誰に負けるのか、である。
なにが起きているのか。人里で騒動があって、どんなにも騒いでいても無視して、団子食ってる。それが俺の最近得た人里ルーティンだ。金はない。魔理沙とアリスに誘われてようやく人里に出るくらいなのでそもそも無意味な習慣にはなる。あと無駄に団子がデカくて無駄に美味い。俺の好みである。季節は夏。団子も少し温度を下げて出すような季節。俺は汗をダラダラと垂らすことなく生きていた。そこに現れた巨乳が一人。従者も一人。俺は今、何故か妖夢と幽々子に誘われて団子屋にいる。
「…ここのお団子、美味しいわぁ」
「では持ち帰り用に五つ。」
「絶景かな」
「何が?」
「不埒な考えを感知」
「待て、妖夢」
思考を読まれたようだ。しかし、帯にも乗るその大きさは、絶景の一言。だからか知らないが、妖夢からの視線とは別の痛い視線が刺さる。アリスと歩いた時と同じだ。夏。食の風物詩としてあがるのはかき氷やスイカ。他は…氷で満ち満ちた飲料だろう。しかしそれとは別に、人生の風物詩、否、世界の風物詩がある。巨乳。貧乳とか普乳がと騒ぐ奴もいる。それも風物詩だ。だが俺が選んだ風物詩は巨乳だ異論は寄越すな胸に抱け。それもまた一興。素晴らしいものなのだ。
「…胸がそんなに気になるの?」
「はい!」
「不埒な思考を再検知」
「里出たから許してよ」
「もう妖夢、抑えて?」
「わかりました」
「俺と幽々子でそんなに違うかな」
「いつから、呼び捨てを?」
目からハイライトが消えたようだ。二歩退く。怖い。まあ良いか。幽々子と妖夢に連れられ、上へ。…あれ、これ冥界に連れて行かれてないか。それに気付いて行くのをやめる。用事をつけて、こう、うだうだして。面倒だからやめときましょうかと提案させる。成功。妖夢ナイス。一旦地上に降りるとしよう。…あっ、ミスした。無意識で物事やってると、意識してやる時に失敗しちゃうよね。言うまでもなく落下した。
「いだっ…」
「…誰だ」
「外来人…うわ人だ」
「蓬莱人だ」
小屋に転落したところ、居たのは長い白髪の女性。白と赤の服だ。…胸は普通より少し小さめ。そそくさと出ようとしたがなんかうだうだと言われた。要は一人で寂しいから一緒に飯を食おうぜと言うだけの話だが。ふと囲炉裏を見たところ魚が焼かれていた。ここ木造だよね。全焼したらどうなるの。なんでそんな環境で焼き魚作ってんの。…まあ食べるけども。食べれる時に食べてなければ草食って死ぬからな。いやこれは仕方ない。流石に出された飯を食わないわけにもいかない。美人との飯が美味いからと言って食うわけではない。
「美人との飯はいいだろ?」
「そうね。これで胸も大きければ」
「あっはっはっ」
「…?」
「はっはっはっ。ここが木造かって聞いたよな」
「うん」
「木造だ。そんで私は炎を出せる。今の言葉、繰り返す勇気があるか?」
素直にごめんなさいした。家に穴開けたことも突っ込まれた。ごめんね。許してね。素材さえもらえれば杭打っておくから。え、そんなことしたら崩れる?…えっ、木造建築ってそんなに脆いのか。驚きが大きい。魚は美味かった。焼き魚としては少し焼きすぎな気もしたが、まあ…そこは、ね。仕方ない。栄養はあるのだから。どんだけ不味くてもどんだけ見た目がキモくても食えたらいいのだ。どんなに不揃いでもどんな形でも、胸は胸であるように、食物は食物なのだ。存在を否定する根拠にはなり得ない。
「…良し、食ったな」
「うん」
「じゃ、屋根直せ」
「…まじかぁ…」
「空から落ちてきたのを見るに、飛べるんだろ?やれ」
「…あ、それならいいものがあるわ。ちょっと家に取りに行っても良い?」
「ダメに決まってるだろ殺すぞ死ぬか?」
「お前も来い。それで良いから」
名前は藤原妹紅というらしい。謀略的な名前だ。藤原は嫌いらしいので、妹紅と呼ぶことに。妹紅の背中に乗り、爆発的な加速で目的地に着いた。というか多分、爆発だった。家にあったテントの端材…香霖堂で魔理沙がコテンパンに怒られるのを横目に買ったテントの端材を持ち、さっさと戻る。これと接着できる何かさえあれば、恐らくはなんとかなるだろう。音は防げないが風も雨も防げる。…が、肝心の粘着剤はない。接着剤もない。…さてどうしよう。どうしようもないからやっぱり帰れないかな。
「接着剤ならあるぞ」
「あるの!?」
「まあな。古そうだけど」
「外の世界でよく見た奴だ!…あ、でもこれ古いから使えないね」
「…振り出し、か」
もうさ、杭打ってみようよ。それか…そう、屋根変えよう。豆腐のてっぺんみたいに四角くしよう。ダサくても一番良いんだこれが。圧迫感?何言ってんだ馬鹿か。それ以外ならもう紐で括り付けるしか…紐、あった。…杭もあったな。俺の家と妹紅の家を往復、そして得た素材で再建。なんとか穴は隠せた。ただまあ、引っ越すことを勧める。大体ここどこだよ。人間の形してるなら里の近くに住んだほうが良いらしいが。人が嫌いとかいう厨二病じみたことを…あ、厨二病って言葉知られてないのか。
「焼き魚一つでここまで動くなんてな」
「何、予想外?」
「まさかな。私も直させるつもりではいたさ。ただお前みたいな奴は素材持ってきて終わりって言い出すもんだと思ってな」
「須磨元ね。焼き魚の礼もあるけど」
「…そんなにか?」
「いつも食ってる草よりは美味いし」
「まさか、魔法の森の草喰らいってお前のことか?」
「多分」
稗田の作る書物に、魔法の森の草喰らいという妖怪が描かれた。
そんなことはないが、もしそうなれば後世にそのような妖怪が現れることになる。存在しなくても吹聴し勝手に恐れられれば新たな妖怪が作れるのではないかと思う。