Re東方葬想録   作:KUS

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不穏な影

外の世界・日本・連邦東京支部

 

「隊長、科学部門から結果が届きました」

「早いな。何があったんだ?」

「早いだけでおかしい扱いは失礼ですよ」

「だって連中、仕事より研究なやつばっかじゃないか」

「否定はしませんが……そんな事より報告です」

 

Ghost3が手元の端末に表示されているデータをGhost1に見せた。

写っていた座標は、Ghost達が調べていた地点からそう遠くなかった。

まあ同じ国内という意味でだが。

 

「なるほど、仕事が早いのはそういう理由か」

「はい、繋がった地点同士の距離がそこまでだったようです」

「ここに……やつが」

「座標は……何もない辺境ですね」

「全員呼べ、一時間後にブリーフィングを開く」

「了解」

 

Ghost1はGhost3に隊員を集めるよう指示を出した。

本人は端末を操作し始める。

作戦の詳細な内容を決める為だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

幻想郷・とある森

 

「それは本当か?」

「へい、確かに見たんでさぁ。

 

 紅魔館のメイドと一緒に飛ぶ“死の旋風”を」

「ククク、そうかそうか」

 

人気のない森の中で話していたのは二人?の妖怪だった。

報告をしていた妖怪は、一見人間にしか見えないが、その目は吊り上がっており瞳孔も開き切っている。

報告を受けていた妖怪は完全に人間にしか見えなかった。

だが、彼女からはとてつもない濃度の妖気が発せられている。

 

「へへへ、食って構いませんか?」

「まあ待て、奴を殺すのは私だ。死体は好きにして良い」

「おお!さっすが大将!」

「お前は他の連中に声をかけろ。奴に恨みを持つ奴は大勢いるからなぁ」

 

それを聞いた妖怪はすぐさま飛び出して行った。

そのスピードゆえか周辺に一瞬とてつもない突風が吹いた。

 

「死の旋風……私の可愛い部下達の仇、討たせてもらうぞ。それに……

 

 この傷の礼もしなければなぁ」

 

そう言って妖怪は、顔に一文字に刻まれている古傷を撫でた。

まだ傷はズキズキと疼いていた。

その傷からは、微かな魔力を感じた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

誠斗視点

 

歓迎会の翌日、俺は紅魔館の裏手に立っていた。

そこには、三つの墓が建てられている。

要は墓参りをしている。

 

「……」

 

静かに手を合わせる。

ここに眠っているのは……昔の紅魔館のメンバーだ。

墓に刻まれている名前は

 

”セリア・グレイス“

”夜中無月“

”ファング・ヴェアヴォルフ“

 

だった。

 

「誠斗くん、朝から見ないと思ったらやっぱりここにいたんですね」

「美鈴か……あんたも墓参りか?」

「はい、そうですよ」

 

美鈴は俺の隣に座って、同じように手を合わせた。

こうやって二人きりになるのは何時ぶりだ?

 

「……三人とも、安らかに眠れてるかな」

「セリアさんは寝れてますよ」

「あの人……優しかったからな」

「無月さんとファングさんは分かりませんね。そもそも死んでないかもですし」

「……本当に、生きてると思うか?」

「遺体が見つかってないんです。あの二人ならきっと生きてますよ」

「そうだったら気まずいなんてもんじゃないぞ。墓まで建てたんだから」

 

目の前の墓には、セリアさんしか埋まってない。

他二人は死んだんじゃなくて、正確には行方不明。

状況的に死亡と判断されたが……

もし生きてるのなら、何処で何をしてるんだろうか。

 

「そういえば、パチュリー様が呼んでましたよ。何か用事があるみたいでした」

「そうなのか。悪いな、伝えて貰って」

「構いませんよ。ただ……」

 

美鈴が言葉を一度切った。

何かやってほしんだろうか。

 

「俺に何をして欲しいんだ?」

「いえ、難しい事じゃないですよ?

 

 

 ただ咲夜さんにもうナイフを刺さないで欲しいって説得して貰おうかなぁって」

「パチュリーさん、俺に何の用事なんだ?」

「ちょっと!無視しないでください!」

「居眠りするお前が100悪い。以上」

「そんな殺生な!?」

 

わざわざ聞いた俺が馬鹿だったよ。

 

ふと、冷たい風が一陣俺を突き抜けた。

何か嫌な予感を感じた。

まるで、過去が歩いて近付いてくるような……

 

「……気のせいか?」

 

俺は予感をそう切って捨てた。

捨ててしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

パチュリー視点

 

「パチュリーさん?来ましたよ」

「ああ誠斗。ありがとうわざわざ」

「いえ……それで用事って?」

「本を買いに行って欲しいのよ。香霖堂に魔導書をね」

「一週間前にもコアが行ってませんでした?」

「あの時手に入らなかった魔導書があるのよ。

 だから、もう一回見に行って欲しいの」

「それこそコアの仕事じゃ?」

「今コアには別の用事を頼んでるの。だからお願い」

 

私がそうお願いすると、誠斗は少し思案する様子を見せた。

少しして、返事を言った。

 

「分かりました。でも俺、香霖堂の場所は知りませんよ?」

「そこは大丈夫よ。そこで吊り下がってる魔法使いに案内させれば良いから」

 

私が指差す方には、足を吊られて宙吊りになってる魔理沙がいた。

それを見て誠斗は少し固まったけど、

すぐに魔理沙を降ろして案内を頼んでいた。

 

その後、二人が行ったタイミングを見計らってコアが出てきた。

 

「パチュリー様、行きましたか?」

「行ったわよ。それでコア、何か見つかった?」

「何も見つかりません……」

「ハァ……やっぱり自力で作るしかないかしら」

 

私は溜息を吐いた。

コアに探して貰ってたのは、内傷を癒す魔法だ。

回復魔法は、基本的に外傷を治すもの。

内傷が対象のものを、私は見た事がなかった。

これも、魔法使いがそう言うのとは無縁だった弊害かしら。

魔法使いだって病気には罹る。

実際私は喘息持ちだ。

でも、脳の負荷限界の傷は無縁と言って良い。

魔法使いが負荷限界を迎えた時は、死ぬか回復魔法で治癒した気になって寿命が縮むか。

 

「コア、回復魔法の魔導書を全部持ってきて。一から作るわよ」

「はい!」

 

コアは元気良く返事して奥へ走って行った。

誠斗の脳の傷、絶対に治してみせる。

私も、レミィも、もう理不尽に失うのは嫌だから。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

誠斗視点

 

「そろそろ香霖堂だぜ」

「降りる準備をするか」

 

魔法の森の入り口近く

一緒に飛んでいた魔理沙から到着を聞いた俺は降下準備を始めた。

 

魔理沙と一緒に降下した先には、一軒の建物が建っていた。

ここが香霖堂……

 

「こーりーん、いるかー」

 

魔理沙がドアを開けながら大声で叫ぶと、中から男性の声がした。

 

「そんな大声で叫ばなくても聞こえてるよ魔理沙」

「おーっすこーりん。来たぜ」

「何の用だい魔理沙?」

「いや、私じゃなくてこっちの誠斗がな」

 

魔理沙は俺を指差しながらそう言った。

それに店主は納得した様子だった。

 

「そうか。初めまして、ここの店主の森近霖之助だ」

「十六夜誠斗だ。今日はパチュリーさんの頼みで……」

「魔導書だね。取り敢えず中に入ろうか」

 

そう言って霖之助は店に入って行った。

俺と魔理沙もそれに続いた。

 

中は色々な物が置かれていた。

店内にはもう一人、金髪の少女がいた。

 

「あれ?アリスじゃねえか」

「あら魔理沙?久しぶり。そっちの人は?」

「外来人だぜ。一週間くらい前に来たんだ。昨日歓迎会やったんだけどな……」

「昨日は研究が忙しくて家から出てなかったの。

 初めまして、アリス・マーガトロイドよ」

「十六夜誠斗だ。よろしく」

「十六夜?ってことは咲夜の関係者?」

「兄妹だよ。実のな」

 

アリスは少し驚いたようにこっちを見た。

久しぶりにその反応をされた気がする。

 

「にしても……ほんとに色々あるな」

「こーりんが全部集めたらしいぜ」

「マジで?」

「本当にスゴイわよね」

 

俺達がそんな話をしていると、奥から霖之助が魔導書を数冊持ってきた。

 

「はい、これがこの一週間で新しく入った魔導書だよ」

「少し見せてくれ」

「どうぞ」

 

その後は、霖之助が持ってきた魔導書の吟味をしながら三人と他愛のない会話をして過ごした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

幻想郷・魔法の森

 

ブォン

 

「転移に成功。データを科学部門に送信」

「普通に行くんじゃ駄目だったんすか〜」

「仕方ないだろ、進んでも進んでも同じ道の繰り返しだったんだから」

 

Ghostの一人の愚痴に、Ghost1がそう反論した。

彼らは人工転移装置で、ここまで移動してきた。

理由は、Ghost1が言った通りだ。

 

「さて、改めて任務を再確認する。

 今回の内容は先日組織から脱退した殺し屋、コードネーム“(ウィンド)”の排除だ」

「ほんっと、上は何を考えてんだか」

「あいつって機密を漏らすような奴でしたっけ?」

「漏らさないと思うよ〜。ねえねえバックれようよ〜。やる気が起きない」

「……任務は任務だ」

 

Ghost1は、非情にもそう言い切った。

 

空気を変えようと、Ghost3が話題を変える。

 

「にしても薄暗いですね」

「光が届いていないようですね。それに魔力がかなり濃い」

「うわっ、装備がなきゃダウンっすよ……」

「……」

「Ghost4もそう思うっすよね?」

「……」

「Ghost4?」

 

隊の最年少━━Ghost6が反応がないGhost4を見て不思議がった。

寡黙ながらも、ある程度反応は返すのが彼女だからだ。

Ghost3がすぐに状態を確認した。

すると……

 

「駄目ですね、ダウンしてます」

「早えよ!もうちょっと耐えろ!」

「まあまあ〜、4ちゃんはこの中で一番耐性が低いんだからさ〜」

「Ghost2!お前はもっと緊張感を持て!」

「副隊長も、隊長にだけは言われたくないと思います」

 

Ghost1の発言に、Ghost3が容赦なく反論する。

一応上官なのだが……

この部隊の普段の空気が分かる。

 

「Ghost3、俺のセリフは俺自身を奮い立たせる目的の他にも、

 お前達に安心感を与えると言うちゃんとした目的があr「取り敢えず森から出よ〜」」

「そうっすね、じゃないとGhost4がやばい事になるかも」

「だよね〜3くんどっち行けば良い〜?」

「あっちですね。隊長も長話してないで行きますよ」

 

Ghost1の話はバッサリ切られ、全員森からの脱出にシフトした。

慣れたと言わんばかりの切り替えの速さである。

 

「…………」

「隊長、私はあなたの発言は良いと思ってますよ?」

「Ghost5、それはどのくらいだ」

「そうですね例えば……アドルフ・ヒトラーの演説ですかね」

「待て!それはどう言う事だ!」

「ははっ、戦意高揚にとても役立ってるって事ですよ」

「お前は例えが悪いんだ例えが」

 

最後まで部下に刺され続ける威厳も何もない隊長だった。




キャラ紹介
森近霖之助
種族:人間と妖怪のハーフ
能力:道具の用途と名前が判る程度の能力
二つ名:動かない古道具屋
魔法の森の入り口付近にある古道具屋「香霖堂」の店主。
魔理沙からは「こーりん」と愛称で呼ばれている。
元は魔理沙の実家の古道具屋でお世話になっていた。
収集癖があり、店に並んでいるのは基本彼が拾ってきた物。

アリス・マーガトロイド
種族:魔法使い
能力:人形を操る程度の能力
二つ名:七色の人形使い
魔法の森に住んでいる魔法使いの少女。
人形作りが得意。
人里でよく人形劇をやってるらしい。
魔理沙とは腐れ縁。

Ghost1
Ghostの隊長。
カッコつけたがり。だが本人曰く、仲間に安心感を与える為らしい。
誠斗を宿敵としてライバル視しているが、彼からはライバルとして認知されていない。

Ghost2
副隊長。間延びした口調が特徴のムードメーカー。
Ghost1と一番付き合いが長い。
真面目な時は真面目になる。
隊唯一の異能者。

Ghost3
ポイントマン。隊一の常識人。
先輩三名がムードメーカーだったり問題児だったりする苦労人。
勘がかなり良いらしい。

Ghost4
スナイパーで紅一点。寡黙だが、最低限の受け答えはする。
他のメンバーからは小動物のように可愛がられている。
末っ子ポジション。

Ghost5
哨戒役。だが、前に出る。
基本丁寧口調だが、かなりの毒舌家。
ブラックなネタも躊躇いなく吐く。
仲間への皮肉はジョークだったりするが、ターゲット相手だとマジで侮辱してる事も。
一応、陽動や撹乱などの戦術的目的はあるのだが……

Ghost6
隊の最年少。タンク。
戦闘能力は高いのだが……暗殺部隊であるGhostでは活かす任務の方が少ない為、留守番が多い。
年齢的には一番下だが、末っ子ポジが他にいる。
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