【女神転生 】「モルダー、あなた憑かれてるのよ」【相棒】   作:ベイベ後藤

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ソウルハッカーズのスプーキーとXファイルのスプーキーモルダーをクロスオーバーさせてみました。
まずは見切り発車ですが導入です。


ソウルハッカーズXファイル
Digital Ghost編 1話


 

 

 深夜の湾岸道路を、一台の無骨な大型トレーラーが滑るように走っていた。

外見はただの輸送車両だが、内部はかつて「天海市」を震撼させた電脳事件の遺産を積み込んだ、移動式のハッカー・ベースとなっている。

 

 解散したスプーキーズのリーダー、桜井は青白いモニターの光に照らされながら、キーボードを叩いていた。

 

 仲間たちが、それぞれの道を歩み始めて数年。

彼は独り、あの時に事件解決へと導いたヒーローから手渡された、もう一つのCOMPと、液体窒素で冷却された特注のサーバー群と共に、電子の海の底を漂い続けている。

 

「……また、ノイズか」

 

 画面の端で、生体マグネタイトの微弱な反応が、バイナリデータの波形を乱している。

かつての事件以来、現実世界には目に見えない「穴」が開き続けている。

彼は、ハッカーとしてネットワークを監視しながら時折その穴から這い出そうとする「異物」を、独自のプロトコルで処理していた。

 

 そんな折、暗号化されたプライベート・メールが届く。

送信元は、かつての知人で、アルゴン精工の解体後に米国企業のネットワーク部門へ引き抜かれたエンジニア、佐々木の家族からだった。

 

『夫と連絡が取れません。アメリカへ出張してから、彼は何かに怯えていた。

「魂が、光ファイバーに吸い込まれていく」……そんな奇妙な言葉を残して』

 

 桜井の指が止まる。

「魂」という言葉。それは、かつて天海市で人々を電脳世界「パラダイムX」へ幽閉しようとした事件を想起させた。

 

 メリーランド州の一角で自称、政府監視団体が発行している機関紙『ローン・ガンメン』。

彼は、すぐさま米国の協力者に秘匿回線を繋いだ。

 

「……繋がったか。ラングリー。聞こえるか?」

 

「ああ、スプーキー。相変わらず日本の回線はクリアだな。

君のところの特注チップ、こっちのOSとも相性がいいよ」

 

 画面の向こうで、長髪で眼鏡をかけたラングリーが答える。

 

 桜井と彼らは、数年前のサイバー・テロを未然に防いだ際、掲示板を通じて知り合った「ネット上の戦友」だ。

 

「仕事を頼みたい。僕の知人がアメリカで失踪したんだ。

最後にアクセスされた座標を追ってくれ。

アルゴン精工の技術に関わっていた男だ。

おそらく、君たちが追っている『政府の影』とどこかで繋がるはずだよ。」

 

「アルゴンか。……フロヒキー、例の『マニトゥ計画』のデータを出せ。

スプーキー、面白いことがわかった。

君の知人が最後にいた場所は、FBIの公式記録から消去された特殊な通信局の近くだ」

 

 バイアーズが画面を操作し、一つの地図を表示させる。そこには、複数の政府機関が交差する「空白の領域」が示されていた。

 

「ここは危険だ。僕たち三人だけで動くには、少しばかり人手が足りないな。

……桜井、君のハンドルネームは『スプーキー』だがワシントンにも、スプーキーと呼ばれている、愛すべき男がいるんだ。

今回の調査には、彼を巻き込む必要があるかもしれない。」

 

 桜井は、モニター越しに提示されたその男のファイルを見た。

FBI捜査官、フォックス・モルダー。

 

「……スプーキーか。偶然だな」

 

 桜井は自嘲気味に呟き、トレーラーのアクセルを踏み込んだ。

日本の電脳で生まれた火種が、アメリカの陰謀という油田に引火をしようとしていた。

 

 ワシントンD.C.、FBI本部の地下。

窓のない「X-ファイル」課のオフィスで、フォックス・モルダーは、古ぼけたスライドを眺めていた。投影されているのは、ニューメキシコ州で見つかったとされる「電子的に焼かれた牛の死体」の画像だ。そこへ、ローン・ガンメンからの連絡が入る。

 

「モルダー! 面白いネタが入ったぞ。本物の『電脳の幽霊』だ」

 

 PCに送られてきたデータを見ながら電話を受ける。画面には、複雑なコードの波形と、謎の日本語のログが流れていた。

 

「……今日は忙しいんだ、フロヒキー。

『放電による牛の集団死』について考察しているところでね」

 

「牛なら後でステーキにしてやるよ。これを見ろ。日本の旧アルゴンのエンジニア、ササキという男の失踪ログだ。

彼が最後にアクセスした座標は、メリーランド州にある『例の空白地帯』――NSAが管理するバックボーン・サーバーの直近だ」

 

 モルダーの目が、ある一点に釘付けになった。ログの端に、かつて彼が「デジタルな生命体」を追った際に見た、あの特異なノイズが混じっていたからだ。

 

「……このログ、どこで手に入れた?」

 

「日本の友人からだ。ハンドルネームは『スプーキー』。かつて日本で、市民の魂を喰い物にしようとした巨大な陰謀を仲間たちと共に食い止めた男だ。」

 

 フロヒキーが自慢げに通信を繋ぐ。

モニターに映し出されたのは、大型トレーラーの運転席に座る、桜井だった。

 

「初めまして、モルダー捜査官。

ローンガンメンの3人から貴方の話しを聞かせてもらってね。」

 

 桜井の声がスピーカーから響く。

モルダーは椅子を回し、画面の中の「スプーキー」を見つめた。

 

「コードネームがスプーキー、か。

……君の友人が消えた場所は、僕が以前出会った『マニトゥ計画』の通信ハブだ。

行方不明者は彼だけじゃない。

ハッカーや技術者たちが、『精神崩壊』を起こして発見されている」

 

「精神崩壊……。肉体は無事だが、中身が異常をきたしたのか?」

 

 桜井の問いに、モルダーは重く頷いた。

 

「ああ。地元の警察は薬物中毒で処理しているが、僕の見立ては違う。

彼らは、ネットワークの向こう側にある『何か』に、魂を引きずり出されたんだ」

 

 桜井の背後で、液体窒素の冷却音が静かに鳴り響く。

かつてのパラダイムX。そして今、アメリカの通信網に潜む新たな魔性。

 

「……協力しよう、モルダー捜査官。

こちらの天海市で起きた事件について詳しく話すよ。」

 

 モルダーは、好奇心をくすぐられ薄く笑みを浮かべた。

 

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