博士の出生などは、オリジナル設定です
エンブリヲさんが、遺伝子工学で『マナ』持ちを作り出したのなら、後付けで『マナ』を付けられる事も出来るのではないか?と思う人がいても良いと思ったので…
……最近、ヴィヴィアンとメイちゃんが天使に見えてきたでござる
太陽はとうに沈み、月が部屋を照らす中、司令室だと思われる一室に4人の女性と一匹が煙草を吹かせる女性の前に集まっていた。そして、真目の中、最後の一人が入室する
「お待たせ」
「ご苦労であった、メイ。……監察官殿は?」
「部屋で震えているよ。…やっぱり、ショックが大きいみたいだね?」
せせら笑う者がいれば、眉間に皺を寄せるモノもいる。
しかし、共通して言える事はみな、監察官の大事など全く考えていなく、彼女の対応を楽しんでいる節があった
そんな中、一番年下の少女が顔を下げたまま目の前の女性へと問を掛ける
「ねぇ、ジルもしかしてだけど……」
「言いたい事はわかっている。まずは、これを見てくれ」
メイの言いたい事を読み取ったのか、手前のショートモニターに一人の人間が映し出された。全身を黒の衣服を着こみ、適当に伸ばしただけと思われるが何故か形になっている茶色の髪、そしてなにより質問を問いかけた少女と同じ瞳の色をした青年が映し出されていた
「アキト・ミルキーウェイ……二年前程から世間を賑せているテロリストだ」
テロリストと言う言葉に、この場にいる全員がある計画を思い浮かべ目の前の女性へと視線を送るが、帰ってきた返答は望んだものではなかった
「彼は『リベルタス』とは無関係さ………いや、関係者ではあるが」
そして、もう一つモニターを起動させると彼に似た顔立ちの女性が浮かび上がった
「ツキヨ・ミルキーウェイ。彼女は『人間』でありながら、『リベルタス』に協力した『人間の裏切り者』さ」
彼女の事を知らない二人は驚愕を露わにし、知らなくても彼女がした事の重大さを理解したゾーラは口笛を奏で、彼女の事を良く知る3人は重く顔を伏せた
そんな3人の事などお構いなしに、ゾーラはおちょくる様に言葉を口にした
「『人間』様が、私達『ノーマ』の味方をするってどんだけ変わり者だよ!前の失敗はソイツが手を引いていたからじゃないのか?」
「ちょっ!ゾーラ隊長ッ!言葉を選んでく「いいんだ、サリア」…わかりました」
ゾーラの言い様に食い掛かるサリアをジルは手で制した
「そう思われても仕方がない、が……『リベルタス』の参加は彼女の出生が関わっている」
フィルター近くまで吸われた煙草を灰皿に押し付け、新たに煙草に火を付け口にした
「彼女の母親は、古の民……まだ『甲冑師の一族』と言われる前の人間であり、古くから世界と戦っていた前任者だ。」
「「「ッ!」」」
ジルの言い様に三人は息を飲んだ。それと同時にある疑問が浮かんでくる
「で、でも!彼女は『ノーマ』ではなく、『マナ持ち』だった筈!『ノーマ』から『マナ』の恩恵を持つ者が生まれるのでしょうか?」
サリアの疑問は二人も思ったらしく、黙ったままジルを見つめた
「29人」
「……え?」
「彼女が18から産んだ赤子の数だ」
「「「ッ!?」」」
途方もない出産数に三人は驚きを露わにした
「当時、馬鹿げた科学者が『ノーマ』の生態を調べようとしてな?捕虜として捉えた少女を薬付けにし、次々と孕ませ赤子の生態を調査した。案の定、母体が過度の出産や薬物に耐える事は出来なく29人目を産んで直ぐに死んだ」
「あ、あの…」
「なんだ」
おずおずと手をあげながら質問してくるメイにジルは視線だけを送りながら先を促した
「ツキヨさんの出生はわかりました。…それで、残りの28人の子供は?……もしかしたら私の伯母さんが「メイ」ッ!?」
ジルの言葉にビクリと体を震わせる少女の目には期待が含まれてしたが、直ぐに消える事になる
「29人中2人。……彼女が晩年で生んだ『人間』の数だ。一人はツキヨだが、もう一人は政府の加護を受けてお気楽に暮らしている」
「…そう、ですか」
「あぁ……話がずれたな。ツキヨは果せなかった母の思いを継ぎ『リベルタス』に参加を希望し共に戦ったが……開発中のパラメイルを奪取し脱走を計った」
「脱走……」
「あぁ、そして今日、そのパラメイルが彼女の甥を乗せて我々の前に姿を現したのさ」
二つのモニターを重ねると、今度は黒い機体が浮かび移された
「ホワイト・リリウム。いや、ブラック・サレナ―――『愛』と『呪い』、か…」
ジルが呟いたと同時にモニターは動き出したのであった
クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~
第八話 黒の王子様
『そうかい、なら手を貸してもらおうかね?』
「……了解した」
ジャスミン、か……
博士の母親代わりが、いきなり出て来た時は驚いたが…ある程度は、予想していた
酔った際によく博士が口にしていた人物の一人であり、博士が生前に救いたいと言っていた一人。……アレクトラは死去していたが、彼女がいれば今後の介入も難なくやり過ごす事が出来るだろう。だが、まずは―――
「目の前の問題を片付ける方が先だな?―――次元跳躍システム起動」
鳴り響く機械音と共に機体全体を包むようにDFを展開する。
転移先もさほど距離もなく、イメージもし易い場所であるから、ます失敗する事はないだろう。
転移先の事も考え
「ジャンプ」
―――飛んだ
目の前の風景が、海底から一気に青空へと変わる。そして目の前に写るのは数多の閃光
「…
閃光はDFに接触すると反れたり、弾き返したりして互いをぶつけ合い相殺していった
そして、全てを相殺し爆煙が晴れ目の前がクリアになった瞬間に動き出す
2丁のハンドガンは、重装甲のせいである程度の角度調整しか出来ない為、機体自身を回転させながら確実にドラゴンの命を狩り取っていく
掴みかかって来たドラゴンに対しては至近距離から発砲し命を狩り取り、旋回するドラゴンには最高速度を保ったまま
ドラゴン達も俺の事を脅威に感じたのか赤いグレイブを無視し俺を集中的に狙うように動き始めた
「そうだ、それでいい。貴様の命を狩り取るのは……俺だッ!」
初めてブラック・サレナで戦闘を行うと言うのにコイツは最初から望んでいたかのように俺の命令通りに動き、命を狩り取っていく。―――そして、機体を赤く染めドラゴン達を殺していくにつれて湧き上がってくる高揚感に俺は口元を歪めた
「ははっ!いいぞ!いいぞッ!敵を殺し俺は『生』を勝ち取る!貴様たちの命……俺に捧げろっ!」
もはや蹂躙するだけとなった戦闘は、最後の一匹を残し全てを肉片に変えるまで続けられた
「……さて、最後は貴様だけだ。精々楽しませろ、デカ物ッ!」
ハンドガンを発砲しながら中型種に喰らいつく
ハンドガンの何発かは、ドラゴンのバリアのようなモノに遮られてしまうが、
グチュリと肉が潰れる音とドラゴンの悲鳴に更に口元が上がり、今度はゼロ距離でハンドガンを撃ちこんだ
ドラゴンの身体を蹂躙し、撃ちこむ程に血吹雪が湧きあがり機体を赤く染めていくが、ドラゴンが海に飛び込んだ為、強制的に剥されてしまう
「…くそ。あと一息だったと言うのに」
『―――るか!?聞こえるか!』
湧き上がる高揚感に水を差すかのように、最初にコンタクトを取った司令官の声が通信機から聞こえてくる。その声を聴いた瞬間、興が覚めたとばかりに冷静になっていく自分がいる事に気づいた
「……なんだ」
『その機体には凍結バレットは積んでいるのか?あるのなら使え、無ければグレイブと協力し凍結しろ』
なぜ、コイツは高圧的に話すのだ?もはやそれは命令に等しいと感じるが……
もとよりブラック・サレナに搭載された武装はハンドガンと凍結バレットのみ
凍結バレット事態がどれほどの規模を凍らせるのか不明で、いままで使用しなかったが、コイツ相手なら試すにも調度いい、か―――
「了解した。凍結バレットを使用する」
片方のハンドガンを装甲の中に収納し、凍結バレットを取り出す
使用方法はシンプル。直接相手に撃ちこむだけ……
DFを保ったまま残りのハンドガンで牽制を行いながら接近し、そして―――
「沈め」
ドラゴンに撃ちこんだ
撃ちこんだ場所からドンドンと凍っていき、終いには海を巻き込みながら巨大な氷塊を作り出したのであった
「それほどの規模とは……テロリズムに使えるな、これ?……ってマジかよ」
想像以上の威力に舌を巻くが、メインモニターに表示される数値が『655、497』を示しており目の前の氷塊が、まだ生きている事を物語っていた
「なんという生命力……だが、動けない者ほど的なものは、ない!」
トドメを刺す―――
勝者が敗者に降す事の出来るギルディ……絶対的な法則
再びハンドガンを構えると氷塊に向けて、発砲する。それは単純な作業であり氷を砕き、肉を削り、海を赤く染める。ドラゴン特有の生命力なのかいくら撃ってもメインモニターの数字は動かず、さらに鉛弾を撃ちこんでいく
通信から何やら停止の声が聞こえるが、何故敵に手を抜くのか不思議でならない
全ての氷を砕き、周囲の海を完全に赤く染め上げ頃合いに……やっと『死』をカウントし数値が『655、447』を表示した
「いきなり50、か…小型種は1カウントなのに中型種は50カウント。もしかしたら生命力によって狩り取れる命の重さが違うのか?」
それ理論だったら納得がいく
人間は1カウント、ドラゴンも1カウント。しかし未知の能力を身に宿す中型種は人間に比べ命の重さ、生命の神秘さが違う為、狩り取れる命が違っている
……デミウルダスがどのようにして打ち分けしているかはしれないが、中型種以上のドラゴンは人一人よりも多く人数を稼ぐ事が出来ると言う事だけわかれば十分だ
「中型種で50、大型種ではいくら稼げるのか楽しみだな……」
『ご苦労さん、と言いたいがやり過ぎじゃないか?』
「ッ!」
……抜かった、こちらの周波数を逆探知していたのか
声の発信源は接近してきているパラメイルのモノであり、サブモニターには、声を掛けて来たであろう金髪の女性が映し出されていた
『思ったよりそそる顔じゃないか』
「……貴様は『第一中隊隊長ゾーラだ』…貴様は、なぜ敵に情けをかける?ドラゴンは敵であろう」
『あぁ?もう勝負はついていたじゃないか……それに無駄弾を撃つ趣味はない』
無駄弾……出費の軽減?いや、他にも理由がある筈だ
今回の戦闘に出ていたパラメイルに、中型種を確実に殺す装備を積んだモノはいなかった
アサルトライフルは小型を殺すには十分力を発揮しているが、大型になると足止め、よくて弱らせる事しか出来ないでいる
小型ドラゴンの殺害は許可され、大型種のみ凍結する必要性……それは…
「ゾーラと言ったか?凍結されたドラゴンはどうなる?」
『ん?政府の奴らが研究の為に回収すると聞いたが?』
敵を分解・解析する事により敵勢力に対して有利に動く事が出来るのは理解できる。しかし、それは死体であっても可能な事。生け捕りにする理由は……解析の他に目的がある為
極力外傷がないまま、捕獲する理由は……もしや…?
「……ドラゴンとは本当に未知の生命体なのか?」
『ッ!……オマエ、何を知っていやがる?』
「その表情を見るだけで理解できる。今度からはサウンドオンリーにするんだな」
……あぁ、そういう事かよ、どうやら彼女達は俺と同類だったと言う事か
カウント数は謎のままだが、狩っているモノが同じならドラゴンがカウントされても納得できる
『ゾーラ、奴には聞きたい事がある。……手足を落としても構わん、捕獲しろ』
『イエス、マム!』
「残念だが俺の用事は終わった。引かせてもらう」
確か『アルゼナル』を管理しているのは、ローゼンブルム王国。
そこに行けば確定すべき情報やもっと詳しい情報が手に入るかもしれない。
俺は、ローゼンブルム王国にある拠点に座標を合わせ、イメージを固めていく。ゾーラ率いる第一中隊の妨害はあるが……この程度の妨害など無いに等しい
「時間だ。また会う事があるか『ちょっと良いかい?』…なんだ、ジャスミン」
別に無視したって問題はなかったが、攻撃の手が止み不意打ちを狙っているように思えなかったのでジャスミンの応答に答える事にした
……多分、ジャスミンが命令を出したのであろう
『こちらに付くつもりはないかい?ツキヨもこちら側にいた』
「ない」
『そうかい、残念だよ……』
「あぁ…」
とても短い会話であったが、ジャスミンも答えがわかっていたのか理由を聞く事も説得する事もしてこなかった。多少、心残りがある会話であったが、イメージは既に固まった。後は跳躍するだけ……
「話は終わりか、ジャスミン?」
『最後に一つだけ……ツキヨは満足して逝ったかい?』
「ッ!?」
……あぁ、なんで俺がこんなにもジャスミンに対して素直になってしまうのか、やっと理解したよ
「…満足か知らないが、笑顔で逝ったよ」
『ありがとうよ、それを聞いて私は満足だよ………風邪引くんじゃないよ、アキト』
「あぁ、ばぁさんも身体には気をつけろよ」
博士が俺の親代わりであるように、ジャスミンが博士の親代わりなら……ジャスミンは俺の祖母じゃないか……通りで心残りがあるはずだよ
緩んでしまう目元をバイザーで隠し、口元に緩む前に俺は「ジャンプ」と短く呟くのであった
◆
時は戻り―――司令室においてブラック・サレナの姿が突然と消えた所で映像は終了した
「以上がブラック・サレナの戦闘記憶だ。…逆探知のおかげで機体名と顔写真を判明する事が出来たが………直接戦闘したゾーラとサリアは何か感じた事はあるか?」
ジルの問に二人は顔を顰めながら口を開いた
「腕は『アルゼナル』の連中の中でも一流だ。人型形態だと言うのに戦闘機形態並みの機動力で飛行してくる。……掠らせるのが精一杯だったさ」
「ですが、ブラック・サレナの周囲を覆っていた膜は、実弾による攻撃が通る事が判明できます……装甲が厚くて決定打を与える事はできませんでしたが……」
「ふむ…」
顔を伏せる3人に対し、メルは違った方面でブラック・サレナとアキトを考えていた
「ブラック・サレナが張っていた膜や瞬間移動は、ある程度はわかるよ?……ディスト―ションフィールド。膨大なエネルギーを用いて、自機の周囲の空間を歪ませる一種のバリアだよ。ビームや光学兵器に対して有効だけど、ミサイルや銃弾などの実弾兵器には相対的に効果が薄いんだ」
「……あの瞬間移動は?」
「あれは……物理学の一つである電磁気学の基礎となる方程式上、あり得るかもしれない先進波と呼ばれる概念を用いた空間跳躍……だと思う」
「…随分と歯切れがわるいわね?」
マギーの問にメルは顎に手を添えながら、しかしどこか嬉しそうにしながら答えた
「
「……そのわりには嬉しそうね?それにお兄って?」
メイの表情を不思議に思ったマギーが、問いかけるもメイの頭を強引に撫でるジャスミンの手が代わりにメイの答えを代弁した
「ツキヨの母が『甲冑師の一族』って事はメイの親戚、その息子のアキトが『ヴィルキスの甲冑師』を継いでいるんだ。そしたらメイの従兄だ。……だろう、メイ?」
「ッ!うん!」
「そう、ね……お兄ちゃんに負けないように頑張らないとね?」
「うん!お兄に負けないように頑張るよ!」
「ははは!娘ばかりだったが、私の息子はパラメイルの腕も技術屋の腕も一流だったねぇ!私は鼻がたかいよ!」
一室に集まる人数は6人……しかし、半分は顔を顰め、もう半分は笑顔を浮かべる
突如現れた黒百合の悪魔は『アルゼナル』に新たな問題と歓喜の風を運んだのであった
そしてココにも一つ、喜びの風が………
「ヒルダ~?『はつもの』の報酬金出たんだろ?なんか奢ってよ!」
「はぁ!?なんで奢らなきゃいけないのよ!それにもう使っちゃったわ」
「マジかよ!?」
「精々、自分で稼ぐんだね!」
仲間に、手を振るヒルダの指先には銀色のリングが輝いていた
補足設定
「金が全てが帰るのがアルゼナル」と言うジルさんの言葉からアルゼナルで没収されたモノは買い戻す事ができる設定を考えました
……人身販売よりとても良心的だと思います