ただ推しを救うために紡ぐ糸   作:ティファールは邪道

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3話:接触と受入

迎えに来た母が運転する車で帰宅した悠人は、まだ体が熱い…

夢仙人に打ち込まれた「火種」が、体の中で暴れていた

 

「(まずは肉体だ。今のままじゃこのエネルギーを維持できない……!)」

 

そう決意した翌日の放課後から悠人は、トレーニングを兼ねて近所の公園や路地裏を走り回ったり、足技を極めるのであった…

 

__________

 

「…かなり出来上がってきたな…さすが念…」

 

トレーニングを初めて1ヶ月ほど経ち…

悠人は、洗面台の鏡で自分の体を身ながら呟いていた

オーラを併用した肉体改造…

 

原作でビスケがやっていたことをトレーニングに組み込んだらここまでうまく行くとは思わなかった…

1ヶ月でこれは早い気がする…

流石念能力…

 

「今日は休みだし、折角だから町を見て回ろうかな…」

 

そう言いながら、着替えた彼は商店街の方へと足を運ぶ

 

神浜の地理を修行の一環として、頭に叩き込みながら歩く悠人…

ふと、前世の記憶が疼(うず)く

 

「(そういえば、このあたりだったよな?…あの娘の心の支えになってたのがいた場所って…)」

 

商店街の飲食店の裏、ゴミ箱の陰。そこにいたのは、震えている小さな命…

 

原作では、とある少女がここで、その命と出会い、束の間の救いを得るものの、最終的にその死(あるいは喪失)が彼女を契約へと追い込む要因となることになる存在…

 

「見つけた……。お前がゴローか。……もう大丈夫だぞ」

 

悠人がゴローを抱き上げたその時、背後から消え入りそうな声が響きます。

 

「あ……あの……」

 

振り返ると、そこには自信なさげな、今にも消えてしまいそうな儚い雰囲気の少女…二葉さなが立っていた

その手には猫缶があり、エサをあげようとしてたのがわかる

 

そして、さなの姿を確認した悠人の心臓が跳ね上がる

 

-うわ、本物のさなだ……!

 

前世での推しキャラと出会い、テンションが可笑しくなりはじめた悠人…

 

しかし、今の彼女は家族から存在を否定され、自己肯定感が底をついている状態であることを思いだし、落ち着かせる…

もし、ここで普通の少年のように「誰?」とスルーしてしまえば、彼女は再び孤独に沈んでしまう…

 

そう考えた悠人は、「念」の修行で鋭くなった感覚を使い、彼女の存在を全力で「肯定」するように、真っ直ぐ彼女を見つめる

 

「……この子に会いに来たの?」

 

それを聴いたさなは驚愕する

家族だけでなく、クラスメイトすら自分を無視するのに、初対面の少年が、自分の声を拾い、目を見て話してくれたから…

 

「えっ……あ、はい。その、お店の人に、邪魔だって言われてるのが聞こえて……。でも、私の家じゃ、飼えなくて……」

 

そう言うと俯くさな…

彼女の目には、すでに「自分はこの世界にいらない存在だ」という諦めが漂っています

 

-?あれ?そんな話してたのか?

 

それを聴いた悠人は頭に?を浮かべる…

実は、さなはゴローの処分を聴かれず、保健所につれていかれた後に知る筈なのだ…

 

-原作とは違う?…何かあったのか?

 

そう思いながらゴローを抱き直すと、迷いなく告げる

 

「なら、ウチに来るか? ちょうど猫を飼う予定で、少し位早くなっても良い筈だ。……それと、もしよかったら君も一緒に来てくれないか。この子の『命の恩人』として、ウチの両親に紹介したいんだ」

 

-いや、恩人は少し違うか?

そう呟く悠人に、さなは驚く…

 

「え……私を、紹介……?」

 

それは彼女にとって、生まれて初めて「必要とされた」瞬間だった…

 

さなとゴローをつれた悠人は、家に到着すると、母にゴローとさなを紹介した悠人…

両親共に猫好きのため、泥だらけのゴローは快く受け入れられて、悠人にお風呂場で洗われることになった

 

それ以上に、悠人の母はさなに対しても「悠人の友達? よく来てくれたわね!」と、当たり前のように一人の人間として温かく接して、家にあげさせる…

 

-原作で知ってたけど、どんだけ冷遇されてたんだ、アイツ…

 

温かく迎え入れられるのが慣れてないのか、たどたどしく受けとるさなを見た悠人はゴローを洗いながら思う…

 

因みに、ゴローは気持ちよさげに洗われて、熟睡していた…

大物である

 

そして、母の電話により猫用のトイレを買って来た父も加えた夕食(母を経由して双葉家には連絡済み)を共にし、ゴローが新しい寝床で丸くなるのを見て、さなは涙をこぼす…

 

「……私、ここにいても、いいんでしょうか……ご飯まで食べさせて貰って...家族にも連絡して貰って…」

 

「当たり前だろ。明日も、明後日も…これから先何時でも来いよ。……約束だぞ、二葉さん」

 

溢れた涙を拭きながら、頷くさな…

それを見て悠人は、なにも言わずに頭を撫でるのであった…

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