リムルに喰われる悪魔に転生してしまった……   作:てきとーでいこう

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ヴェルグリンド

 

 

「なるほど……ここがナスカ王国。他の国とは比べるまでもなく発展していますね」

 

 1人、場内を見て回っていた俺は素直にそう呟く。

 

 人々は笑顔で溢れていて全員が全員幸せそうに生活している。

 なるほど、ルドラが人類が一つにまとまると信じているのもこれを知っているからか。

 

 この笑顔を守りたい、それも全人類の。

 だから世界を平和にする。

 

 まさに勇者じゃないか。

 性格は勇者って柄じゃないけど。

 

 とはいえ、それがルドラの魅力の一つなのだろう。

 勇者なのに欲に忠実、下手に高潔なことを述べる人物に比べて幾分か好感が持てる。

 別に喧嘩を売っているわけでないのだが、ずっと正論を言い続けている人よりも互いに冗談を言い合ったりできる人の方が過ごしていて楽しいのだ。

 

 俺ももしルドラが、魔王は邪悪、だから殺す!なんてことをずっと言っている奴だったら距離取ってるだろうしな。

 

 なんてことを考えているとルドラから思念が来る。

 

(どうだ? 俺様たちの国は)

(素晴らしいですね。私が今まで見てきた国とは比べ物にならない)

(だろうな! 俺様の国だからな! というかその口調だとこの国には今まで来たことがないのか?)

(当たり前じゃないですか。なんでわざわざ勇者のいる国に行くんですか。死ににいくようなもんじゃないですか。自殺志願者じゃないんですよ私は)

(それもそうか。俺様もお前くらいのやつがこの国に近づいたら気づくからな。ギィと出会ってお前のこと聞いてなかったらすぐに殺してただろうぜ)

 

 さらっと恐ろしいことを言わないでくれ。

 聖人へと至っていて、ギィとまともに喧嘩できるあんたに俺が勝てるわけないだろう。

 現実味がある分妙にゾワゾワするんだよ。

 

(つかなんでお前俺たちと一緒に王城まで行かなかったんだよ。ついでに案内できるから楽だったんだが)

(こっちは目立ちたくないと言っているでしょうが。王太子と並んで歩いてるところを見られでもしたら噂でいっぱいですよ。そちらにとってもめんどいのでは?)

(いや? 新たな友だ、と言うだけだが)

(私は悪魔ですが?)

(お前くらいしっかりと妖気(オーラ)を抑えて人間と変わらない格好でいるやつを悪魔と見抜けるやつなんていないだろ)

 

 いや、外見上はともかくまず勇者の国に悪魔がいるって時点でダメな気がするんだが?

 

(それでいいんですか)

(それでいいんだよ)

 

 いいのかよ。

 

 まぁ難癖つけてギィと喧嘩(遊び)をしにいっているしな。

 すでに原初とつるんでる時点で俺みたいな一般悪魔に今更頭を悩ますなんてやる必要ないか。

 

(んじゃそろそろこいよ。いろいろと案内しなきゃいけねぇからな)

(わかりました)

 

 念話で催促を喰らった俺はルドラから教えてもらった座標を確認する。

 ルドラ兄妹の馬鹿でかい気配が2つある。

 それを霞ませるくらいにヴェルダナーヴァのものであろう馬鹿でかい気配があるが、2つの気配があの2人なのは間違いないだろう間違いないだろう。

 

 そう考えた俺はその場に転移をする。

 

「あぁ、遅れてしまってすみませ──」

「おー、来たか。グリュン、こいつがギィが言ってた悪魔だ。話がわかるやつだったから連れてきた」

「あなたが?」

 

 目の前では親しげに会話をしている金髪の男と蒼髪の女。

 片方はついさっき念話をしたルドラである。

 

 そこはいい。

 問題はもう1人の存在。

 

 なんでですかね、なんでいるんですかねここに。

 いや、ここ(この国)にいるのはわかってたよ?

 けどさ、さっきまで気配とかなかったやんけ!

 

「あら、どうしたの?」

「そりゃ驚いてるな決まってるだろ。これで驚かない方が怖いぞ。なんせお前竜種なんだからな? ヴェルグリンド」

 

 灼熱竜ヴェルグリンド。

 

 白氷竜ヴェルザードの妹であり、数少ない究極能力(アルティメットスキル)を保有しているこの世界最高峰の実力者。

 ついでにいえばリムルが生まれる未来でもルドラのそばにいるほどルドラに一途な存在だ。

 

 そんな、存在が今目の前に。

 

 ヴェルダナーヴァはこっちが失言しても面白い、とかいって見逃してくれるがヴェルグリンドの場合はそうはいかない。

 特に大好きなルドラに関して言えば、だ。

 

 長い年月をかけて信頼を勝ち取っていなければルドラにふざけたことを言った時点で死が確定する。

 なんでそんな人を俺に隠してここにつれてきてんだよ!

 

「竜種が一つの国に2人も……」

 

 リムルも大概だが今のこの国も大概じゃないか?

 竜種2人、そのうち1人は創造神。

 そして勇者に馬鹿げた強さを誇るその妹。

 

 うーん、バグ。

 この時代に……というか全ての時代においてたかだか一国が持っていていた戦力じゃない。

 

 これにはギィも頭を悩ませているだろう。

 ヴェルダナーヴァが絶対に手を出さないっていう確信があり、ルドラを信用しているからこそ手を出していないだけだろうからな。

 

 なお、それに匹敵する猛者を多数抱えている我らが主人公がこの後この世界にやってくる模様。

 そのときはギィさんには盛大に頭を抱えてもらおう。

 

「まぁ、馬鹿げた戦力だよな。安心しろ、ヴェルダナーヴァとグリュンは戦いには連れ出さない。連れ出す時はギィと喧嘩(遊び)しにいくときだけだな」

「だからと言って……いや、いいです。ギィ様が手を出していないと言う時点でこの話は済んでいるのですから」

「案外物分かりがいいのね」

「もう強者と関わりすぎて吹っ切れるのには慣れていますので」

 

 じゃなきゃこんな世界でやっていけねぇよ!

 

「っ! ……殺すつもりですか?」

 

 突然ヴェルグリンドから飛んできた攻撃は今までの経験と勘と『預言者(アテルモノ)』による『未来予測』でとっさに防ぐ。

 

「手を抜いていたとは言え上位魔将(アークデーモン)が私の攻撃を受ける……ギィが言うだけはあるわね」

「だろ? コイツが逃げた場所を俺様とルシアでもすぐには探知できなかったくらいだからな」

 

 ちょっと待てルドラ。

 それはやめてほしい。

 そんなこと言ったら──

 

「ルドラから逃げる?」

 

 ルドラガチ勢のヴェルグリンドさんが黙っていないっての。

 

 ルドラからしたらただのセリフだろうが、それによって鋭すぎる矛先が俺に向くのを忘れられては困る。

 

「相手は勇者ですよ? 悪魔である私からしたら逃げるのは当然では? 絶対に勝てないのですから」

 

 全く。

 内心テンパりながらも平静を保って言葉を交わすことだけが得意になってきてるよ。

 こんな技術本当はいらないんだけどなぁ。

 

「まぁ、それもそうね」

 

 ふぅ、納得してくれたか。

 これで許さない、みたいなこと言われたら俺の人生終了案件だったからな。

 一体何回命を失いそうになりゃいいんだよ。

 

「それで私を呼んだのには訳があったのでは?」

「おぉ、そうだった、そうだった。忘れてたぜ。お前には簡単に言えば〝相談役〟になって貰いたいんだよ」

「〝相談役〟?」

「あぁ。俺様がこれからやる上で……というより普段の息抜きにな。軽く相談に乗って欲しいんだ」

「あら、息抜きなら私がしてあげるけど?」

 

 ヴェルグリンドの発言にルドラが苦笑いする。

 

 まぁそう簡単に相談はできないよな。

 ルシアにするのもいいと思うが妹だから迷惑をかけらんないだろうし、ヴェルグリンドは発想が上位存在のソレだからな。

 

 こいつらがいろいろとうるさいんだ、なんてルドラがヴェルグリンドに愚痴を言ったら翌日にはそいつらの命はない可能性が高い。

 

 ヴェルグリンドが特別ってわけじゃなくてある程度の上位存在ともなれば、気に食わないなら殺せばいいと言う価値観が当たり前になっているからな。

 

 できるだけ犠牲を出さないようにしたいルドラからしたらたまった者じゃない。

 

 それ(処刑)を引き止めるのに神経を使うのだから気が休まるということはないだろう。

 

「ずっとグリュンに頼みっきりってわけにもいかないだろ? それと俺様たち以外の視点からの意見も聞きたいしな」

「わかったわ、ルドラ」

 

 ルドラの言葉にヴェルグリンドが納得したらしい。

 それを見て俺とルドラがほぼ同時にふぅ、と安堵の息を出す。

 

 最初は気が合わないだろうと思っていたが案外気が合うかもしれんな。

 周りに振り回されてるのを見るに。

 

 ルドラも結構周りを振り回しているがそれでいて結構常識的な部分がある。

 周りが常識何それ美味しいの、って感じの連中だから周りが何かやらかしそうになったらそれを止める役割がルドラなのだ。

 案外苦労性かもしれない。

 

「んじゃ、お前の部屋に案内する」

 

 俺の思考はルドラのセリフによって中断される。

 

「部屋?」

 

 え、なんでそのまま歩き出すの?

 俺の住む場所って人目につかない城外の場所じゃないの?

 

 悪魔だから正体がバレたら大混乱。

 それを防ぐためにも隠れ家的な場所に案内してくれるのだと思っていたら──

 

「ここがお前の部屋だ」

 

 案内されたのはめちゃくちゃ豪華な部屋。

 そう、王城の一室である。

 

「んであそこがルシア、あそこが俺様の部屋って具合だな」

 

 そしてルドラたちとめっちゃ近い部屋ときた。

 

「いやなんで!?」

「お前は悪魔だからな、一目につかないのがいいだろ? お前もそれを望んでいたし」

「いや、それはそうですけど」

 

 なんでそれでこうなる!?

 

 普通隠さなきゃってなったら人目につかない質素な場所だろう?

 豪華なんてかけらもない周りが知らないような場所。

 

 なのになんで王族のいる空間!?

 周りにバレたくない、なら自分たち王族のプライベート空間に住まわせればいい、って普通ならなくないか!?

 

 って、言っても無駄か。

 これ以上ごねたらヴェルグリンドからの制裁が待っていそうだし。

 

「……わかりました」

「おう。俺様たちが生活しているこの空間の中なら基本何しててもいいぞ」

「いや、そんな王族たちのプライベートで悪魔を自由にさせていいんですか」

「そう言ってる時点で大丈夫だろ」

「いやそりゃ人様のものを勝手に持ち出したりはしないですけど」

「ま、なにかあったとしても俺様たちならお前くらい簡単にねじ伏せられるからな」

 

 おうおう結構な自信だな。

 実際そうだけど。

 

 俺を放任してるのも最後の実力が大きな理由なんだろうな。

 

 竜種2体に勇者に、その妹。

 俺がこの中で勝てそうなやつほぼいないんだが?

 この中で1番弱いであろうルシアと勝負できるかどうかくらいだろうし。

 

 あれ?

 これ俺逃げ出せなくないか?

 どうせ転移してもヴェルダナーヴァにバレる。

 逃げたとしても実力的に100%捕まる。

 

 もしかしなくても俺軟禁された?

 

 ルドラとヴェルグリンドの会話を背景に、俺はそんな結論に辿り着くのだった。

 

 




ステータス(本来の力)
種族:悪魔公
名前:なし
称号:なし
魔法:『元素魔法』『暗黒魔法』
ユニークスキル:『預言者』『夢中者』『疾走者』
エクストラスキル:『魔力感知』
コモンスキル:『思念伝達』
耐性:物理攻撃無効
   精神攻撃無効
   状態異常無効
   自然影響無効
   痛覚無効

ステータス(受肉時)
種族:上位魔将
名前:なし
称号:なし
魔法:『元素魔法』『暗黒魔法』
ユニークスキル:『預言者』『夢中者』『疾走者』
エクストラスキル:『魔力感知』
コモンスキル:『思念伝達』
耐性:物理攻撃無効
   精神攻撃無効
   状態異常無効
   自然影響無効
   痛覚無効
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