旧時代の『異能』は現代の『普通』足るか?   作:しらおりんりん

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機能で文章の整形があると教わったので全話に適用しました。


それで人を助けられる(ヒーローになれる)と思ってる脳みそに驚いたって言ってんだよ

「真田ちゃんがさっき言ってたこと、ようやく理解したわ」

「あぁ、勝負に負けても試合に勝つことはできる、そういうことだな」

「よかった緑谷くん勝ってくれて。恥ずかしい思いするとこした」

 

 その後の試合はつつがなく進んだ。衝撃があったことといえば、轟によるビル全体の凍結による瞬殺だろう。他のクラスメイトとは一線を画す出力。その実力を目の当たりにして正人の欲がくすぐられ、戦えないかなと思っていた。

 10組の戦闘訓練が終了し、いよいよ正人の番が回ってきた。

 

「それでは真田少年にはペアを先に選んでもらおう! 対戦相手は立候補者のくじで決めるぞ!」

「え〜と、じゃあやりたい人〜」

「「「はい!!」」」

「え、めっちゃやる気じゃん。なんで?」

 

 予想以上の立候補者に驚いていると、逆になんでだと峰田が問いただす。

 

「いやいや真田、なんで驚いてんだ? そりゃみんなやりたいだろ! それに、オイラにとっちゃ名誉挽回のチャンスだかんな」

「あ、峰田くんももしかして立候補した?」

「当たり前だろ! オイラまだいいとこ見せれてねーもん!」

「オールマイト、峰田くんをペアに選びます」

「え!?」

「オーケー! じゃあ対戦相手に立候補する人はくじを引いてくれ!」

 

 立候補者全員がくじを引き終わり、対戦相手が確定する。内訳は、ヒーローチームの轟、飯田ペアVS敵チームの正人、峰田ペアだ。正人と峰田は先にビルの中に入り核の位置を確認した。

 

「おい真田ぁ、立候補したオイラがいうのもなんだけどよぉ、ほんとにオイラでよかったのか?」

「みんなくじだったんだし誰でも良い、っていうのはあったけどね。でも峰田くんの個性と僕の個性、相性いいんだよね」

「お前の個性って自分の身体を変えるやつだろ? どこがいいんだ?」

「(変幻自在の方だからなぁ……)んー、伏せ札だし、やばくなったら教えようかな。そんなわけで、その辺にもぎもぎ? 付けといてよ」

「まぁよくわかんねーけど……従うぜ」

「あと作戦なんだけど……制限時間15分耐えようか」

「あいつら相手にか!? そりゃ無理って話だぜ」

「大丈夫、僕はカバディで守護神と呼ばれた男だぜ?」

「しらねーよ! チョイスも渋ィーよ!」

「峰田くんは確保に専念してくれたらオッケーだから。じゃ、がんばろー」

「どうなっても知らねーぜ俺は……」

 

 作戦会議が終了したところで、オールマイトが開始の合図を送る。その直後、氷がビルを飲み込むかのように侵食する。

 

「おい! どーすんだよ!」

「舐められてるなぁもう。でも強いよねぇ」

「おぉぉい! もう終わるのかよお! 手加減しろ轟!」

「はい、リバースカード、オープン。"変幻自在"」

「おおお!?」

 

 氷が正人たちの脚に届きうるところで侵食が止まった。正人が片手で床に触れ、"変幻自在"で氷の形を逆向きに変えたのだ。"変幻自在"は生成を止めることはできないが、個性から離れたモノであれば話は別だ。

 正人は出力を上げ、轟の氷の侵食に対し真っ向から迎え撃つ。氷漬けにされた領域を多少取り戻せたところで氷の生成が止まる。

 

「お、轟くんの方が消耗するみたいだね。前の試合の時寒そうにしてたし継続力はないのかな?」

「真っ向勝負であの轟に押し勝つって……いや、あいつなんで炎の方使わねーんだ? 自分の身体あっためながら氷使えばいーだろ?」

「そこだよね。単に同時に使えないか、それこそ消耗が激しいか……あとは……」

「あとは?」

「舐めプしてるかだね。もしそうなら、峰田くんはどう思う?」

「そりゃその隙をついて勝ちたいから舐めプしててくださいって思うけど?」

「舐めプさせてまま勝つ、か。いいね。どんな言い訳するかな」

「……お前、結構いい性格してんのな」

 

 2人で轟の個性の考察をしていると、正人は床の揺れを察知する。まだ正人は"変幻自在"を解いていないため、術式の影響下にある近くの床の状態を察知することができる。

 カツンカツンと硬質な音とブーツが床を蹴る振動をキャッチした。ヒーローチームが近くにいる。

 

「峰田くん、後ろの通路に2人いる」

「おい、そんなこともわかんのか?」

「それは置いといて、核は僕が守るから適当に戦ってよ。狙いは飯田くんね」

「オイラの『もぎもぎ』当てれば勝ちだしな」

「あぁあと気づいてないフリもしよっか。轟くんが舐めプしてたらやり返したいしね。今のうち」

 

 作戦会議を終えて、適当な会話を続けること数分、正人が腰を下ろしたところで、白い彗星が核に向かってくる。

 

「貰った!」

「なにを?」

「うおおきた! 食らえもぎもぎ!」

 

 白い彗星、飯田が個性で加速して一気に勝利へと手を伸ばす。それを警戒していた正人は"変幻自在"で核をずらしつつ、"千変万化"で腕を網状に作り替え捕獲しようとする。そこにもぎもぎも加わり確保……する直前で飯田は急バックして難を逃れた。その先には、右腕をこちらに伸ばしている轟。

 

「くっ……! 轟くん!」

「わかってる……!」

「いーや、ダメだね」

「っ!」

 

 轟は飯田が撤退できるように氷で道を作る。飯田が廊下に滑り込んだ後、氷の道は幅を広げ正人たちを襲うが、正人は既に氷の道に触れているため氷の道は"変幻自在"の術式対象。生成された側から操作し窓の外へ氷を逃す。

 

「轟くん! 一旦撤退だ! 真田くんの個性が厄介すぎる!」

「チッ……そうだな。俺も体温を戻さねェと」

「どうする!? 追うか!?」

「さっきも言ったけど、タイムアップがいいよ。まーだ舐めプされてるからね。こっちも舐めプして勝つ」

「そういえば炎使ってこなかったな。真田は炎も操れんの?」

「素手じゃ熱いから工夫しないといけないけどね」

「お前もお前でつええ個性だな……」

 

 時は過ぎていくものの、あれからヒーローチームは姿を見せていない。近くで足音もしないため、本当に居場所がわからない。

 一気に決めにくるだろうと予測した正人は節約のため"変幻自在"を解く。そして、制限時間は残り7分を切り始めたところで峰田が違和感を感じた。

 

「な、なぁ真田、なんか寒くねーか?」

「……なるほど、いま探知してみたけど僕たちの下の階すべて、窓を除く全てが凍ってる。体温を下げて動きを鈍らせたところで飯田くんが速攻かな?」

「それでも真田の個性でさっきみたいに核守れるよな? だから……」

「うん、別の狙いがあるね……核を取る狙いが」

「今のうちにもっと罠仕掛けておいた方がよくねーか?」

「そうしよう。そして、罠といってもこういう罠はどう?」

「……轟の氷がネックじゃないか? バレたらすぐ取りにくるぜ?」

「別に防がれてもいいよ。僕が止めれば良いだけだし」

「……いけんだな?」

「峰田くんの個性があればね。じゃ、僕は行くから敵が来たら無線で教えて」

 

 正人はビルの床に自身のイメージする罠の図を彫った。それをみた峰田は了承し、早速準備に取り掛かる。

 あとよろしく、と拠点作成を任せ、正人は一人部屋の外に出る。部屋から出た正人は"変幻自在"で部屋の出入り口を全て塞ぎ、中の様子を悟らせないようにした。

 周囲を警戒しつつ辿り着いたのは核のあるフロアの真下の部屋。部屋の中央に移動した正人はあぐらをかき、両手を床にピッタリ貼り付ける。

 

「(集中しろ)」

 

 あとは、合図を待つのみ。

 


 

 奇襲に失敗した轟たちは次こそ確実に取る策を考え、下準備として下の階と核のあるフロアの窓全てを凍らせ室内温度を下げた。

 制限時間は残り5分、決行の時間となり、二人は最後の打ち合わせをする。

 

「飯田、お前は窓につながったこの氷の道を"エンジン"で加速して滑り、核を取る」

「あぁ、君は逆方向から突入して制圧する。ただ、気をつけるべきは罠だろう」

「峰田……だったか。あいつの個性も、真田の個性も全部凍らせりゃいい。突入前に窓の氷壊して多少中が見える」

「だが、真田くんの個性に打ち勝てるか?」

「次はヘマしねぇ。あいつも俺の個性と撃ち合いで手一杯になるはずだ……そろそろ時間だ。窓の氷壊すぞ」

「ふむ……核が何かに包まれてはいるが、その他は何も見えない。なんなら敵もいないじゃないか」

「好都合だ。突入時に不安がなけりゃなんでもいい」

「わかった。君に託そう。その代わり、核は俺に任せてくれ」

「頼む。じゃあ、スリーカウントで行くぞ」

 

 最後の作戦のすり合わせが完了し、轟が指を用いて突入のスリーカウントを始める。

 

 3

 

 2

 

 1

 

 

「行くぞ」

「あぁ!」

 

 ビルの外に設置された勾配のある氷の坂は核のある部屋の窓につながっている。そこから同時に滑り降りた轟たちは部屋に侵入した。

 中はぱっと見誰もおらず、仕掛けもない。核は布に覆われているが真ん中に鎮座している。迎撃を警戒していたが予定は変わらない。

 轟は部屋全体を凍らせ、飯田は核に向かって一直線に突撃した。そして飯田が核に手を伸ばし、布を剥いだ。そこには。

 

「ッ! 轟くん! フェイクだ! 核じゃない!」

「なんだと!?」

「真田! 今だ!」

「オーケー」

 

 布の中には核を模ったネズミ色のオブジェがあった。その事実を共有した直後、部屋の床が崩れ落ち、轟たちは階下へ落下した。だが緊張を解いていない轟は機転を効かせ、右手を下に突き出し氷を生成する。

 

「っ! 真田!!」

「勝負しようか」

 

 真下の部屋にあったのは、大量の紫の球とその中心であぐらをかいている正人。轟は正人の捕獲が一瞬脳裏によぎったが、核の位置も今の状況も悪い。体勢を立て直す方が先だと氷を生成し落下を防ごうとした。だが、それを正人は許さない。氷の生成以上の速度で氷が横に逸れ、轟たちを支える氷がなくなる。

 

「まだだ……っ!」

「……」

 

 轟はまだ諦めず、左手も真下に構えて炎を放とうとした。しかし、轟はなぜか発動をやめ、再度床に氷を放とうとするが、正人が轟の右腕を蹴飛ばしたためあらぬ方向に氷が生成された。

 再び右腕を下に伸ばそうとするも、その頃にはもぎもぎのある床にと衝突していた。だが、まだヒーローは負けていない。

 


 

「俺を忘れるな!」

「忘れてねぇよ!!!」

「なっ! 峰田くん!?」

 

 偽物の核を足蹴にし、個性の推進力を活かしもぎもぎの無い壁面へ向かうおうとするも、脚は空を切る。驚いて声のした方へ顔を向けると、宙吊りになっている偽物の核が。そして、頭から血を流しながら見下ろしている峰田がいた。先ほど空いた穴の縁に立っており、手には先端に紫の球をつけた長い棒と、それにくっついている核があった。

 さらに峰田は棒を放り、もぎもぎのついた板を飯田めがけて力いっぱい投げる。飯田は回避行動を取れず先に床のもぎもぎと、上から降ってきたもぎもぎにサンドイッチにされた。

 そして正人は轟たちが動けないかじっと警戒していた。その数分後、タイムアップがオールマイトから告げられた。

 


 

「峰田くーん、降りといでー。キャッチするからー」

「野郎に抱かれる趣味はねーよ。オイラには跳ねるって言ってなかったか?」

「おー便利だね」

 

 正人が上にいる峰田に向けて両腕を開いたが、峰田は無視して別方向に飛び、もぎもぎで跳ねて着地する。

 

「……真田くん」

「なにかな?」

「どうして確保テープを巻かなかったんだ?」

「反撃警戒と、動けないなら巻かなくてもいいかなって」

「本物の核はどこに?」

「あれなら上の階にあるぜ。もうわかってると思うけど、真田は床を変形させられるんだ。上の床ぶち抜いたあと、もぎもぎくつっつけて運んだ。バレるかヒヤヒヤしたんだぜ?」

「……完敗だ。だが、次は負けん」

 

 

 敵チームの作戦に完全にしてやられたと感じた飯田は素直を負けを認め、それでもリベンジを誓い笑った。飯田と峰田はお互いの感想戦をし始めて、それを見た正人もいい訓練だったと先の戦闘を反芻している。

 だが、もう一人のヒーローは違った。悔しさを隠しきれていない表情を見せる轟だ。

 

「……真田、その気になれば、もっと早く終わらせられただろ」

「それはわかんないね。飯田くんはともかく轟くんがどこまでやれるか観てないし」

「だが余裕あるのは事実だろ……! こんな大掛かりな罠じゃなくても良かったはずだ……!」

「別に、僕たちは油断してなかっただけだよ。君たちの力量を誤って負けるなんて恥ずかしいからね。というかなんで炎使わなかったの?」

「……戦闘に置いて、(ひだり)は使わねぇ……」

「……結局舐めプかぁ。つまんないの」

 

 正人は最も当たってほしくない予想が当たってしまい、失望からその事実を呟いた。それを聞き逃さなかった轟は途端顔を歪め正人に食ってかかる。

 

「……てめえ、俺の事情も知らねぇ癖に……! それに、お前だって舐めてたじゃねぇか!」

「だから言ってるでしょ、僕たちは油断していない。まぁ多少そういう面もあったけどね」

「……さっきも言ったが、俺は左を使わずにヒーローになる。これは俺の誓いだ。誰にも文句は言わせねぇ」

「……驚いた」

「……何?」

「それで人を助けられる(ヒーローになれる)と思ってる脳みそに驚いたって言ってんだよ。お前の過去とかどうでもいい。残念だよ本当に。峰田くん、飯田くん、僕は先に戻るよ」

「……ッッッ!」

「お、おう」

「真田くん、轟くんと何か言い争いをしていたが、何かあったのか?」

「音楽性の違いがあってね。僕はphonkが好きだけど轟くんはそうじゃなかっただけだよ。じゃ、お疲れー」

「ふぉ、ふぉんく?」

「飯田知らなそーだもんな。超かっこいいジャンルだぜ?」

 


 

 正人が先に戻り、担架で運ばれながら飯田も峰田と話しつつクラスメイトの元へ向かう。一人、最後に担架に乗せられ同じ方向へ運ばれた轟は、自分の左手を見つめていた。

 

「…………真田、お前に何がわかる……」

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