Re東方葬想録   作:KUS

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決着

ドンドン!と銃声が鳴り響く。

誠斗は飛んできた銃弾を刀で防ぎながら走っていた。

戦況は防戦一方。

状況は芳しくない。

 

「おい!逃げてばかりじゃ終わらねえぞ!」

「……」

「ダンマリか……いいぞ、見つけてやる」

 

戦場はいつのまにか平野から森に移っていた。

誠斗は数多ある木を隠れ蓑にしながら頭を回転させている。

この状況を打破する為に。

 

(どうするか……)

 

誠斗は思案しながら、先程被弾した左肩に触れる。

掠めただけだが、その部分はドス黒く変色していた。

 

(掠りだったから良かったが……それでも感覚が遠くなってる。いつまで持つかな)

 

誠斗は、自分の肩の状況をそう判断した。

 

Ghost1が使用している銃弾……DKH弾。

掠めただけでも、誠斗の肩の感覚が遠くなる代物。

身体に被弾すれば、急所でなくとも確実に御陀仏になる。

 

(それを……どう対処するか)

 

誠斗が考えを纏めようとした……その時、

 

「そこか!」

「!?ちぃっ!」

 

誠斗の僅かな息遣いを感じ取ったGhost1が誠斗のいた木を銃撃する。

誠斗は間一髪で避けると、Ghost1に向かって刀を振るった。

その一撃は頭に向かって振り下ろされ……

 

「……っ!」

 

ることはなかった。

誠斗が無理矢理刀を逸らしたにである。

刀はGhost1の左肩を切り裂く。

だが、同時に誠斗にとって大きな隙となった。

 

「そこだぁ!」

 

ドォーン!

 

「ガッ!?」

 

誠斗の左腕に銃弾が被弾する。

誠斗はなんとか倒れずに持ち堪えるも……

 

「アッ、ガアアアアアアアア!?」

 

誠斗を焼けるような激痛が襲った。

先程銃弾が掠めた時とは比べ物にならない痛みだ。

 

「ガハッ!?」

 

次に誠斗の身に起きたのは吐血だった。

口から少量とは言い難い量の血が飛び出てくる。

 

「はぁ…はぁ…」

「はぁ…はぁ…ちったは効いたか?」

 

Ghost1は痛みで体力を大きく奪われている誠斗にそう言う。

誠斗はGhost1を睨む事しかしない。

 

「また逸らしやがって。なら最初から狙うなってんだ」

「……俺は」

「どうせ「体が勝手にー」とでも言うんだろ?聞き飽きた」

「……」

 

図星を突かれて誠斗は黙りこくってしまう。

Ghost1は、お構いなしに話を続ける。

 

「どうしてお前に殺人衝動が顔を出すと思う?」

「……」

「弱いからだ。お前にはなんの信念もない」

「なんの……信念も……」

「ああそうだ。この世の中で人殺してる奴なんて……何かしらの目的がある。

何かを守りたい、ただ欲求を満たしたい、何かに殉じたい。

俺だって、俺らみたいな人間が生まれない社会を作りたいから汚れ仕事やってんだ。

なのにお前ときたら……小さい芯すらねえ」

「……っそんなことは」

「あるんだよ!てめえが殺し屋になった時から見てきた。お前は一度だって何かを語った事はねえ!

ターゲットも機械みたいに処理して、ただ仕事だからで全部終わらせる!

他の殺し屋どもみたいに金が欲しいって願望すらねえ!」

「っ……」

「お前が言ってた「普通に生きたい」って願いだってどうせ誰かの望みだろ?お前はそれを写してるだけ。

やってる事はただ先輩のノート写させてもらうだけで自分なりに纏めようとしないのと一緒だ!」

「っ……!」

 

誠斗はその言葉を聞いた瞬間、無意識に銃を抜いた。

だが、Ghost1の方が早かった。

弾丸が誠斗の左肩を掠める。

掠めただけだが、激痛に襲われている誠斗には追い討ちだ。

誠斗が痛みに呻きながら肩を抑えた。

 

「何の信念もない……これなら、シリアルキラーや狂信者と戦った方がマシだな」

「…………」

(俺は……)

 

『誠斗くん……普通に生きて……お嬢様達と……紅魔館の皆んなで……』

 

誠斗の脳裏に過ったのは、あの人が最期に遺した言葉だった。

確かに自分は、写しただけかもしれないと自嘲する。

 

結局……紅魔館の皆んなと生きていくという願いは果たせなかった。

普通に生きる事も出来なかった。

 

(俺って……何なんだろうな)

 

誠斗は自問自答するが、答えはでない。

 

「またダンマリか。もう付き合う暇はない」

 

Ghostは銃口を向ける。

照準は誠斗の頭に合わせられていた。

不思議と誠斗の中には恐怖も悲しみもなかった。

あったのは……ただの諦観。

 

(罰かな……これまで殺してきたツケだ)

(行く先は……地獄かな。俺が天国に行ける訳ない)

(……閻魔様は、死者の願いを一つくらい聞いてくれるかな)

(聞いてくれるなら……あの人に謝らないと)

(俺のせいで……あの人は死んだ。なのに……最期の約束も果たせなかったんだから)

 

銃口から弾丸が発射される。

誠斗は目を瞑った。

まるで、最期を受け入れるかのように。

 

 

 

 

 

だが……

 

『お兄ちゃん?』

『誠斗?』

 

次の瞬間、誠斗は転がって銃弾を回避していた。

 

「?」

(何でだ……何で死のうとしてたんだよ)

「まだやる気か」

(咲夜を……一人にする気か?レミリア様達に……また喪わせる気か?)

 

『誠斗?』

 

(あいつらに……喪失感を味合わせる気か?十六夜誠斗……)

(ここで死んだら……もう会えねえだろ)

「まだやるってんなら相手になってやる」

(信念……俺の信念は……作るなら……)

 

誠斗が顔を上げる。

Ghost1は思わず感心の声を出してしまった。

その顔は、さっきよりも明らかに違っていた。

 

「……随分スッキリした顔になったじゃないか」

「ああ、吹っ切れた」

「そいつは何より。それで、答えは?」

「ああ、答えは……」

 

次の瞬間、誠斗は腕の銃創に自身の銃を当て……引き金を引いた。

 

「!?」

「こうすれば……諸悪の根源は摘出出来るだろ?」

「銃弾を銃弾を使って摘出したってのか!?何ちゅう荒技を……いや、そもそも博打がすぎるだろ!?」

「Ghost1……決めたよ」

「なんだ?」

「答えは簡単だ。俺は、この非日常で溢れた場所での日常を守る……それだけだ」

「はっ、はは、良いじゃねえの。ならこいつはいらねえな」

 

Ghost1は銃を放り投げると、ナイフを取り出す。

誠斗も、無事な右腕で愛刀を構える。

 

「お互い満身創痍」

「ああ、勝負は一回だ」

 

二人が意識を集中し始める。

その瞬間、音が消え去った。

 

……一瞬、一陣の風が吹く。

その風に揺られて、木の葉が落ちた瞬間……

 

「「!」」

 

二人が交差した。

 

「…………」

「……ガフッ」

 

Ghost1が、胴体から出血しながら倒れる。

勝負は決まった。

 

「はは……俺は……お前みたいな……ライバルに会えて……嬉しかったよ」

「誰が……ライバルだ……」

「はは……細かい事は……気にするな」

「……」

「十六夜誠斗」

「なんだ」

「この先どんな事が待ち受けているか知らんが……精々……それを貫き通せ」

「わかってるさ」

「そうかい」

 

Ghost1はその言葉を最後に意識を失った。

誠斗はそれを確認すると、自身も倒れた。

 

「終わった……か……ガフッ!?」

 

誠斗が再び吐血した。

銃弾は摘出した筈なのだが。

 

「くそ……破片がまだ……」

「面倒ですよね。その弾」

「!?」

 

誠斗が声のした方に顔を向ける。

そこにいたのは、Ghost1と同じ格好の特殊部隊員……Ghost5だ。

 

「あ、安心してください。私は隊長を回収しにきただけですので」

「……」

「あらら警戒されてますね」

「当たり前だ。お前は……掴みどころがなさすぎるんだよ」

「ははは、ええ、自分でもそう思います。それでは今日はこれにて」

「他の連中はどうすんだよ」

 

Ghost1を抱えたGhost5に誠斗は問いかける。

 

「他の3人でしたら、Ghost4が回収してますね」

「相変わらずの手際だ」

「それはありがとうございます。そうですね……隊長の我儘に付き合ってもらった訳ですので……今度歴史講習をしてあげます。私、歴史は得意なので」

「遠慮しとく」

「あらら、残念。さながら気分は日本で布教に失敗した宣教師です」

「おい、何企んでやがった」

「ははは、それではさようなら(ウィンド)いえ、十六夜誠斗。貴方の人生に幸あらん事を」

 

そう言ってGhost5は姿を消した。

ステルス迷彩を起動したのだろう。

 

(これで本当に終わりだな。なんだが……)

(体が動かん)

 

誠斗の体は、ピクリとも動かなかった。

左腕に至っては何の感覚もしない。

 

「こりゃダメだな。切断か?」

「なーにが切断よ。五体満足の癖に」

「霊夢……いたのか」

「今着いたとこ」

 

誠斗の側に、霊夢が着地してきた。

咲夜はアリスに預けて永遠亭に行かせ、自分は誠斗の回収に来たのだ。

 

「それで……元気そうね」

「元気に見えるか?」

「冗談に決まって…………」

 

霊夢の目に、誠斗の腕が映る。

服でわかりにくいが、血で染まっており。

さらに、手が黒く変色しているのだ。

 

「ちょっ……あんたこれ!?」

「はは……だから言ったんだ。切断だなって」

「笑い事じゃないわよ!ほら、永遠亭に行くわよ。永琳なら大抵の事はどうにでもなるから」

「だと良いんだg…ガフッ」

「ちょっ……血まで吐くんじゃないわよ!」

 

霊夢は文句を言いながらも誠斗を担ぐ。

誠斗はその背中に、安心感を覚えていた。

 

「あったかい」

「はぁ!?急に何!?」

「いや……そのまんまの意味」

「ああ……取り敢えず、行くわよ」

「あと良い匂いする」

「前言撤回するわ。歩いて行きなさい」

「待て霊夢。俺が悪かった」

 

誠斗から即座に謝罪の言葉が出てくる。

霊夢は、誠斗からこれまで感じていた暗さが消えているのに気が付いた。

 

「はぁ……今回だけよ」

「それはどう言う意味で?」

「ゆ・る・す・の・はって意味よ!」

 

霊夢は怒りながらも誠斗を抱えて空を飛んだ。

その顔は、心無しか楽しそうだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「くそっ!報告はまだか!」

 

とある執務室と思わしき部屋で、男はイラついていた。

 

コードネーム:ダスト

 

Ghostに指令を出し、誠斗の抹殺を図ろうとしたFIAの幹部だ。

 

「何が作戦成功率93%だ。たかが一人殺すのにこうも時間がかかるとは」

「そのたかが一人に執着しすぎなのよ。貴方は」

「!?」

 

部屋に、一人の女性が入ってくる。

年は30代後半だろうか。

片目は瞑っており、もう片腕も義手だ。

若そうに見えて、その顔からは確かな経験を感じる。

 

「リリスか。何のようだ」

「貴方の独断専行についてよ」

「何?」

「貴方、Ghostを勝手に動かしたでしょ。困るのよ。勝手に正規戦力を動かされちゃ」

 

リリスは明らかにイラついていた。

だが、そのイラつきは数少ない正規戦力を勝手に動かした事に対して向けられていたわけではなかった。

 

「なんだ?お気に入りを殺されそうになった事がそんなに気に食わないか?」

「…………」

「図星だな?諦めろ。奴は機密漏洩を……」

「あのさ。私の異能のこと知ってて言ってる?」

 

リリスの異能……絶対遵守(アドヒアランス)

対象との間に契約をリリス本人が交わすと、対象はその契約に違反する事は出来なくなる。

その強制力はリリスが死ぬか対象が死ぬかまで続く強力なものだ。

その代わり、使う度にリリス本人にも強い制約を課す諸刃の剣だが。

 

「ふん、だから何だというんだ」

「……」

「貴様の事だ。契約を結んだフリをして実際は何も縛りなし。なんて事があってもおかしくない。つまりだ。貴様の言葉は信用できn「ああだここうだうるさいな。ダスト」何だと!」

 

ダストのセリフを無理矢理断ち切るリリス。

その目に浮かんでいたのは、侮蔑の感情だった。

 

「貴方最近……誰かと連んでるって聞いたんだけど」

「なっ……なぜそれを……」

「まだ聞いたってだけなのに、自白ありがとう」

「!?」

「まったく……まさかうちにも膿がいたとは」

 

ダストの顔から段々と血の気が引いていく。

自ら墓穴を掘ってしまったのだ。

 

チャキ

「ま、待てリリス。そうだ、金をやろう。いくら欲しい?」

「ダスト、指定テロ団体ジェネシス。彼らとの共謀の罪で逮捕状が出てるの。

選ばせて上げる。大人しく吐くか。公安に連れてかれるか」

「っ……!?」

「どうする?公安なら拷問三昧よ?勿論受ける側でね」

「このっ……クソ女!」

 

ダストが怒り狂いながらリリスに向かって発砲する。

 

「貴様や公安の連中みたいなのがっ!この社会を壊すのだ!だから……ジェネシスが!」

「聞き飽きた」

 

パアンという乾いた銃声と共に、ダストの頭に赤い花火が咲いた。

 

「社会を壊す?壊してるのはあんたらみたいな人間。それを都合良く忘れて……良くこんな口上が出てくるわ」

 

リリスはそう吐き捨てると、どこかへ通信を繋いだ。

 

「ええ私よ。ダストは始末したわ。情報?あの様子じゃ喋らないわよ。それなら死人が出る前に、わかるでしょ?」

『…………』

「わかってるから。後処理は任せるわ」

 

そう言ってリリスは通信を切った。

 

「……誠斗くん……好きに生きれるようになった?」

 

そう呟いて、部屋を後にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ…はぁ…」

 

幻想郷

森の中を、玉藻前は息も絶え絶えに歩いていた。

 

「クソ……妖力が足りない……ここまでか?」

「まだだ。せめてあのお方の役に……少しでも」

 

すると、近くの草むらから音が鳴った。

 

「っ!?誰だ!」

 

ガサッ

 

「!?お前は!?」

 

草むらから出てきた誰かに、玉藻前は驚く。

この場にはいない筈の……顔見知りだったからだ。

 

「なぜ幻想郷に……あのお方はどうした……」

「〜〜〜〜」

「……そうか」

「〜〜〜〜」

「お前に頼みがある。私を喰らえ」

「!?」

 

誰かは驚愕していた。

友人から自分を食えと言われたら、誰だってそうなるだろう。

 

「私の妖力はもう尽きた。回復の兆しもない。もうここまでのようだ……」

「〜〜〜〜」

「そうだ。お前なら、糧に出来るだろう?」

「…………(コクリ)」

「……さあ、食え」

「最期に一つだけ」

「?」

 

誰かは玉藻前に何かを言い残すつもるのようだった。

 

「〜〜様から、「最高だった」」

「!?」

「じゃあ……ね」

 

そう言って誰かは、玉藻前の首筋に噛みついた。

肉を齧り取られる感触を感じながら玉藻前は……

 

(ようやく……あのお方に認められた)

 

ただただ、認められた事への歓喜があった。

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