「降参」
「速っ」
「酔った、ごめん」
過程を話せば、天子が斬りに来ると俺の体が強制的に避ける、また天子が斬りに来る、と言うのが続いた。結果目が回りまくって吐いた。うぇっ、気持ち悪い。と言うか普通に忘れてた。最近小さいのと喧嘩したりしないからなぁ。魔理沙も育ってるから避けなくなったし。腹の中身が気持ち悪い。仕方ないので地面に座らせてもらった。て言うか天子自体速いんだよ。出鱈目な速度で走ってくんな。吐くぞ俺は。いや吐いたけど。衣玖は普通に帰ろうとしてるし。何やってんだかね。
「弱いわね」
「お前が強すぎるだけ」
「でしょう?」
「そんで小さいだけ」
「はぁ!?」
「総領娘様」
「天子!」
「…総領娘様、お名前で呼んで欲しいならそう仰らないと。」
「そうだぞ総領娘様」
「アンタは違うでしょ!?」
改めての自己紹介を終え、とりあえず俺は霊夢に伝えに行くかと土地を離れようとしたのだが、面倒なのが視界に入ったのでやめる。視力ってすげーな。上から早苗が見えたわ。まあこの方角なら人里に用事だろうから、通り過ぎてから行けばいい。…問題は一つ。ゲロ吐くまで酔った俺が空を正常に飛べるだろうか。降参だってまともに飛べなくなったからしたんだぞ。普通にしんどいし。天子に背中をさすられる。悪いがそれは逆効果だ。もう一度吐いた。だいぶ気分はスッキリしたが、天子がうるさい。
「…」
「あの、大丈夫?帰れる?」
「ガキに心配されるとは、なんたる不覚」
「衣玖、剣」
「同じですよ。家に帰してあげたほうが良いのでは?」
「その心配をしたのよ、私は」
「悪いんだけどそこで騒がないで欲しい。気分悪いから」
三半規管ってどう鍛えるんだっけか。そもそも鍛えられるのかな。まあそんなことしてももう無駄だわな。異変にはもう関わらないようにするか。もう面倒ごとも嫌なことも勘弁。おっぱいがなかった時なんかはもうどうすればいいかわかんないよ俺。風見幽香のπで慰めてもらえないし。早苗が見当たらなくなったので、天子を掴んで飛び降りる。衣玖が隣を着いてくる。なんか、騒ぐガキに大人二人で落ちる姿はシュールだな。さてニアミスしてないといいんだが。霊夢…はどうせ来るか。魔理沙探すか。
「誰のこと探してるのよ」
「金髪の白黒」
「へぇ…」
「総領娘様はどうなってしまうのですか?」
「しらね。俺だって余所者だからなぁ。…何で俺はお前らを突き出そうとしてんだ?」
「何で本人がわかってないのよ」
「あ、あと総領娘様は帰ったらお仕置きですからね。」
「何で!?」
らしい。よー分からんけど、なんかそう言うことになった。まあそうなっただけと言う見方も出来る。とにかく魔理沙を探すこと。あいつのことだから、情報収集かなんかで紅魔館には来ているだろう。足取りくらいなら掴めそうだが、果たして。美鈴師匠は見てないらしい。困った感じの応答をされた。まあでも、空から入れば見てないこともあるだろう。たまに寝てるからねこの人。パチュリーも訪ねるか。…こうなってくると天子が邪魔だな。でもこいつ解放したら俺の家がな…。衣玖の胸と睨めっこ。天子に顔を叩かれた。
「全く。着いてきて欲しいならそう言って。着いていくから。」
「…何で私に対するセクハラで総領娘様が怒るんですかね」
「親離れの時期はもう過ぎてるだろうに。」
「それは須磨元もでしょ!」
「…私の前で騒ぐのは後どれくらいで終わるの。」
「今。パチュリー、魔理沙見なかった?」
「さぁ…小悪魔は?」
「パチュリー様を見てる私が見つけると?」
「送り返すから、用事がなければ出ていって。」
無駄足だったか。まあ最悪天界で待つこともできるが…流石に。きついきつくない以前に霊夢が来た時に俺が死にそう。だからこうやって魔理沙を探しているわけだが。あいつ全然見つからねえな。早苗と同じですぐに見つかると思ったんだが…天狗も知らん時は知らんだろうし、誰に聞いても分からんなこれは。博麗神社で霊夢を待つのもありか。…なんなら日が暮れるまで魔理沙の家に…だめだ、あいつが他人の家に入ったり徹夜したりすると破綻する。
「…万事休す」
「万策尽きたようですね」
「衣玖〜疲れた〜」
「ま、次の手がないことはないんだけど。」
「ほう、それはどんな?」
「諦める」
無視された。割と上出来なギャグだと思ったのだが。勿論次の手がないわけではない。…まあ、あまり使いたくないという手だが。というか何で天子は着いてきてんだ。逃げたきゃ逃げればいいのに。追いかけても追いつけないんだから、逃げれば終わりだぞ。俺、そこまで飛ぶのも走るのも速くないからな。衣玖がいるからだろうか?…総領娘ってことは、立場的には外の世界にいた頃の早苗みたいなもんだよな、多分。早く家に帰れば良いのに。帰って寝とけば良いのに。
「帰ったらつまらないのよ」
「は?」
「天界って書いて退屈と読むのよ。
「悪い何言ってんだこいつ」
「ルビ変換ごっこはおやめください。外の世界でしかできませんから」
「…わけわかんねえよ…」
「あ、そうそう。これあげる」
「何これ」
「天界の桃よ。食べれば食べるだけ強くなる不思議なヤツ。」
「正直言って」
「不味い。普通に腐るし汚いし味薄いし料理できないし、でもお父様からは頭につけてろとか言われるし。」
早苗を避ける理由→諏訪子