クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~   作:誤字脱字

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第二十九話 真実

「よっわ……」

「うわぁ!」

 

テオドーラから撃ち出されたビームは、グレイブの背部にマウントされた2連装キャノン

を撃ち貫き爆発、破壊の衝撃からグレイブは地面に叩きつけられた

 

「その程度で私を殺すとか……笑わせないでよ!」

 

テオドーラは、傷だらけグレイブに銃口を向け発砲するが、当てずに地面を削り取るだけ、まるでそれは、力の差を見せつけているかのように

 

「こ、殺さねぇよ!だけど、止めるんだ!マリカの為にも!」

「………誰よ、マリカってぇぇぇぇ!」

 

体勢を整えながらも何とかテオドーラと向き合うロザリーは、必死にクリスの説得を試みるが、逆にクリスの精神を逆立ててしまい嫉妬に満ちた叫びと共に大剣が振り下ろされた

 

「ッ!」

 

―――が、上空からテオドーラに向い攻撃を仕掛けてくる機影にクリスは勿論、ロザリーまでもが驚きを露わにした

 

「待たせたね」

「「ヒルダッ!」」

 

2人の気持ちに溝が出来てしまったとしても自身たちに強い影響を与え続けていたヒルダの登場にロザリーは嬉しさのあまり声を上げ、クリスは、憎たらしく唇を噛んだ

 

「……ヒルダも私を殺しに来たんだ」

「はぁ!?…んで、私がアンタを殺さなきゃいけないんだよ……私も止めに来たんだよ、クリス!」

「ッ!」

 

止めると言いながらもヒルダが繰り出す攻撃は必殺のモノと変わらず、容易に受けてはラグナメイルでも大きなダメージを負う程の勢いの乗った一撃

たまらずクリスは、ロザリーから距離を取った

 

「な、なぁヒルダ……アキトさんは?」

「はぁ!?さんって…アイツは私達と同い年だぞ?」

「な、なんか付けなちゃいけない様な気がしてよ」

 

その間に体制を整えたロザリーは、ヒルダと並び立ちもう一人の援軍に付いて尋ねるが、ヒルダは呆れながらも眉間に皺を寄せた

 

「なんだよそれ………アキトは、こねぇよ」

「え!?…一緒じゃなかったのかよ?」

「……アイツは他の女の尻を追い掛けに行ったよ!」

 

クリスには、まったく非はないのが少しばかりのジェラシーを攻撃に込めながらヒルダは、クリスを止めるべく攻撃を仕掛けたのであった

 

 

 

クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~

 

二十八話 真実

 

 

 

イルマを戦闘不能にした俺達は、当初の目的であるロザリーの援護に向おうとしていたが、俺にとっては見慣れた、ヒルダにとっては因縁深いラグナメイルが戦闘空域に存在していたのを確認した為、二手に分かれる事にした

 

―――レイジア

エルシャがエンブリヲの元から去る時に強奪いてきたラグナメイルの一機だが、今は〈アウローラ〉の格納庫に収納されている。しかも、機動キーとなる指輪は厳重に保管され簡単には持ち出せない

 

エルシャの離反―――――一瞬頭を過った思考を首を振る事で振り払い、しかしいざとなった時の為にも、何時でも落とせるように後をつけていたが、レイジアはクレオパトラと戦闘を開始しヴィルキスを離脱させていた

 

おおよそ、操縦者はエルシャだと思っていた俺は、好戦的なエルシャの操縦に驚きはしたが、オープンチャンネルで繰り広げられる姉妹喧嘩に操縦者がジル元総司令官だと判り、この場はレイジアに任せることにした

昔の俺ならエンブリヲに毒された女なんぞ信用になりない存在であったが、エルシャと言う前例がいる中、博士の旧友であった彼女を信じてみようと思えたのだ

 

不安材料が無くなった今、ロザリーの援護に入るより強敵に苦戦するタスクの援護に行った方が戦局的にも距離的にも得策だと判断した俺は、スラスターに一気に火を灯すとエンブリヲに向い突撃を仕掛けた

元より機動力、推進力を強化した〈高機動ユニット型ブラック・サレナ〉は、瞬く間の内に戦域を詰めてエンブリヲに受肉した

 

『ッ!』

『アキト!』

「タスク、援護するぞ……まさか卑怯とは言うまいな、エンブリヲ?」

『貴様…!』

 

エンブリヲの武器はビーム兵器、それに対してタスクは機関銃と火力に差が出てしまっているが、俺が援軍に来た事により形勢は逆転した

ビーム兵器に対し絶対的な防御を誇るDF(ディストンション・フィールド)の前に奴の攻撃は通らなく、逆に俺と言う盾を手に入れたタスクは優位に戦闘を進められた。しかし……

 

『……けして汚される事のない美しさ、しなやかな野獣の様な気高さ、実に飼い慣らし甲斐がある』

『ッ!』

『お前は知るまい、アンジュの乱れる姿を……彼女の生まれたままの姿を…』

 

ガツンと頭を殴られた気がした

いくらこの戦域に男しかいないとは言え、ここは戦場。色事の話をする場ではない。惚気自慢を交わす席でもなく友好な関係でもない敵としてこの話を仕掛けてくる目的なぞ只一つだ!

 

「……やり方は兎も角、感情に揺さぶりを仕掛けて来たか。タスク!惑わさ『大丈夫だよ、アキト』…そうか」

 

妙に自信を含んだタスクの声に何か策でもあるのかと思い、スラスターを全開にしエンブリヲに体当たりを仕掛ける。しかし―――

 

『知ってるよ、アンジュの内の黒子(ホクロ)の数までね!』

『『ッ!』』

 

ガツンと二度目の衝撃が俺に襲い掛かった

タスクの言葉に動揺し、操縦を誤ってしまった俺はエンブリヲに受肉することなく、奴の肩を掠めすだけで通り過ぎてしまった

 

『お前は何も知らないんだな、アンジュの事を…アンジュは乱暴で気まぐれだけど良く笑ってすぐ怒って思いっきり泣く……最高に可愛い女の子だよ。……彼女を飼い慣らすだって?……悲しい男だな、お前は!』

 

俺の後に続くようにタスクは、エンブリヲに切り掛かるが、ビームシールドにより塞がれてしまう

 

『ほう…以前の貴様ではないようだな?……ッ!貴様、アンジュに何をした!』

『アンジュとシタんだよ……最後まで!』

『なにッ!?』

『…くるんで…キスして…抱きまくったんだ!三日三晩ッ!』

 

タスクの言葉に動揺したのか操縦する手が止まったエンブリヲの腹部にタスクの蹴りが直撃した!タスクに仕掛けた筈の精神的な揺さぶりが自身に返ってくるとは奴でも考えもしなかっただろう………真面目に戦況を把握している此方がアホらしく思ってしまうがこの気を逃がす手はない!

 

『くだらぬホラ話で我が妻を愚老するか!』

『真実さ……アンジュは俺の全てを受け止めてくれたんだ。柔らかくて暖かい彼女の一番深い所で!』

『クッゥ!?』

『俺は、もう何も怖くない!』

 

動揺を隠しきれないエンブリヲの間合いにタスクが入り込み斬りかかる

普段の奴ならば容易に対処できる単純な攻撃であるが、今のエンブリヲにその攻撃を捌ける余裕はない!

間一髪、タスクの攻撃を避けたエンブリヲに俺DF(ディストンション・フィールド)Fを纏ったまま最高速度で奴に突撃した

 

『グぁッ!』

「惚れた女が他の男に抱かれていたとは……流石の貴様でも堪えたようだな、エンブリヲ」

 

ビームシールドで威力を削いだつもりだろうが、DF(ディストンション・フィールド)との相性は最悪。

威力の一割も削げなくダイレクトに衝撃を受けたエンブリヲは弾き飛ばされ、機体の性能からなんとか体制を整えたエンブリヲはタスクと同じ思念が籠った視線で俺を睨みつけて来た

 

『っく!アキト……まさか貴様も我が妻に手を掛けたと言うのか!』

 

この戦闘で三度目の衝撃が俺に襲い掛かった

どういう発想をしたら俺もアンジュを抱いた事になると言うのだ

 

「……勘違いするな処女好き。俺はアンジュとはそういう関係になるつもりは全くない!……むしろ貴様の『愛』と言うモノに吐き気がするだけだ」

『なにッ!?』

「『愛』した女なら例え使用済みでも…言葉が悪かったな、他の男に抱かれていようとも俺では得られない幸せを得たと思い彼女の幸せを願うのが彼女に選ばれなかった男のすることだろう」

『ッ!』

 

かつての俺はそうだった……

ヒルダがアルゼナルへ連れて行かれた日を境に彼女を救い出す為に生きて来た。そして彼女と再会した時には胸が高鳴った……彼女も俺の事を思い続けていた事に…

しかし、今の俺と一緒にいて彼女は本当に幸せになれるのか?危険が常に付き添ってくる日々を過ごす事になる俺との人生よりももっと彼女が幸せになれる事があるのではないか?……そんな思いから俺は一度、手にした彼女の手を放してしまった

……だが、ヒルダはそんな俺とでも一緒に居たいと再び俺を求めてくれた。だから俺は―――

 

「俺の手を掴んでくれたヒルダの『愛』に応えるためにも人の幸せを祝えない貴様の『愛』など認める訳にはいかないんだよ……この糞野郎が!」

『な、なにを!ぐぁぁ!』

 

再びエンブリヲに向い突撃する。エンブリヲも俺を迎え撃つ為にビームシールドを構えるが、今回は一味違うぞ!

最高速度を保ったまま俺は〈高機動ユニット〉をエンブリヲに向いパージした。〈D-T〉装備と同じく爆薬を搭載した〈高機動ユニット〉はエンブリヲを巻き込み激しい爆発を産む出した

 

『やったのか、アキト!?』

「いや、奴は多次元世界の住人。なれば奴の機体であるヒステリカも同じ。すなわち…」

 

爆炎が収まった先には先程の攻防が嘘の様に無傷なヒステリカが姿を現した

 

『……なんて卑猥で破廉恥な真似を…許さんぞ…我が妻を!我が愛を侮辱するなんぞ……貴様らの存在全ての宇宙から消し去る!』

 

俺は、外部ユニットがパージした事にとって本来の姿へと戻ったブラック・サレナのコンディションを確認しながらタスクの隣に並び立った

 

「…やるぞ、タスク」

『あぁ!例え奴が多次元世界の住人でも限界がある筈だ!奴の限界が来るまで……俺は戦う!』

 

俺は両手に搭載された二丁のハンドガンをタスクは機関銃を構えエンブリヲと対峙した。その時―――

 

「――――♪~♪~♪~!」

『この歌は!』

『サラマンディーネさんか…』

 

『永久語り』……アンジュの歌う『永久語り』と同じく歌で次元力に干渉し力を引き出す為の歌。その次元力は空間にも影響を与える…すなわち―――

 

――ギャァァアァァオォォォォン!!!

 

幾度なく戦い、此方に進軍してきたドラゴンの群れが数多に解放されたシンギュラーを通り此方に流れ込んできた

しかし、今は昔とは違う。アウラの奪還と目的は同じだが、俺達にとっては目的を同じにする同志として舞い降りて来たのだ

 

『形勢逆転だな、エンブリヲ!』

『そう見えるか―――』

「…エンブリヲ何を考えている!」

 

戦局は此方が圧倒的に有利、奴の手駒であるラグナメイルは一機戦闘不能、残りの二機もヒルダやサラマンディーネの部下に足止めされ上手く立ち回れていない

此方の勝利が目に見えていると言うのにエンブリヲの顔に焦りの色は窺えなかった

 

『何を考えている、か……君たちが考える私の敗北と私の勝利とは決定的な違いがあるものだよ』

「なにを……まさか!?」

『ふ……もう遅い!』

 

エンブリヲは前振りもなく、腕を下げた

すると今まで離れた戦域に居た筈のラグナメイル達がエンブリヲとドラゴンの間に突然と姿を現し、あからさまに操縦者の意志に反する行動を取るラグナメイル達は、自身の身もかえりみない特攻をドラゴンに仕掛け始めたのだ

 

『君たちは私の為に時間を稼いでくれたまえ』

『え、エンブリヲ様!何を!?ッ!?きゃぁぁぁぁ!』

『仲間を囮に使ったのか!』

『私は花嫁を迎えにいかなければならない……後は頼んだよ、みんな』

「戦闘不能な機体までも強制的に操作するとは……俺ですらそんな事はしないぞ」

 

視界の隅では戦闘不能まで叩きのめしたはずのエイレーネがドラゴンの腹に剣を付き差し、返り血を浴びながらもドラゴンの息の根を止め、左右から追撃してきたドラゴンに操縦者諸共真っ二つに食い千切られている姿が映し出されていた

 

「ッ!……タスク、お前はアンジュと合流しろ!」

『え?』

「聞こえなかったのか!エンブリヲはアンジュを迎えに行くと言った!アンジュの騎士である貴様はさっさとアンジュの元へ行け!」

『あ、あぁ!アキトは!?』

「エンブリヲを追う。サラマンディーネが『永久語り』を歌ったと言う事は収斂時空砲を使用したということ……あれの威力を押さえたとしても余波は計り知れない。アンジュは既に天ノ柱から離脱しているはずだと言うのに奴は天ノ柱に向った。……何か奴を殺す手掛りがあるのかもしれない!」

 

希望的観測になるが、無駄足になる事は無い筈だとエンブリヲを追う為にスラスターに火を灯した瞬間、天ノ柱があった場所から光の柱が立ち上り巨大な一匹の龍が姿を現した

 

「AUUUUURAAAAAAAAAAAAAAAKYAAAAAA!!!」

 

姿を現した龍の咆哮は空間を歪ませ一時的に次元融合に干渉を与える程に強力なモノであったが、突然と姿を現したドラゴンの姿が依然、サラマンディーネに聞いていたドラゴンの面立ちと酷似していた為、自然とコイツの正体も理解出来た

 

「純白の龍……コイツがアウッ!!」

 

ドラゴンの正体である真名を口にしようとした瞬間、アウラと俺の視線が交わった

そして気づいた時には俺はブラック・サレナの操縦席ではなくデミウルダスと契約を交わした空間に酷似した場所へと連れて来られていた

 

「ここは?それに中身が強制的に持っていかれたような感覚…………精神だけを持っていかれたとでも言うのか?……そんな芸当の出来る者など『多次元の死者と契約し哀れな使徒よ』ッ!」

 

突然、背後から声を掛けられ反射的に腰に収納されたナイフを手に取った俺は振り向き様にナイフを声が聞こえる方へと振り下ろそうとしたが、そんな自衛行動など無駄な足掻きだと知り振り下ろしていた腕は自然と勢いを無くしていった

 

「……やはり貴様か、アウラ」

 

後を振り返った先には、博士が好んで着用していた純白の研究委を纏った母性溢れる女性が此方に微笑んでいたのだ

 

「仮説は立てていたが、あの巨体を人間サイズまで抑える事が出来たとは驚いたものだ……それでなにようだ、アウラ」

『かの者は貴方の願いを叶える事はないでしょう』

「……なに?」

 

慈愛溢れる笑みから一転、我が子の不幸を惜しむように顔を歪めたアウラは俺と視線を合わせる事無く、心から申し訳なさそうに俺に言葉を投げかけてきたのだ

 

『かの者は神ではない。多次元に身を置き囚われの身となったエンブリヲと身を同じくする………哀れな同胞なのです』

「だからどうしたと言うのだ?現に俺は奴から……デミウルデスから力を貰った。奴は俺の望みを叶えている」

 

アウラの言う『多次元の死者』とは、『使徒』や『多次元』と言うキーワードから恐らく俺をこの世界に送り込み力を授けたデミウルデスを示しているのだろう

デミウルデスがエンブリヲと同じく次元力を使用する存在ではないのかとエンブリヲを調べていく内に感づいてはいたが、俺に力を授けた事に変わりない

 

貴様の話を聞いている暇はないとばかりに、柄を返そうとしたが、アウラは下げていた腕を胸の高さまで上げ、胸を押さえながら語り始めた

 

「人は一人では生けて行けません。孤独に心を蝕まれいずれは崩壊する。……かの者の死期は既に訪れています」

「…なんだと?」

 

仮にも俺に力を預けた恩人の死期と言われては流石に無視できないと、アウラの方へと向き直せば、胸に抱いていた手を大きく広げ俺の前に見慣れたマナ操作で創造できるようなモニターを作り出していた

 

「ッ!?」

 

そのモニターに映る映像に俺は息を飲んでしまった

蒼と碧の惑星と呼ばれていた地球は、一色の赤く染まり太陽のプロミネスの様な焔が立ち上がっていたのだから

 

「これは…」

「貴方が死て100年後の地球と言う惑星です」

「なっ!?」

「貴方が死て時も置かずに世界は戦火に呑まれ争いが絶えぬ世界になりました。国同士は自らの民を守る為に他国を侵略し奪い殺し合った」

「しかし、たかが100年でこの有様だと?……俄に信じがたい、これでは太陽ではないか」

 

まだ俺の記憶にある地球は汚染されていたとしても争いは起こっていなく、仮初の平和が保たれていた。それに俺はデミウルダスと地球を緑の星へと戻すと契約を交わしていた筈だ

 

「姿を変え心を偽ってもかの者は人の心までは動かす事が出来ない。…かの者や貴方の意志とは反し世界は無常なのです」

 

赤い地球が移ったモニターを左手に乗せたと思えば空いた右手に新たなモニターを浮かび上がらせた

 

「貴方が死して直ぐの世界です。かの者は貴方との契約を守り、地球を緑あふれる星へと蘇させましたが……人の心は変わらなかった」

 

アウラが浮かび上がらせた緑の地球は段々と赤いに染まっていき、地球と比較しても強大な発光がしたのち左手に浮かぶ地球と同じ赤のい地球に変わっていった

 

「……だからと言ってなんだと言うのだ?俺の死後、世界は救われ緑が取り戻された事には変わりない。……その後、世界が滅びの道を歩む事になろうとデミウルデスが俺に力を与えデミウルダスも俺との契約を守った」

「……」

「そもそも貴様の言う事が真実だと言う保証もない。……話は終わりだ、俺を元の元へ戻せ……俺は力づくでも構わないぞ?」

 

俺は下げていた腕を再び上げ、アウラの首元へと突き付けた

 

「………」

「………」

 

両手に浮かばせたモニターを消し去り、沈黙を持って俺の問に答えるアウラに苛立ちを覚えながらも突き付けたナイフを降ろす事はせずアウラの返答を待った。そして――

 

「もはや死ぬ運命の者の為に『生』を狩る行動は辞めなさい」

「ッ!…なにを言っている?俺の聞きたい事はそんな「かの者の死期は貴方が『生』を捧げて止まるモノではありません」……」

 

思わぬ返答に動揺した、してしまった

 

「かの者の死期とは貴方のいた地球と共にあります。幾数多の人間の行いがかの者の死期を定めた、それは貴方一人では争う事の出来ない程に……」

「……例えデミウルダスが死ぬ運命であったとしても奴は、俺との契約を果たした。ならば俺も奴との契約を守り、命を捧げ続ける事が通りだろう。……それに俺の行動で少しでも奴が延命できるのであれば俺の行動に間違いはない」

「………やはり貴方は優しいのですね」

「ッ!?」

 

更なる衝撃が俺に襲い掛かり、感情を揺さぶっていく

崩れ落ちてしまいそうになる足場を、俺はテロリストであり、殺人鬼だと必死に心に言い聞かせ感情を表に出さないようにしなければ今まで気づいて来たもの、越えてはいけない一線、開けてはいけないモノが開いてしまう気がしたのだ

 

「……しかし、その生き方は辛いだけ。本来の貴方は『生』を狩り取らず、逆に『生』を育てる者……自身の心を偽り続ければ貴方に本当の『幸福』」が訪れる事は有りません」

「……戯言を。俺が優しいだと?ふざけるのも大概にしろ!俺は数多の人間を殺したテロリストだ!そんな俺が!…そんな俺が優しい筈がない!」

「いいえ、貴方は優しい子です。『生』を奪ってしまった人間の為に花を手向け来世では幸せを掴めるようにと祈りを捧げる貴方は紛れも無く優しい子です」

「ッ!……俺は……僕は!」

 

しかし俺の抵抗は虚しく、真っ直ぐに俺を見つめ諭してくるアウラの言葉に俺の何かが開いてしまった

膝から崩れ落ち、カランと音をたてて手に持ったナイフが抜け落ちていった

 

「今からでも遅くはありません。私が伝えたかった事が貴方の心に伝わる事を私は切に願います……かの者が貴方の『優しさ』に惹かれ、光を感じたように……彼もそう望んでいるでしょう」

 

親が子の頭を撫でる様に、俺の頭を撫でたアウラは耳元でそう俺に伝える

その行為を不快に思い、手を払いのけようとしようにも既にあの姿のアウラはいなく、巨竜であるアウラがブラック・サレナを横切って飛んでいったのであった

 

長く、そして深く考えさせられ俺の根本に根付くモノを諭されていた時間は、どうやら現実時間にして見れば数秒の遭逢であったようだ

戦場は混沌としており、ラウラの解放に活気沸くドラゴン達が凱旋していると思いきや今までにない異常気象に翼を取られていた。その事からまだ戦いは終わっていない事を感じさせるが、俺は操縦席に項垂れてしまっている

 

倒すべき敵はいる。なせば成らない事も理解している。…しかし、俺と言うテロリストを構成するモノを否定され動く気になれないでいた

仕舞にはこのまま気流に呑まれ墜落し、『死』と言う答えを持って考える事を放棄しようとまで思えた矢先、ブラック・サレナが異常な力を暁ノ御柱跡から探知したのだ

 

「次元干渉?この数値はエンブリヲのモノだが……ジャンプ」

 

現在、次元間に干渉できる存在はエンブリヲとアウラのみ。

アウラに関しては億足の段階だが、先の現象を経験するに間違いがないと断言できる、そしてエンブリヲに関しては今まで何度も次元間に干渉している姿を目視ないし計測していた為、決定的だと言えるだろう

……しかし、今までエンブリヲは巧妙に次元干渉の足跡を消していたので、調べる事も無くダイレクトにブラック・サレナに異常が伝わる事が無かった

それが今となって表れるとは流石に奴も焦りを感じていると言う事か……

 

一旦、渦巻いていた思考を頭の隅に追いやり、エンブリヲが残したポイントへと跳躍する

もしかしたら奴を打破する武器が……情報が残されているかもしれないと思って……

 

しかし、跳躍した場所は大きく開けたホールの様な場所でエンブリヲを殺す情報があるとは思えない場所であった。だが、情報の代わりと言うべきなのか?…そこに居た人物が俺にとっては何の関わりもない人物だが、アルゼナルに取ってはキーパーソンとなり得る人物だった為、俺はブラック・サレナから降り、その人物の元へと足を進めたのだ

 

「哀れだな、ジル元総司令官」

「ふっ…最後に見る顔が貴様だとはな」

 

力なくエイジアに背を預けるジル元総司令は、俺を一目見ると、血で真っ赤に染まったライダースーツから煙草を取り出し口に咥えた

 

「最後が貴様で良かった。……煙草を吸わせてくれ」

「俺は煙管派なんでな、ジッポは持っていない……マッチでいいか?」

「吸えればかまわんさ」

 

膝を着き、彼女に火を灯してやる

怪我の具合から煙を吸うだけでも辛いと丸判りだと言うのに実に美味しそうに吸う有様は愛煙家としては好感が持てるモノだが、見ている此方が辛かった

別に久しい間柄でもなければ碌に話を仲でもない、しかし同じ愛煙家としては彼女が一服し終えると同時に介錯してやる事が至福の死に方だろうと何となくだが理解出来た

 

ホルスターから銃を抜き、ポロポロと落ちていく灰を横目に見ながらも標準を彼女の頭部に定めた――――――――が

 

「……」

 

――――――彼女の言葉が脳裏を過った

本来の…テロリストでも殺人鬼でもない、ありのままの俺は『生』を狩り取るモノではなく逆に生かす者、人の『死』を尊く思い花を捧げる事の出来る優しい心を持った男だと

 

別に人を殺す事に抵抗を持った事はない……いや、抵抗あったのだろう

博士の死に際から人と言う名の感性に蓋を閉じていただけで開けようとはしなかった、本当は『アキト・ミルキーウェイ』と言う器の中には後悔や罪悪感が渦巻いており、決して開けてはならないパンドラの箱になっていただけ………しかし、アウラとの遭逢が箱の鍵を開けてしまったのだ

 

「……今からでも遅くは無い。デミウルダスもそれを望んでいる、か」

 

恩人であるデミウルダスの死期を早めてしまうかもしれない、契約を破棄してしまう事に怒りを抱いて来るかもしれない。……だが、少しでも『生』を狩り取る道ではなく、『生』を生かす道がこの先に続いているのであれば………その道を歩みたい!

恨みも無く目的も無くなった今、俺は純粋に同じ愛煙家であり博士の友達であったこの女性を助けたいと思ったのだ

 

銃をホルスターに仕舞うと俺は、ブラック・サレナの操縦席から医療道具を取り出し中身をひっくり返した

 

「…なにをしている?」

「タスクに感謝するのだな」

「……なに?」

 

あの時と同じ様にケースの底に空いた穴に指を差し込みドライアイスで保存されていた一本の注射器を取り出す

 

「熱線、ビーム兵器か?……まぁ、その類による臓器の損傷、重度の火傷による臓器機能の低下それに出血多量……もはや手遅れと医者は診断するだろうが生憎と俺は科学者でありマウス実験(タスク)もされた薬を使う事に抵抗はない」

「なにを…言っているんだ?ッ!」

「貴様は助かると言う事だ」

 

俺の成す事に疑問の声を上げる彼女の首筋に針を刺し込み薬……高濃度の超対称性治療薬を流し込んでいった

血液の流出、重度の火傷、人体の損傷とマウス実験(タスク)のケースと似た状態……四肢の再生と臓器の再生の違いはあるが然程、問題はあるまい

シリンジ内に入った超対称性治療薬を全て投与し終えるとアレクトラの横に腰を下ろし、俺も煙管に火を入れた

最初の内は怪我の痛みと細胞が活性化し軋む身体に苦痛の表情を浮かべていた彼女であったが、次第に痛みが引いて来たのか大きく深呼吸を繰り返しながら息を整えていった

 

そして再び、煙草に手を掛けて口に咥え此方を覗き込んできたので、火を灯してやる

崩壊が進んでいる建物の中で悠然と煙を上げて一息入れる有様は可笑しなものであるが、俺は新たな道を歩む事の出来た喜びから……彼女は、道を歩み続ける事の出来る喜びから……外部の情報を遮断した

 

「……なぜわたしを助けた?」

「………俺はテロリストを辞める。今度は命を繋ぐ仕事をしてみたくなっただけさ」

「……そうか」

「御代は………博士の話を聞かせてくれ、アルゼナルに居た頃の…貴様の友達だった博士の話を……」

「あぁ……」

 

2人があげる白煙が新たな可能性の狼煙に思え、俺は笑みを零したのであった

しかし―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――アウローラに帰還した俺達にアンジュが攫われたと聞かされ俺の物語はまだ終わっていない事を実感したのであった

 




タスクの完治フラグはジルの為のモノでした
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