煙草吸うの?私はまだ早いと思うんだけどな~?」

「ち、違うよ!…これは預かっているの」

「ふ~ん……ここで問題です!メイは誰から煙管を預かっているのでしょ~か!」

「ふふ、こればかりはヴィヴィアンにも秘密」

「えぇ~!けち~」

 

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