旧時代の『異能』は現代の『普通』足るか?   作:しらおりんりん

7 / 16
必殺技や特殊な技術にはこれから""(ダブルクォーテーション)をつけます。


あそこにUFO!

 雄英試験は無事に(?)終わった。終了後職員室に行き事情を説明したが、遅刻は無かったことにされていた。入学前、もとい結果発表前にも関わらず、正人は既に校長には頭が上がらなくなった。

 結局、正人が取得したポイントは52pt。他の受験者の点数がわからないためなんとも言えないが、平均よりは上で、合格も十分見えていると考えている。なお、正人はこの現代においても現金派を貫く古い人間のため、帰りも自身の脚で帰った。

 行きと違い走りはしなかったが、今日1日の脚に蓄積された疲労はとてつもない。ボロボロの状態でなんとか家に帰ることができた。人が見ればヤが付く職業のトップが住んでいそうな屋敷であるが、事実は全くの逆で中には『かわいい』が溢れている場所。それが正人の帰る場所だ。

 

「やっっっ……と着いたぁ」

「あ、まさちゃん帰ってきたよ!」

「まさちゃん! 試験どーだった!?」

「まぁー」

「ま"ざぢゃ"ん"〜す"い"がぁ"〜」

「こーりちゃんがわるいんでしょ! まさちゃん! だまされないで!」

「ふぅ……ただいまみんな。さっそくだけど、僕の脚揉んでくれたら100円。やる人は着いてきてね。あと総司爺ちゃん呼んで欲しいな」

「「「「は〜〜〜〜い!!!」」」」「ばい"〜うぅ」「まう?」

 

 実はとても軽い木製の大きな門を開けたら、さっそく『かわいい』が押し寄せてきた。歳のバリエーションはあるがそれでも幼い子どもたちが正人を出迎えたのだ。この子どもたちは正人の実弟実妹ではない。彼らは様々な背景を持つこの個性社会の闇、個性孤児である。そしてこの場所はそんな子どもたちの最後の砦、孤児院である。

 だが、正人は孤児ではない。それではなぜ帰る場所が孤児院なのかというと、この孤児院の施設長は正人の母親、真田祈理(いのり)であるからだ。元々は祖母が経営する会社で働いていたが、あるきっかけで孤児院を開いた。国の援助は受けておらず、祖母の会社がスポンサーとなり家族経営をしている。

 

 お駄賃と貰うため頑張って脚を揉んでいる子どもたちと駄弁っていると、待ち人である祖父、真田総司がやってきた。子どもたちは正人からお駄賃を貰い、大切に握りしめると外へ出かけた。恐らく安さが売りの近所のおかし屋に向かったのだろう。祖父はそれを微笑ましくそれを見送ると、正人の隣に座り話始める。

 

「それで、試験はどうだった」

「開口一番それ? 多分合格してると思うけど、周りの点数がわからないからなぁ」

「それもあるが、周りのレベルについてだ」

「想像以上だったよ。ピンキリだけど粒揃いって感じした。"逕庭拳"みたいな個性の人もいたし。良いインスピレーションを受けて術式を使っちゃったし」

「……正人」

「いやー、その時はついうっかりって思っちゃったけど、使わないと置いていかれると思う。そのくらいのレベルだよ、あそこは」

「そう思うなら、いい。それで、使ったのはそれだけか?」

「うん、"変幻自在"だけ。"千変万化"は見せてないよ」

「そうか。だが伏せ札が少なくなったのも事実、早いところ増やしたいが……こればっかりはな」

「これから嫌でも実戦の機会はあるから、その時掴むさ」

 

 祖父が前に見せてくれた()()()()()()()()()()()()を記録したビデオ。それはお互いの全てをかけた()()()()()()()()の記録。最初観た時はスプラッタ見せやがってだとか、こいつどんだけ強いんだよとか月並みな感想しか出てこなかった。

 しかし、ある程度呪術の理解が進んだ今では遙か雲の上の技巧の応酬と、天井知らずの戦いに心を奪われた。正人も真似できるものはなんでもしたいと思っているが、まだ呪術師としての一皮剥ける大きな要素……()()()()()()を知らない。

 もちろんそれが全てではなく、結界術や符術など手札はある。しかし、この壁を越えれば得意から派生する手札が増える可能性があるのだ。祖父は死を意識するような戦いで知ることができるかもと言っていたため、そのような実践の機会を待っているのだ。

 

「今日は疲れただろう。休息日にする。今日はゆっくり休め」

「そーするよ。明日も歩くし」

「ん? 電車通学ではなかったか? 

「いや、歩いてみてわかったけどプロヒーローを意外と見かけるんだよね。ヒーロー活動見れるかもしれないし、歩こうかなって」

「そういって、交通費を横領しようとしてるだけだろう」

「え────っと……」

 

 図星を突かれた正人は、すぐに返答できなかったことで認めてしまっていることに気づく。ここは例の技を繰り出すしかない、そう考えた正人は実行に移す。辺りをキョロキョロと見渡し、何か衝撃的なものを見たのか二度見する! そして何もない空を指差し言い放った! 

 

 

 

 

「あそこにUFO!」

 

 

 

「……」

「……」

「正人」

「……なに?」

「今度、久しぶりに会いに行こう。お前の試験結果を報告せねばな」

「あぁ、いいね。元気かな、当主様は」

 

 正人は自身の胸元にある首飾りの先に触る。特別硬い金属でできた輪っかを自らの術式で変形させ、中身を露出させる。それはボロボロの黒いヘアゴムであった。真田家始まりの呪術師がしていたそれは、代々受け継いできたものであり呪力を帯びている。その呪力に感応すると、先祖との繋がりを感じさせる。尤も、先ほど()()()()()()()()()()()()()()()()のだが。満足した正人はヘアゴムを金属で覆い直し、また休むため自室に向かった。あぁ、と総司が思い出したかのように正人の背中に向かい一言。

 

「それと、交通費の件は祈理に報告しておく」

「あ、はい」




首飾り用の金属製の紐にヘアゴムを通してます。びよんびよんのヘアゴムじゃないです。
ロケットのロケット部分(?)が、ドッグタグのタグ部分がヘアゴムです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。