クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~   作:誤字脱字

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あとがきにおいて補足と言う名の言い訳を・・・・


今回は自己解釈があります


ラスト・リベルタス
第二十四話 ドラゴニウム


「ねぇ、アキト!今日は何して遊ぶ?」

 

これは遠い日の記憶……まだ、俺の日常が存在していた頃の記憶……

赤い髪を二つに纏めた少女が僕の手を引きながら一緒に歩んでいた頃の……

 

「僕は、ヒルダちゃんと一緒なら何をしていても楽しいかな?」

「え~!なにそれ~……アキト!かいしょうがない男は嫌われるよ!」

「………誰に教えて貰ったのかな?」

「はかせ~」

 

幼い子供に何を教えているんだと頭を抱える僕とは裏腹にヒルダちゃんは、太陽みたいに眩しい笑顔を浮かべながら僕にお人形を手渡してくる

 

「じゃあ、仕方がないから私が決めてあげる!今日は、お人形さん遊びをしましょう!」

「ははは…うん、いいね。じゃあ、僕の役はどんな役なのかな……え?」

 

ヒルダちゃんから手渡された人形を貰い受け、その容姿を窺うと普段僕らが使っている人形とは違い、あからさまに可笑しな点が見て取れた

 

「この人形は……?」

「神様に逆らって手足を捥がれた哀れな復讐者のお人形だよ?ママに頼んで買ってもらったんだ~」

「ッ!」

 

いつもと変わらない満面の笑みを浮かべながらヒルダちゃんに説明されたデフォルトされた人形は、本来手足が付いている場所から赤い毛糸が飛び出している何とも不気味な人形であった

 

……思わず僕は、その人形を投げ捨てた

 

「あっ!アキト!……もぉ~!アキトに酷い事しないでよ!」

「ご、ごめん……って、あの人形の名前って『アキト』って言うの!?」

「うん!アキトに似ていたから……」

「ッ!」

 

恐らく顔が似ているだけと言う理由で、僕の名前を付けたのだろうが、背中から流れる嫌な汗が気になって仕方なくなってくる………気分を変える為にもヒルダちゃんの手を取り外へと連れ出そうと試みた

 

「ひ、ヒルダちゃん!き、今日は人形遊びって気分じゃなくなっちゃった!……そうだ!外で一緒に花でも摘みに行こう!ほら!外もこんなに天気が良いのに部屋に閉じこもっちゃもったいないよ!」

「え!?アキト、なにを―――ッツきゃぁ!」

 

些か強引になってしまったが、彼女の腕を掴みながら玄関へ向かう。……この後、ヒルダちゃんの機嫌が悪くなるのは眼に見てわかるが、いまはこの場から一刻も早く遠ざかりたかった

 

「リンゴを収穫するのもいいかもしれない。ちょうどおばさんも食べごろだって言ってたし!」

「ちょっと!ねぇ!アキト!それは、無理よ!」

「リンゴが無理なら山葡萄は?ちょうど家の近くに実をつけていたのを思い出したんだ」

「だから無理だって!」

「……―――ッ!無理じゃない!だってッ!?」

 

いまだに駄々を捏ねるヒルダちゃんに振り返り説得しようとしたが、鼻と鼻が付くくらいの近い距離にヒルダちゃんの顔があり、瞳孔が開き不気味な笑みを浮かべながら僕を見つめていた

 

「だって?……だってアキトの手足はこんなのだもん」

 

今度は逆にヒルダちゃんに腕を掴まれ、僕の目線まで腕を持ってくる。僕の腕は――――

 

「ッ!?」

「ほぉら?お人形と同じでしょ?ア・キ・ト」

 

手首から先が存在してはいなく、夥しい程の血が溢れ出ていたのであった

 

「ッ!う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!っえ?………ッ!――――――――――――ッ!」

 

手がない自分の腕に恐怖し、尻餅をついてしまうが、視野に入った自身の両足も無くなっている事に気づいた俺は耳を突く様な悲鳴を上げるしか出来ないでいたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『汝の贄……確かに受け取った………』

 

 

 

クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~

 

二十四話 ドラゴニウム

 

 

 

「………ッ!―――――――――――ッ!う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ッ!ズァァ!」

 

喉が裂けるような叫びと共に身体を起こした俺は、すぐさま脳に届いた別の痛みによって再び身体を倒してしまう。傷口に摩りを掛けるような痛みが両手首から継続して脳を刺激する

 

暫く立っても痛みは引かず、やっとの思いで痛みが和らいだと思えば痛みは弱いが同じ感じの痛みが右足首からも脳に送られている事に気づいた

 

手足を動かすと激しい痛みに襲われ、動く事も儘にならない俺は首だけを動かし辺りを見渡す事しか出来なく、最初に目に入ったのは木材で造られた天井、首を横に動かせば前世の記憶にある祖母の家にあったような囲炉裏、首を逆に動かせば窓から外が窺え、窓から覗かせる青空にはいつもの通りドラゴンが飛んでいた・……………………ドラゴン?

 

「なっ!?ドラゴンだと!?ッッ!」

 

驚きのあまり再び身体を起こそうとしてしまい、激痛に襲われた。だが、その光景に驚かずにはいられなかった

 

「ドラゴン……と言う事はアチラ側なのか?」

「その通りです」

「ッ!」

 

俺の独り言に返事をしてくれた方に首を動かすと、そこには巫女服の面影を残した服装を身に纏った少女が笑みを浮かべながら、俺の恩人であり救出に赴いた女性が少女と同じ服装を身に纏いながらも気まずそうに入室して来ていたのであった

 

「サラマンディーネ……それとリィザ・ランドック……」

「はい、お久しぶりですね、アキト」

「………」

 

彼女の登場に驚く俺の事など知らずとばかりにサラマンディーネは手に持っていた武器を床に置き俺の傍に座り、リィザは手首と右足の傷に障らないよう俺の身体を起こした

 

「状況が上手く飲み込めていない様ですが、貴方は何処まで覚えてございますか?」

「お、俺は……」

 

身体を起してくれたリィザに礼を述べ、サラマンディーネの問に答える為に記憶を呼び起こしていく……

俺は、エンブリヲに奇襲を仕掛けリィザ・ランドックを助け出そうとしたが、失敗に終わり最後の悪あがきであり、奥の手でもあるブラック・サレナの単独跳躍で離脱を計ろうとして……ッ!

 

「そうだ!俺の手は!………付いている?」

 

そう、離脱を計ろうとして俺の四肢はエンブリヲに破壊された筈なのに今も前と同じ様にそこに存在していた。……違いがあるとすれば両手首には血が滲み出た包帯が巻かれていることのみ。掛けられた布団からはみ出した足にも手首と同じ様に包帯が巻かれていた

 

「無理に動いた為に傷口が開いたようですね?…リザーディア、替えの包帯を」

「はい」

 

俺の手を取り包帯を取り外すリィザ、包帯が散られた部分は俺の本来の肌色とは違い赤黒く変色し縫い目の様な場所から血が滲み出ていた

 

「……此方の医術は凄いな。俺はてっきり、完全に破壊されたと思っていたが、こうも元に戻るとは……」

「そうですね、完全に破壊されて取れていましたね」

「………ん?」

「貴方を発見しハッチを開けてみれば操縦桿に取り残された貴方の両手と焼き取れた足を必死に元の場所へ付けようとしているリザーディア………救出に立ち会った何人かはその光景を見て倒れてしまいましたよ?」

「嘘を言うな。痛みがあると言う事は繋がっていると言う事だ。………もう一度、確認する俺のコレは取れていたのか?」

「えぇ、見事にポロリと」

「………」

 

包帯を巻き直し、綺麗な白い包帯が巻かれた腕を持ち上げてサラマンディーネに訪ねるが、間違いは無いそうだ。………マナも存在しない、医学もそれほど進歩していない様に窺える世界だと言うのにどうやったらこんな高難度の手術を成功させることが出来るのというのだ

 

疑問に思う俺に答えるかのようにサラマンディーネは懐から紫色の結晶体を取り出した

 

「流石に我々でも完全に貴方の四肢を取り付ける事は困難、不可能に近いと言っても過言ではないでしょう……なのでコレを使わせて貰いました」

「……それは?」

「ドラコニウム」

「!?」

「……の結晶体です。ご存じの通り、ドラゴニウムとは高エネルギーの超対称性粒子であり人体に多大な影響を及ぼす粒子ですが、取り過ぎなければ人体の治療に大いに役に立つそうです」

 

俺は、唖然として自身の治療に使われた結晶体を見る事しか出来なかった

確かに戦争に使われていたモノが医療の現場で使用される事は良くある事だが、今回のケースは違う。そもそも超対称性粒子を医療に使うなど聞いた事も無ければ立証もされていない、ダークマターの一種であり仮説しか唱えられていないモノを医療に使用するとか正気か!?

 

「……貴様が、俺の治療を?」

「いえ、ドクター・ゲッコーと呼ばれる医者です。」

「……その医者は超対称性粒子いや、化学には精通している者か?」

「医学は兎も角、化学は彼女の専門外ですよ?」

 

なにを馬鹿な事を?とサラマンディーネは、返してくるが、俺は大きくタメ息を付いて身体を倒してしまった

 

現在、超対称性粒子「ドラゴニウム」についてわかる事は、兵器に使用すれば一つの時代を終わらせる事の出来る高エネルギー体であり、環境汚染してしまう危険性をもった粒子

それ以外は、前世の知識にある宝石としてのドラゴニウムと超対称性粒子に関する超対称性理論のみ……ん?超対称性理論と言えば……

 

「超対称性理論にはボース粒子やフェルミ粒子に対しても書かれていたな?ボース粒子は、スピン角運動量の大きさが の整数倍の量子力学的粒子であり、ボソンまたはボゾンとも呼ばれる。

そしてフェルミオン粒子は、スピン角運動量の大きさが半整数の倍の量子力学的粒子と呼ばれる。………もしこの二つがドラゴニウムに含まれ、影響を及ぼされたとしたらドラゴニウムの高エネルギーによって二つの粒子が活性化し人体に影響を及ぼす結果へと繋がった」

「な、なにを言っているのですか?科学用語の様に聞こえますが、そもそもボース粒子やフェルミ粒子とは?いったいどういう意味なのでしょうか!?」

「ん?あぁ…まず二つの粒子を説明する前にスピン角運動量と言うモノを―――」

 

同じ科学者側にいるサラマンディーネは興奮気味に俺に訪ねてくるが、そのような知識も興味もないリィザは、ポカンと俺達のやり取りを見るしか出来ないでいた

置き去りにして申し訳なく思うが、出せる知識は一人では限界がある。

多少、知識が劣っていたとしても別の視点から考察出来るモノがいるだけで、この理論の仮説を組み上げていく事が出来ると言うモノ

 

俺とサラマンディーネの議論は、一時間にもおよび、その間、リィザはサラマンディーネの御茶くみとして働いていた………俺もストローのようなモノが刺さったモノからお茶を飲ませて貰った

 

「…つまり、ボース粒子、フェルミ粒子、ドラゴニウム粒子の三つが合わさる事によって振動する性質を持つ二つの粒子は活性化し小規模な次元振動を起こし多次元に存在するアキトの情報を呼び寄せ欠陥しているアキトの身体に流し込んでいると?」

「あぁ、その結果がこの治癒力だと俺は考えている。……人体の治癒力を大きく逸脱したコレは、もはや復元と言っても過言ではないだろう」

「しかし、数多に存在する多次元から複数の『アキト』と呼ばれる情報を一辺に一つの個である『アキト』に注ぎ込む行為は、どのような障害が及ぶと思われますか?」

「それならこの身を持って実証済みだ。痛みで気づかなかったが、両手首、右足に痺れを感じ左足に至っては感覚がない………おそらく、多次元の俺も左足に関しては死んでいるのだろう」

「そんな!」

 

声を上げたのは、先程まで俺達の話を聞いているだけであったリィザであり、彼女は手を口に当て涙を浮かべながら顔を歪めた

 

「貴様が気にする事ではない…………4つの内3つが生きている。それだけでも御の字だ」

「ですが!私が捕まらなければアキト様の四肢も……同胞の命も!「リィザ―ディア」ッ!姫様……」

 

自分を責めてくれとばかりに、今にも身を乗り出しそうになった彼女を止めたのはサラマンディーネであった

 

「これ以上は、彼に失礼です。それに私は言いましたよね?……同胞の事を思うのであれば、より多くの命を救うために共に戦え、と?……私との束を破るつもりですか?」

「……いえ」

「それにアキトも、こうなる結果を受け止めたからこその行動………後悔や恨みなどはありませんよね?」

「あぁ……」

 

四肢をエンブリヲに破壊されたのは俺が起こしたミスの代償であり、リィザ・ランドックには何の責任はない。………それに過ぎてしまった事をウダウダ言うのも好きではない

 

「さて、正直もっと言葉を交わしていたいのですが、これ以上は貴方の身体に障りましょう。私達は、ここで失礼させて貰います。それと……」

 

武器を手に持ち立ち上がったサラマンディーネは、改めてリィザに手を向けて笑みを浮かべた

 

「滞在中の世話は彼女に一任させます。なにかあればなんなりと申し上げてください」

「いや、必要な「はい!お任せください、姫様!」………おい」

 

俺の言葉を遮り、何故かこの部屋に来てから一番張りのある声を上げて肯定するリィザ・ランドックをどうにかしろ、とサラマンディーネを睨んだが、彼女は苦笑気味に笑みを浮かべながら答えた

 

「させてあげてください。彼女の一族は、『恩義』を重んじみています。……少しでも貴方に恩を返したいのでしょう。それと彼女はリィザではなくリザーディアです」

「だから俺に恩は感じるなと言っただろうに……それと呼び名は面倒だから変えん。……いいな?」

「はい!」

 

尻尾を振りながら全身で喜びを露わにする彼女はドラゴンなのにまるで犬みたいに思え、その事が可笑しく感じ、安心してしまう………そう言えば、エンブリヲの催眠から解かれてからは安堵する暇が無かった事を思い出した

 

気づくといなや、瞼が重く閉じていき俺の意識も朦朧としてきた

 

「すまないが、俺は休む」

「はい、ごゆっくり休養してください」

「あぁ……それと」

 

どうしてもサラマンディーネに確認したい事があり、なんとか意識を持たせる

 

「なぜ俺を助けた?」

 

俺の問に、眼を大きく開かせ驚きを露わにするサラマンディーネであったが、直ぐに口元を緩めた

 

「仲間を助け出して貰った恩人であり、私達は協力者もあります。それに――――」

 

……だめだ、もう意識を保っていられない

俺はサラマンディーネの言葉を聞き終わる前に意識を手放したのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

「それに、貴方様は、悪魔の使徒であり、アウラと同じく我々の祖なる存在なのでしょう?」

 

 

 

 

 

「随分と被害を受けたのだな?」

「アキト!?」

 

翌日、俺はリィザに肩を貸して貰いながらサラマンディーネの元へと訪れていた

彼女は、傷ついたドラゴン達の治療を行う医者や機材を運ぶ者達に指示を飛ばしながら随時、手渡される書類に目を通していた

 

……若干、彼女に声を掛ける事に戸惑ってしまったが俺の要件も彼女の利になる事だと考え、躊躇わずに声を掛けたしだいだ

 

俺の存在に気づいた彼女は、お付の少女達に一言なにかを伝えてからコチラヘ急ぎ足でやって来た

 

「もう出歩いても大丈夫なのですか?」

「あぁ、痺れはあるが痛みは無い。流石は超対称性治療だ」

 

便利上、ドラゴニウムを使用した多次元情報特定個人統一統合治療を『超対称性治療』と呼ぶようにした。………治療ではなく、復元に近いのだがこの際どうでもいいだろう

 

リィザに断わりの言葉を投げかけ、近くに置いてあった椅子を持ってきてもらい、腰を掛けてサラマンディーネと対峙する。……忙しい彼女を何時までも俺が拘束しているのも忍びないので早々に話を持ちかけるか

 

徐に表情を引き締め、強い眼差しでサラマンディーネを見据える

彼女も俺が醸し出す真剣みを感じたのか唾を飲み込み俺の顔を見つめた

 

「時に、サラマンディーネ」

「はい」

「コイツを説得してくれ。世話をすると言いながら一向に煙管を持ってきてくれない」

 

重苦しい雰囲気が一瞬にして飛散された

なんともくだらないとタメ息をこぼしたサラマンディーネは、当たり前だとばかりに俺の四肢に指を差し向けながら声をかけた

 

「当然ですわ。貴方は怪我人であり、喫煙が許される立場ではないでしょうに」

「適度に毒素を体内に入れた方が治りが速い。・・・・・糞が、エンブリヲの所に置いてくるんじゃなかったな」

 

あの時は急な召集で愛用の煙管を部屋に置いて来てしまっていた為に、今の俺には喫煙が出来ない状況になっていた………愛煙家でもある俺にとって禁煙とは死活問題レベルの事柄だと言うのに幾ら説明しようが、世話人(リィザ)は一向に首を振らなかった

 

上司でもある彼女の説得ならば理解して貰えると思っていたが、上司であるサラマンディーネがNOと言った今、希望は断たれたと言っても良いだろう

 

一つタメ息をこぼし、彼女の後ろに横渡る巨大なドラゴンに視線を向けた

翼や身体には焼き爛れた箇所が所々窺え、高熱または高エネルギーを持った攻撃を受けた事が見て取れた

 

アイツ等の出撃タイミングやアチラ側でドラゴンの身体を焼くほどの高エネルギーを有している武器を装備している機体などアレぐらいしかないだろう

 

「……ラグナメイルにやられたか?」

「ッ!」

 

俺の呟きに対し無駄な時間を過ごしたとばかりに呆れていたサラマンディーネは、当時の事を思い出したのか表情を歪めた

 

「……えぇ、奇襲を仕掛けた我々を待ち構え、攻撃を仕掛けてきました。なす術も無く蹂躙される私達を逃がす為にアンジュが囮に……」

「……なるほど、な」

 

強靭なドラゴン達であっても一方的にビーム兵器を撃たれては足掻く事も出来ずに撃ち落とされ、サラマンディーネやリィザの様子から甚大な被害を受けたのだろう

 

その被害を食い止める為にアンジュが囮となり、ドラゴン達の撤退の時間を稼いだ、と

………皮肉な事にアンジュは俺と同じ行動を取ったのだな

仲間を逃がす為に自身を贄にしたアンジュを昔の俺なら馬鹿だと鼻に笑うだろうが、同じことをしてしまっている今の俺はアンジュが、何故このような行動を取ったのか理由が気になるところだが、いまだに表情を歪めているサラマンディーネを見るとアンジュと彼女の間に何があったのか容易に想像できた

 

アンジュには悪いが、アンジュが捕まった事は此方の利になる

エンブリヲの支配に呑まれなければの話だが、と頭につくが、あのじゃじゃ馬姫の事だ心配するだけ無駄だろうな

 

俺は震える手を懐に入れてUSEの様な筒状の媒体をサラマンディーネに見せた

 

「………これは?」

「ラグナメイルの戦闘データと各操縦者の特徴が入った媒体だ」

「っ!なんとッ!」

 

伊達に〈ダイアモンドローズ騎士団〉の副隊長をしていた訳ではない。機体のデータを集める事やパイロットの癖を纏める事など動作もないし、俺の立場上というか魔法少女(サリア)がエンブリヲとの逢引の時間を作る為に俺に仕事を振ってくるので容易にまとめる事が出来た・・・・・恋は盲目と言ったところか?

 

「これを貴様にやる」

「え、えぇ!助かりま、す?」

 

サラマンディーネに媒体を差しだし、手渡す動作を取ったが、彼女が媒体を掴もうとするやいなや差し伸べていた手を引っ込めた………うむ、だいぶ動くようになって来たな

 

「その代わりに俺の頼みを聞いてもらう」

 

手の動きが良くなってきている事を嬉しく思いながらも、懐からもう一つの媒体を取り出しサラマンディーネに見せつけた

 

「ブラック・サレナの強化プランだ。……エンブリヲと決着をつける為にも俺に協力しろ」

 

俺が見せたもう一つの媒体……そこには手の痺れや損傷の事を考慮した上で、ブラック・サレナが十分に力を発揮できる改造プランが練られている

もとより、このプランはブラック・サレナの制作当時から練られていたモノで、パラメイルで言うアサルトモードで常にいるブラック・サレナをフライトモードにすると言うモノだ

専用の外装をブラック・サレナに後付しフライトモードへと変形させる、その名を「高機動型ユニット」――――

 

ブラック・サレナ本体の完成を急いでいた為、手付かずになっていた博士の強化プランだ

その名の通り、ブラック・サレナを高機動運用できるユニットであり、デメリットも多くあるユニットではあるが、手に痺れが残る俺が奴と戦うには大きな力になってくれるだろう

 

最悪の場合、機材と資源だけ貰い受け、俺一人で制作しようと思っていたが、サラマンディーネは最初に浮かべていた笑顔のまま、二つの媒体を掴み上げた

 

「えぇ、勿論ですわ」

「………即断だな?」

「敵を同じくし、味方でもある貴方を疑う理由がどこにありますか?」

「………そうか、お前はそういう女だったな」

 

返事などわかりきっていたな、と久しく笑みを浮かべ、リィザに声を掛けて肩を貸して貰う。サラマンディーネも早速、俺から齎されたデータを解析する為に研究室へ足を運ぼうとしていたが、ここで俺は、独り言のように声を漏らした

 

「一つ言い忘れた事があった」

「?」

「その媒体には俺がラグナメイルに取り付けた戦闘データを受信し座標を特定するシステムが入っている」

「………え?」

「次にラグナメイルが戦闘を開始するタイミングは、〈アウローラ〉と呼ばれる反エンブリヲ組織との戦闘か………脱走を企てたアンジュを追跡する時だろう」

「ッ!感謝します、アキト!」

 

先程とは違い、嬉々としながら返事を返したサラマンディーネは駆け足気味に自身の研究室へと向かうのであった

 

 

 




粒子治療について

簡単に言うと、多次元にいる自分の情報を本体に上書きし、欠損している場所を元に戻すと言ったものです

残りの二つの粒子は、振動はしますが、それが次元規模の振動を起こすかどうかは今の科学ではわかっていません
むしろ、そのような仮説はありません

作者が勝手に、「振動?その振動は世界を繋ぎ合わせる!」と厨二臭い事を考えた為に出来た設定です

あまり、考えずにそういうものなのか!で納得してもらえますと助かります
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