リムルに喰われる悪魔に転生してしまった…… 作:てきとーでいこう
人が燃えている。
建物も燃え、崩壊している。
目に見えるもの全てが壊れていく。
目の前にいる少女が全てを壊していく。
彼女が無造作にエネルギー弾を放てばその着弾地点は一瞬で焦土と化す。
まさに破壊の権化。
なんで?
なんでこうなった?
「おい、何やってんだ!」
一体何がダメだった?
ヴェルダナーヴァが死ぬのは回避したはずだ。
なのに、どうして。
そもそもなんでルドラはいない?
ヴェルダナーヴァは?
ルシアは?
なぜミリム1人で暴走している?
なんでこんな大惨事になっている?
誰がやった?
誰が引き起こした?
ヴェルダナーヴァを殺そうとした奴か?
いやそいつはヴェルグリンドが焼却した。
ならば……一体誰が?
「無視すんじゃねぇ! テメェもこっちきて手伝え! ッチ! 『
そう、そうだ。
アイツ自身にはヴェルダナーヴァに対する感情なんかは感じられなかった。
恨みも使命も。
ただ単に仕事を全うしようとしただけ。
ならばアイツにやらせた人物がいるはずだ。
だがそれらしき人物をギィが見逃すはずがない。
その人物はちゃんと処刑されて別の人物がやったか……もしくは何らかの手で逃れていたか。
ずっと爆発音が聞こえる。
そして人々の悲鳴と、崩壊する音。
別にそこらへんはどうでもいいか。
大事なのはまだ首謀者の意思があるということだ。
神を殺そうなんて考えるやつが一度限りの失敗で諦めるか?
何度も、何度もやろうとするのではないか?
探す。
何かがあるかもしれない。
そんなふうに考えながら辺りを飛び回る。
そして、見つけた。
「……」
今現在暴れ回っている少女と同じ髪をした女性。
その隣で倒れているかつて神だった竜。
そして、見たことのない小さな竜も。
何が救っただ?
笑わせるなよ。
神とその妻は死に、娘は暴走している。
知識があった。
2人が死に、そしてその後にペットのドラゴンが死にミリムが暴走することも。
だから止めた。
2人が死ぬことを。
最強の2人が死にさえしなければその後も大丈夫だろうと。
世界が変わってしまうことも考えて、恐怖して、それでも変えた。
なのに結果はどうだ?
何が
何が神を救った英雄だ。
一体どこを救えたんだ?
自分を過大評価していた。
知識に頼って、今を見ていなかった。
たったそれっぽっちでよく救えたと思うよな、ほんと。
散々ルドラたちを気楽だ何だと言っておきながら俺が1番現状を甘く見ていたんだ。
「ラミリスは来ねぇしマジで今はお前しかいないんだよ!」
声が聞こえる。
どうでもいい。
まずはこれを引き起こしたやつを殺す。
そこからだ。
そう思った時だった。
《……告。個体名:ギィ・クリムゾンからの応答に対応することを推奨》
『
え?
と思ったその次の瞬間、体が揺さぶられる。
「テメェ、オレを散々無視しやがってふざけんな!」
「……ギィ?」
「あ? オレ以外に何があんだよ」
ギィが俺の頭を掴み、目線を強制的に合わせる。
一体彼には俺がどう映っているのだろうか。
「何グチグチ考えてるのか知らねぇがまずはオレを手伝え! このままだと世界が持たねぇ」
ギィに言われて視線を向ける。
そこには禍々しい角の生えた暴走状態のミリムがいた。
その有り余るエネルギーを撃ち放ち続けている。
まるで自分の悲しみを振り払うかの如く。
思わず言葉が漏れる。
「……未来を変えられたと思ってた」
「あん?」
「ヴェルダナーヴァたちが救われればミリムも大丈夫だろうって思ってた。でも違った! 何も変わってない! 俺の知っていた
わかってる。
これはただの八つ当たりだ。
自分自身を許せなくて、すでに死んでるかもしれない黒幕のことを……すでにやらなければいけないことは明白なのに目の前の現実から目を逸らしてこの場からさろうとした。
俺は最悪で、最低だ。
「お前、傲慢だな」
「え?」
「何が未来を変えられるだ? 俺が未来を変えられなかっただ? ふざけんな。オレたちはお前の手のひらの上だったってのか? オレも、ヴェルダナーヴァもお前ごときの手中に収まるわけねぇだろ。そんなお前が……ユニークレベルのお前が世界を変えられたと思っていること自体が傲慢なんだよ」
「……」
「救えなかった? 可哀想だ? お前の価値観で勝手に判断すんじゃねぇよ。お前の視た未来ではどうなってるかは知らないがな、お前のその知識という物差しでオレ達を測るんじゃねぇ」
これ以上モタモタしてらんねぇな、といいギィは去っていった。
再びミリムとの相対するのだろう。
「傲慢……か。物語視点は捨てたはずなんだがな」
言ってることは、わかる。
自分たちを勝手に憐れむな。
勝手に可哀想に思うな。
自分たちは精一杯生きていて、その結果こうなった。
それを否定するな。
わかるさ。
でも、元の悲劇を知っている身からすればやっぱり無視できないんだよ。
知っていたのに、行動したのに変えられなかった。
変えたことに満足してそこで終わりにしてしまった。
だからこれは俺の責任でもあるんだ。
……だから、その責任は果たさなきゃいけない。
未来を、歴史を変えた。
それによって生まれた結果は俺が責任を持たなきゃいけないんだ。
俺はミリムを止めなきゃいけない。
ここで黒幕探しになって出たらまたその場にとどまることになる。
いい加減、俺も前に行かなきゃいけないんだ。
思考を切り替える。
俺が今やることはミリムの足止め。
確か原作ではラミリスがやっていたはず……ってまた頼ってる!
だが実際知識としては役に立つ。
全部信じるってのはダメだがやはり参考程度にはなる。
何せ本来なら知ることのできない力がわかるのだから。
欠点はその正確性ゆえに信じ込んでそこから脱線した場合、思考停止してしまうことだ。
……まさに、今のように。
だからあくまでこういう可能性が高い、くらいで置いといて別の可能性も棚に模索していく必要がある。
とはいえ今やるべきことはギィの言ったようにミリムを妨害すること。
これはラミリス云々関係なく絶対にやらなきゃいけないことだ。
……とはいえそこで問題なのはこれまた俺だ。
ずっと俺が問題すぎてまた気分が沈みそうだがそんなことをしている場合ではない。
俺は、力不足だ。
あのギィが苦戦している。
ミリムの保有する
今、ミリムは怒りで満ちているため燃料が減ることはないだろう。
それどころか時間経過と共にどんどんと増えていき、破壊の規模も威力も上がっていく。
そんな中に俺が突っ込めば消滅は確実だ。
暗殺者の時の数倍……数十倍、それ以上の威力を誇っているはずだ。
その証拠に今上空で戦っているギィは常に俺とは比べものにらないレベルの核撃魔法を大量に打ち込んで相殺している。
俺が全力でやって相殺できるかわからないギィの核撃魔法が捨て石のように大量に使われているのだ。
俺がやったところで全くと言っていいほど役に立たないだろう。
……とはいえあのギィがなんの勝算もなく俺を戦力に数えるわけがない。
現時点でダメなら何か変化した後の俺を戦力として期待しているわけだ。
ならば、探せ。
俺を今、あのレベルに押し上げるためのものを。
武器……なわけねぇ。
あったとしても俺がそもそも近づかないし武器でどうにかなるならギィが既に俺に渡してるはずだ。
助っ人……でもないな。
こんなバカみたいな攻撃が撒き散らされているんだ、街なんか簡単に壊れる。
ルドラたちがいないのも当たり前だ。
これらの破滅から民を守らなければならないのだから。
となると最後残るのは──
「進化か」
とはいえ今俺が進化いけるかって言われたら……
《解。不可能です》
だよなぁ。
だってあれリムルのときみたいに魂を大量獲得してないし……待て。
魂?
魂ならば今、ここに大量にあるのではないか?
確かクレイマンもユーラザニアの民をミリムに殺させてその住民の魂を回収して進化しようとしていた。
ならば今のこの現状もいけるんじゃないか?
全部魂が吸収されているのならば話は別だが今必死に戦っている2人にそんな余裕はないはず。
《告。解析が終了しました。進化に必要な
やる、のか?
なんの罪のない無実の人々の魂を勝手に使うのか?
リムルのように自国が攻められたんじゃなくて完全に俺の目的のために。
確かに俺は悪魔だが人間としての最低限の倫理観は持ち合わせているつもりだ。
ちなみにだがやろうと思えばすぐにできるのか?
《解。可能です。実行しますか?》
ちょ、ちょっと待ってくれ。
理論上はできる。
ならばあとは俺次第、か。
人の魂を奪い、己の糧とする。
そんなこと……
ふと、脳裏によぎる。
生き残るため、強くなるためにかつて自分の同胞を殺し回った過去を。
……なんだ、すでにやってるじゃねぇか。
倫理観もクソもねぇな、おい。
俺はもう弱肉強食のこの世界で生きているんだ。
今更、甘えるな。
俺がやったことは罪だ。
悪魔に関しても、今回に関しても。
だが、この世界で生きるならばその罪くらい自分で背負うべきだ。
俺よりも歳の下なミリムがその罪をすでに背負っているんだ。
しかも自分の制御ができておらず、望んでいない状態で。
ならば自分の意思で罪を背負うことくらい、なんてことないだろ!
やってくれ!
《了。周囲に魂の回収を試みます》
その言葉と共に自身に何かが溜まっていくのを感じる。
これが魂なんだろう。
……みなさん、すみません。
俺は今からあなたたちの魂を自分の目的にために使います。
あなたたちを殺した相手に対する敵討じゃなくて、救うために。
恨んでくれても構わないしそうなっても仕方ないと思ってる。
でも、俺はこうしなきゃいけないんだ。
《告。
収穫祭が始まる。