心境的には、早くアンジュ出したいと言う気持ちが先行しています
落ち着いた頃に書き直すかもしれません
「おはよ~!アキト~!はやくおいでよ~!」
「今行くから待って!ヒルダちゃん!」
「は~い」
まだ日が昇って間もないと言うのに家の外から町で唯一仲良くしてくれる少女…ヒルデガルトが僕の事を迎えに来たのだ
「…アキト、ヒルダ嬢に言っておいてくれ。私の安眠の邪魔をするなと」
ノソノソと下着姿のまま今に降りて来る博士。いつもなら成人女性の在り方と言うモノを説教してやりたい所だが……今日は仕方がないであろう
「今日だけは許してあげてくださいよ。収穫祭なんですから」
そう、今日は秋の収穫を祝うお祭りであった
クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~
二話 秒読みの幸福
パンッ!パンッ!とお祭り特有の空砲が町に開催の知らせを告げる
田舎町だと言うのにメインストリートには屋台が並び立ち、年に数回しかないお祭りと言う事もあって町人の気合の入れようを感じられ町全体が賑わっていた
心なしか僕自身もテンションは上がっている
前世でお祭りが好きな人種『日本人』と言うカテゴリーに所属していた為か、お祭りには人一倍敏感なんだろう
だから血に従いお祭りを楽しもうとしていた。そう、していたのだ……
「お待たせ!はい、林檎飴!」
「……ありがとう」
大きく真っ赤な林檎を飴で包んだ林檎飴をヒルダちゃんから受け取る
実年齢は兎も角、精神年齢が倍以上違う女の子をパシらせるのは気が咎めるが……忘れていないであろうか?僕は前世の記憶を持って、歳そぐわない言動をしてしまう為、村八分の子供なのだ
お祭りでみんな陽気になっているから大丈夫だろうと思ったが、そう世の中は上手くいかない
僕が来店するや否やお客は陰口を叩きながら去っていき、商売にならないと店主に追い出されメインストリートを歩けば大人には、また陰口。子供には的当てと言い収穫の際に出た藁で作ったボールをぶつけてきたのだ
……実際、その頻度はいつもの3倍。人が集まって更にひどくなったのだ
このままでは藁ボールだけで無くなると思い、メインストリートから離れお祭り会場から離れたヒルダちゃんの家の庭に逃げ込んだのだ
「ごめんね、ヒルダちゃん。」
「ん~?なにが?」
あどけなく笑いながら林檎飴を齧るヒルダちゃん。…その笑顔を見るだけで罪悪感が沸騰してくる
「お祭り……楽しみにしていたでしょ?…僕なんかがいるせいでヒルダちゃんにも被害が…」
そう、僕だけが差別の対象になるのなら罪悪感は感じない、町の反応だって耐えられる
しかし、よりによって彼らは僕だけではなく、いつも一緒にいると言う理由からヒルダちゃんまで差別の対象にしようとしているのだ
まだ最低レベル(僕基準)の陰口だけですんでいるが、何かを切っ掛けに僕と同じレベルまで上げられてしまうかもしれないのだ
そしてお祭りと言う皆が陽気になり単純思考になっている今日、ヒルダちゃんの被害は増大したのだ
「ん~…的当ての事?私は気にしていないよ」
「だけど…いまからでも遅くない。僕とは距離を置いた方がいい」
「またその話ぃ~…私が気にしてないって言うからアキトは気にしなくていいの!この話はお終い!」
この話も何度目だろうか?
彼女の将来も考え僕と付き合うなと何度も説得をしたが、彼女の何がそうさせているのかわからないが、決まって彼女はNOと答えるのだ
……正直、何が彼女をそうさせているのか全くわからないでいた
前世の記憶を持ち同年代より多くの経験を積んでいたとしても乙女心だけはわからない
しかし、今日は違う!なぜならお祭りと言うイベントのおかげでヒルダちゃんもいつもよりテンションが上がっている!だから僕は!以前、博士に聞いた事を試してみようと思う!
博士曰く―――
『はぁ?相手の気持ちを知りたい?聞けばいいじゃん。はい、解決!告白しちゃいなYO!』
……単純だが明快。僕の人生で初めて脳内に稲妻が落ちたのだ
そして相手の気持ちを聞く際には最初、自分の気持ちを伝える事が大切だと博士は言っていた
だから僕の…ヒルダちゃんに対する気持ちを伝えよう…
「…ヒルダちゃん、いつもありがとう。僕はそんなヒルダちゃんが
「なっ!なななな!?」
そして、女の子には贈り物をあげるのがいいとも言っていたな
「これ、僕の気持ち。いつもありがとう」
慌てるヒルダちゃんの手を取り、銀色の指輪を渡した
「博士の研究材料の端材で作ったんだ。…たいしたモノではないけど、これ、僕が送れる最大のモノなんだ」
「ゆ、ゆびわ!?」
ここまでは博士の言う通りだ…・・顔を赤く染め驚きを露わにしているのは予想外だけど…今が聞く時なのかな?
「子供の戯言だと思ってくれてもいい。…だけど僕の気持ちだけは知ってほしかったんだ」
「あ、アキト…」
「ヒルダちゃんは……僕の事をどう思っているの?」
「……」
僕が送った指輪を両手で包みながらヒルダちゃんは赤く染まった顔を伏せてゆっくりと頷いた
「わ、私もアキトが好き…大好き!」
「そっか、よかった」
彼女も僕と同じで『
…答えは友達特有の『助け合い』だった
人が人の事を思う事、人が年を取る事で忘れていってしまう『純粋』な仲間意識が彼女をそう駆り立てているのだろう
長年に渡り謎だった問題の答えがわかり、スッキリとした顔になった
いや~…乙女心って本当に分からないモノだな
僕と同じで笑みを浮かべるヒルダちゃんは、まだ赤みが取れない顔を笑顔にしながら僕があげた指輪を自身の人差し指に嵌めていたが……
「指輪…大きいね」
「ごめん…サイズ、あわなかったね」
ここで大きなミス
今まで指輪をあげた事のない僕に、指のサイズなど考える事なんてなかった
案の上、僕があげた指輪はヒルダちゃんの指から直ぐに落ちてしまった
ヒルダちゃんは、大きくなったら嵌めると言ってくれているが、折角送ったのだから身に着けていて欲しいっと言うのが作成者の気持ち…
なにか方法はないか?と思考し顔を伏せると自分の首にかかるドグマグが目に入り名案が浮かんだ!
「…ちょっと待ってて!ヒルダちゃん!」
ヒルダちゃんに指輪を返して貰い、首にかけてあったドグマのチェーンに通し、ヒルダちゃんの首にかけてあげた
「そうすれば失くさないで持っていられるね?」
「アキト…ありがとう!」
満面の笑みで答えてくれるヒルダちゃん
うん、この笑みを見れるだけでも送った価値があると思うよ
しかし、笑顔は直ぐに消えてしまった
何故?と思い顔を覗こうとしようにも顔を伏せてしまっていて上手く覗けない
ジーザス!まだ解けていなかったのか乙女心!?
今度は僕が慌ててしまうが、ヒルダちゃんは僕の両手を握ってきたので落ち着く事が出来た
「ねぇ、アキト」
「は、はい!」
どうしよう!?前世にこんな経験ないからどうしたらいいのかわからない!?
助けて、博士!
「私を…守ってくれる?」
「当たり前のクラッカー」
「…?」
ごめんなさい、そんな不思議そうな顔で見ないで…心が折れてしまいそうです
ええっと、『守ってくれる』ってヒルダちゃんが僕にしてくれる様に僕もヒルダちゃんを守ってあげればいいってことだね!
「あ、当たり前さ!ヒルダちゃんは僕が守るよ!信じてくれ!」
「あ、アキト…」
うん、どうやら正解であったようだ!
たぶん嬉しさからヒルダちゃんの目から涙が流れ出ている、と思いたい
彼女も心のどこかで、この仕打ちに心を痛めていたのであろうな…
「私もアキトを信じる……だから私の秘密を教えるね?」
るん?
「私……実は『ノーマ』なの」
………え?
◆
「ん?おかえりアキト」
「……」
いつの間にか僕は、博士の家に戻って来ていた
確かヒルダちゃんに『ノーマ』だと言う事を告白されて…
「挨拶無し、か…さてはヒルダ譲に振られたな?」
「ッ!」
博士の言葉でやっと状況を理解する事が出来た
僕はヒルダちゃんが『ノーマ』だと言う事を知っていてもいられなくなってここまで帰ってきてしまったんだ
「その反応は図星…ではないな。何があった?」
「博士……」
ヒルダちゃんが『ノーマ』だと知り、差別の対象であった事が怖くなり逃げ出したんだ
いや、違う。認めたくなかったんだ。ヒルダちゃんがこの世界では人間だと認識されない存在だと言う事に……だけど、僕はヒルダちゃんを『守る』と約束した、信じてほしいと言ったんだ!
僕は事の成り行きを博士に話す事にした。…少しでも解決案が欲しくて…
僕の話を一通り聞いた博士は煙管に火を入れ、肺に煙を入れ十分堪能した後に吐き出した
「そうか…それでアキトはヒルダ譲が『ノーマ』だと知り逃げ出して来たと?」
「逃げ出したって……確かに逃げた事には変わりないけど…少し驚いただけだよ」
博士の言い様は心に刺さるモノがある
確かに僕は第三者から見れば『ノーマ』と言う存在を恐れて逃げ出した様に見える。…ヒルダちゃんもきっとそう思うだろう
「それで…これからどうするんだ?」
「どうするって?」
「いやなに、ヒルダ譲が『ノーマ』と分かった今、普段と変わらない付き合いをするのも良し、距離を空けるのも良し……道は色々とあると言う事さ」
博士の言い様に僕は目を見開いて驚いた
彼女の言い方では最初からヒルダちゃんを検疫官に通報すると言う考えがないのだから
僕の疑問を理解したのか博士は苦笑いをしながら僕に即してくる
「なんだ?『ノーマ』を見つけたら即通報しなくちゃいけないのか?…そんな事は無い。通報は個人の自由なのだからな」
「…『ノーマ』を匿ったら罪に囚われてしまうんじゃ…」
「バレなければいいのさ。……だが、君らしくない。『ノーマ』の在り方に不服を抱いていた君が何を悩む必要がある?」
「あ、生憎と前世にはそんな経験は…」
博士は肺に入れていた煙を大きく吐き、僕を見つめてきた
「ふぅ~…いい加減『前世』に縛られるのは辞めろ。君はこの世界の人間なんだ、この世界の価値観でモノを考えたまえ」
「この世界の価値観」
彼女の言いたい事は十分に理解できる
僕も前世の記憶に頼らないで一人の…この世界に住む住人の一人として判断を下せと言う事だ
「…『ノーマ』はあってならないモノ。差別しなくてはいけないモノ」
「……」
「世界がより平和になる為に…『ノーマ』を差別するように作られた世界」
「……」
「だけど…君はそんな世界をどう思うのだね?」
確かに前世の記憶があったから早い段階で世界が腐っている事に気づいた
博士の言葉の一句一句が心の中にある反逆心を擽る
僕はこの世界を受け入れているのか?――――――否ッ!
「…僕はそんな世界なんて嫌だ!『マナ』の恩恵を受けられないだけで差別される世界なんて間違っている!」
例え前世の記憶が無かったとしても僕は世界に反逆していたであろう
「くくく、答えは出たかな?君は『ノーマ』であるヒルダ譲を守る為に世界に弓引く…メイビー?」
「僕は神様でも悪魔でもない。…ただの人間なんだ。世界の平和とか知ったこっちゃない!僕は僕の手が届く範囲の幸せを掴みたい!」
二度目の人生で初めて出来た友達との幸福な時間を壊してなるものか!
その為になら僕は世界に狙われたっていいと思っている
「いい男だねぇ~?ばれたら二人で愛の逃避行か?」
「…ヒルダちゃんがそれを望むなら」
僕の答えに満足いったのか博士は椅子を机に向けて作業の続きに手を出し始めた
僕に背を向け、手を動かしながらではあるが声を掛けてきた
「…明日、ヒルダ譲に伝えてやりな。いきなり逃げたんだ、ショックを受けているだろう」
「もちろんだよ」
晴れなかった霧は博士のおかげで晴れ渡った
◆
僕は朝一でヒルダちゃんの家に向った
昨日行われていたお祭りも二日目で、今日は昨日よりの集客が予想されるがあえて僕はヒルダちゃんを誘う事にしたのだ
両手を口に添えて拡張期を通すように声を上げた
「ヒルダちゃ~ん!あ~そ~ぼ~」
返事はない
だけど、しばらくすると玄関が開き、オズオズとヒルダちゃんが出てきたのだ
「…アキト」
彼女の顔には不安な表情が浮かぶのは当たり前の事…昨日、僕は、それだけどの事を仕出かしたのだから…
だけど、僕は恐れない
まだ表に出る事を戸惑っているヒルダちゃんの手を握り外へ出る様に即した
「…アキト、あのね」
「……僕はヒルダちゃんが何者であっても守るよ、信じてほしい」
「アキト……」
彼女の顔にもう『不安』は無かった。代わりに満面の笑みが浮かぶのであった
しかしこの時は知らなかった……これからが本当の悲劇の始まりだったということに・・・
ガンブレ2…面白いね