リムルに喰われる悪魔に転生してしまった……   作:てきとーでいこう

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なんか書いてたら長くなった。


別れとは始まりである

 

 

 思えばこの世界に転生してからこれまで俺は相当な回数驚いた気がする。

 原初たち然り、勇者然り、竜種然り。

 

 とはいってもその大半が原作知識からくる知識や圧倒的な強さを誇っているが故だった。

 

 だけど、今感じているこの驚きはまた少し違う。

 

「うし、こんなもんだろ」

「うん。ボクの術式もちゃんと発動しているね」

 

 驚いている俺の前でギィとヴェルダナーヴァが大したことでもないように頷いていた。

 

「……マジか」

 

 思わず素の口調がでてしまうくらいに存在感の大きい()()は──

 

「ほら約束通り用意したよ。浮遊島ヴェルグレイだ」

 

 俺の目の前にあるのは島ほどある巨大な土地。

 下には一面海が広がっている。

 

 文字通り浮いた島、浮遊島。

 用意するとは言われていたがこんなに早く、そしてこれほどとは思わなかった。

 

 どうやって?

 

 島自体を疑ってるわけじゃない。

 海底から土地引っ張ってくるって言ってたしそれを言ったギィからしたらんなもん簡単だろうからな。

 

 気になるのは別のところ。

 どうやって浮いてるんだ?

 今誰もエネルギー維持してないと思うんだが。

 

「どうやって浮かせてるのか気になるかい?」

「そりゃあまぁ。何をするのにもエネルギーは必要ですからね。これほどの質量を常に浮かせるとなると尚更」

 

 今の俺なら浮かべることはできるだろうがそれをずっととなると無理だ。

 全ての魔素をこの維持にのみ使えばなんとかなるかもしれないがそういうわけにもいかないだろう。

 

「簡単に言えばボクへの信仰を利用してるんだよ」

「信仰を?」

「言ってしまえば神聖魔法と同じだね」

 

 あぁ、なんかあったな。

 信仰と恩寵みたいな感じのヤツ。

 確かルミナスがリムルに教えたやつだっけ。

 詳しくはわからんが信仰心を元手に神聖魔法を……的なやつだったはずだ。

 それを流用しているのだろう、おそらくは。

 

 正義之王(ミカエル)の【王宮城塞(キャッスルガード)】みたいなもんか。

 

 まぁ創造神だからな。

 それっぽい理屈言われたら納得できちまう。

 

「信仰心……ってことは実質無限のエネルギーですか」

「その通り。ボクが死んでもボクへの信仰は残るからね。継続してエネルギーの供給は残るはずさ」

「……」

 

 ヴェルダナーヴァのその言葉に近くにいたルシアの表情が曇る。

 

 やめてくれ。

 曇らせは作品でみる分にはいいがリアルで見ると気分が最悪になるんだ。

 

「にしても大きいですね。これ海底から出す時人間たち相当驚いたんじゃないですか?」

「さあな。オレには関係ない」

「いや驚いてたぜ。俺様は知っていたから特に思わなかったが国民は大騒ぎだ」

 

 この暗い空気を変えようと俺が提供した話題に悪魔と勇者が乗った。

 ありがてぇ。

 ついでに周囲の反応も知れたし。

 

 やっぱ驚くよな。

 急に大きな音を立てて海面からバカでかい土地が浮き上がってくるんだもんな。

 俺がそっち側だったら同じ反応する。

 

「んじゃあ説明しないと面倒なことになりますね」

「ああ。今日布告をするぜ」

「へぇ、決まったんですか。どんな感じにするのか」

「そりゃあな」

「だね」

 

 俺の言葉にルドラとヴェルダナーヴァは互いを見て頷いた。

 相当な自信があるっぽい。

 

 今日らしいしちょっと覗いてこうか。

 そう思いしばらく暇を潰した後、式典などが行われている講堂らしき建物へ向かう。

 

「さてさてどんなもんかな」

 

 講堂の屋根の上につき、そこにある窓から中を覗く。

 

 俺が堂々と称号とかを授かるとナスカ王国に従っていると思われるからな。

 本来は待機なのだが……うん、無理。

 だって気になるじゃないか、俺が世間にどう発表されるのか。

 俺がようやっと表舞台に立つわけだ。

 大事で面倒なことになりそうな予感がめちゃくちゃするがそれ以上にワクワクもしている。

 自分が褒められると知っていていい気分じゃないやつはそういないだろう。

 

 話されているのは今回の襲撃の概要。

 今戦争状態にある敵国の謀略によって暗殺されかけたが俺がそれを防いだと。

 そしてその敵国は何者かによって滅ぼされたと。

 

 ま、ギィがやりましたなんていうわけにもいかないしな。

 ヴェルダナーヴァを襲撃したのだからヴェルダナーヴァを敬っている国から報復攻撃的なのをされたといっても納得はするだろう。

 ちゃんと俺が滅ぼしたわけじゃないって言ってくれてるのもポイント高い。

 

 さすが王族。

 ここまでの流れだけで言うのもおかしいがやっぱ演説とか政治とかもちゃんとやってたんだな。

 今まではどう足掻いても最初に戦闘力が目に入るから考えられなかったけど。

 

「そして今回の英雄である彼、ヴェルアはナスカ王国の民ではないため我が国に迎え入れることは不可能だ。彼自身もそれを望んでいない」

 

 ルドラの言葉にその場に集まっていた人々にどよめきが走る。

 

 恩人を放置するのか。

 あれほどの戦力を逃すのか。

 敵になったらどうする。

 

 いろんな想像が各々の頭の中で浮かんでいるだろう。

 成果の観点から、力の観点から、安全の観点から。

 

「彼は自由であることを望んでいる。とはいえ我が国の重鎮を救ってもらったというのになんの返礼もしないのはありえない。そこでその当人から報酬に関しての話をしてもらう」

「やぁみんな、ボクだ。単刀直入に言うね。彼には称号を授けたいと思っている。助けてもらった側が与えるのも変な話だけどね。ありがたいことに彼はボクを敬ってくれているそうだからよろこんでくれるだろう」

 

 ちょっと一旦突っ込ませて欲しいところがあるんだが?

 

 やぁみんな、ボクだって何?

 いやそりゃ全員知ってるだろうけどさ。

 ……まぁ改まって説明する必要もないってことなのかな。

 

 あとヴェルダナーヴァを敬ってるっていうのそういう設定とはわかっていたけど聞く分には変な感じだな。

 敬っているとは少し違う気がするし。

 信仰というよりは尊敬というか……いや尊敬も違うな。

 なんで言えばいいんだろう。

 

 嫌ってるわけでもないしこの人はすごいってわけじゃない。

 一種の諦め?

 創造神だしな、みたいので全部片付くから?

 

 わからんな。

 まぁいい。

 それよりこの式典だ。

 

「これはナスカ王国のボクではなく。星王竜ヴェルダナーヴァとしてのボクからの贈り物だ。ボクから彼には〝星防者(ラドン)〟という称号を与えようと思う。そして彼が住む土地、浮遊島ヴェルグレイをね」

 

 星防者(ラドン)

 称号はそこまで厨二チックじゃなかったが意味がわからないな。

 なんでラドン?

 多分なんらかの神話とかが絡んでるんだろうけど俺そこまで神話詳しくないしなぁ。

 今思えばよくリムルって天使の名前とか覚えてたな。

 

 その後は関係者がルドラたちに質問攻めをしていた。

 まぁ一気にこんな情報を詰め込まれたらそうなるわ。

 やっぱ政治とか面倒だし大変だわ。

 

 窓の外でそんなことを考えながら俺は遠くに浮かんでいる浮遊島を眺める。

 

 これからあそこが俺の住処になるらしい。

 全くもって転生した時はこんなことになるとは思いもしなかったな。

 

 ひとまずこれで式典は終わりだろう。

 んじゃ、俺は退散するとするか。

 そう思い、俺は転移するのだった。

 

 

 

 

「お疲れ様です」

「よく言うぜ。あの質問攻めを眺めてた癖に」

「私が中立の立場ってことを証明するためにもあそこにいるわけにもいかないでしょう」

 

 あとあんなとこ行きたくないし。

 

「とか言いつつ自分があそこにいなくてよかったとでも思ってんだろ」

「はい」

「潔いなオイ」

 

 俺が苦労していたのにお前は……と恨みつらみを呟くルドラを無視してヴェルダナーヴァたちの元へ行く。

 

「お疲れ様です」

「ありがとう。それでどうだい? 称号は気に入ってもらえたかな?」

「気に入ったというよりはなぜ星防者(ラドン)なのかがわからないんですよね」

「ボクの数あるスキルの一つ、星護之王(ラドン)からとったものだ。まぁ今ではユニークレベルに劣化してこの世界に散らばっているけれどもね」

 

 あぁ、そういえば元々の全なる一だった頃のヴェルダナーヴァは全てのスキルを保有していたんだっけ。

 ぶっ壊れにも程があるな。

 そりゃ原作でもヤバかった究極能力(アルティメットスキル)全部持ってるんだったらできないことないわ。

 

「スキルはほぼ無限にありますからね。そういったものもあるんでしょう」

「そうそう。君にもし究極能力(アルティメットスキル)を与えられたらこれをあげるつもりだったんだよ」

 

 マジで?

 それ聞くとちょっと興味湧いてきたぞ。

 

「へぇ、そうなんですか。ちなみにどんな能力なんです?」

「ボクがここでネタバレしちゃ面白くないだろう? 気になるなら自分で手に入れないと」

「そういうと思ってましたよ。特定のスキルを手に入れるのがどれだけ難しいかよく知ってるくせに……」

「知らないな〜ボクが作ったんだし」

 

 このっ、白々しいったらこの上ない……

 そりゃ創造神だから持ってるんだろうがな。

 それをばら撒いてスキル獲得の仕組みを作ったアンタなら特定スキル獲得の難易度わかってるくせに。

 

「ま、気が向いたら探しますよ」

「うん。そうしてくれ。いい暇つぶしにもなるだろう?」

「しばらくは私は浮遊島の開発で忙しくなりそうですけどね」

 

 あそこ何にもなかったからな。

 海底から引き上げたってだけで。

 

 流石にあんな殺風景な場所いやだぞ。

 家も欲しいし、自然も欲しい。

 

 まさかリムルみたいに領土開発するとはな。

 難易度はリムルよりもバカ高いが。

 周辺との関係ではそこまで苦労しなさそうだけど。

 

「浮遊島じゃなくてヴェルグレイって呼んでよ。せっかく名前まで決めたんだからさ」

「ちなみにその理由は?」

「ボクが作ったのとそこに住む君が黒でも白でもない中立のグレーの立場だから」

 

 単純すぎだろ。

 いや、いい名前だとは思うけどな。

 俺も初めて聞いた時案外いいじゃんと思ったし。

 

 それにしても、だ。

 

「ともかくこれでこことはお別れですね」

「そうだな。長いように見えてだいぶ短かったぜ」

「そう? とても短かったと思うけど」

「そりゃ竜種のグリュンからしたらそうだろうけどさ……」

 

 あんな殺伐としていた冥界から原初たちと関わってルドラたちともなんならヴェルダナーヴァとまで関わるとはな。

 

「ヴェルア。改めて私たちを救ってくださりありがとうございます。ね、ミリム」

 

 ルシアが手元に抱いているミリムを見せながらそういう。

 そんなミリムは気持ちよさそうに寝ている。

 

「それに関してはボクからも感謝するよ」

「俺もだな」

「私も、礼を言うわ」

 

 それにヴェルダナーヴァ、ルドラ、ヴェルグリンドまで続く。

 

 ちょ、ちょっと待ってって。

 いきなりそんな頭下げられちゃこっちが混乱しちまう。

 

「頭あげてくださいよ。そもそも救ったのはルドラじゃないですか」

「だとしても、だ。お前が時間稼いでくれなきゃ俺は気づきもしなかっただろうからよ」

「感謝は素直に受け取っておきなさい」

「それもそうですね。どういたしまして」

 

 竜種に頭下げられるなんてな。

 もう今日は驚いたことばかりだ。

 いや、これまで全部か。

 

 これからまだまだやることはある。

 領土経営などもやる必要あるし……大変だ。

 

「中立だからな。そう表立って会えんがたまに遊びにこいよ」

「いいんですか? 悪魔を再び招き入れても」

「その悪魔に称号まで与えてるからな、こっちは。問題ない」

「なんなら命救われてますしね」

「領土開発の休憩がてらきますよ」

「今度はこっちが愚痴聞いてやるよ。じゃあな」

「はい、さようなら」

 

 そう普通に挨拶をしたのだが「ちょっと待て」と止められた。

 何かダメだったのか?

 

「さようなら、じゃねぇよ。また今度だ」

 

 ルドラはいい笑顔でそう言った。

 さすがは原作きっての陽キャ、なんでもないようにすげぇことを言う。

 

 だが、その言葉には俺も賛成だ。

 

「はい。また今度」

 

 そうみんなと別れの挨拶をして俺は転移した。

 場所は浮遊島ヴェルグレイ。

 俺の新たな居場所である。

 

 

 

 

 とある魔道大国のどこかにて、1人の男が独り言を漏らしていた。

 

「神殺しは失敗したが次がある。その子供、血に流れているその力を引き出せば……あわよくばそれに巻き込めば……!」

 

 親越えを成し遂げることができる!

 

 神祖様を生み出した創造神、そしてその子供。

 一度ではダメでも2度目がある。

 

 男の謀略はまだ続く。

 

 

 




最終回っぽいけど最終回じゃないよ

ラドンについては
ギリシャ神話の百頭の竜ラドンが元ネタです。
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