旧時代の『異能』は現代の『普通』足るか? 作:しらおりんりん
雄英高校入試、実技試験。受験生たちは己が個性を満遍なくふるい合格を目指している。その様子を暗がりの中光る各会場を映すモニターを前に、本試験の採点係、もとい雄英教師陣が観戦していた。
「いやぁ、今年は粒揃いでは?」
「そうですな。年々個性が強力になっているのを直に感じます」
「それもあるが、ヒーローとしての素質が光っている者たちがいる」
「ええ、確か……『エンジン』の彼。あの機動力は磨けばさらに輝く」
「あの異形型の子の索敵能力もいいですね」
「私は『爆破』のですね。すこし性格に難がありそうですが……戦闘力の高さは随一だ。既に60ptも稼いでいる」
「ですが、真価が問われるのはこれから、でしょう?」
そういった1人の教師は、我が校の校長に目線を送る。それを受け取った校長は、『YARUKI SWITCH』と銘打たれたボタンを押した。
このボタンは0pt敵を出現させる装置である。各会場に一体設置され、大暴れするただのお邪魔虫だ。なお、
「さぁ、圧倒的脅威を目の前に、君たちはどう行動する?」
『はーいあと2分!』
アナウンスが残り時間を教えてくれた。現時点で正人が持つptは40。最初に出遅れたり、周りの個性に目を惹かれて足が止まってたりしたが、何とか持ち直している。大通りではなく路地に潜む仮想敵を狙い、細々とポイントを稼いだのが功を奏した。
「合格ラインがわからない以上、稼ぎまくりたいけど路地はもうしょっぱいな。大通りに出よう」
正人は方針を変え、大通りにで仮想敵を狙うことにした。路地は競争相手が少ないとはいえ仮想敵が少なく、かなり運次第なところであった。また、スタート地点からだいぶ離れているため、大通りといってもまだ仮想敵がいるだろうという判断である。
正人の狙い通り、ぽつぽつとだがまだ仮想敵は受験者たちと戦いを繰り広げていた。これって横取りはどうなるんだろうと思いながら、まだ手付かずの仮想敵を探し試験会場を疾走する。
「そういえば、校長先生が秘密にしてたことってなんだったんだろ」
校長曰く、反応してしまうほど驚くことがあるとのことだが、試験時間は残り少ない。しかし特にそれらしい出来事はない。もしかして見過ごしたか? と肩を落としかけた。
その時、前方に仮想敵が紫髪の受験者相手に質量のもった腕を振り下ろすのが見えた。紫髪は抵抗できないのか腕をクロスさせて防御を選択している。これはまずいと思った正人は呪力をさらに滾らせ瞬く間に仮想敵と紫髪の間に割って入る。
「悪いけどこいつ、僕が貰うね」
「……っ!」
振り下ろされた腕に対して正人はアッパーで迎え撃つ。後ろに他人がいる手前、術式を使うわけにはいかないため真っ向勝負を選択した。正人の強化された拳は仮想敵の腕を容易く貫通し、そのまま胴体を貫いた。最後の抵抗か正人の腕にバチッと電気が走り痺れたが、仮想敵は沈黙した。
「……ぁ、ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ……って言ったら気が悪いか」
「いや、やられてポイントが稼げなくなる方が嫌だ」
「そう思ってくれると嬉しいね。それじゃ」
紫髪の受験者は仮想敵のポイントが正人に渡ることを若干後悔したが、二つの意味で助けてくれた恩人にそれは失礼だと感謝の言葉でそれを封じる。
お互いに駄弁ってる暇はないとそれぞれ別方向に仮想敵を探しに行こうとしたが、突然の揺れを正人たちを襲った。
「地震か!?」
「いや、これは試験前に説明された各会場に一体の……!」
「え!? なにそれ!?」
紫髪の受験者は返答の代わりに発生源に指を刺した。そこには今までの仮想敵が可愛く見れるほど巨大なロボットが地面から出現していた。そこらのビルより大きく、武装も他の仮想敵よりも充実している。尤も、1番の武装はその質量だが。
「デカすぎんだろ……」
「おい、早く逃げるぞ!」
「ねぇ君、さっきこいつは一体しかいないって言ったよね?」
「それがどうした!? 俺は先に行くぞ!」
「じゃあこいつ10pt……いや50ptはあるってことじゃない!?」
「いや、ちがっ!」
「こいつ倒して僕が首席だぁぁぁ!!」
正人は紫髪の受験者の制止を無視し、巨大仮想敵に接近する。呪力で強化された脚が爆発的な出力を生み出し、一気に肉薄する。
「(とはいったものの、流石に強化パンチだけじゃ無理そうだよな。しかしただの千変万化じゃ流石に範囲外……仕方ない)」
正人に気づいた巨大仮想敵は外敵を排除しよう圧倒的質量を持つ腕をふるう。強化された脚力は走力はもちろん跳躍力も上がっており、難なく腕をジャンプで避けるとそのまま腕に着地し、無防備になったところで自らの
「"無形" "
「おおっ……!」
「あの子、マジか!?」
「あんなにぶっ飛ばせるってどういう個性してるんだ、あの緑髪の少年は!?」
「過程も素晴らしい! 人助けのための自己犠牲の精神!」
「おい、こっちの会場も見てくれ、とんでもないぞ」
「……は? これは、なんだ?」
「いや、俺もそっちを見ちまってたからよくわからんが……少なくともやったのはこの少年だ」
「本当になんだ……? なんでお邪魔虫が……」
「「
「HAHAHAHAHA!」
つられてモニターを見るとそこには見慣れた顔の見事な像が建立していた。かなり精巧に作られており、一瞬で現れたのが信じられない。困惑し呆然とする教師陣の中、校長の爆笑が暗がりに響いた。