旧時代の『異能』は現代の『普通』足るか? 作:しらおりんりん
「今回の戦闘訓練のテーマは屋内での対人戦闘! 統計的に凶悪敵は屋内の方が出現率が高いんだ。そこで! 君らには【敵組】と【ヒーロー組】に分かれて、2体2の屋内戦を行ってもらう! コンビ及び対戦相手はくじだ! さぁみんな引いてくれ!」
しかも、ただの屋内戦ではなくちゃんと設定が用意されている。敵はアジトに核兵器を隠しており、ヒーローは敵の妨害を掻い潜りながらそれを処理するというもの。
ヒーロー側の勝利条件は制限時間以内に確保テープを敵に巻いて捕まえるか、核兵器に触れて確保すること。
敵側の勝利条件は制限時間まで核兵器をヒーローから守るか、確保テープを巻いてヒーローを捕まえること。
続々とクラスメイトがくじを引きにオールマイトの元へ集う。周りを見ると既にペアができているところもある。そして正人の順番が回ってきた。
「じゃあこれ。ん? オールマイト」
「なんだい真田少年」
「あぁいや……いやじゃないか。これ、オールマイトが描かれてるのですが……」
「おっ! それは当たりだね! このクラスは21人だろう? オールマイトを引いた君は最後に戦闘訓練を行う! ペアは指名、対戦相手は立候補制にしようかなって!」
「みんなの個性や立ち回りを見てから決めれるんだ。確かに当たりですね」
これは思わぬ棚ぼただ、と正人はひとりごちる。即席のペアと対戦ということもあり自身の隠している手札を晒すことになるのでは、という懸念があったからだ。
これなら自分と相性のいい人物を選べばまだ手札を伏せておける。全員がくじを引き終わり、正人を除くペアが確定する。
「続いて最初の対戦を決めよう……これだ! Aコンビ【ヒーロー】
「(よりによってそこ? オールマイト、いいくじ運してるな)」
オールマイトが引いたのは緑谷・麗日のヒーローチームと、爆豪・飯田の敵チーム。衝突を周りに隠していない者同士、ちぐはぐな緑谷と自信に満ち溢れた爆豪の戦いが始まる。
正人は他の人の意見を聞いてみたいと思い、近くにいた常闇、蛙吹改め梅雨ちゃんと観戦することとなった。なお、轟には断られてしまった。
「警戒されるだろうけど、『無重力』があると入り口が多くていいね」
「そうね、便利な個性だわ」
「だが機動力は爆豪たちにも言えることだ」
「そうだね。だから……って言ってる側から奇襲きたね」
緑屋たちがゆっくりと屋内を進んでいると、分かれ道から突然爆豪が個性を使って奇襲を仕掛けた。爆豪は緑谷に対し右腕で薙ぎ払うように大振りを放つも、緑谷がそれよりも早く爆豪の懐に飛び込んだ。振られた腕を掴み勢いを利用して、見事な一本背負いをお見舞いした。
「奇襲も良い手だった。しかし……」
「緑谷ちゃん、よく対応できたわね……」
「というより、知ってた感じがしたな」
「それは爆豪の癖を緑谷が把握していたということか?」
「確証はないけどね。あれだけ因縁つけられてるし、いつかやり返すために研究してましたって言われたら納得できるよ」
「緑谷ちゃんと爆豪ちゃん、一体何があったのかしらね」
「それは、俺たちが踏み入っていい問題ではないだろう」
「僕は興味ないね」
立ち上がった爆豪は側から見てもわかるほど苛立ちを隠しきれていない。麗日を先に行かせた緑谷は爆豪との戦闘を続行する。
再び大振りを避け路地へ逃げ込んだところで、麗日の方を見ると既に核を見つけていた。最も、なぜか麗日の居場所は既に飯田にバレているのだが。緑谷の方へ視線を戻すと、対峙している爆豪がグレネードを模した腕を緑谷に向けており、空いた手で何かを操作していた。
「爆豪少年! それはダメだ!」
これから起こることに気づいたオールマイトがストップをかけるも爆豪は止まらず、操作している手を後ろに振り抜いた。
瞬間、轟音と振動が全員を襲った。モニターは接続不良を起こしながらも起きた出来事を正確に捉えていた。圧倒的な爆破の暴力が通路を包むのを。
「緑谷ちゃん、大丈夫なのかしら!?」
「何を考えているのだ、爆豪」
「(感情を手懐けよ、個性にも言えることか)」
「爆豪少年! 次にそれを撃ったら君たちの負けとする! 屋内で大規模破壊は好まれないし、なにより訓練の域を超えている!」
「〜〜ッ! じゃあ殴り合ってやらぁ!」
爆豪は跳躍し、爆破の推進力で緑谷に接近する。緑谷は先ほどのダメージを引きずっているのか、避けるよりも反撃を選択した。だが、緑谷の差し出した拳に差し出したのは脚。行動を読んでいた爆轟は拳を蹴り付け距離を離した瞬間爆破を喰らわせる。
「意趣返しか。なんという男」
「爆豪ちゃん、とんでもないセンスしてるわ」
「でも、それだけだ」
「どういうことだ?」
「ボコボコにしたら訓練は終わる? 違うでしょ。勝利条件を履き違えるのは良くないね」
「でも、もう勝ったも同然でしょう? お茶子ちゃんじゃあの2人には勝てないと思うわ」
「だから、その認識が間違ってるんだって。まぁ観てようよ。もし緑谷くんが負けたら僕の考えてたこと話すから」
緑谷はなんとか逃げ出すものの、ついに追い詰められてしまう。音声は聞こえないが何かしら掛け合いをみせるが、爆豪の方が焦っているように見える。
意を決したのか2人は最後の攻撃に移る。片や爆破が右手の中で唸り、片や赤色の力の放流が右腕を走る。渾身の攻撃が交わるその時。
「麗日さん行くぞ!!!」
爆豪の暴力が緑谷を襲ったのに対し、緑谷の暴力は上……ビルの天井を穿つ。それは最上階まで及び、核を持つ飯田と麗日の間を通り抜ける。
「いただき!」
「なッ! しまっ! 振動が!」
麗日は床に穴が開いたのと同時に自身を個性で浮かし跳躍、そのまま核に触った。ビルに突然風穴が開いたこと、さらに力の振動が脚を取られたことで飯田は麗日を邪魔できなかった。
「第一試合! 勝者はヒーローチィィィィム!!」
全てが終わったころ、そこにはボロボロの勝者が倒れ、無傷の敗者が立っていた。