旧時代の『異能』は現代の『普通』足るか?   作:しらおりんりん

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デデーン、真田、アウトー

 目的地である雄英高校に着いた正人は、額から滲み出る汗をハンカチで拭いつつ、数キロ走り続けた身体を落ち着かせる。その間に瞼は何度も開閉を繰り返し、風景が変わらないことを認識すると、ゆっくりと目の前の現実を受け止めた。

 

「デデーン、真田、アウトー」

 

 ぼそっと数十年前のTVで笑いを掻っ攫った言葉を呟いてみるも、何も変わらない。校門は閉まっていた。門の向こうに広がる校舎が、やけに遠く感じられた。

 遅刻、すなわち最速の不合格通知である。おばあちゃんの店で働かせてもらうか、はたまた実家の手伝いをするか……これからの身の振り方を考えていると、校門の上から声をかけられた。

 

「君、そんなところで立ち尽くして。トイレでも借りたいのかい? だとしたら守衛さんに言って通してもらうといいのさ!」

「え? あ、上か……って、雄英の校長先生ですか?」

「おや、僕のことを知っているのかい? いかにも! この雄英高校の首領にして、みんな大好き小型ほ乳類の校長さ! それで、どうしたんだい?」

 

 ネズミなのかイヌなのか……はたまたクマなのか。よくわからない、身長は100cmもない小さな謎の生き物──雄英高校校長の根津が、正人を見下ろしていた。入試前に雄英高校のホームページを閲覧していたため存在は知っていたが、本当に実在しているとは思わなかった。

 どうやってそこまで登ったんだ、とか、そのスーツはオーダーメイドですか、とか。どうでもいい質問が口から出そうになるが、ぐっと堪えて質問に答える。

 

「実は今日の入試を受けに来たんですけど、遅刻してしまいまして。不合格が確定したので、今後の身の振り方を考えてました」

「君は人助けをしていて遅れたのだろう? まだ試験の説明中で、始まってはいないのさ()もここにある。いま校門を開くから、乗っていくのさ!」

「なんでそれを? あ、もしかして見られてました?」

「そういうことなのさ! 個性の無断使用はいただけないけど、困っている人を見過ごす理由にはならないのさ! さあ行こうじゃないか! 君のような精神を持つ子が合格することを祈っているのさ!」

「力使ったの、バレてるか……流石に。すみません。ありがとうございます」

「……あ、その前に、ここから下ろしてほしいのさ」

「え、どうやって登ったんですか?」

 

 都合が良すぎてもはやよくわからないが、とにかく試験を受けられることになった正人は、校長とともに黒塗りの車両で試験会場へと向かう。雄英高校の広すぎる敷地を、こちらを慮っているのか車はそこそこの速度で走ってくれている。その間にもあれほど悲鳴をあげていた身体は落ち着きを取り戻して来た。

 これからの実技に向けて疲労が少しでも回復できたという安心感と、試験を受けられるという実感が正人を包んだ。二つの心地に浸っていると、そういえば、思い出したように校長が話しかけてきた。

 

「今着いても試験内容について説明を受けられないと思うから、ここで説明しておくのさ」

「あー、そうですね。お願いしてもいいですか?」

「もちろん! 試験内容は至ってシンプル。10分間のうちに『仮想(ヴィラン)』を行動不能にしてポイントを稼ぐのさ! 仮想敵は強さ別に3種類用意されているのさ! もちろんポイントは強さに比例する! あとは……いや、遅刻のペナルティで秘密にしておくのさ! 驚く君の反応が見たいのさ!」

「(遅刻のペナルティと言っても、合否に直結する内容とは思えないから、本心だろうな)わかりました。助演男優賞を取れるくらいのリアクションを見せましょう」

「HAHAHAHA! 楽しみにしているのさ!」

 

 試験内容について話をしていると、いつの間にか車両は止まっており、試験会場の近くに着いたことを知らせていた。正人は校長に感謝を伝え、試験会場へと入っていった。前途多難であったがこれから試験が始まるのだ。正人は深呼吸し、合格するため気合いを入れた。

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