リムルに喰われる悪魔に転生してしまった……   作:てきとーでいこう

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なんか長引いてしまった。


始まりの勇者

 

 

 Q.もし始まりの勇者にあったらどうする?

 

 A.逃げるんだよぉー!

 

「うわぁぁぁあ!」

「え、いや待てよ! なんで!? 顔見せただけだろ!?」

「兄さま……あの悪魔に一体何をしたのですか?」

「何もしてねぇよ! なんなら初対面だよ!」

 

 後ろで兄妹2人が何やら話しているがんなこと知るか!

 俺は逃げさせてもらうぞ!

 

 ことの発端は数十年前に遡る。

 小さな村を転々としながら暮らしていた俺は前のヴェルザード戦の時のような失態を犯さないため、俺はちゃんと10年ごとに『運命観測』を使用していた。

 いつもなら変態(ノワール)が絡んでくると言うものだったのだがとある時、『運命観測』に2人の人間が写った。

 

 始まりの勇者であり、神であるヴェルダナーヴァと魔王であるギィの友であるルドラ、そしてその妹であるルシアである。

 

 この時、俺は絶句……はしてないが頭を悩ませた。

 

 なぜこうも面倒ごとばかりやってくるのか、と。

 

 俺が〝調停者〟を引き受けなかった腹いせに2(ヴェルダナーウァとギィ)がちょっかいかけてんのか?

 非常に迷惑である。

 

 そもそもあの2人は勇者であるため魔物側の俺にとっては天敵なのだ。

 ギィと仲良くしているから問題ない可能性もあるが……それでもギィとルドラの喧嘩、それに付随する竜種姉妹の喧嘩に巻き込まれる可能性が非常に高い。

 

 そんなハイレベルな喧嘩に巻き込まれるなんてたまったもんじゃない。

 ということで運命(それ)を視た日から用意を始めていたのだ。

 

 できるだけ大きな活動はせず、これまで以上にこじんまりとした生活を送り、各地にこっそりと隠れ家を用意した。

 それでも俺が未来を視れることを知っているギィが邪魔してくる可能性があるため本命の一つを本気で、残りを少し雑に作ったのだ。

 

 準備を終えてからできれば来ないでくれと祈り、近くに聖なる気配を2つ感じてからさらに祈り、人影が見えてからも祈った結果。

 

 ちゃんと運命通りに2人はきたのである。

 

 だが準備をちゃんと整えてきた。

 

 前もって用意していた隠れ家に向けて転移だ!

 全力隠蔽からの転移で俺は逃げる。

 

 ……気のせいかもしれないが俺こればっかやってないか?

 心なしかだんだんと上手くなってる気がするし……

 

 まぁ仕方がない。

 そういうことをする連中ばっかりだから。

 これは俺は悪くない。

 向こうが悪いのだ、そう、そうなのだ。

 

 ……ふぅ、落ち着いてきた。

 はてさて、あと何年ここが持つか……

 

 なんてことを考えながら扉を開けると

 

「やぁ、久しぶり」

「なぜいる」

 

 (ヴェルダナーヴァ)がいた。

 なぜだ、なぜここにいる。

 

 神だから?

 んなのわかってんだよ!

 名前と姿だけで納得しちまうから頭悩ませてんだよ。

 

 なんでわざわざ絡んできた。

 ここまでなんの干渉もしてこなかったじゃねぇか。

 

「ボクがいるのが不思議でならないって感じだね」

「まさにですよ。なぜここにいるんです? どうせ今の私の状況は知っているんでしょう?」

「もちろん。ルドラたちに追われているんだろう?」

 

 やはり知っていた。

 だろうなとは思っていたがまさかこいつが主犯か?

 ルドラをギィに押し付けたのはヴェルダナーヴァだったし。

 

「逃げてきてちょうど安堵していたところなんですが」

「それは邪魔して悪かったね」

「で、私に何の用です? できればこれからも何もせずに帰っていただきたいのですが」

 

 このままおとなしく家に帰って世界を眺めていて欲しい。

 いや、ルドラたちがいるからもうナスカ王国で暮らしているのか?

 

 ともかく、ルドラたちにここをバラしたりせずに帰って欲しい。

 アンタがいたらここ探知されそうで怖いんだよ。

 

「うーん、それは無理な相談かな」

「というと?」

「だって呼んじゃったし」

 

 そんなセリフと共に強大な魔力反応を感知する。

 なぁ、『預言者(アテルモノ)』もしかしなくても前の奴らか?

 

《解。以前主人(マスター)が仰っていた個体名:ルドラと個体名:ルシアと同一と断定します》

 

「お、いたいた」

「こんな手の込んだ用意をしていたとは……」

 

 その言葉を証明するかのように2人の声が聞こえる。

 

「あ、あぁ……俺の数十年の用意が一瞬で塵と化した……」

「ショックすぎて素が出ちゃってるね」

「おーいヴェルダナーヴァ、ここまで連れてきてくれてありがとよ」

「誰のせいだと思ってるんですか誰のせいだと」

「ボクだね」

「お、おーい?」

「ムカつきますね本当。星王竜としてあなたを慕っている人たちに見せてやりたい」

「別にいいよ。ボクは」

「ちょ、何か言えって」

「ですよね、知ってました。あなたはそう言うのに全く関心がないですから」

「わかってるならなんでそんなこと言うのさ」

「わざわざ言わせる気ですか。負け惜しみですよ」

「……! あぁ、もう!」

 

「いい加減俺様の話を聞け!!!」

 

「!?」

 

 突然の大声に俺は驚く。

 それはさっきまで言い合っていたヴェルダナーヴァまで固まっている。

 いや違うな。

 楽しんでる感じだな、これ。

 こうも全部逆効果になると嫌になるなほんと。

 

 ……と、ずっと放置してたな。

 大変申し訳ない。

 

 自分から会いにいくならまだしも向こうから来るの全力でお断りさせていただきたかったところだがもう遅い。

 素直に応じるとしよう。

 

「申し訳ありません。ルドラ様。ずっと放っておいてしまって」

「ん? なんだ、お前俺様のこと知ってんのか」

「そりゃあ王太子で始まりの勇者。肩書きはいっぱいあるじゃないですか」

「それもそうだな。……つかお前! なんで俺様たちのことを見た瞬間逃げ出した! あの後ルシアにめちゃくちゃ詰められてほんと怖かったんだぞ!?」

「だって逃げられるなんて兄さまが原因としか考えられないじゃないですか」

「お前は兄である俺様の味方じゃないのか!?」

「私は誰の味方でもないです」

「泣いていいか?」

「やめてくださいはしたない」

 

 そんな2人の会話を眺めていた思う。

 

 仲良いね君たち、と。

 

 いやぁ、転生してから兄妹っぽいやつ見たことなかったからなんか新鮮だ。

 兄妹っぽいって言えるのは原初たちくらい?

 けどあいつら普通に互いのこと殺し合ってるからな。

 

 とてもじゃないが兄妹喧嘩とは言えない。

 が、こちらはどうだ。

 口喧嘩だぞ!?

 実力行使じゃない!

 すぐに核撃魔法ぶっ放したりしない!

 なんて素晴らしいのか。

 

「お、おいどうしたそんなこちらを見つめて」

「いや、仲良いなと」

「「どこがだ(ですか)!?」」

「いや、だって口喧嘩じゃないですか。相手を殺そうとしてないだけマシですよ」

「兄妹喧嘩で殺し合いなんてすることある……?」

「私の知ってる兄妹っぽい方たちは普通に殺し合いしまくってますね。核撃魔法相手に向けてぶっ放してますよ。たくさん」

「んな兄妹いてたまるか!」

「いるんですよ、それが……えぇ。しかも全員我が強くてですね……はい」

 

 かつての地獄を思い出す。

 修行(アレ)は確かに俺を強くしたが今もう一回やるかと言われれば断固として拒否する。

 あの時は「強くならなきゃ死ぬ」ってのが根底にあったからどうにかなったが今思えばよくクリアしたな俺。

 

「兄さま何やら遠い目をしていますよ。顔わかりませんけど」

「……だな。ここまで色々あったんだろ。ヴェルダナーヴァに向けてあんなことを言うくらいだ。苦労してきたんだな……」

 

 気のせいか俺に対する2人の視線が優しいものになっている気がする。

 やめて、なんか恥ずかしいから。

 

「ゴホン、で、お2人は私のような一般悪魔に一体何のようなのでしょう。あ、殺さないでくださいね。死にたくないので」

「いや殺さねぇよ。つか殺すならとっくに殺してるし

 

 おい、今とんでもないこといわなかったか?

 話はわかるがそれを口に出すなよ。

 せめて心の中で言えよ。

 

「あなたに会いにきたのはギィさんからの提案でして」

 

 ルドラの代わりに答えたルシアの言葉に俺は再び頭を抱える。

 

 薄々思っていたがやっぱギィか……

 

「因みに理由は?」

「兄さまの理想についてあなたに意見を聞いて計画を練ってこいと」

 

 あんのバカ!

 面倒ごと俺になすりつけやがったな!?

 チラッとヴェルダナーヴァをみると笑っている。

 めっちゃむかつく。

 

 大体流れはわかった。

 ルドラの理想を聞いてヴェルダナーヴァがギィに面倒ごと(ルドラ)を丸投げ。

 んでそれを受けたギィが今度は俺に丸投げしたと。

 

 ……ヴェルザードのときもそうだったしギィって俺のこと扱いやすい雑用とでも思ってないか?

 俺が原初に逆らえないってこと知っててやってるだろ。

 あー、ほんとムカつく。

 

 感謝はしてるけどめっちゃムカつく。

 俺は都合のいい駒じゃないんだが?

 

 ……といっても逆らうことなんてできないので結局言うこと聞くんだが。

 

「なるほど。それでその理想とやらは?」

 

 俺の言葉を聞いてルドラは語り出した。

 

 曰く、人間たちをまとめて統一国家を作るのだと。

 それにより争いをなくして平和な世界にするのだと。

 勇者の天敵である魔王のギィとでさえ仲良くなれたのだからできるのだと。

 

 ちゃんと書籍版やweb版での内容と同じだ。

 ギィが俺に振ったのは俺の考え方がギィよりもルドラ寄りだったからだろう。

 

 ギィは人間は傲慢で愚かだから魔王による管理社会が必要だと主張している。

 それの有用性はわかっているし、人間は愚かだと言うこともわかっている。

 それでも世界の平和、統一国家という諦められないのがルドラなのだ。

 

「どうだ、いい世界だろ!」

「悪魔である私に言われても感は正直否めませんが話はわかりました。それが実現したら素晴らしい世界になるでしょうね」

「だろ! だから──」

「けど、それが実現したらの話です。私は確かにギィ様ほど極端ではありませんがルドラ様ほど理想に偏ってもいません」

「なんでだよ。お前は俺様と似たような考えを持っているんだろ?」

「そっち〝寄り〟と言うだけです。完全に一緒ではありません。ギィ様のいう傲慢な国丸ごと滅ぼすのでなくその個人を処分すればいい、というのが私の考えです。そんな理想が叶うほど人間は高潔な生き物じゃないですよ」

「……お前もギィと同じようなことを言うんだな。それはわかっている。理解しているんだ。でも、それでも俺様はできると信じている!」

 

 ルドラはまっすぐな瞳で俺を見つめる。

 

「どうしようもない愚か者がいるかも知れませんよ? というか出てきますよ?」

「そいつには罰をやる。すぐに殺す、みたいな犠牲が簡単に出る手段じゃなくてな」

「それにより新たな被害が出るかもしれませんよ?」

「そこは俺様が解決する。ルシアもいるしここにはいないがグリュンもいる。できるはずだ」

 

 なるほど、ギィが押し付けようとするわけだ。

 どこまでも理想論を言っている。

 

 地球という人間が生態系のトップに君臨していた世界で高校生までしか生きていなかった俺でも人間っていうのは愚かだって言うのは理解している。

 なんならこの世界よりも人間の醜さが現れているのではないだろうか。

 

 それをわかっているからこそこれは本当に理想だ。

 こうしたいと言う願望ではなく空想に近い。

 

 それをここまでの熱量でやろうとしている。

 転スラでルドラの言動を見て本当にこいつ勇者か、なんて思うことが度々あったがやはりルドラは勇者なのだ。

 始まりの勇者の名に相応しい精神を持っている。

 

 なら。

 

「やってみればいいんじゃないですか? それを。本当に厳しいでしょうけど。もし本当にそうなったら私は嬉しいですからね。応援してます」

 

 応援しよう。

 ヴェルダナーヴァと同じ選択というのはなんか嫌だがこんな熱弁を振るわれたヴェルダナーヴァも当時こんな感情だったのだろうか。

 顔が見れていないから気のせいかもしれないが、ヴァルダナーヴァが笑ったような気がした。

 

「そうか。応援してくれるか」

「ええ。頑張ってください」

「じゃあお前も手伝ってくれ」

「え」

 

 ちょっと待て、話が違うぞ。

 応援する、といっただけだ。

 手伝うなんて言ってないぞ?

 

「応援するってだけですよ? 手伝うなんて一ミリも言ってませんが?」

「一ミリってのはわからんが応援してくれるんだろ? なら手伝ってくれてもいいじゃねぇか」

「いやですよ。絶対面倒ごとじゃないですか」

 

 面倒ごとはごめんだ。

 これ以上俺を巻き込まないでほしい。

 

 俺の決意は固い。

 命の危険はないとはいえ無謀な挑戦についていく義理などないのだ。

 俺は眺めてるだけでいい。

 

「でもお前暇してるんじゃないか?」

「!」

「俺の国にはヴェルダナーヴァもいるし俺様やルシア、なんなら竜種もいる。飽きないと思うぜ?」

「飽きはしないでしょうけどメンツがダメです。お2人はまだしも竜種2人って……」

「でもヴェルダナーヴァ様のことだからいつまでも付き纏うと思いますよ?」

 

 ルシアの言葉を聞き、慌ててヴェルダナーヴァを見る。

 

 おい、笑うな。

 不安になるだろ。

 

「というか今私には原初の黒が纏わりついているのですがそれについては?」

「あいつは興味持ったやつしか危害加えないだろ。王国にはそこまで問題ないはずだ。つかないようにする。ギィと渡り合えた俺様なら受肉してない黒程度なら相手できるからな」

 

 うーん、実績あるから反論できない。

 変態(ノワール)で断る作戦は封じられたか。

 

「手助けっていってもたまに相談に乗ってくれるだけでいい。お前を作戦に組み込んだりはしねぇよ」

「そこは大丈夫です。命令されても絶対に参加しないので」

「ま、ともかくだ。俺様たちの国に来て欲しいんだよ。ある程度こっち側の思想があるやつに。王城には図書館とかもあるし多少は暇つぶしにはなると思うぞ」

 

 ふむ……確かに良さそうだ。

 

 この感じだと断っても度々探し出して会いにきそうだしな。

 たまに相談するって前もってわかっていた方がいいかもしれん。

 

 内容だけ知っていていつ起きるかわからない状況が恐ろしいと言うことは身をもって知っているからな。

 

「……はぁ、わかりました。強引に押し込まれた気はしますがお世話になります」

「おう」

 

 こうして俺は勇者の国に転がり込むことになるのだった。

 

 




ステータス(本来の力)
種族:悪魔公
名前:なし
称号:なし
魔法:『元素魔法』『暗黒魔法』
ユニークスキル:『預言者』『夢中者』『疾走者』
エクストラスキル:『魔力感知』
コモンスキル:『思念伝達』
耐性:物理攻撃無効
   精神攻撃無効
   状態異常無効
   自然影響無効
   痛覚無効

ステータス(受肉時)
種族:上位魔将
名前:なし
称号:なし
魔法:『元素魔法』『暗黒魔法』
ユニークスキル:『預言者』『夢中者』『疾走者』
エクストラスキル:『魔力感知』
コモンスキル:『思念伝達』
耐性:物理攻撃無効
   精神攻撃無効
   状態異常無効
   自然影響無効
   痛覚無効
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