魔王様は現代人ですので。 ~転生したら魔王だったけど滅びたくないので堅実にやります~   作:第616特別情報大隊

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ノイベルクの戦い

……………………

 

 ──ノイベルクの戦い

 

 

 アルトライヒの首都ノイベルクを火砲の射程に収めた魔王軍。

 彼らはノイベルクへの総攻撃の準備を進めていた。

 

「ノイベルクは降伏を拒否した」

 

 ワシレフスキー上級大将は参謀たちにそう言う。

 

「連中はあの街を徹底的に守るつもりだ。我々はそれを粉砕しなければならない」

 

 ワシレフスキー上級大将の言葉に参謀たちは息を飲む。

 魔王軍はこれまでここまでの規模の市街地戦を経験したことがない。

 相手に地の利がある中、自分たちはどれほど戦えるのだろかと考え込んだ。

 

「我々はまず都市を可能な限り破壊してから前進する。敵が隠れられる建物は全て破壊する。砲爆撃を事前に念入りに行い、敵の士気を粉砕してから前進するのだ」

 

 ノイベルク攻撃のために重砲もかなりの数が集まっている。

 これらの火砲の砲撃に加えて爆撃も加われば、ノイベルクは更地になるだろうと思えるようなものだった。

 

「諸君。魔王陛下は勝利を期待しておられる。魔王陛下万歳」

 

「魔王陛下万歳」

 

 そして、魔王軍によるノイベルク攻撃が開始された。

 

 

 * * * *

 

 

 オストクローネを何とか脱出したフォーゲル大尉だったが、ノイベルクを経由して南部に向かおうとしているところで古い知り合いに捕まった。

 

「フォーゲル? 貴様、ここで何をしている?」

 

「これはベルクフェルト大佐殿!」

 

 それはベルクフェルト大佐だ。

 彼は難民とともに南部に向かう馬車に乗っていたところをベルクフェルト大佐に見つかり、馬車から降ろされた。

 

「オストクローネの戦いを生き延びたのか?」

 

「ええ。辛うじて。ですが、戦車はやられちまいました」

 

「そうか。では、新しい戦車を与えよう」

 

 おいおい。勘弁してくれとフォーゲルは思う。

 命からがら逃げてきたのは、新しい戦車に乗るためじゃないんだぞ、と。

 

「私の部隊もオーディン川の戦いで多くの将兵を失った。今は貴様のような優秀な戦車兵が必要だ。さあ、来るんだ」

 

「了解です、大佐殿」

 

 ベルクフェルト大佐に連れられて渋々とフォーゲル大尉はノイベルクを郊外の陸軍基地まで進む。

 そこには工場から出荷されたばかりのレーヴェ重戦車が4両置かれていた。

 

「貴様にはこの戦車に乗ってもらう」

 

 ベルクフェルト大佐はそう言う。

 

「見たことありませんが、いつの間にこんな新型を?」

 

「それを気にする必要はない。今のうちに可能な限り機種転換の習熟訓練を受けておけ。すぐに実戦だぞ。魔王軍はノイベルクの目と鼻の先にまで迫っているからな」

 

 確かにその通りなのである。

 魔王軍はオーディン川を渡河してノイベルクを火砲の射程に収めたのちに、じわじわとノイベルクに迫っている。

 ノイベルク攻略戦は間もなく始まるのだ。

 

「了解です。使いこなせるようにしておきます」

 

 ノイベルクに魔王軍が迫ってるからってたったの4両の戦車で何ができるっていうんだ? とフォーゲル大尉は疑問に思った。

 だが、ここで逃げ出せば敵前逃亡で銃殺される恐れもあった。

 だから、彼は魔王軍と戦うために習熟訓練に励んだのだった。

 

 魔王軍の総攻撃の時間は迫っている。

 

 

 * * * *

 

 

 オーディン川突破から21日後のこと。

 魔王軍はノイベルクに対して猛烈な砲撃を浴びせた。

 無数の火砲が市街地を粉砕するために砲弾を降り注がせ、魔王軍の猛砲撃を前にノイベルクは破壊されていく。

 さらにTru-2攻撃機などが爆撃を行い市街地がさらに廃墟となっていく。

 

「前進、前進!」

 

 そこに魔王軍地上部隊が攻め込んできた。

 A-34中戦車に援護された歩兵部隊がなだれ込むようにしてノイベルクに侵入し、絶望的な防衛戦闘を行う守備隊と交戦。

 

「進め、魔王軍の勇士たちよ! 勝利のために! 魔王陛下のために!」

 

「おおおおおおおおっ!」

 

 魔王軍の兵士たちは雄たけびを上げて、ノイベルクの通りを突撃していく。

 津波のように押し寄せる魔王軍の歩兵たちは、崩壊した市街地の建物を占領していき、アルトライヒ軍を駆逐していく。

 戦車も砲撃で支援を行い、市街地を崩壊させながら魔王軍は制圧を進める。

 

「行け! ノイベルクの国会議事堂に黒旗を掲げるのは俺たちだ!」

 

 レーベデフ少佐もA-34-85中戦車に乗って前進を急いでいた。

 彼は自分こそが国会議事堂に魔王軍の黒旗を掲げようというつもりだった。

 彼らはノイベルクの中心部にある国会議事堂に向けて戦車を押し進める。

 アルトライヒ軍は火炎瓶などで抵抗を示し、レーベデフ少佐の大隊もじわじわと被害を出し始めていた。

 

「そこの戦車! 止まれ!」

 

 と、レーベデフ少佐たちが前進しようとしたときそれを止める魔王軍の将校が。

 

「どうした?」

 

「この先に化け物みたいな戦車がいる。前進するのは危険だ。迂回するか、爆撃を待った方がいい。すでに突っ込んでいった連中は返り討ちに遭った」

 

「化け物みたいな戦車?」

 

 レーベデフ少佐がそう言われて首を傾げた。

 

「まさかオーディン川に出てきた新型か……?」

 

 嫌な予感がした。

 あのレーヴェ重戦車と戦った際の苦い記憶はレーベデフ少佐に今もも残っている。

 

「しかし、ここを抜けないと国会議事堂にはいけない」

 

「じゃあ、国会議事堂は諦めるしかないな。どうせアルトライヒ政府の連中は全員が逃げたと言う話だ」

 

「ふざけるな。俺たちは国会議事堂に黒旗を掲げにここまで来たんだ! ここで諦めてなるものか!」

 

「じゃあ、好きにしろ。俺たちは止めたからな」

 

 歩兵の指揮官はそう言い、肩を竦めた。

 それからレーベデフ少佐は一応状況を確認するために徒歩で偵察に向かうことに。

 瓦礫となっている建物を伝って進めば、公園が見えた。

 そこにはレーヴェ重戦車が4両。

 その周りには破壊されたA-34中戦車が大量に見える。

 

「クソ。やはりあの新型か……。まともに撃ち合えば俺たちの方が負けちまう」

 

 レーベデフ少佐は忌々しげにレーヴェ重戦車を睨む。

 

「どういますか、少佐殿?」

 

 偵察に同行していた戦車兵がレーベデフ少佐に尋ねる。

 

「勝利に犠牲はつきものだ。このまま前進する!」

 

「ほ、本気ですか!?」

 

「至って本気だ。さあ、とりかかるぞ」

 

 レーベデフ少佐は戦車に戻り、彼の大隊の兵士にたちに告げる。

 

「諸君。敵の新型戦車がこの先で待ち受けている。これを撃破し、国会議事堂に黒旗を掲げれば勲章だったありえるぞ。そして勲章には年金がつく。老後も安泰だ」

 

 レーベデフ少佐は続ける。

 

「さあ、勇敢なる魔王軍の戦車兵たちよ。前進だ!」

 

 レーベデフ少佐はそう言い、戦車を前進させる。

 公園に向けて突撃してきたレーベデフ少佐たちの戦車にレーヴェ重戦車は素早く照準を合わせてくる。

 そして砲撃。先陣を切って突入したA-34-85中戦車が爆発。

 

「怯むな! こちらからも撃ち返せ!」

 

 レーベデフ少佐も戦闘の車両に続いて公園に突入し、レーヴェ重戦車と交戦。

 砲手が素早くレーヴェ重戦車を照準して砲撃するものの砲弾は弾かれた。

 

「クソ、クソ! この距離でも弾きやがるのか!」

 

 その光景にレーベデフ少佐が悪態を叫ぶ中、続いて突入してきた戦車がさらにレーヴェ重戦車を砲撃。

 1個大隊戦車全車両で4両のレーヴェ重戦車を袋叩きにしてやると言わんばかりに砲弾が次々にレーヴェ重戦車に叩き込まれていく。

 

 その間のレーヴェ重戦車は砲撃を続けてレーベデフ少佐の大隊を攻撃し続けたが、終わりはあっけなく訪れた。

 レーヴェ重戦車の砲身に砲弾が命中してレーヴェ重戦車1両が戦闘不能になり、残る3両も履帯などに被弾して戦争不能になった。

 そんなレーヴェ重戦車のキューポラから白旗が振られたのをレーベデフ少佐は確認。

 

「攻撃中止、攻撃中止!」

 

 レーベデフ少佐が無線に向けて叫ぶ。

 

「相手の戦車兵を捕虜にしてくる。何名か続け」

 

「了解」

 

 レーベデフ少佐は徒歩で破壊されたレーヴェ重戦車に近づく。

 

「降伏する、人狼」

 

 白旗を上げていたのはフォーゲル大尉だった。

 

「よろしい。降伏を受け入れる、人間。しかし、まあ、化け物みたいな戦車を作ってくれたものだな!」

 

 レーヴェ重戦車からは破壊された魔王軍のA-34中戦車が山ほど見える。

 

「あとこの戦車は何両あるんだ?」

 

「これだけさ。こいつが量産できるようなら、俺たちの方がバビロンに乗り込んでた」

 

「だな。タバコいるか?」

 

「ありがたい」

 

 それからフォーゲル大尉たちは武装解除され、後方に送られた。

 レーベデフ少佐は無事にノイベルクの国会議事堂に黒旗を掲げ、それが新聞の一面を飾ったのだった。

 

 ついにアルトライヒの首都ノイベルクは落ちた。

 

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