小町はでかい。異論は出ないと思う。
時系列は謎。
「…どこだここ」
「ここは三途の川、渡るには結構遠いけど、あたいが送ってやんよ」
「…成る程、俺死んだのか」
目の前にいるデケえ鎌を持ったでけえ胸を持つ自称死神に気付く。場所は木船、三途の川の上。浴衣であること、胸元に余裕があることからノーブラであることが伺え、それによって発生する胸部の快適さをさも我が物のように振る舞っている。実際に我が物なのだが。その快適さを誇る胸からは、気さくな性格が垣間見える。立体的な隙間、そして平面から見た時の胸元に見えるはだけ方。その部分だけは正しくダイアモンドにすら劣らない輝きを持っていた。そしてこの考えで話の大半を聞きそびれた。
「えっと…お前さんの死因状は…っと」
「何それ」
「あの世も面倒でね、ほら、名前と死因、状況が載ってる。…『夢の中で絶世の美乳に囲まれ憤死』…ってのは分からないけど。これを三途の川を渡った先に届けるのがあたいの仕事。」
「成る程ぉ…心当たりのある死に方だ」
「欲に弱いねえ。あたいも同じかも」
「ところでその開放的な胸だけでも来世に持ち込みたいんですけど」
「船から落とすよ」
あの世の沙汰も金次第、だったか。三途の川を渡る金が俺はギリギリだったようで、かなり長い間漕ぐことになるらしい。小町が言うには俺の死体は俺の家にあるんだと。お燐に見つけられる予感しかないわけだが、まあなんとかなるだろ。なれ。三途の川の銭はどう決まるのか聞いてみたら、生前の行いから決まるんだと。善行と悪行の釣り合いがギリギリだったってことか。まあ基本渡れない奴はいないらしく、その点で言えば俺の悪行が酷いと言う話らしい。そんな、俺はおっぱいの探究者やってたんだぞ。さとりの命令にも割と従ったし、風見幽香も…いやこれは関係ねえわ。
「それはあたいには関係ないからね。あたいは渡すだけ。」
「道中楽しもうよ〜」
「久しぶりに話せる死人だからあたいはかなり楽しんでるけどね」
「…確かに。あの、白玉みたいにならんの?」
「普通はなるんだけど…余程の悪行積んだね?」
「悪行積みまくるとどうなるの?」
「とりあえず地獄一周かな」
「成仏どころじゃないよね、多分粉微塵にならない?」
なるらしい。ひでぇ。ゆらりゆらゆら、船旅。話さない幽霊に一方的に話すのは嫌だ、とか、デカい胸も重くて嫌だ、とか。上司が小さい胸で羨ましいとか。他愛のない雑談だろう。多分。道中うたた寝の気分にもなったが、胸を目の前に眠るなんて言語道断、俺の人生は貫き通す。胸一番だ。たまに嫌な話が飛ぶけど。居酒屋で勢いでやらかした死神の話とか。揺れて揺れて少し寄って三途の川に吐いて。おろろろろ。船に乗ったことがないためこう言うのは初めてだ。ここまで船酔いに弱いのに空飛んでたのか、俺は。
「よーしよしよし」
「うっ母性を感じる」
「次吐いたら落とすぞ〜」
「勘弁して…」
話すこともなくなってもなおまだ着かない。ゆらゆらと。話すこともなくなると、次第に興味が移る。死神もまた、俺のことから空へと目を向けた。空を眺めることに意味はないと思うが、まあそれほど退屈なのだろう。ここまで長いとは思わなかった。ここまで長いなら善行すれば良かった。いや、俺基準だと割と善行してたはずだけどね。俺も長い間胸を見続けるだけで、何の進展も見込めないこの状況を疎ましく思い始めている。流石に眠い。
「でもま、たまにならこう言う時間もいいと思うよあたいは。もう一度来たら?」
「じゃあ道引き返してよ」
「無理に決まってんでしょ、アホ?」
「でも、なんか船進んでなくない?」
「…あれ」
死神が急いで船を漕ぎ始める。が、一向に進まない。俺の善行、ここで尽きた?俺も手伝う。進行方向合ってるよね?よし、手で漕がせてもらうね。普通なら多少なりとも方向転換くらいはするのだが、何故かしない。死神が急に焦り出した。何だか景色が遠くなっているように見える。あれ、これ逆流してない?俺これ、もしかしたら生き返るとかある?え、そういうのアリなの?これが臨死体験って奴?そうなったら急に死神の胸が恋しくなる。ちょ、まだ見てたいから。まだ見るよ。待ってよまだ満ち足りてないんだよ?お、これ無理だ。
「モーターとかないの?」
「あったらあたいの能力意味ないからね!」
「なんか進んでる時より早く戻ってない!?」
「あたいもこんなの初めてだよ!須磨元、あんたどこで死んだ!?」
「地底!」
「人間が!?」
三途の川に下半身突っ込んで抵抗するがどうも意味がないらしい。更に速度が上がっていく。ここまで来たら、体感半日は経っていたはずの航路を眺めながら船の上で優雅に過ごすしかなくなった。船から落ちないよう細心の注意をするが、めっちゃ揺れないためそれも良いかとなった。逆に落ち着いてきたな。死神の胡座を見て、胸を見て、ふーんえっちじゃんと思う。異変もここまでくればどうしようもないわけだ。出発点が見えてきたが、どうもおかしい。速度が落ちない。そのことに気づいた俺と死神は、急いで衝突の準備をする。吹っ飛んだけど。
「…あたいは小町。小野塚小町。地底の方にはたまに行くから、その時はまた話そう」
「え、これ生き返るってこと?」
小町と手を握った途端、視界が変わる。俺の手を握るお燐と目が合う。…どうやら臨死体験という奴だったらしい。あれほど豊満な胸を見れたのだから、また死んでも良いかもな…と思いながら手を引き体を起こす。奇跡が起こったかのように周りの皆が騒ぐ。勇儀と萃香、あとさとり。…いうほど皆か?四人だな。あのさとりでさえかなり驚いている顔だった。死人が生き返るのはやはりあり得ないか。俺もそう思う。
「…もう一回死神に会えねえかな…」
「お兄さんが酷いよさとり様ぁ!」
「死人記念だ清まれ!」
「酒だ酒だ!」
「鬼よりはマシなので別に良いと思うけど」
なんかいつのまにかお燐がかなり正統派?なヒロインになってたな…