誠斗視点
「歓迎会?前にも言わなかったか?別にいいって」
「却下。親睦会にもなるんだからやるわよ」
妖怪の山に行った翌日、霊夢が紅魔館に来て開口一番に言ったのは歓迎会の件だった。
前にもやらなくていいって言ったんだが……
「……やらなきゃダメか?」
「ダメ」
「どうしても?」
「どうしても」
……諦めが悪い過ぎるだろ。
そんなにやりたいのか……
「………」
「早くYESって言いなさい」
「強制かよ……」
「当たり前でしょ?」
「はぁ……」
「何であんたがため息を吐くのよ」
そりゃここまでしつこいと吐きたくなる……
いや、我儘言ってんのは俺か。
「そ・れ・で?」
「はぁ。やるよ、やります」
「そんな言い方されると逆に萎えるわね」
「強制的に言わせたくせに良く言うよ」
「まあ、言質は取ったし。後で日程を伝えにくるわね」
そう言って霊夢は部屋から出ていった。
日程を決めてないって……
「先に組み立ててこいよ……」
「あら、急な宴会は嫌い?」
「レミリア様、見てたのなら助けて下さいよ」
入り口からひょっこり顔を出している主人を見る。
今の俺はきっとジト目というやつををしている事だろう。
「でも本心から嫌がってるわけじゃないでしょ?」
「……そうですかね?」
「きっとそうよ」
そうかねぇ……
確かに本気で敬遠してる訳じゃない。
ここに戻ってくる前までの俺なら、YESなんて言わなかっただろう。
俺も、変わってるって事なのかな。
「そう言えば、今日はどうするつもりなの?」
「しばらく大図書館で缶詰ですよ。
飛行魔法を覚えたいんで」
「そう、頑張りなさい」
そう言ってレミリア様も出ていった。
……あの人予定を聞きに来ただけなのか!?
マジで何考えてんのか分からない。
パチュリー視点
「レミィの言う通りだと思うわよ」
「そう思いますか?」
「ええ、貴方って人の厚意を無下に出来ないタイプだから」
誠斗に、私はそう言った。
今誠斗は飛行魔法の練習をしている。
少しずつ出来るようになったのか、今はフヨフヨ浮いていた。
でも、まだ移動に使うには心許ない。
「……これじゃ浮遊魔法だ」
「仕方ないわよ。何事も数こなさなきゃ。
まあ、その調子なら最大一週間ってとこかしら」
「一週間っか……」
「宴会には間に合うんじゃない?」
「だと良いですけど……」
そう言って誠斗は魔法を解除した。
魔力が減ったみたい。
しばらくは休憩ね。
「少し待ってて、コーヒー持ってきてあげるから」
「どっちかと言うと、魔力補充薬が欲しいです」
「それで魔力は回復出来ても、疲労は回復しないわよ。
大人しく休みなさい」
「……了解」
誠斗は不承不承と言った感じだ。
この子は昔から休憩というのを知らない。
一時はそのせいで体を壊した事もあった。
「はいコーヒー」
「コアはどうしたんですか?
こういう仕事は大体コアがやってた筈ですけど」
「今留守なのよ。香霖堂に用事をお願いしたから」
「香霖堂って、古道具屋の?」
「そう、古道具屋の」
コアが居ない理由を説明したら、誠斗は納得した様子を見せた。
そのまま淹れたてのコーヒーに口を付けている。
……何気に、私が自分で淹れたコーヒーを誠斗が飲むのは初めてね。
「どう?」
「んー……普通ですね。良くも悪くもない。素人意見ですけど」
「貴方のズバズバ言うところ、好きよ」
この子は割とストレートに言う所があるから……
相手によってはダメなんだけどね。
私は少なくとも、こっちの方が改善を模索出来るから嬉しいんだけど。
「そう言えば、腕輪はどうしたの?」
「腕輪?……ああ、守矢神社に行った時壊してしまって、
今はにとりの所で直して貰ってます」
「にとり?ああ、河童ね」
河童って……何かの機械だったのかしら。
暴走したフランを制圧した時、刀を腕輪に仕舞ってたのは見た。
収納魔法じゃないみたいだったから、何だと思ってたんだけど……
「あの腕輪って、何なの?」
「外で仕事してる時にクライアントから支給された物です」
「……あなた、外で何の仕事してたの?」
「……」
「……急に黙らないでよ。別に責めてるわけじゃないのに」
「すいません」
「大丈夫よ。話せる時に話して。
こういうのは本人の心持ちだから」
少し、気不味い雰囲気になったわね。
……コア、早く帰ってきなさい。
レミィでも妖精メイドでも良いから。
この際魔理沙でも良いから、誰か空気を変えて。
「………」
「……今日は終わりましょう。悪いコンディションで練習しても怪我するだけよ。
私のせいだけど」
「軽く流さないで下さい」
「ごめんなさい。それじゃあ、また明日来なさい」
「分かりました」
そう言って誠斗は大図書館から出ていった。
……あの子、一体何をしていたのかしら?
その後、誠斗は五日くらいで普通に飛べるようにはなった。
遠距離移動はまだ心許ないが……