「…ねえ、ここの雪ってどんな感じなの?」
「そうだな…魔法の森の奴で、地面に落ちてる奴は大抵硬いぞ。持ったら分かるけど重い」
「そう言うことを聞いてるんじゃないんだよ魔理沙」
ここの雪は雪合戦には向いてないらしい。まあ、正直に言ってしまうと魔理沙作らしいネックレスが壊れたら困るのでやるやけがない。と、そこへ投雪。…魔理沙はこのネックレスのこと、忘れてるんだろうな。今の遠慮のない一撃で分かった。そして今気がついたが、魔理沙が順当に育っている。飯を食えるところで食ってる証拠だ。…まさか、子供の頃を知ってるだけでこうと興奮出来なくなるとは。これが親の感情か。まあ子供の頃とか言っても多分10歳前後の歳なんだけどね。多分。
「それ、もう一回」
「おまっ…痛えっ」
「そりゃ硬いんだから痛いだろ」
「魔理沙…少し待ってろ!」
捨て台詞を吐いたところで雪集め。硬いとはいえまだ硬くすることは出来る。全力で圧し、何回か投げる練習をする。明鏡止水が出来れば良かったけど、多分それは無理。なので無理やり当てることにした。魔理沙の前に現れて投げつける。避けられたが問題はない。何個か作ったから。割と投げるのに体力使うんだなこれ。四個目にしてようやく魔理沙に当たった。当たった時の音がどう聞いても雪玉から出る音ではなく、かなり心配した。無事そうだから良いけど。まあ無事なら良いんですよ。
「…何してるのよ」
「雪合戦」
「見れば分かるだろ」
「そうね…そうかも…」
こうして疲れたから飯を食いに行くことになり。ラッキーと喜んで人里へ。魔理沙とアリスに並んで歩いていると視線が痛い。後なんか、少し違った意味での視線を感じる。なんだろう、怖い。入ったのは麺屋。まあラーメンなんてものはなく、冷やし中華だったりうどんだったり蕎麦だったりがある。俺は迷わずうどんを頼む。何故かわからないが、それが一番安かったから。二人の財布を、誘われれば圧迫する俺の居心地を考えてほしい。割と楽しいし、そんな気分で食う飯は本当に美味い。脛齧りの気質があるのだろう。
「美味いわ、やっぱ」
「不味いとか言われたら妖怪の餌にしてやるからな」
「何なの怖いんだけど」
「そろそろ稼ぎ口見つけたら?」
「とか言ってもね。結局は何すれば稼げるのか知らないし」
「考えろ」
そんなこと言われましても、と言いたい。まあ飯代出してもらえてるので言えないけど。しかし飯代か。誰かに養ってもらうという算段は厳しい。かと言って魚を釣りに行くのはな。最近交流のある草の根界隈が口うるさかろう。…サービスは無理だ。多分巨乳が来た時点で俺は機能しなくなると思う。となればどうするか。野菜の栽培…くらいしか思いつかないな。なんなら竹林でタケノコ取ってくれば良いんじゃないかな。あそこも妖怪は出るらしいし。
「残念だが妹紅の奴が既にビジネスにしてるぞ」
「事業から撤退させなきゃか」
「新規はないの?」
「悪いが小銭を稼げれば良いからな。草食えば生きていけるし」
「…金、必要か?」
「いらないかも…」
そう考えるといらないわ。あれぇ…?頭の中をハテナにしながらうどんを食べ切る。魔理沙とアリスに頭を下げて飯代を頼む。側から見れば美人二人に絡みつくヒモなのだろう。実際それで合ってるからどうしようもない。まあそこら辺はね。ヒモはヒモらしく生きるか。草食うしかないな。…そう言えば俺、今までの冬の間とかどうやって動いてたんだ。飯全く食ってねえんだぞ。味もしない不味い草食って…まあでも、幻想郷ってそういう草あっても不思議じゃなさそうだな。幻想郷ってすげぇ。
「そんな植物知らないぞ」
「風見幽香にやられたんじゃない?」
「俺は草食動物だったのか」
「腸長くないとな」
「もう元の人間には戻れないわ」
「そんな」
少なくとも人間の進化ってそこまで早くないはずだ。多分。というかそれだけで進化するなら妖怪に対して強くあっても不思議ではないだろ。いたわ妖怪に強い人。博麗霊夢ってもしかしてそういう感じの生物なのかな。まあ話に聞いた八雲紫が妖怪である時点で破綻してるか。強く出れるだけかもしれない。人里を出てウロウロ。体を鍛えた今、逃げるくらいなら多分出来る。家には風見幽香がまだいるからあまり家にはいたくない。だって怖いもん。あの人、不意に威圧してくるんだよね。怖いわぁ。
「あれ、珍しい」
「わたしが冬の間外に出ることが珍しい?」
「珍しいよな魔理沙」
「…誰に話しかけてるの?」
「消えた…」
そんなにこいつのこと怖いのか。似たような奴何人かいるだろうに。俺は知らないけど。居てもまだ優しい部類だったりするのかな。優しい…まあ、摩多羅隠岐奈はまだ優しい方、か。あいつは押し付けがましいと言った方が正しいけど。他には誰が同格なんだろうね。俺は全然幻想郷を知らないからね。わからない。八雲紫も同格だろうけど、どんな奴かを知らないし。風見幽香は草食ってる俺を見下してくるし。はぁ〜、帰って冬眠しよ。冬明けに生きてるかどうかわからんな、これは。
「稼ぎたいのね」
「そうそう」
「悪いけど私じゃ助けられないわね。」
「だよねー」
「それこそ、前会った神に言えば良いでしょ。神主の仕事くださいとか言えば終わりよ」
「マジか」
「人間も辞めることになるけど」
「マジか」
摩多羅隠岐奈のバイト、多分だけど離職者ゼロ。
死ぬか後継者見つけるかしてようやく離職出来るからね。