リムルに喰われる悪魔に転生してしまった……   作:てきとーでいこう

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相手視点ってこんな感じでいいのだろうか。


幕間─上位悪魔の困惑

 

 

 初めはただの気まぐれだった。

 

 いつも通り冥界を彷徨き、見つけた悪魔(デーモン)を片っ端から狩り続けていた。

 なぜ悪魔(デーモン)を狩るのか。

 それには二つの理由があった。

 

 一つは暇だからだ。

 悪魔(デーモン)が集う冥界は何にもない。

 ただ悪魔(デーモン)が存在しているのみ。

 

 そんな悪魔(デーモン)たちの数少ない娯楽が戦闘であるのだ。

 悪魔(デーモン)は死んでも滅びない。

 

 死んだとしても数100年が経てば再び復活する。

 短命種からすれば長い年月だが、長命種たる悪魔(デーモン)にとってその時間は微々たるものにすぎない。

 だからこそ多くの悪魔(デーモン)は自身と同じように戦いに明け暮れるのだろう。

 

 そんな戦いに明け暮れていた日々に転機が訪れた。

 それが二つ目の理由、悪魔召喚により物質世界に顕現することだ。

 

 俺がまだ意思と呼べるものがなかった下位悪魔(レッサーデーモン)だった頃、俺は物質世界に召喚された。

 そこは精神世界である冥界とか比べ物にならないほど色彩に富んでいて、全てにおいで自分が知らないことだらけだった。

 それは俺を魅了してやまなかった。

 今まで何も知らない、知らされなかったヤツが急にいろんな情報に触れたんだ。

 少なからず影響を受けるのは当然だろう?

 

 そこで初めて生まれたのだろう、己の願望……物質世界のいろんなものを知りたい、探してみたい、体験してみたい、それにより発現する新たな能力(チカラ)が。

 

《確認しました。ユニークスキル『探索者(サガスモノ)』を獲得、成功しました》

 

 『探索者(サガスモノ)』、それは物質世界で生活することを夢見ていた俺にとって都合の良いものだった。

 それに含まれる権能は『完全記憶』『解析鑑定』『マーキング』『地形把握』。

 前者2つも当然役に立つがそれ以上に後者2つが素晴らしかった。

 『地形把握』、それは自身を中心として半径200メートル以内の情報を即座に把握することができた。

 どれくらいの強さのやつが戦っているのか、どんな奴がそこにいるのか丸わかりというわけだ。

 

 そして『マーキング』。

 これは単純明快な権能だ。

 俺が一度認識したものにマーキングをつけることができる。

 そのマーキングは俺と同じ世界にいる限り完璧に居場所を把握できる。

 

 それを逃げるために使うもよし、追いかけるために使うもよしの汎用性抜群の権能だった。

 俺はそれを狩りに使った。

 

 物質世界で生活する、それは受肉をするということが大前提だ。

 今のまま物質世界に行っても全くと言っていいほど存在を維持できないだろう。

 

 だからこそ必要なのは強さだ。

 物質世界に行くと俺たち悪魔(デーモン)は弱体化し、ここ冥界での力を発揮できない。

 それではまともに受肉できないだろう。

 物質世界に召喚される可能性が低い以上、強くなるのが夢に至るための最短ルートなのだ。

 

 だから狩った。

 数多くの同胞を。

 己の(欲望)を叶えるために。

 

 『地形把握』と『マーキング』を活用して見かけた悪魔(デーモン)を1匹残らず狩り続けた。

 移動して、狩りをする。

 

 それをずっとずっと繰り返しているといつのまにか俺は上位悪魔(グレーターデーモン)へと進化していた。

 詳しい時期はわからない。

 気づいたのは今まで苦戦するレベルの相手を簡単に狩ることが出来たからだ。

 けどそれはどうでもいい。

 

 俺は強くなった。

 これが1番重要なのだ。

 

 これまで以上に狩り続けた。

 今までの成果が目に見えて現れたのもあってモチベーションが高まっていたからだ。

 その結果『狩人』なんて呼ばれたりもした。

 

 そんな日々が続いていた時、俺は出会った。

 たった一体でウロウロしている下位悪魔(レッサーデーモン)に。

 

 いつも通りさっさと殺して狩りを再開しようと考えていた。

 

「よぉ! ハジメマシテ、んでサヨナラだ!」

 

 返事は期待していなかった。

 下位悪魔(レッサーデーモン)に意思はない。

 これまで数100体という下位悪魔(レッサーデーモン)を狩ってきたが1人とて意思をもつやつはいなかったからだ。

 意思のある上位悪魔(グレーターデーモン)を何体も狩ってきて少し相手が贅沢になっていた俺は下位悪魔(レッサーデーモン)に一ミリも興味がなかったのだ。

 

 嫌な感覚があったのはこのあたりだろうか。

 何かに覗き込まれているような不気味な感覚があった。

 

「いきなり仕掛けてきて言うセリフじゃねぇとおもうけどな!」

 

 帰ってきた言葉に驚愕した。

 俺の攻撃が当たらなかったという時点で驚いていたがそれ以上の衝撃が俺の脳を揺さぶった。

 

下位悪魔(レッサーデーモン)が俺の攻撃を避けた……しかも会話まで!?)

 

 はっきり言って理解不能だった。

 意思のある下位悪魔(レッサーデーモン)なんて初めて会ったからだ。

 

 しかも俺とまともに戦闘をしているという事実!

 

 俺自身が下位悪魔(レッサーデーモン)の時代があったため余計に意味がわからなかった。

 俺の場合、上位悪魔(グレーターデーモン)からは全力で逃げていた。

 

 ユニークスキル『探索者(サガスモノ)』を手に入れていなかったら無謀にも戦いを挑んで負けていただろう。

 だが、スキルを手に入れ『地形把握』と『解析鑑定』で存在を詳しく解析できるようになって理解した。

 文字通り格が違うと。

 

 俺の『探索者(サガスモノ)』が戦闘系じゃなかったことも今思えば良かったのかもしれない。

 変に戦う権能があったらそれを頼りに戦いに挑んで負けていたかもしれないからだ。

 

 そんな知識を、体験をしているからこそ目の前のコイツは余計に理解できなかった。

 けど、ここで納得した。

 先ほどの不気味さの正体はこれだったのだと。

 

 理解できないもの、格上のものには解析を。

 狩りを続ける上で相手の情報を知ることが大切だと身に染みていた俺はすぐさま目の前のこいつを解析した。

 

(解析が抵抗(レジスト)された!?)

 

 そこでわかった。

 コイツは自分と同類だと。

 

 俺と同じようにユニークスキルを持っているのだろう。

 それも戦闘に適したものを。

 それでも格が上の上位悪魔(グレーターデーモン)である俺と戦いを演じられるのは意味がわからないが無理やり納得することはできた。

 

 戦いながら会話を交わすと面白いことを聞けた。

 なんとこいつは物質世界に召喚されたことがないのだという。

 

 物質世界に呼び出されたことで意思を手に入れた俺とは違い、別のキッカケで意思を持ったのだという。

 一体どうやって、というのは置いといてそこで俺はコイツに興味を持った。

 下位悪魔(レッサーデーモン)なのに意思をそしてユニークスキルを持っている。

 異質だが、俺と似た境遇なのもあったからだろう。

 

 おそらくユニークスキルは意思を持つタイミングで一緒に手に入れたのだろう。

 俺が『探索者(サガスモノ)』を手に入れたように。

 

 一体どんな権能なのかは知らないが戦闘系のユニークスキルでも俺の方が戦いは優勢だった。

 俺の攻撃は何やら読まれているようだが確実に当たっている。

 魔素量の違いが大きく影響しているのだ。

 

 戦闘に余裕があった俺は少し考える。

 もし俺が戦闘系のユニークスキルを持っていたら、そしてそれで下位悪魔(レッサーデーモン)のまま上位悪魔(グレーターデーモン)に挑んでいたら、と。

 

 結論は100%負ける、だ。

 根拠は今まさにそういう状況だからだ。

 下位悪魔(コイツ)上位悪魔()が戦って俺が優位にいるというこの状況こそがそれを証明している。

 

 俺が下位悪魔(コイツ)に興味を持ったのにはもう一つ理由がある。

 強くなる理由が物質世界に召喚されないためだというのだ。

 まさに俺と真逆という訳だ。

 

 俺も自分が変人であるという自覚はあるが、コイツはそれ以上の変人だ。

 あんなにも素晴らしい世界に行きたくないなんてどういう思考回路をしているのやら。

 いや、そもそも行ったことがないのだ。

 わからないからこそ、恐れているのだろう、基軸世界(楽園)を。

 ならば仕方がない。

 一度行ってみなければわからないのだ。

 

 この真っ暗で何もない世界で過ごしてきたやつにあの色彩に富んだ世界を想像してみろ、というほうが酷なものだ。

 

 殴り合いが続く。

 悪魔(デーモン)なのに殴り合いというのもおかしいがこれが俺的に1番わかりやすい表現だった。

 

 相手を殴る、その度に自分が優位に立つのがわかる。

 相手の魔素量はあとわずかだろう。

 俺自身の経験から大体の量はわかる。

 コイツは異常ではあるが魔素量はそう大きくは変わらないと踏んだからだ。

 

 その推察は当たっていたのか段々と攻撃に焦りが見える。

 

 そんなことを考えていた時新たな情報が投下される。

 いったいいくつ驚かせる要素を持っているのかコイツはまともに戦うのが初めてらしい。

 初戦闘で格上とまともにやりあえる……相変わらず意味がわからない。

 

 そのことを指摘したら「できるものは仕方ないだろ」と言われた。

 それはそうではあるが……やっぱ異端だ。

 けどこういうところでは気が合いそうだ。

 余裕なんてないはずなのに俺の言葉に律儀に返してくれるのも好感を持てる。

 

 そんなこんなで戦闘を続けてあると急に嫌な予感を感じた。

 急いで『地形把握』を利用するとコイツを中心に領域が展開されていることがわかった。

 効果は不明。

 対策のしようがない。

 

 不気味に思いつつも一体何が起きるのか。

 そう思いながら相手の行動を待った。

 

 ……その行動は何か変なことをしたわけではなかった。

 今まで格闘していたのに急に魔法をぶっ放したり、俺に与えるエネルギーの量が増えるなんてのもなかった。

 

 簡単に言えば、早くなった。

 今までも動きは早かったのだがまた1段階動きが早くなった。

 それこそ俺の動きがわかっているかのように自然と、迷いなく。

 

 その攻撃は俺の行動を全て読み切り、俺に生まれた隙に確実に突き刺さった。

 

 なんでだ?

 どうして急に攻撃が当たるようになった?

 いや、今までは当たってはいたが必ずこっちも当てていた。

 なのに今は完璧に俺の動きが読まれて一方的に殴られた。

 

 なんなんだ、今のは。

 

 俺はその疑問の宿った視線を隠すこともせず目の前の下位悪魔(レッサーデーモン)にぶつける。

 そしてその悪魔(デーモン)……いや悪魔(怪物)は宣言した。

 

「さぁ、第2ラウンドを始めようぜ?」

 

 と。

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