魔王様は現代人ですので。 ~転生したら魔王だったけど滅びたくないので堅実にやります~   作:第616特別情報大隊

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分断

……………………

 

 ──分断

 

 

 ノイベルクの陥落は戦争の終わりを知らせるものだった。

 

「素晴らしい。全将兵の努力のたまものだ」

 

 ヴァヴェルはまずそう笑顔で将兵たちの努力を讃える。

 

「では、アルトライヒ全土をこのまま占領することは可能か、ジューコフ元帥?」

 

 次にヴァヴェルが発した言葉は、アルトライヒ全土占領の話であった。

 

「不可能ではないかと思います。しかしながら、不穏な情報があるようでして……」

 

 そこでジューコフ元帥は国家保安委員会(CSS)議長であるリュドミラの方を見る。

 

「はい。我々はブリタニア連合王国が新型爆弾を開発したと言う情報を入手しています。我が国で開発中のものと同じものであるとも」

 

「……そうか」

 

 新型爆弾──それは原爆のことだ。

 ヴァヴェルも何年も前から開発を命じており、そろそろ最初の1発が完成すると言う段階まで来ていた。

 しかし、どうやらブリタニアなどの汎人類条約機構加盟国も原爆開発に成功していたようであった。

 

「であるならば、全土占領はなしだ。我々はアルトライヒ及びブリタニアとの交渉準備に入る」

 

 ヴァヴェルとしてはこれまで脅威であったアルトライヒをここで完全に滅ぼしてしまいたかったが、それによって原爆が投下されるようなことは避けたかった。

 彼は元日本人として原爆の威力を知っている。

 

「モロゾヴァ外務大臣。講和交渉法はよろしく頼む。我々が現在占領している土地に関しては返還するつもりはないということはしっかりと伝えてくれ」

 

「はい、陛下」

 

 こうして魔王軍はアルトライヒ東部を占領した状態で汎人類条約機構との講和交渉を介した。

 アルトライヒは東部占領地帯の返還を求めたが、魔王軍はこれを拒否。

 ブリタニアも優位な講和のためにアルトライヒ東部を奪還しなければと考えていたが、ここである事件が起きる。

 魔王軍が東の荒野で原爆実験を行い、その様子を公開したのだ。

 これによって魔王軍は原爆を保有していることを明らかにした。

 

 ブリタニアは動揺した。

 彼らの作戦では魔王軍に対して原爆を使用することも計画されていたが、それによって同様に原爆による反撃を招くとすれば……。

 最終的にブリタニアはアルトライヒ政府に東部奪還作戦は不可能だと通知した。

 

「では、この講和に異論はありませんね?」

 

 講和会議の場でモロゾヴァ外務大臣がブリタニアやアルトライヒといった汎人類条約機構の国々に確認する。

 ここで決まったのは大まかに以下の通り。

 レヒスタン共和国やヴァラキア王国に関しては魔王軍の勢力圏として認める。

 アルトライヒ東部についても占領を認める。

 アルトライヒ東部と西部の間に非武装地帯を設置する。

 新型爆弾である原爆に関しては国際管理も考える。

 

 軍備制限などはアルトライヒが猛反発したため決定せず、以上通りとなった。

 

「では、みなさん、サインを」

 

 講和文書に各国の全権大使がサインしていき、こうして戦争は終わった。

 アルトライヒは東西に分断され、多くの難民がアルトライヒ東部から西部に向けて移動した。

 これが戦争の終わりであった。

 

 

 * * * *

 

 

「私は正しいことをしたのだろうか」

 

 ヴァヴェルはエレーナとふたりきりのお茶会の場でそう問うように呟く。

 

「アルトライヒはこれでしばらくの間は脅威ではなくなるだろう。しかし、彼らは復讐のために執念を漏らすかもしれない」

 

 ヴァヴェルが懸念しているのはそういうことであった。

 

「陛下。それならば魔族がかつてのような脅威ではないと知ってもらうしかありません。彼らはまだ魔族は言葉が通じず、乱暴な種族だと思っています」

 

 エレーナはそう語る。

 

「レヒスタンやヴァラキア、そしてアルトライヒの占領を通じて私たちが話の通じる相手であることを示しましょう」

 

 エレーナはそう提案する。

 

「そうだな。善政を行えば、彼らの認識も変わるかもしれない。それに期待しよう」

 

 そしてヴァヴェルはエレーナの方を見る。

 

「ありがとう、エレーナ。これからも頼りにしている」

 

「ええ。陛下。これからもどんどん頼りにしてください」

 

 ヴァヴェルとエレーナが微笑み合う中、魔王国はアルトライヒ東部占領地帯にアルトライヒ共和国の建国を宣言。

 魔王国の傀儡政権となるその国による統治が始まったのだった。

 

 東西は鉄のカーテンと呼ばれる分断を迎え、人々の行き来は制限されることとなる。

 

 

 * * * *

 

 * * * *

 

 * * * *

 

 * * * *

 

 

 …………それから50年という月日が流れた。

 アルトライヒ帝国とアルトライヒ共和国の分断された国境には、大勢の人々がやってきている。

 今日は記念すべき日だからだ。

 

「皆さん。今日という日を迎えられて私も嬉しく思う」

 

 そういうの魔王ヴァヴェルであり、昔と変わらない姿のままのエレーナを連れた彼が東西アルトライヒの首脳たちを前に語っている。

 周囲には依然として存続している国家保安委員会(CSS)の護衛が立つ

 

「50年前の不幸な戦争によって我々は敵対した。しかし、今や東西の融和は進んでいる。人間も魔族もお互いを理解し、間違った認識を取り除き、敵愾心を取り除いてきた。今こそ分断された東西をひとつにすべき時だ」

 

 そう、ヴァヴェルは50年後の今に決断したのだ。

 今こそ東西分断の時代を終わらせ、ひとつの大陸して融和することを。

 

「私は今ここに宣言する。魔王国は東西アルトライヒの一体化を認めると。それが国民投票の結果であれば、私もそれを受け入れると」

 

 ヴァヴェルの言葉に万歳の拍手が沸く。

 

「今、我々は真の平和を迎える。新しい時代を!」

 

 この日、東西分裂の時代は終わり、魔族も人間も自由な行き来が可能になった。

 

 ヴァヴェルの望んだ魔王国の存続は、もはや脅かされることもない。

 

 

……………………




これにて完結です。お疲れさまでした。
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