Re東方葬想録   作:KUS

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ペイン

霊夢視点

 

「つまり、あんたはかぐや姫本人?」

「そうなるわね。全く、私は月になんて帰ってないのに」

「まあ結局はフィクションだから。ノンフィクションなら文句言って良いと思うが」

 

今、私の眼前では誠斗と輝夜が談笑していた。

永琳と鈴仙が中々来ないから暇潰しに駄弁り始めたのだろう。

 

『紅魔四天王の一角、死の旋風は……おそらく誠斗さんです』

 

阿求の言葉が私の中で響いた。

“死の旋風”、気になったから誠斗が阿求達と話している間に幻想郷縁起を読んで調べた。

吸血鬼異変の事が載っているのは結構古めのやつだ。

探すのに苦労した。

阿求から聞いた情報以外で知れたのは3つ。

紅魔四天王の中で、最も多くの妖怪を殺した者

死の旋風によって全滅した妖怪の集落は数知れず

まるで感情がない、ただただ作業のように殺しをした

端的に言うとこれだ。

これだけでも、死の旋風の強さと妖怪達の恐怖が伝わってくる。

…………死の旋風の特徴は誠斗に合致する。

でも、あいつは違うと思っている私もいる。

状況証拠は全部誠斗が死の旋風だと言っている。

でも私の心は信じたくない。

あいつは確かに殺しをしていた。

でも、淡々とやれるタイプじゃない。

そんな機械みたいなやつなら………初めて会った時、あんな疲れた雰囲気を感じる訳なかった。

 

…………興味があったから他の2人の四天王も調べてみた。

鎌鼬、相対すると風に斬られたらしい。

だから鎌鼬と呼ばれた。

得物は刀、死の旋風と一緒に遭遇する事は少なかったらしい。

斬れる風は恐らく能力か霊術だろう。

次に凶狼。

火を吹き遠距離から命を奪う不思議な武器を使っていたらしい。

これは銃だろう。外の世界で一般的な武器。

そして、月の夜に姿を見せる狼の姿。

それが二つ名の由来。

 

紅魔四天王が殺した妖怪は数知れない。

内八割を死の旋風が、残り二割を鎌鼬と凶狼で。

華人小娘は殺さなかったらしい。

美鈴は殺しをしていないという事だ。

もし本当に誠斗が死の旋風なら………

止めよう。ネガティブな考えしか浮かばない。

 

「皆さ〜ん、お師匠様を連れてきましたよ」

 

思考を辞めた瞬間、鈴仙が襖を開けてそう言った。

 

誠斗視点

 

鈴仙が襖を開けて部屋に入ってくる。

後ろには銀髪の、左右が赤と青で分かれた服を着た女性がいた。

 

「誠斗さん、紹介しますね。

 この人は私の師匠の……」

「八意永琳よ、貴方が誠斗ね。優曇華から話はある程度聞いてるわ」

「初めまして、十六夜誠斗だ。昨日来たばかりだ」

 

お互いに自己紹介を済ませる。

 

「あんたも月出身なのか?」

「私は地上の出身よ」

「お師匠様は、月の都の創設者の1人なんですよ」

「へぇ〜」

 

月の都か………どうやって息をしているのやら。

多分結界が貼ってあるのだろう。

因みに鈴仙は玉兎という種族らしい。

月にウサギって本当にいたんだなと思った。

 

その後は、談笑をした。

だが、俺から振る話題なんて皆無に等しい。

だから大体向こうから振られた話に答えていた。

 

例えば、

永琳は医者だったり、

霊夢達が月に殴り込んだ話だったり、

逆に月の連中が侵攻してきた異変の話だったり、

本当に、色々話した。

 

「そろそろ次に行くわよ。時間も推してきてる」

「だってお兄ちゃん」

「そうだな。じゃあまた」

「ええ、患者じゃなくても来て構わないわよ」

 

永琳達に挨拶をし、俺が立とうとしたその時だった。

 

ズキッ

 

頭に鋭い痛みが走った。

クソッ、今かよ

 

「お兄ちゃん?どうしたの?」

「………(フラッ)」

 

俺は段々と痛みが増していく頭を抑えながら何とか立とうとするも、

立とうとした瞬間、意識が暗転した。

 

咲夜視点

 

バタンッ

 

「お兄ちゃん!」

「誠斗!」

 

倒れたお兄ちゃんを、私と霊夢で支えた。

お兄ちゃんの意識は、なくなっていた。

 

「ちょ、大丈夫ですか」

「優曇華、すぐに準備して」

「は、はい!」

「霊夢、病室に連れていくわよ。手伝って」

「わかったわ。咲夜もほら」

「え、ええ」

 

私達は慌てながらも、お兄ちゃんを病室に運んだ。

部屋には、何が起きたのかいまいちわかっていなかった輝夜を残して。

 

数十分後、永琳が診察を終えて病室から出てきた。

 

「永琳、お兄ちゃんは?」

「安心して、今は寝ているだけよ。

 でも、大事をとって今日は入院ね」

「当然ね。咲夜、レミリア達に説明お願い」

「う、うん」

「それより、2人に見て欲しいものがあるの」

 

永琳はそういって、レントゲン写真を見せてきた。

それは、お兄ちゃんの脳のレントゲンだ。

 

………その写真には、傷があるのが分かった。

 

「永琳、これは?」

「誠斗が倒れた原因ね。脳が損傷してる。特に大脳皮質がね」

「何でそんなものが………」

「咲夜、誠斗は持病を持っていたかしら?」

「いいえ、お母さんが医者だったけど、そんな素振りはなかったし、至って健康体だったわよ」

「そう、つまりは後天的なもの」

「原因は一体……」

「………能力の後遺症」

「!?」

 

お兄ちゃんの能力は時間を遅くする能力。

そしてデメリットは長時間使用での脳への負担。

そして損傷していたのは大脳皮質……情報処理をする脳の部位。

 

霊夢が語った推測に、永琳は納得の素振りを見せた。

 

「なるほどね、恐らくは能力の乱用が原因ね」

「……あいつは能力の乱用なんてしてる素振りはなかったけど」

「霊夢、貴方が目にした誠斗は、昨日からの誠斗よ。

 昔の彼が乱用していた可能性もある」

「…………」

「取り敢えず今は絶対安静よ。明日また診るから、その時に迎えに来て」

「わかった」

「はい」

 

私の口からは、弱々しい返事しか出なかった。

 

帰り道、霊夢が私に一つ頼み事をしてきた。

 

「咲夜、今回の件、レミリア達が何か知ってないか聞いといて」

「お嬢様達に?」

「少なくとも、私よりは誠斗に詳しい。また明日、私の方からも問い詰めてやるから」

「分かった、ありがとう霊夢」

「…………じゃあ」

 

そういって霊夢は博麗神社の方へ飛び去っていった。

私も、紅魔館の方へ向かって飛行していった。




八意永琳
種族:月人
能力:あらゆる薬を作る程度の能力
二つ名:月の頭脳
永遠亭を仕切っている医者。輝夜の教育係でもあった。
輝夜が地上に堕とされたあと帰還を拒否したため、他の月の死者を皆殺しにし逃亡生活を始めた。
月の頭脳と呼ばれるだけあって、その頭脳は幻想郷トップクラス。
人里で自身の作った薬を鈴仙に売らせている。
良心的な値段らしく、払えなくても払えるようになるまで待ってくれる。
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