リムルに喰われる悪魔に転生してしまった…… 作:てきとーでいこう
「いやマジか。ヴェルダナーヴァすご」
目の前の光景を目にして俺はそう呟いた。
今いるのは浮遊島ヴェルグレイ……ではなく、その近くの陸地である。
もともと何もなかったこの場所には今や小さな町ができていた。
その原因は間違いなく俺。
俺がヴェルダナーヴァに認められ、そしてヴェルダナーヴァから直接浮遊島という領地が与えられた。
他でもない創造神自らが認めて、だ。
それがとんでもない影響力を持つということはわかっていたがまさかこれほどまでとは。
とはいえぽっと出のやつが急にそんな待遇を与えられて不満は感じないのだろうか。
俺の方が前から慕っていたのに、みたいな感じで。
「おいお前。何してんだ、邪魔だからどいてくんな」
「ああ、すみません。旅できたのですが前はこんな街できていませんでしたよね?」
何やら話しかけられたのでこの機会に情報を集めてみる。
ここにいる人たちがどんなことを考え、行動しているのか。
俺が質問すると鬱陶しそうにしていた男は一気に困惑したような表情に変わった。
「なんだお前知らないのか? この先にヴェルア様、そしてその方が住むヴェルグレイがある。皆んなそこに住みたいからこうして集まってるんだ」
「ヴェルア……最近耳にしましたね。どのような人なんですか?」
「お前本当に何も知らないんだな」
俺の言葉に男は呆れたように説明をする。
「最近どこかの国が愚かしいことにヴェルダナーヴァ様およびその奥方のルシア様を暗殺しようとしたんだ。それを防いだのがヴェルア様なんだよ。我らが神を救ってくれた人を敬い、そしてそんな人の近くにすみたいってのは普通の考えだろ?」
「ここにいる人たちみんなそう考えて集まってるんですか」
「ああ。とはいえ当のヴェルア様からのお声が何もないからな。勝手に乗り込むわけにもいかないからここで立ち往生してるってわけだ」
へぇ、そういうことか。
確かにここ最近何も出してないしな。
そりゃ俺1人であの馬鹿でかい浮遊島に住むのは寂しいから人は集めようと思ってたけどまさかこんなに早く来るとは。
というかヴェルア様やめろ。
なんか小っ恥ずかしいんだよ。
「なるほど、ありがとうございました」
「おう。お前もヴェルア様に感謝しろよ!」
さて、どうするか。
ずっとこのまま放置するのも忍びないしかと言って堂々と募集するのもどうなんだ?
あの人はああ言ってたけど俺に悪感情持っている人もいるだろ。
俺悪魔だしな。
ひとまず俺の島をどのようにしたいか考えよう。
落ち着いたところ……皆んなには悪いがもうしばらく待っててもらおう。
そう考えて俺は誰も見えないところで転移した。
今俺の島には何にもない。
だからなんかでも作れるわけだがある程度方針は決めておきたいよな。
ルドラたちもこっちが決められるとか言ってたし。
第一として戦闘は無しだ。
せっかくまた作ったのにどんぱちやられちゃ溜まったものじゃない。
それに俺は中立だ。
中立なのに堂々と戦闘の街ですなんてやれるわけがない。
イメージとしては永世中立国だ。
あとは神殿だな。
俺は特に信仰しているわけじゃないがヴェルダナーヴァを信仰しているという設定になっている。
それにここにいる人たちはみんなヴェルダナーヴァの信者だ。
ヴェルダナーヴァを祀る神殿は必須だろう。
街としては攻撃よりも防御を固めたい。
別にこっちから攻撃するわけじゃないしな。
もし攻められたら守れるようにすれば十分だ。
となると参考にするのはレオンのエルドラドだな。
確か街全体が魔法陣になっていて強力な結界が貼られていたはずだ。
それこそ
暇つぶしだから威力は落ちているだろうがそれでも原初の魔法だ。
威力は相当なもの。
それを毎日のように守っているのだからそれがあれば非常に心強い。
信仰をエネルギーにしているらしいしそれを応用すれば第二の結界も作れそうだな。
ヴェルダナーヴァから信仰に関しての権限を「君がこの島を運営するから」って少しもらったし。
多少エネルギーの用途をいじるのは容易い。
だとすると必要なのは人材か。
こっちで全部用意していくことはできるが俺にリムルみたいに街建設の技術も知識もない。
素人がまた作ってもすぐダメになるだろう。
こういうのは現場の人間に任せた方がいいな。
それに法律なども決めないと。
さっき行った戦闘禁止もそうだけど法律とは言わずともルールは決めなければ。
そこら辺は『
それに俺が全部作った街と自分たちが力を合わせて作った街だったら後者の方がいいだろう。
よし、これで行こう。
となるとまず行動に起こすべきは……
◇
「おいおいなんだこりゃ」
「誰が置いたんだこれ、イタズラか?」
その朝、街は騒然としていた。
なぜなら浮遊島ヴェルグライに1番近い崖端に転移魔法陣が置かれていたからだ。
それと同時に置き手紙も。
内容は以下の通り。
一、建築に優れたものを呼ぶこと
一、法律に詳しいものを呼ぶこと
一、街づくりをしたことがあるものを呼ぶこと
一、ヴェルダナーヴァを1番慕っているものを呼ぶこと
一、上記で1番優れているもののみこの魔法陣を通ること
ハッキリいってイタズラに見える。
だが、その転移魔法陣は高度なものだと腕がある魔術師は見抜いていた。
対象選抜効果のついた魔法陣。
それ以外には反応しないものだ。
そんな様子を見て俺は内心焦っていた。
やっぱ堂々と話せばよかったかも、と。
いやだってさ。
今までそんな表立ってやったことなんてないんよ。
そんな奴に急に領土運営をやれって?
そして人材募集でみんなの前で演説をしろ?
すまん、無理。
恥ずかしくて無理。
そりゃ長い間生きてきたし今回以上にやばい盤面もあったけどさ。
もとは高校生だぞ俺。
こんな命かかっていない状況ではそんな教祖じみたこと無理なんだって。
どうしようこれ。
そんなことを俺が考えている時だった。
「皆様落ち着いてください。この魔法陣が非常に優れていることも、そしてこの手紙の内容が正しいことも事実です。そしてなにより神聖な気配。間違いなくヴェルア様によるものでしょう」
司祭服を着た女性がそう周囲に言いながら中心に現れる。
それを見た1人が叫ぶ。
「フィリエル様!」
と。
それを聞いた俺は頭はてな状態である。
誰ですか、フィリエルって。
《解。個体名:フィリエルは
あぁ、なるほど。
勝手に宗教作って崇めてた奴らの中心人物ってことね。
つかそいつら俺のこと大丈夫なのか?
前まで圧倒的な権威を持っていたわけだろ?
そこに急に俺という爆弾が投下されたわけだ。
権威ガタ落ちじゃないか?
それって組織運営として非常にまずいのでは?
ヴェルダナーヴァ様が言ったからオッケーってなれば話は簡単だけどそううまくはいかないだろうし。
《是。その確認のために訪れたものだと推察されます》
あー、なるほどね。
要は俺は測られているわけだ。
本当にヴェルダナーヴァが認めたのか、そして自分たちが恐るほどの存在なのか。
まぁ俺としては別にそっちがメインで問題ないんだけどね。
アイツは神敵だって攻撃してこなければ。
まぁそこはヴェルダナーヴァ自身があったから大丈夫だとは思うけどさ。
多分単純にアイツヴェルダナーヴァ様に認められたけどどうなの?
わかんないから確かめるか。
ってことだろうな。
俺全然姿現してないし。
なんなら今回も姿現してないし。
「この高度な魔法陣には対象選抜効果があるようです。なのでヴェルア様の要望された人物のみが浮遊島ヴェルグライへ行けるということでしょう」
そうフィリエルが言った途端人々がざわめく。
なんでそいつらだけなんだ、俺らはダメなのか、と。
その瞬間、ガンッと凄まじい音が鳴る。
そちらへ向くと鉄槌を地面に振り下ろしたドワーフがいた。
「まぁ落ち着けよ。求めてる人材見てみろ。完全に街作る気だぜ? ヴェルア様は」
うん、その通り。
だから待っててね。
俺だけじゃ街づくり失敗するから。
つかこれ言葉足りなかったな。
申し訳ない。
「あんたは?」
「俺はアルガーツ。大工だ」
「アルガーツ!? あの!?」
おうなんかまた凄そうなやつ来たぞ。
これがヴェルダナーヴァパワー……やっぱ創造神ってすげぇんだな。
そんな2人の登場によって騒然としていた現場は落ち着き、誰が適しているかという話になった。
無論それによって俺が優れている、いや俺だと喧嘩になりそうにもなったがその場合は2人のどちらかが対処していた。
いやーありがてぇ。
俺じゃみんなをまとめるなんてできないからな。
こういうのは元々ならている人にやってもらうに限る。
……まぁ俺がリーダー的存在になる以上俺もそういうのを覚えなければならないが。
さて、そろそろ決まるだろうから俺は先に戻っているとしよう。
いろいろ話し合いもするだろうから先にテーブルとか用意しておこうかな。
用意するのは……ルドラたちのとこにあったテーブルとかでいいか。
どうせ豪華なやつだろうし。
なんもないところに豪華なテーブルと椅子がポツンとあるのはだいぶシュールだがそれ以上を用意できないので容赦してもらいたい。
せっかくだからフードで顔を隠すのもやめるか。
どうせバレるんだし。
そうやって待っていると転移魔法陣が光る。
そこから現れたのは先ほどの2人と知らないもう1人。
その3人は興味深そうにこの島を見回した後こちらに気づいた様子だった。
この3人がこの島初めてのお客さんだ。
「ようこそ。空中島ヴェルグレイへ」