Re東方葬想録   作:KUS

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歓迎会

咲夜視点

 

私は今、お兄ちゃんの部屋の前にいた。

理由?妹の私が会うのに理由なんて必要?

 

……と言いたいけど、ちゃんと理由はある。

霊夢からお兄ちゃんを連れてきてと頼まれたから。

これが理由。

 

歓迎会をやるのは博麗神社。

飛んで行かないとかなりの時間がかかるから連れてきてって事だろうけど。

 

「お兄ちゃん?」

「……?ああ、咲夜か。どうした?」

「どうしたって……歓迎会。今日だから」

「ああ、歓迎会か……」

 

少し反応が怪しいな……

もしかして、

 

「忘れてた?」

「……半分」

「半分忘れてたの……ボケないでよ」

「失敬な。まだ21だ」

「そういう話じゃないでしょ」

 

お兄ちゃんって、なんて言えば良いんだろう……

なんて言うか、天然?って言うのかなぁ。

 

「お前に言われたくはない」

「……もしかして、声に出てた?」

「バッチリと」

「…………っ!?」

「大丈夫か、顔赤いぞ?」

「良いの!と・に・か・く、博麗神社に連れて行ってあげるから乗って!」

 

私はそう言ってお兄ちゃんに背を向けて自分の背中を叩いた。

だけど、お兄ちゃんから予期せぬ言葉が出てきた。

 

「咲夜、乗せてくれるのはありがたいけど……

 悪いけど、俺もう飛べるんだ……」

「えっ?」

「あと乗せるにしても、ここ室内だぞ?」

 

その瞬間、私の内から何かが込み上げてくる気がした。

これは……何て言えば良いんだろう。

でも、凄い懐かしいものだった。

 

「……」

「咲夜?」

 

私は、目の前の空気の読めない男の背中を思いっきり殴った。

 

「いっつ!?お、おい!?」

「……(ボカボカ)」

「辞めろって!拗ねんなって!」

 

その後、10分くらいこのやり取りが続いた。

10年ぶりに味わえた。

 

 

誠斗視点

 

「なあ、良い加減機嫌直せって」

「……(プイッ)」

「ハァ……」

 

今、俺と咲夜は博麗神社に向かって飛んでいた。

あの後何とか咲夜を宥めたんだが……運べとせがまれた。

運ばないなら絶対に動かないという鋼の意志を感じたんだが……

こいつこれでも18だぞ?

それにしても重いな。

 

「……(ゴスッ)」

「痛いな……」

「何か失礼な事言われた気がした。例えば体重とか……」

「ごめんて」

「お兄ちゃん、デリカシーなさすぎ」

「心を読まれるとは思ってなかったものでね」

 

何で考えてる事がわかったんだよ。

兄妹だからか?

 

「ほら」

「頭撫でないで……もう子どもじゃないもん」

「さっきのあれのせいで説得力が皆無だ」

「……うるさい」

 

たくっ……

咲夜は昔からそうだ。

甘える相手は親父でも、お袋でも、兄貴でもなく俺だった。

……まあ、親父達は家に殆どいないし、兄貴とも年が離れてたし、しょうがないか。

 

「咲夜、神社が見えてきたぞ」

「……そう」

「良い加減機嫌直せって。これさっきも言ったな?」

 

ほんと、手のかかる妹だこと。

 

 

霊夢視点

 

「ほら、着いたぞ」

「うっ、痛い……扱いが雑すぎるよぉ」

「運んでやったんだから文句言うな」

「……バーカ」

「バカとはなんだバカとは」

 

何やってんのこの二人。

私の今の気持ちだ。

予定よりも遅い事へのイラつきより、兄妹漫才への困惑が勝ってた。

 

「遅いわよ。何やってたの?」

「この甘えたがりが駄々こねてただけだ」

「何で誠斗じゃなくてあんたが駄々こねてんのよ……」

「別に何でもいいでしょ。私はお嬢様の所に行ってるから」

 

咲夜はそう言ってさっさと中に行ってしまった。

何があったのよ。

 

「ハァ、取り敢えず中に入るわよ」

「何をすればいい?自己紹介か?」

「要らないわよ。歓迎会という名の宴会だし」

「おい待て、俺に強制的に許可させた理由は……」

「何?私は歓迎会のつもりよ」

「ああ……なるほど?」

 

納得してくれて何より。

どいつもこいつも飲みに来てるだけだし。

興味あるならあっちから寄ってくるだろうし。

 

「そう言えば霊夢、おすすめとかはあるのか?」

「うーん……八目鰻とか?あと焼き鳥」

「ふむふむ」

「あとお酒」

「すまん。酒は飲まないんだ」

「そう?一緒に飲もうと思ってたのに」

「待て、お前いくつだ?年下だよな?」

「誠斗、幻想郷じゃ常識にとらわれちゃいけないのよ」

「そんなキメ顔で言われましても……」

「取り敢えず、行きましょ」

 

そう言って私は、誠斗の腕を引っ張って行った。

 

 

誠斗視点

 

宴会場には、確かに色々あった。

そして大勢人がいた。

大半は知らない顔だ。

知ってる顔もいたが……

 

適当に座ると魔理沙が俺に気付いたのか話しかけてきた。

 

「よっす、誠斗。楽しんでるか?」

「今来たとこだから楽しむも何もないぞ」

「それはそうか」

 

そう言って魔理沙はニヤニヤしながら俺を見た。

なんだそのニヤニヤは。

 

「どうした、俺になんかついてるか?」

「いや?霊夢と仲良さそうだなって」

「そうか?」

「そうだと思うぜ。それに、あいつお前の話だと顔変わるし」

「そっか……」

「お前、コミュ力高いな?」

「ない、断言出来る」

「早口で捲し立てるなよ……」

 

俺がコミュ強は断じてない。

ここに来るまで友達二人だぞ。

しかも基本受け身だったし……

 

「おっ、誠斗じゃないか。今いいか?」

「にとりか。別に良いぞ」

「誠斗に用事って事は……腕輪が直ったのか?」

「ふふふ……」

 

にとりが鞄から袋を取り出す。

そこそこ大きめの袋だ。

腕輪を入れるにしては大きいな?

 

「取り敢えず、誠斗の私物は全部出せた。この袋はそれだ」

「じゃあ、腕輪は?」

「まだ完璧には直せてないんだよ。もう少し預かる」

「そうか、ありがとな」

「どうって事ないさ」

「なあ誠斗、お前の荷物見て良いか?」

 

にとりにお礼を言うと、魔理沙がそんな事を言ってきた。

急だな……

 

「別に良いが、荒らすなよ?」

「サンキュー」

 

そう言って魔理沙は袋を漁り始めた。

ああ、刀と銃は放り投げるなよ。

 

「武器と本、あと銃弾って……もっと何かないのか?趣味とかさぁ」

すいませ〜ん

「そんな事考えもしなかったからな」

ちょっと〜

「趣味あった方が人生楽しいと思うぞ?」

あの〜

「私もそう思うなあ」

「じゃあ、探してみるか」

「あの無視するの辞めてもらえませんか!?」

 

うわっ、なんだこいつ。

素でそう思った。

 

「おっ、文じゃないか」

「誰だこいつ?」

「射命丸文って言う烏天狗だ。文屋だ」

 

目の前の少女は烏天狗らしい。

文屋って……パパラッチか。

 

「初めまして!清く正しい射命丸です!お話よろしいでしょうか?」

「すいません、そう言うのは断っているので」

「即答!?早すぎますよ!?」

「いや、ある事ない事書かれるのは嫌なんで」

「書きませんよ!?」

 

いやパパラッチってそう言うもんだろ?(偏見)

 

「誠斗、こいつは嘘は書かないぜ」

「そうなのか?」

「まあネタを自作自演する事はあるけどな」

「一気に胡散臭さが倍になったぞ」

「今回はしてませんよ」

「“今回は”かよ」

「取り敢えず、お話良いですか?」

 

意地でも引き下がらない気だな。

 

……仕方ない。

 

「少しだけな」

「おっ、ありがとうございます」

「それで何が聞きたい」

「まずお名前をお聞きしたいですね」

「十六夜誠斗」

「誠斗さんですね。咲夜さんとはどういう関係で?」

「兄妹だが……」

「なるほど。それじゃあ幻想郷で何かしたい事とかありますか?」

「特に……今の所は普通に過ごしたいだけだな」

「そうですか。ありがとうございました。

 また機会があったらぜひ」

 

そう言って文は別の宴席に向かって行った。

嵐のようなやつだったな……

 

 

「ハァ、あいつら絡み酒は辞めろよ……」

 

俺は博麗神社の縁側に座っていた。

文の取材を受けた後は、初めましてな相手と挨拶したり、レミリア様にワインを渡されたり……

色々あったな。

 

「お兄ちゃん?」

「咲夜?どうした」

「隣に座っていい?」

 

しばらく思考に耽ていると、咲夜が出てきていた。

少し顔が赤い気がする。

 

「ねぇ、座っていい?」

「あ、ああ。良いぞ」

「ううん」

 

咲夜は、座ると同時に寄りかかってきた。

こいつ……

 

「咲夜、お前酔ってるな?」

「別に、いいでしょ?」

「質問に質問で返すなよ……」

「ねえお兄ちゃん」

「……なんだ?」

 

咲夜の言葉にそう返す。

咲夜は酔いが回ってるみたいだが、言葉はハッキリとしていた。

 

「もう、いなくならないで」

「咲夜……」

「えへへ……お兄ちゃんだぁ」

「なんか精神退行してないか?」

 

酔い過ぎだ。

 

俺は咲夜の肩をそっと抱いた。

 

「大丈夫、もう何処にもいかない」

「ほんと?」

「本当だ。もういなくならないよ」

「……」

「咲夜?」

「スゥ……」

 

寝てやがる。

まあ、いっか。

 

その後、様子を見にきたレミリア様と魔理沙がイジってきた。

イラついたので魔理沙に一発、レミリア様にデコピンした。

魔理沙がなんか抗議してたが……

俺の中での扱い順はレミリア様>魔理沙だからな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

外の世界・日本・某所

 

「……どうだ?」

「痕跡なし。途切れています」

「どう言う事だ……あらゆる手を使って痕跡を探せ」

「了解」

 

深夜、人気のない住宅街。

そこは誠斗と紫が話し、幻想郷へ旅立った場所だ、

そこの暗闇の中で、動く二つの人影があった。

黒色の戦闘服を着用し、顔を隠している。

頭には暗視スコープを付けている。

暗闇の中だから当たり前だろう。

 

「Ghost4、Ghost5。状況はどうだ?」

『こちらGhost4。問題なし。人っ子一人いないよ』

『こちらGhost5。同じですね。まあ警部軍が規制線を張ってるんですから当然ですが』

『これで人が入ってくるなら……連中の怠慢か、それとも後ろ暗い輩か』

「Ghost4、今は状況報告だけでいい。独り言は後にしろ」

『すいません隊長』

「二人とも、警戒を続けろ」

『『了解』』

 

隊長と呼ばれた男━━Ghost1は通信を切った。

そして、後ろで作業をしている部下の方を向いた。

 

「Ghost3、何かわかったか?」

「はい、しかし面倒な事に」

「面倒な事?」

「……僅かですが空間の歪みを検知しました。人為的か自然的かは不明。

 ターゲットはおそらく何処かへ転移したかと」

「チッ、面倒な」

「面倒事って言いましたよね?」

「気にするな。俺の中の言ってみたいセリフランキング上位を言っただけだ」

「またカッコつけたがりですか?仕事中くらい我慢して下さい」

「うるさい。それより、検知結果を科学部門に送れ。

 あそこなら、何処に飛ばされたか割り出してくれるだろ」

「わかりました。結果を送信します」

「頼むぞ。俺は上に報告する」

 

Ghost3は手元の端末の操作を始める。

一方、Ghost1は何処かへ通信を繋げた。

繋がったのは、彼らの命令元だった。

 

『Ghostか。それで、ターゲットは始末したのか?』

「いいえ、まだです。しかし面倒事に」

チッそれで面倒事とは?』

「空間の歪みを見つけました。ターゲットは転移した可能性が高いです。

 データは科学部門に提出させています」

『何を勝手な事をしている!』

「しかし、ターゲットを始末するには転移先を割り出さなければ……」

『チッ、場所を割り出し次第そこへ向かえ。そして確実に消すんだ!いいな!』

 

ブツンッと言う音が鳴り、通信が切れる。

Ghost1はそれに対して溜息を吐いた。

 

「報告、終わりましたか?」

「ああ、データは送ったか?」

「送信しましたが……上はどのように?」

「場所を割り出し次第、現地に向かって消せ、だと」

「そこまでして奴を始末したいんですかね?」

「どうせ、「道具が足を洗うのが気に食わない」とかそんな下らない理由だろう」

「……ボイコットしますか?」

「無理だ。そうすれば切られるのはこっちだ。

 他の幹部とのパイプもない以上、命令を遂行するしかない」

「……なぜ社会の膿ではなく、足を洗った殺し屋を始末しなければいけないのですか?

 そんな事より優先して消すべきゴミは大勢いる筈です」

「Ghost3、気持ちは分かる。だがな……」

 

Ghost1は、不承不承と言った感じで言葉を発した。

 

「歯車である以上、命令に背く訳にはいかない。

 特に、裏の人間である俺達は、な?」

「……了解です」

「ハァ、仕方ない。みんなを誘って焼肉でも行くか」

「隊長の奢りですよ?」

「わかってるって」

 

「約束ですよ」そう言ってGhost3は先に帰投して行った。

 

「……Ghost4、Ghost5。お前達も帰投しろ」

『了解』

『了解。隊長、私は黒毛和牛を食べてみたいですね』

「無理だ。というかそんな高級品を売ってる店には行かないぞ」

『ふふふ、冗談ですよ』

「ハァ、全く」

 

Ghost1はターゲットの写真を見つめる。

そして一人言葉を発した。

 

(ウィンド)……お前との決着。これを機につけてやる。

 その後は……あいつらを連れて自由になるなんてのも……良いかもな」

 

彼の端末に表示されている写真に写っていたのは……

 

 

誠斗だった。




キャラクター解説
射命丸文
種族:烏天狗
能力:風を操る程度の能力
二つ名:伝統の幻想ブン屋
妖怪の山に住む烏天狗の記者。
文々。新聞を発行している。
また、「真実のみを記事にし、裏の取れない情報は記事にしない」というポリシーを持っている、
幻想郷最速の称号持ち。

Ghost
連邦軍所属の特殊部隊。誠斗が雇われていた組織の直属。
隊内の仲は良好。軽口も日常茶飯事である。

設定解説
警備軍
連邦軍の一部隊。主に市街の治安維持や一般犯罪者の対処を担当。
現地警察との連携も行う。

科学部門
連邦の行政機関の一つ。様々な技術の開発や既存技術を利用した兵器開発を行っている。
誠斗の腕輪の製造元。

(ウィンド)
誠斗の殺し屋時代のコードネーム。

空間の歪み
離れた空間同士が無理矢理接続された時に発生するもの。
転移魔法の行使や紫のスキマなどの空間移動で発生する。
ごく稀に自然発生する。
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