Little Mermaid who can't find happiness
『人魚姫』
この童話を知らない人はいないだろう。
〈 人魚の王の6人娘の末娘、人魚姫は、15歳の誕生日を迎え、海の上へと昇った。そこで、船に乗っていた王子に恋をする。しかし、王子の乗っていた船は、嵐のせいで沈没し、王子は海に投げ出されてしまう。
人魚姫は、王子を助けるが、人魚である自分は王子の前に姿を表せない。そこで、海の悪い魔女に自分の声と引き換えに、人間に変えてもらった。そして、魔女はこう言う、「もし、王子がお前をを愛さず、他の女と結婚したら、姫は泡になってしまう。」と。
人間の姿を手にいれた人魚姫は、 王子と人間の姿で出会うが、声が出せないため、自分が王子を救ったとうまく伝えられずにいた。そんなことも知らない王子は、自分が岸に倒れていたときたまたま通りかかった娘を恩人だと勘違いをし、婚約してしまう。
結婚式当日。船の甲板で一人涙していたとき、海の上に上がってきた人魚姫の5人の姉は、自らの髪の毛と引き換えに、呪いを解く方法を魔女から教えてもらったきた。姉達は、剣を差し出し、こう言った。「この剣で王子を刺し、その血を浴びれば、もとの姿に戻れる」と。しかし、人魚姫は王子を心から愛していたため、殺すことはできず海に身を投げた。人魚姫の体は泡となり、人魚姫は空気の精となった。
人魚姫が消えたことは、船にいた人間にも、王子さえも気づかなかった。〉
心から人を愛したが、愛は実らず、自ら死を選ぶ。この話は、ある伝承を象徴したような話だ。
【人魚は、不吉の予兆であり、人魚は、幸せになることができない】
その通りだと、俺は思う。
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ハッ
またあの夢か。最近よく見るな。そう思いながら、隣を見ると、トランクス一丁で爆睡している同居人が目に入った。
いくら暖かいとはいえ、まだ四月だ。風邪引くぞ。
二段ベットの下から這い上がり、寝間着から制服に着替える。そして、戸棚から拳銃を取り出す。
俺が通っているのは、普通の高校ではない。
『武偵高校』
武装探偵を養育する為の高校。なので、校則にも
『武偵高の生徒は、学内での拳銃と刀剣の携帯を義務づける』
とある。ま、この学校で嫌々携帯してるのは、同居人の友人。遠山金次だけだ。
ピン、ポーン
お、来たか、押し掛け女房。
「おい!!金次、起きろ!!」
そう耳元で叫ぶと、のそのそと起き出した。
「こんな朝っぱらからなんだ」
「星伽」
そう言うと嫌そうな顔をする。
「そう機嫌の悪そうな顔をすんなよ。上を着ろ。そのままで出たら星伽ぶっ倒れるぞ」
・・・鼻血を出して。
玄関に向かい、扉を開けるとそこにはやはり星伽がいた。
「キン、じゃなくて波くん。あの、キンちゃんは?」
とてつもなく残念そうな顔をし、俺の体の隙から金次を探す。
「今出てくる。入りな」
そう言って星伽を部屋にいれる。寮暮しな為、普通は4人一室だが、人数の関係性で一人で四人部屋を使っていた。だが、中途半端な時期に探偵科に転科してきた金次と成り行き上同室になった。
まぁ、荒事を起こすタイプじゃないから、同居人としては良いのだが・・・この押し掛け女房だけはどうにかしてほしい。
星伽白雪。武偵高の優等生で金次の幼馴染み。現在金次に片想い中。
なのだが、当の金次はと言うと・・・・毎日のようにこうもご飯をもって押し掛けてくるのだから、いい加減気づいても良いのに、全然気づかない。鈍感を通り越して、アホだ。呆れてものも言えない。
星伽の後についてリビングにはいると座敷にどっかり座っていた。
「で、何しにきたんだよ」
「こ、これ」
星伽は、持っていた和布の包みから高そうな漆塗りの重箱を取り出し、蓋を開ける。そこには、作るのに時間が掛かりそうな和食がづらり。これが恋の力か。
「波も食うか?」
「俺は・・・」
星伽の方を見ると、金次は気づいてないが、人が凍りつくような修羅の顔をしている。
「・・・知り合いの店で食うからいい。」
「そうか」
と金次は言って、食事に手をのばす。なんだかんだ言っておきながら食うのか、お前。
そう思いながら、俺は自室に戻り名札を手にする。本当はあんまりしたくないが、四月中は、生徒全員名札をするのが決まりなので胸につける。
『
それが俺の名前。結構気に入ってる。
それよりも腹減ったな。
俺はそそくさと、新婚夫婦みたいな二人を置いて部屋を出た。