監督がタスクとモモカの生存理由をツイッタ―してましたが、独自にこうしました、俗に言うフセン回収です
「エンブリヲは2つの地球を融合させ、新しい地球を作ろうとしています。そうなれば二つの地球に住む人類は皆、エンブリヲの手によって死滅されるでしょう」
ラグナメイルとの戦闘を終えた俺達は、アンジュの救出に来ていたパラメイル部隊と合流し本来の目的である〈アウローラ〉においての会席を達成していた
そして現在、リィザが調査したエンブリヲの目的をサラマンディーネの口から〈アウローラ〉司令官……ヒルダを始めとしたメイルライダー、〈アウローラ〉幹部に告げていた
その様子を俺も、共に〈アウローラ〉に着艦したカナメとナーガの後ろ、それも少し離れた場所から見つめていた
「我々は、ノーマとの同盟締結を求めます!我々だけでエンブリヲの防衛網を突破するのは不可能」
確かに先の戦闘では優位に終える事が出来たが、相手の戦力は万全に思えなかった
ビレスロイドの投入タイミング、
相手に…特にエイレーネに大きなダメージを与える事が出来たとは言え、此方の戦力よりエンブリヲの戦力の方が上に行っていた事がわかった今、お互いに同盟は絶対的なモノとなっている
……………だから、先程から突き刺さってくる、その視線をやめてくれませんか、ヒルダさん?
俺の思いが通じたのか一つタメ息をこぼしたヒルダは、徐に口を開いた
「確かに、私らだけじゃ手も足も出せねぇ………いいよ、同盟」
おそらくサラマンディーネを睨んでいるのだろう、キツイ視線を彼女に送りながら同盟を組む事を了承したヒルダは、今度は…と言うかまた俺に突き刺さる視線を俺に送ってきた
「んで、そこにいる〈黒百合の悪魔〉さんも私達を手伝ってくれるっていうのかい?」
「あ、あぁ…俺も「勿論ですわ、俺は私の協力者ですから」「はぁ!?私の!?」……」
先程と比べても1.5倍増し、突き刺さる所か貫通する程の視線を送られた
うん、そうだね俺達は協力関係を結んでいるよ?でもね……今言うんじゃねぇよ!
如何にも怒ってます!ってヒルダが視線で訴えかけて来てるぞ!?
「その…なんだ…アルゼナルの戦闘の後、なんだかんだあってサラマンディーネの世界へ行っていた」
「そのなんだかんだの間に、その足の訳があるのか?もしアキトの足をやったのがコイツ等だとしたらアタシは……」
あぁ、俺が杖を付いている理由がサラマンディーネ達が原因だと思って彼女を睨んでいたのか……
ヒルダの思いを感じ、先の戦闘でごっそり削られた俺の心が癒されていくように感じた
「彼の足を壊したのは私だ。全てを破壊するつもりだったが……健在でなによりだよ、アキト」
「「「「「ッ!?」」」」」」
俺がほっこりしていると言うのに耳が腐るような紳士的な言葉使いで話しかけてくる外道の存在に気づき、俺はホルスターから銃を引き抜き自身の後ろへと構えた
構えた先には、眼のハイライトが無くうつろな目をした……確かエマ監察官とマナ操作で生まれるモニターに映されたエンブリヲが存在していた
「ふむ、アンジュが戻ってきているのかと思ったのだが……いない様だね?」
「ワォーン!」
「バルカン!?」
動物の本能なのか相手が危険な存在だと気付いたジャスミンの犬は、一直線にエマ監察官に牙を剥いたが、マナに頼って生きてきた彼女の運動能力では説明できない程の反応を見せて犬を払い除けた
エンブリヲが彼女の身体に関与している限り、彼女に意識はない
おそらく睡眠薬や気絶を狙っても効果はないと判断した俺は、エマ監察官の『生命』を断つ為に額に銃口を向けたが、サラマンディーネの手によって遮られてしまった
「……どけ」
「彼女は操られているだけです」
「見ればわかる。……ノーマの船に人間が乗っているとは予想外だった。いま終わらせる、退け」
「その必要はありません………Laaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
俺を制していたサラマンディーネは、何を思って起こした行動なのか理解不能だがいきなり監察官に向って奇声を発した
するとエンブリヲを映し出していたモニターはガラスの様に割れて監察官は、糸が切れた人形の様にその場に崩れ落ちたのであった
「これは…?」
「ドラゴンが発する音波は、マナの力を打ち消す効果があるのですよ」
「……今度、じっくりと調べたいものだな?」
「……その機会はもう無いと思いますがね」
俺に微笑みながら言ってくるサラマンディーネ
確かに今度、落ち着いて研究する機会が出来る時間はエンブリヲを倒しアウラを解放した後………マナ自体が無くなった世界だ
俺も彼女につられて笑みを浮かべるが、腕に痛みを感じ顔を歪めた
どうやら俺の腕は第三者によって抓られていたようで、抓った本人は機嫌が悪そうに顔を歪めながら抓る事を止めていなかった
「……地味に痛いのだが?」
「痛くしてんだよ……再会できたと思えば女を連れて、しかもデレデレしやがって」
「……」
やはり、俺にはヒルダが一番だ
こんな些細な事でも俺の心を癒してくれる存在は彼女しかいないだろう
そう思った瞬間、俺はヒルダを抱きしめていた
「ッ!」
「……ただいま」
「………おかえり」
みんなが見ている前だと言うのに抱きしめた俺を咎めもせずに俺の背に手を廻してくれるヒルダ
そこで俺はようやく戻ってこれた事を実感できた………そう、出来ていた
「……あぁ!なるほど、その方がアキトのツガイなのですね」
「ッ!馬鹿言ってんじゃねぇよ!」
………サラマンディーネの言葉に照れて押し飛ばされた短い時間だけ
なにやらヒルダとサラマンディーネが揉めているが、押し飛ばされた俺は片足でバランスを取る事も出来なく、呆気なく倒れ犬……バルカンに慰めの様に舐められるのであった
◆
クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~
二十六話 騎士の生還
◆
しかし、利があるとは言え、今まで敵だったドラゴンと手を結ぶ事に抵抗があるメイルライダーがいるかもしれないとヒルダに相談され、彼女と共に各メイルライダーに話をつけに回ったが……概ねドラゴンとの共闘に対し心の区切りをつけたモノが多く新人ライダー達は
そしてまた一人、ドラゴンとの共闘に賛同するライダーがいる
「私、ドラゴンと一緒に行く。……何だってやるよ、クリスをぶっころせるなら。やらなくちゃ……マリカのためにも」
第一中隊軽砲兵、ロザリー
ヒルダと抱き合った後に紹介されたが、アルゼナルの戦闘の時に唾吐き女とコンビを組んでいた黄色のパラメイルの操縦者………そしてヒルダの友達であり唾吐き女の親友
そんな親友から『殺す』と言う言葉が出た事に若干、驚いたが唾吐き女のせいで彼女を慕う後輩が死んだと聞いては止めるのは野暮だと言うモノだ
「……それで本当にいいのか?」
だと言うのにヒルダは、彼女の心に踏み入っていった
いや、ヒルダだからこそ入れるのだろう。ロザリーと同じく唾吐き女の友達であるヒルダだからこそ口では『殺す』と言いながらも戸惑いを見せる彼女の心に…
「いい、わけねェ…でも!そうしなきゃマリカがうかばれないだろ!私が、私が……やらなきゃいけないんだよ」
目元に涙を浮かべながら認めたくない事実を必死に自分の心に言い聞かせている彼女は、見ていて心が痛むモノがある
そっと、その場から立ち去ろうと杖を突くが、ヒルダに服を掴まれ動く事が出来なかった
ヒルダの目にはどうにか出来ないのか?と相談されている様に思え……俺は溜め息をこぼした
「なんでこんなことになっちまったんだろうな……私バカだからわかんねぇよ」
「そうか。ならば、考えるな。思った通り行動しろ」
「ッ!?……てめぇに何がわかるって言うんだよ!」
唾吐き女とロザリーの仲も知らない第三者である俺の言葉にロザリーは一瞬言葉を詰まらせたが、直ぐに火がついたように俺に突っかかってきた
ヒルダが、ロザリーに何か声を掛けようとするのを手で制し、俺は彼女に言い聞かせる
「知らん。…だが、貴様がウダウダしているのが気に喰わないだけだ」
「て、テメェ!」
俺の言い様に頭にきたロザリーは、目元に涙を浮かべながら俺に殴り掛かってきた
第一線で戦ってきたとは言えパラメイルが無ければ所詮、訓練を受けた女兵士と言うだけ、片足の利かない俺でも避けるなり捌くなり容易に対処する事が出来るが……………俺は、あえて受け入れた
ガスっと頬を殴られた音と痛みを感じるが、殴った本人の方が信じられないと言った顔で俺を見て来た
「……少し冷静になったか?」
「ッ!」
「怒りも悲しみも全て取り除き最後に残るのが貴様の望みだ……貴様の心には何がある?」
「私の……心……」
俺の言葉に唖然としていた彼女は、ただ俺を見つめるだけ……殴った後に自分が何をやったのか理解したようで俺の言葉が、すんなりと入っていった様に感じる
暫くの間、身体を振るわせるだけで言葉を口にしなかった彼女であったが、次第にポツポツと漏らしていった
「私は…私には……クリスが必要なんだ。でもクリスはマリカを殺して」
「既に死んだ人間を思い、今を生きる人間を殺すのか?……いない人間の為に大切なモノを手放す必要はない」
「ッ!」
「アルゼナルでは、死んだ仲間の為に墓をたてるのだろ?唾はき……クリスに墓をたたせろ、それが貴様が背負うべき責任だ」
「う……うぅ……」
泣き崩れる彼女を見てもう大丈夫だと判断した俺は、今度こそ本来の目的を果たす為に杖を突いた。ヒルダもロザリーに一言声を掛けた後に俺を追い掛け、隣に並ぶとハンカチで俺の口元を拭った
「血、出てんぞ………てか説得下手すぎるだろ」
「なら今度から俺に振るな……彼女に付いてあげなくていいのか?」
「あいつも一人で考える時間が欲しいだろ?」
「そうか」
女性とは言え腰の入った拳は容易に俺の唇を切り、あの場面で口元から血がタラリと流しては恰好がつかないと思いひた隠しにしていたが、ヒルダには、ばれていた様だ
丁寧にハンカチで俺の血を拭ったヒルダは、俺の血が染み込んだハンカチを凝視するやいなや、血の染み込んだ場所を自身の舌で舐めだした
「……なにをしているんだ?」
「いや……なんとなく。アンタも私達と同じで人間なんだなと思ってさ」
「お前の男は怪物か化け物だと思っていたのか?」
「ふふ…そうかもね。変わらないからもっと調べたくなったよ」
怪しい笑みを浮かべながら俺の首に腕を絡ませ、ゆっくりと唇を近づけてくる
別に拒む理由もなければ、いや、むしろ大歓迎なのだが……今回はお預けにしよう
「ストップだ、ヒルダ」
「……んだよ、ノリ悪いぞ」
「俺としても大いに歓迎したい所だが、これ以上は子供には見せられない」
「はぁ!?子供?」
俺が指差す先をヒルダも見つめると、遠慮気味に琥珀色の眼をした俺の妹が壁の影から出て来たのだ
「覗き見とは趣味が悪いな、メイ?」
「ごめん、お兄……」
「まぁお年頃だしな?興味はあるだろう……それよりブラック・サレナは?」
「うん、いつでも大丈夫だよ。それと……はい!預かっていた煙管だよ!」
「感謝する。ジャスミンには明け方には戻ると伝えてくれ」
「………っ!おいおい、どこかに行くのかよ?」
状況を読み込めていなかったヒルダであったが、俺が出撃の準備をし始めた事に気づき声を掛けてきた。
俺自身、ヒルダともっと一緒に過ごしたいが、エンブリヲとの決戦の前に拾って来なくてはいけない人物がいるのでな?
「なに、ちょっとお姫様を迎えに行くだけさ」
俺は、ヒルダに触れるだけのキスをするとブラック・サレナへと向かって行ったのであった
◆
アンジュ捜索から1時間……いまだに成果なし
エンブリヲを倒す為には、いや、エンブリヲの所へ行くにはアンジュとヴィルキスが大切なファクターだと薄々気づいた俺は、ジャスミンに申し立てアンジュの捜索に出撃していた
なぜそう思ったのかは、複数の仮説を考慮した結果とも言えるが、一番はエンブリヲが〈アウローラ〉に侵入してきた事だ
エンブリヲはアンジュを自分の手元に置きたがっていた。それは俺が〈ダイアモンドローズ騎士団〉に在籍していた頃からであり、なぜエンブリヲがアンジュに執着しているのか、あの時は判らなかったが、一つの仮説を立てると、すんなりと納得がいく結果が出た
アンジュとヴィルキスが力を解放したら命のストックしてある保管庫に辿り着けると言うモノであった
俺が確認しただけでもヴィルキスは、次元跳躍の可能な機体。サラマンディーネ曰く瞬間修復も行ったと言っていた
他のラグナメイルと一線違う機体がヴィルキス、その力を発揮できるのがアンジュだと考えれば……自然とエンブリヲがアンジュを欲する訳に辿り着いたのだ
なれば俺のする事は一つ―――――――エンブリヲより先にアンジュを回収する
その為に、メイにブラック・サレナの整備を急がせたのだ
ブラック・サレナであればいざとなった時、次元跳躍で離脱できる。その事をジャスミンに説得するのに時間がかかったが概ね問題はなかった
それに俺はアンジュを探すにあたって一つ手掛りもあった
それは、タスクに持たせた俺直通の通信機だ。一時期、タスクと行動していたので持たせていたが、もしタスクがアンジュと一緒にいれば俺を頼って連絡が来るはず
その為、通信機の電波が届く範囲を飛び回っていたのだが……1時間結果が現れないでいた
「……仕方ない、ミスルギにもう少し近づくか」
今まで探していた場所は、タスクが拠点としていた孤島を始め近くの無人島。…しかし、一向に反応が出ない為、今近づくのは危険だと理解しているが、エンブリヲにアンジュを渡すよりはマシだと踏ん切りをつけてミスルギに向って飛ぶと―――
Pipipipi……Pipipipi……
「早速か……まだミスルギにいるのには驚いたが、まぁいい。…アキトだ、タスク聞こえるか?」
向って10分もしない内に通信を探知し場所を特定する事が出来た
タスクならばエンブリヲの手が届かない無人島へ身を隠すと思っていたが、思い違いだったようだ
若干呆れながらもタスクに通信を送り返すと返ってきた声が、タスクのモノでない事に驚きを露わにしてしまった
『え?繋がった?わ、私!モモカです!助けてください!』
アンジュの筆頭侍女であるモモカ・荻野目の声がタスクの通信機から聞こえてきたのだ
「荻野目…なぜタスクの通信機を持っている?いや、アンジュとは一緒なのか?タスクはどうした?」
『そ、その声は…アキトさん!私はアンジュリーゼ様と一緒ではありません……でも!タスクさんが!』
「……なに?」
荻野目の声質からタスクの身に何かよかからぬ事が起きたと悟った俺は急ぎ発信元へと向かったのであった
◆
「あっ!アキトさん!こちらです!」
「荻野目、なにがあっッ!?タスク!!!」
発信元は崩れ落ちたビルの一角……
海岸に近い場所とは言えミスルギ皇国内だったのでブラック・サレナを隠すのに戸惑ってしまったが……悠長にブラック・サレナを隠していた自分を殴りたくなった
荻野目が手招きする場所へ赴き、横渡るタスクだと思われる人物を見た瞬間に血の気が引いたのだ
頭部からは血が流れ出て上半身は重度の火傷、右足に至っては瓦礫に足を挟んだのか潰れていた
「これは……どういう事だ!荻野目ッ!!!」
「ひぃ!?も、申し訳ありません!」
急ぎ頭部から流れ落ちる血を止める為に消毒を施し、包帯を巻いて行く
巻いた傍から白を赤く染めていく血に怒りを覚えてしまう
「わ、私が見つけた時には既にタスクさんは……私も応急処置を施していたのですが、突然マナの力が使えなくなって……」
「ッ!……こちらこそ、いきなり怒鳴ってすまない。治療に手を貸してくれ」
「はい!」
荻野目の手を借りながら重症の域を超えているタスクに治療を施していく
幸い、内臓器官に目立った傷はないようだが、如何せん全身に行き渡る火傷がタスクの命の灯を消そうと猛威を振るっていた
そんなタスクの灯を守る為に俺は、頭部の止血を始め今できる最善の治療を行うが………灯はあと僅かになっていた
「う……うぅ……うぅ……」
「…………」
最善の治療は施した……しかし、結果は悪戯にタスクの命を弄ぶだけに終わってしまった
隣で荻野目は、声を殺し泣き、俺もコレから失われる命の…タスクの最後に言葉を無くし無心となって煙管を吹かしていた
そんな中、今まで言葉を発する事もなく、ただ弱弱しい息を繰り返していたタスクの口が動く
「…キト、アキトなのか?」
「ッ!タスク!」
掠れながらも最後の言葉を口にするタスクの声を聞き逃さない様、耳を澄ませた
「な…なんて…酷い顔をして…いるんだよ?俺は…アンジュの…騎士…不死身だ……」
「……その身体でよく言う。………糞が!」
「はは……俺も……ここまで……様だ…アンジュを……頼ん…だ」
「ッ!」
アンジュを頼むだと?あんなじゃじゃ馬姫の手綱を引けるのは騎士である貴様しかいないと言うのに俺にアンジュを託すと言うのか!誰よりもアンジュを思っているお前じゃなく俺に託すと言うのか!……俺は、俺はそんな事は認めない!
「許せとは言わん!だが、俺は貴様以外にアンジュの騎士を名乗れる男を知らない……どんな形になろうとも貴様はアンジュの騎士であれ!」
俺は、医療道具の入ったケースをひっくり返し、ケースの底に空いた穴に指を差し込んだ
するとケースの底に隠して合ったドライアイスで保存されていた一本の注射器が表出る
俺は迷わずにタスクの首に、その注射を刺すとゆっくりと少しずつ体内へ流し込んでいった
「アキトさん…それは?」
タスクに打ち込んだ液体の色が、医療液体とは程遠い怪しげな色をしていた為、荻野目がオドオドしく俺に訪ねてくる
「安心しろ、毒ではない。……高濃度の超対称性治療薬だ」
「超対称性治薬?」
聴き慣れない薬に首を傾げる荻野目だが、知らなくて当然だ
マナの力で病気を治す世界において薬など、体調管理や性欲欲心薬など娯楽の部分が大部分を占めている中、治療に薬を使っているのはノーマぐらい
アルゼナルで生活し薬の概念が変わったとしても、そんな注射器一本で何が変わると思えないのだろう
しかし、コイツは―――――――――特注品だ
「これは…俺が独自に研究を進めたドラゴニウム粒子の活性化によってボソン粒子とファリス粒子の限定的次元振動により肉体への干渉を促進し治癒を高める……いや、人間の修復を行う治療薬だ」
「……修復?」
サラマンディーネなら一発で理解できる程の丁寧な説明してやったと言うのに、理解できないと首を傾げる荻野目に苛立ちを覚えながらも、もっと噛み砕いて説明する事にした
「簡単に言えば小規模な次元干渉によって『タスク』と言う個人が本来ならこういう形だと身体に情報を教え付け、治癒力を高める、そういうモノだ」
「教え付ける?」
いまだに首を傾げる荻野目に、説明する事諦めた俺は、タスクの状態を確認しながらゆっくりと時間をかけて液体を流し込んでいく
……クソッ!規定量を注入しても効果はないか!
「人間に与えてよいドラゴニウム粒子の量は判明していない。……一例あるが、今回とはケースが違う。……どのくらいの量で治癒が始まるか毒となるかわかっていない」
結局、注射器内に入っていたドラゴニウムを全てタスクの体内に流し込んだ俺は、大きく息を吐きタスクの容態を確認していく
「そして、流し込むドラゴニウムの量を間違えれば多次元に存在する『タスク』と言う情報を大量に個人である『タスク』に流し込み、この世界のタスクに上書きする、その行為は、今の『タスク』を殺してしまう可能性がある」
「今のタスクさんを殺す?」
「身体が完治しても俺の知る……アンジュの騎士である『タスク』とは限らない。それに人間の治癒力は生まれつき決まっている為、もし生き残っても寿命を削るだろうな」
「そんな勝手な事を……そんなのただの実験じゃないですか!」
俺のした行為が医療ではなく、実験だと批判する荻野目は再び涙を流し始めた
俺の時とは違い、死に体のタスクを救うには大量のドラゴニウムを流し込まなければいけないのは覚悟していたが、俺が摂取した量では治癒は始まらなかった
その為、持ってきたドラゴニウムを全てタスクに流し込む危険な行為をしてしまった。もとよりドラゴニウムには人体に悪影響を与える要素が含まれている事を考慮しても俺のした行為は人体実験と言われても可笑しくはない行為だ。しかし――――
「どのような形になろうと……俺はタスクに死んでほしくはない」
俺は、額に染み出る汗を拭きとると煙管に火を入れて大きく煙を取り込む
後は、タスク次第……俺の出来る事は全てしたとばかりに俺は煙を吐き出したのであった
「頭部の裂傷も全身に亘る火傷も…潰れた足までも完治……更には後遺症も見当たらない。」
「タスクさん!貴方は誰の騎士なんですか!それとアンジュリーゼ様の誕生日とスリーサイズと家族構成と、ええっと!それと!」
「落ち着いてよモモカ……俺はアンジュの騎士、タスクだよ。」
いまだに騒ぐ荻野目を無視しながら生死の境目を彷徨っていたタスクに俺は、淹れ立ての珈琲を手渡す
昇る朝日を眺めていたタスクは、俺にお礼を言った後に願いを口にした
「なぁ、アキト……お願いがあるんだ」
「……なんだ」
「俺を…俺をアンジュの所に連れて行ってくれ。アンジュが俺を待っている」
俺は、珈琲を口にしながら笑みを浮かべた
「完治祝いだ……最速、格安で連れて行ってやる」
・アキトは何故エンブリヲが不死身なのか利しません、なので自身の考えで動いてます
・24、25話の治療をタスクに使いました
・二人の生存について公式では…
モモカ→フライパンとマナによる落下速度減速
タスク→身代わりの術+防火シートによる火遁の術
……とありました