旧時代の『異能』は現代の『普通』足るか?   作:しらおりんりん

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興奮しちゃうじゃないか

 正人は続く種目を呪力による身体強化を封じ、"千変万化"だけでこなしていった。個性問題が解決したため余裕が生まれ、一緒に観戦している切島、葉隠と談笑しながらクラスメイトの個性の観察していた。

 

「(『爆破』、『無重力』、『創造』、『尻尾』……個性の強弱はあれど、やはり使い方次第なところもあるな。反復横跳びの時の峰田くんとか面白かった。だからこそ、彼は気になる)」

「真田、麗日みたか!? 記録無限だってよ無限!」

「凄いよね。制限ないのかなアレ」

「んーん、本人に聞いたんだけど重量制限あるんだって! キャパ超えると吐いちゃうみたい!」

「ほへーそうなんだ。そういうのもあるんだね」

「まぁ、限界あるよな。それを越えてこそ真の漢だけどな! 

「えー? でも無限の上ってなに?」

「……わからん」

「なんだろうねー」

 

 粒揃いの個性の考察を続けている正人だが、その中でも反対の意味で異質極まる天パの緑髪……緑谷出久に特に興味を惹かれる。

 

「(彼は僕と同じ無個性なのかな? 僕みたいに呪力を扱えるわけでもないし、目立った成績も演出もない。とても実技を突破できるとは思えないな……)」

「緑谷くん、このままではマズいぞ……?」

「ったりめぇーだ! 無個性のザコだぞ!」

「無個性!? それは嘘だ、入試の時に成し遂げたことに説明がつかない!」

「は?」

「飯田くん、彼は何やったの?」

「それはだな……」

 

 どうやら秘密を知っているらしい飯田に問いかけ聞き出そうとしたところで、緑谷がボールを投げたようだ。結果は、46m。飯田くんは何を見たんだ? と再度問いかけようとしたが、その答えは相澤の口から話された。

 

「いま、僕は確かに使おうと……!」

「だから個性を()()()。全く合理性に欠くよあの試験は」

「消す……!! そうか、抹消ヒーローイレイザーヘッド!」

「え、知ってる?」

「名前だけは見たことあるかも! アングラ系だったはずだよ」

「緑谷、お前個性の制御ができないんだろ。実技試験の時のことを繰り返す気か? 大型ロボットを破壊し、腕をぶっ壊したことを。そして、誰かに救けてもらうことを」

「いや、そんなつもりじゃ……」

「周りはそうせざるをえないという話だ。お前のヒーローとしての精神は認めてる。だが、それに見合う力の制御ができないのなら、お前はヒーローになれない……個性は戻した。さっさと2回目をやれ」

「(なるほど、彼の個性は超パワー、そしてそれを制御できていないと。そんなアンバランスなことあり得るのかな? 個性持ってないからわからん。というか、相澤先生の個性ヤバいなぁ。僕が無個性だってバレるかもしれない。気をつけないと……って実技じゃ身体強化も使ったか。照らし合わされたらバレてそう)」

「彼は先生と何を話していたのだ?」

「除籍勧告だろ」

「(自信ニキ朝から当たり強くて笑っちゃう。幼馴染とかいってたけど過去に何かあったのかな)」

 

 耳に呪力を集め聞き耳を立てていた正人は一人真相を知った。同時に、自分にも危機が訪れていることも。だが今は考えても仕方がないことだったため、緑谷の第二投に注目する。

 

「(さぁ、どうする。魅せてみろ)」

「(今の僕じゃ調整はできない! かといって同じことの繰り返しは確実にアウト! 僕にできることは一つだけ、全力で……!)」

「見込み、ゼロ……っ!」

「マジか?」

 

 緑谷は全力で腕を振るってボールを投げる。正人はその瞬間を目を凝らしてじっと見ていた。だから気づけた。先ほどとは違い緑谷の指のみに赤い亀裂が駆け巡るのを。

 亀裂が生み出した力はボールへと伝わり、空へ高く飛んでいく。記録は705.3m、初めてのヒーローらしい記録であった。泣きそうな顔をした緑谷は使った右腕を押さえつつ、相澤に意志を表明する。

 

「先生……! まだ、動けます!!」

「こいつ……!」

「(この状況をあの短時間で打破するなんて……彼は窮地にこそ輝くのかな? まだまだ不安定ではあるけど、足りない部分を発想で補う……良いね、とてもイイ……! あぁ、インスピレーションを受けた……興奮しちゃうじゃないか……緑谷出久!)」

 

 その後はなぜかキレた爆豪が緑谷に問い詰めたり、それを巻きつけていた布で相澤が鎮圧したりと一悶着あったが、無事に個性把握テストは終了した。正人は4位であった。元々順位には執着していなかったためこんなもんだろうと納得しているし、何よりかなりの()()があった。

 そのため正人は今日一日中気分が良かった。なお、最下位の除籍は嘘だったらしい。生徒の力を最大限引き出す合理的虚偽だとか。

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