リムルに喰われる悪魔に転生してしまった…… 作:てきとーでいこう
俺は今盛大に悩んでいた。
……ここ最近悩んでばっかだな。
まぁ前のよりはマシなのだが。
今俺が悩んでいるのは他でもない俺の立場のことだった。
「流石に「何もなかった」、じゃ済まないですよね」
「そりゃそうだろ。他でもないお前がガッツリ姿見せてんだからよ」
俺の苦し紛れの願いをルドラが両断する。
「とはいっても私この国に属してないですし……それに政治とかそういうの全くわからないですよ?」
俺は要は居候なのだ。
ナスカ王国に所属しているわけではない。
だから遠征に行かず対暗殺のための準備を整えられたというのもある。
あとは単純に知識不足。
元一般人に政治とかそういうのは無理です。
俺にやらせたら政治崩壊するよ、マジで。
あと勇者の国の政治を悪魔に任せんな。
「それもそうなんだよな。だからこうして頭を悩ませているわけだが」
「自分としては出来るだけ穏便に済ませたいんですがね。目立たない形で」
「そりゃ無理な相談だ。何せ民衆が言ってるんだからな。普通の謝礼じゃ納得しないだろうぜ」
「そういった場合って普段どうしてるんです?」
「んな出来事ほとんどねぇからな。強いていうなら官僚に取り立てたり特別待遇での軍に向かい入れるとかか?」
うーむ、見事に全部ダメだ。
強いていうなら軍だが……
「そうなると完全にこの国に属することになりますね」
「お? 俺様の国が嫌いなのか?」
「いやそういうわけじゃないんですけど……ギィ様が許すかどうか……」
いつぞや魔王とか調停者とかそういう話をしてたしな。
ギィ相手に約束を破るとか自殺行為だ。
そんなことを考えていた時だった。
この場への転移を感知する。
「ほぉ? ちゃんと覚えてるじゃねーか」
真横で知り合いの声がした。
そう、まさに今俺の中で話題に上がっていた──
「ギィ様!?」
「おう、何やら面白そうな話をしてるじゃねーか。俺も混ぜろ」
いや早すぎないか。
そりゃ思ったよ?
こんだけやりゃ呼び出されるなとは思ったよ。
けどさ、いくらなんでも早すぎやしないか?
「因みに後から他の奴らも来るからな」
「……他の奴らって?」
思いついた状況でないことを祈りながら……そしてそれが当たるんだろうなと考えながら一応尋ねる。
「
はい当たりました。
絶対面白半分に誘ったんだろうな。
アイツが変なもんに進化したらしいぜ、みたいな感じで。
「せめて場所は変えてくださいよ……」
いくらなんでも
「それくらいわかってる」
俺の言葉にギィは近くにあった椅子に腰掛けながら答えた。
「よぉギィ。お前が来るとは珍しいな」
「まぁな。っても今回ばかりは動くほかないだろう。いくらなんでも色々起きすぎだ」
まぁ実際とんでもないこと起きたからな。
ヴェルダナーヴァとルシア暗殺未遂。
ルドラによる俺の名付け。
そして竜の因子獲得。
ここ数日でこれだけのことが起きているのだ。
「それでどういった要件だ?」
「それこそさっき言ったとおり、コイツの処遇についてだ」
そこで
やめてください。
心臓に悪いです。
「まずコイツの立場なんだが微妙なんだ。俺らの国に所属しているわけでもない、いわゆる客人ってやつだ」
「ああ、それは聞いた。軍や政治には関わらないって話だろ?」
「そう、そこでなんだがお前がどうとか言ったんだわ。どういうことだ?」
「お前に紹介する前に一度調停者や魔王に誘ってな。その時は保留になったが自由を満喫したらなるって言ったわけだ」
そうだな。
せめて頷かないと死ぬと思ってたし。
それに加えてあの時はまだ考えが甘かったからな。
魔王になればリムルたちを間近で見れるんじゃね、とかふざけた打算もあったりしてた。
今にしてみるとほんとクソみたいな考えだな。
「要するにコイツは魔王陣営と人間陣営どちらにも強い関わりがあるわけだ」
「……さらに面倒ごと増やしやがって」
「すみません」
2人の言葉に素直に謝る。
けど弁明させて欲しい。
まさかこうなるとは思わないじゃないか!
勇者と関わることになるなんて。
誰が想像できんだよこんなこと。
「それにコイツは影響力がでかい。ゲームに関してもコイツを取った奴は一気に有利になるだろうぜ」
「それはそうだな。戦力としては申し分ねぇ。まだ究極っていう伸び代もあるしな」
「そこに加えて竜の因子に聖属性。ハッキリ言ってゲームをぶち壊しかねない。その上どちらにも所属できるわけだ。このままだと取り合いが激化する」
しれっと俺が駒扱いをされているのは一旦置いとくとしてそれを本人目の前でやる?
褒められてるのに貶されてるように感じて複雑な気分なんだが。
その視線にギィが気づいたのか俺に反応する。
「なんだその目は。事実だろうが」
「それはそうですが褒められてるのか貶されてるのかわからないので微妙な気分です」
「どっちもだ。想像以上にめんどくさいことになりやがった」
なんか申し訳ない。
とはいえ向こうからしたら厄ネタだよな。
今回で俺はナスカ王国民から認知されちまってるわけだから人間サイドに影響力ある。
しかも天井組には及ばないとしてもある程度力もある。
そいつが自分陣営にも敵陣営にもつきうるんだからな。
面倒なことこの上ないだろう。
俺がそっち側だったらそう思う。
「となると、中立だな」
ルドラが言う。
「どちらにも属さない。第三者の立ち位置だ。俺もお前もヴェルアのことは取りに行かないことにすればいい」
「それが1番無難か。ナスカ王国にも魔王にも当てはまらない自由な立場だし文句ないよな?」
「当事者を放っておいて勝手に話が進んでいってる……」
「それじゃあテメェこれ以上の案出せんのかよ」
「なんでもないです。喜んで引き受けさせていただきます。とは言ってもその第三者の立ち位置ってどうしますか? ギィ様はともかくナスカ王国民を納得させなければなりませんよね」
「それもそうなんだよな。ナスカ王国に属さない形でっとなると難しいか」
誰もが口を閉じ、場が静寂に包まれる。
そんな時だった。
「じゃあヴェルアにはボクを崇めてもらおうか」
そうヴェルダナーヴァがあっけらかんと言ったのは。
「崇める?」
「おいお前これ以上ヴェルアに何かするつもりか? いくらなんでもやりすぎだ。そろそろ俺様も手が出るぞ」
「おぉ、怖い怖い……拳に力を入れるのはやめてね? ちゃんと考えはあるから」
「はぁ、お前はいつも説明が足りないんだよ。ちゃんと話せ」
呆れながらルドラはヴェルダナーヴァに説明を促す。
「もちろん。今詰まっているのは第三者の立場で民衆を納得させる方法がわからないんだろう?」
「そうだな。とはいえ自分たちを救ってテロの被害を収めたってのにありがとうの言葉だけじゃ満足はねぇだろ」
まぁ、それはそう。
俺も誰かがものすごいことをしたのに賞とかも与ええずにおめでとうで済ませられるとそれはどうなの、と少し思うし。
ここまではわかるんだよ。
「そう、だからその救われた神であるボクが言うのさ。彼はボクが認めた信徒である、と」
なぜ信徒?
認められたってことにすれば……いや、それだと余計目立つか。
勇者だ、みたいに騒がれそう。
それこそ軍に、みたいな感じになるかもしれんな。
「信徒ってことは宗教か。お前の宗教なんてあったか?」
「特に作った覚えはないけど勝手に崇められてはいるね」
おぉ、すげぇことさらっと言うな。
さすが創造神。
「そこにコイツぶち込むわけか。宗教国家ならまだしも、ナスカ王国とは特に関係ないもんな」
「さらに神の承認付き、ね。救われてるんだから文句もでねぇだろうな」「具体的には違うけど似たような感じだね」
ありゃ、違うの?
俺のことをヴェルダナーヴァが公に認めて仮称ヴェルダナーヴァ教に相当な立場でぶち込む、と。
神が認めているという拍付きで。
みたいな感じだと思ってたんだけど。
というかこれだったら軍所属の方が目立たないのでは?
けど命を預かる軍で無責任なことできないし……いやそりゃ宗教でもそうなんだけどさ。
「具体的にはどうするんです?」
「なんかの称号を与える。例えば〝星官〟とか? なんでもいいけどそうやって拍をつける」
「そこでヴェルアにヴェルダナーヴァを表立って信仰して貰えばもともとヴェルダナーヴァを崇めてた奴らも勝手に合流するだろうな」
なるほど。
要するに俺を使ってそれぞれ勝手に信仰されているヴェルダナーヴァ教を組織しよう、みたいな話ね。
ルミナス教みたいにちゃんとした組織にしようと。
神が認めた俺がヴェルダナーヴァを信仰していれば人は勝手に俺に近寄ってくる。
それを元に俺を中心とした宗教組織を作れってわけだ。
宗教組織なら国とか関係ないから。
「とはいえ宗教の運営なんてそうできませんよ?」
「そこは正直どうとでもなるだろう。神に認められた奴に言われて真面目な信仰心を持つ奴らは逆らえねぇさ」
俺の言葉にギィが実に悪魔らしい発言をする。
実際悪魔なんだけどさ。
「無論いろんな出費だったり、人間関係はあるだろうがな。教義だったりはお前がある程度方針を決めてしまえばそこまで苦労しないだろう。少なくとも国の政治や軍よりはマシだぞ」
宗教だから神に認められた俺が相当な権力を持つってこと?
やめてくれよ。
俺そんな精神面素晴らしくないぞ。
調子とかに乗っちゃうから。
「ま、何かやらかしそうになったら俺様が出向くがな」
「オレもたまには邪魔するぜ」
あ、大丈夫かも。
定期的に俺の自尊心ぶち壊す奴らくるっぽい。
それはそれとしてちゃんと気をつけなければならないが。
「場所はどうします? 本拠地とかいるんじゃないですか?」
「適当に占領した地を与えるか?」
「でもそれだとナスカ王国に属してるって見方もできるね」
「全く新しい土地を用意しなければならないな」
「とはいえ仮にも神を崇める宗教の筆頭が場所作るために征服しますはいくらなんでも……」
イメージ的にもまずいだろ。
俺そんなことしたくないし。
「だったら新しい土地を用意すればいいだろ」
ギィがいとも簡単そうにそういう。
「というと?」
「なんでもいいが土地を用意して空に浮かせりゃいいだろ。海の上とかにでも」
空中都市!?
マジで?
どうやってだよ。
「ボクが用意するよ」
俺の内心の疑問にヴェルダナーヴァが答える。
その言葉の裏に「おもしろそうだから」とかついてないですかね。
つかそんな力残ってんの?
「私も手伝います。命を救われましたからね、これくらいはやりますよ」
そう言ってくれたのはルシアである。
神夫婦全面協力かよ。
「オレもやるぜ。面白そうだしよ」
さらに魔王追加されたわ。
こっちは隠しもせず面白そうって言ってるし。
協力はありがたいから文句ないけどね!
にしても話の規模でかくなりすぎじゃね?
なんだよ神夫婦と魔王協力の宗教組織って。
厄ネタかな?
厄ネタだわ。
「ともかく話はこんなもんでいいだろう。今すぐってわけじゃないんだ。方向性が決まっただけ十分だろ」
「そうだな。オレとしてはそろそろ次の用事に移りたいからな」
その言葉と共にギィの横に転移門が現れる。
完全に忘れてたわ、原初との面会。
宗教組織のトップになるって決まったあと原初との面会とかスケジュールハードすぎるだろ。
原初複数いるとこなんて死地だぞ。
断る選択肢なんてないのでもちろん行きますが。
そう思い、椅子から立ち上がる。
「生きて帰ってこいよ」
「浮遊島用意して待ってるよ」
「頑張ってください」
3人からの応援が心に沁みる。
死地に向かう前の応援って此処まで嬉しいものなんだな。
さて、応援してもらったからには頑張らないとな。
そう心で誓い、俺は転移門を通った。
ヴェルアがどんどん出世してる……