旧時代の『異能』は現代の『普通』足るか?   作:しらおりんりん

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微ネタバレ含む本編で紹介するかわからない要素の設定集置き場作りました。
ちょくちょく更新予定。

1/6 ラスト加筆


感情を手懐けよ

 正人たちは正人が三年間思い出を作り続けた場所である中学校の校庭に移動した。時間から22時。本来であれば校内を巡回している守衛がいるのだが、その人は()()()()()()()であるため、本日の業務は終了してもらっている。

 黒と静寂が占める校庭は、そこそこの規模の中学校であるため十分な広さをしている。総司は中学校の敷地の中心に移動すると、親指、人差し指、中指を立て他の指は折り込んだ。

 

「"帳"を下すぞ。"闇より出でて闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え"」

 

 総司が呪詞を言い終えると、総司の真上に黒が出現する。それは世界をドーム状に塗り潰していき、中学校をすっぽり埋めた。"帳"とは結界術の一種であり、基本効果は内と外の情報の遮断。中で行われていることは外からは見えなくなる。オプションで様々な効果をつけることができる。

 "帳"を下ろした総司は戴華に少し離れるよう命じ、そして正人と少し距離を取り構える。戴華は素直に総司の言うことを聞き、椅子に仕立てた式神を召喚し観戦準備を終えると、笑みを浮かべ彼らの様子を伺っている。

 

「さて、準備はいいな」

「もちろん。あ、ハンデは?」

「今日は戴華がいるからな。刺激になるかわからんが、術式なし、術式ありの2戦行う」

「太っ腹だね。痩せさせてみせるよ」

「いつでもこい」

「"変幻自在"。悪いけど、マジで勝つ」

 

 正人は開幕両手を地面に叩きつけ、"変幻自在"で地面を操作し総司との距離を取る。さらに、地面を鋭く隆起させ攻撃したり、四肢の拘束を試みる。

 ──遠距離ちくちく、それが勝つために正人の脳が弾き出した答え。相手は術式の使用を縛っているため、こちらに対して行える手段が少ない。投擲であればこちらの術式で防御が間に合う。つまり、警戒すべきは高速移動からの肉弾戦。であれば、遠距離攻撃で近づかせず隙を作り、()()を叩き込む。

 

「ふん、悪くない」

「とかいいつつ全部はたき落とすのやめてよね」

「良くもないからだ」

 

 総司から発する圧力が一段階上がったのを肌に感じる。身体強化のための呪力出力を上げたのだ。先ほどまではこちらの拘束攻撃に対して一回の手刀といった、一手に対し一手で対応してきた。だが、今はどうだ。総司が雑に腕を振るっただけでこちらの仕掛けが全て台無しにされてしまう。

 

「単純な力押しに弱い」

「(出力上げすぎでしょ……でも、イイ。凄くイイ!)」

 

 途端劣勢に立たされる正人であったが、総司の暴力に魅せられ気分が高揚する。だが、このままでは呪力切れで負ける未来を想像できた正人は次の一手を打つ。"変幻自在"で総司の足元の地面を勢いよく隆起させる。

 すぐに蹴りですぐに壊されてしまうが、すかさず生成を繰り返すことで総司の身体をさらに宙に浮かす。意図に気づいたのか総司は地面を殴り地面を粉々に砕き、破片を蹴っていち早く地面に戻ろうとする。

 だが、蹴りは空を切る。そこに破壊された地面の破片はなく、代わりに一本の蔓になって総司の服を背中から掴んでいた。

 

「"無形" "覚知" "始原の絵具" "変幻自在"! 新技! 名前決めてないやつ!」

 

 120%の"変幻自在"により効果範囲が校庭全体及び、土が総司の元に集まっていき、大きな掌が出現した。時間が経つほどそれは数を増やし、宙ぶらりんになった総司を握り潰そうと迫っていく。

 総司は連打で土の掌を壊し脱出を試みる。一瞬風穴が空き総司と目が合うが120%の"変幻自在"でコーティングされた土は瞬く間に再生し、総司を逃さない。

 

「120%"変幻自在"なら再生間に合うと思ったよ! 取ったァ!」

「そこ」

「っあ?」

 

 だが、届かない。突如として飛来してきた土の塊が正人の額を捉える。術式の継続ができなくなり総司が解放される。フラフラの状態の正人は呪力も上手く練れないのを感じ白旗代わりに両手を上げる。

 それをみた総司は一つだけだ、といい今回の戦いについて言及する。

 

「呪術師が戦う上で敗因となる要素、覚えているな」

「感情を手懐けよ、あぁ、またか」

「もはや性なんだろう。戦いを楽しむのは。それはいい。だが、ヒーローならば優先順位を履き違えるな」

「わかったよ……あーいてて。載華、観戦料ってことで治してくれる?」

「はーい」

 

 だが、結局術式ありの模擬戦は行わず、後日のお預けとなった。というのも、戴華に()()()()で治してもらい、2回戦目だと構えを取った正人に総司が待ったをかけたのだ。外傷は治せても中身、脳が衝撃を与えたため念のためであると。正人は不完全燃焼であるが渋々納得した。

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