Re東方葬想録   作:KUS

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エピローグ

幻想郷、とある森。

紫はその中を一人で歩いていた。

かなり深くまで入ってきているのか、

時刻は昼ながら辺りは夜の如く真っ暗だ。

 

紫が歩いていると、前方に結界らしきものが見えた。

どうやら目的地はそこらしく、紫は結界の前で足を止める。

 

「結花、いる?」

 

紫が結界に向かって話しかけた。

どうやら内側に誰かいるらしい。

 

「…………寝てるのかしら」

「失敬。起きてるわよ」

 

紫の言葉に返事がようやく返ってきた。

すると、結界の中にうっすらと女性の姿が見えた。

 

「何のよう?」

「あら?世間話は嫌いだったかしら」

「そういう訳じゃないけど……まあいいわ。それで?」

「幻想郷に、新しい住人が来たわよ」

 

紫が最初に出した話題は、誠斗の事だった。

だが、女性……結花のその事への反応は薄かった。

 

「紫がわざわざ来るってことは外来人なんだろうけど……はっきり言うなら興味ないわ」

「知ってる。貴方って赤の他人には辛辣だもの。いや、無関心と言うべきかしら」

「一々解説しなくていい。不快」

「あら、ごめんなさい」

 

紫の飄々とした態度に、若干の苛立ちを覚える結花。

 

「私を苛立たせたいだけなら帰って」

「あら、じゃあこの話題なら興味を持ってくれる?」

「?」

 

紫の言葉に、結花は頭に疑問符が浮かんだ。

彼女の知り合いと言える存在は、幻想郷では数少ない。

お互いに一方的でしか知らない者もいるのだ。

そんな彼女の興味を引く話題……

 

「玉藻前が死んだわ」

「……そう」

「あら、あまり驚かないのね」

「前に会い来たの。一目で分かるくらい妖力が枯渇してた。回復の兆候すら見えない。嫌でも分かる」

「6年前の傷が原因ね」

「吸血鬼異変……だったっけ。玉藻がそれだけの重傷を負うなんて、相手はどんな化け物だったんだか」

 

結花は一人で納得したようだった。

それを見て紫も切り上げ時かと考える。

 

「それじゃあ、近況報告はおしまい。結花は変わった事ある?」

「ない。良くも悪くも」

「そう……それじゃあ、いつになるか分からないけれど、また」

 

紫はそう言って、その場を去ろうとした。

 

「一ついい?」

「何かしら?」

「あの子の、死に様を知りたくて」

「……喰われたわよ。これだけで結花なら分かるでしょ」

 

紫はそう言って、スキマの中に消えていった。

 

「…………喰われた、か。玉藻がその辺の妖怪に喰われるわけないし……じゃあ“あいつ”かな」

「わざわざ食いにきたのか、それとも……」

 

 

「私を探してるのかな?お兄ちゃんの命令で」

 

結花はそう、呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ん?ここは……」

 

誠斗がゆっくりと目を開けた。

そこは、見慣れてはないが知っている天井だった。

 

「永遠亭か……体が痛い」

 

誠斗が適当に体をほぐし始めると、ガシャンと何かが割れる音が聞こえた。

 

「せ、誠斗さん?」

「鈴仙か?おはよう。何か落としたか?」

「誠斗さん、ちょっと動かないで待っててくださいね?お師匠様ー!誠斗さん起きました!」

 

鈴仙は大声で永琳を呼びに行った。

誠斗は、言われた通り大人しくしていた。

 

少しして、永琳が病室にやってきて診察を始めた。

 

「……特に異常はないわね。後遺症もなしと」

「なあ永琳。俺ってどれくらい寝てた?」

「察しが良いわね。自分が長い間寝てたって気付くとは。3日よ」

「…………マジで?」

「大マジよ。貴方が一番重傷だったんだから」

「まあ……だろうな」

「運ばれてきた時は驚いたわ。何せ腕が黒く変色してるんだもの。詳しく診てみたら、神経は焼き切れてるわ、細胞は大部分が壊死してるわ、血管は……」

「辞めてくれ。知ってるのに吐き気がしてきた」

「あらごめんなさい」

 

永琳に自分の症状を詳細に言われて、誠斗は若干吐き気がした。

それだけDKH弾が恐ろしい代物だと、再確認した。

 

「さて……そろそろレミリア達が来るから、今後の事はそこでね」

「……心配、かけちまったか」

「ええ、かけてたわね。レミリアなんか見た事ないくらい焦ってたわ。パチュリーも、顔に出てないだけで動揺が目に見えたし」

「……土下座の準備しとくか」

 

誠斗は、そんなことを考えたのだった。

 

一時間後、レミリアが咲夜と一緒に永遠亭に到着した。

一緒に霊夢までいた。

なんでも途中で偶然会ったらしい。

 

「誠斗〜……心配かけさせないでよ〜」

「本当にね」

「咲夜なんか焦りと大泣きで酷いことになってたんだから〜」

「ちょ、お嬢様?!」

 

病室に入ってすぐ、レミリアは誠斗に抱きついていた。

普段の威厳ある姿はどこへやらだが、見慣れている霊夢と咲夜は特に反応しなかった。

困惑しているのは、カリスマと威厳がある姿しか見たことない誠斗だけだった。

 

「あの……心配かけてすいませんでした」

「本当よ。もう無茶は禁物。これ命令ね」

「…………善処します」

「そこは「はい!」って言いなさいよ!」

「誠斗……また無茶する気?」

「お兄ちゃん?」

 

レミリアの命令に善処しか言えない誠斗に、霊夢と咲夜が圧をかける。

それに対して誠斗の反応は……

 

「もう無茶する機会はないですよ。一人じゃないんですから」

「それは!これまでも!今回も!一緒なのよ!誠斗には前科があるんだからね!」

 

主に吸血鬼異変とか吸血鬼異変とか吸血鬼異変とか…………

レミリアのひたすらの連呼に、誠斗は何も言い返せなかった。

どうやら火にかけたのは水ではなく油だったようだ。

 

「咲夜ー、1ヶ月誠斗の好物献立から削除!」

「!?」

「お嬢様、それには一つ問題が。パチュリー様とお兄ちゃんの好物は結構被りがあります」

「そうだった!?この子の好物、割と健康志向なラインナップだった!?」

「そこで提案が……しばらく生野菜だけと言うのはどうでしょう?」

「咲夜ぁ……ちょっとそれはお兄ちゃんキツいかなぁ」

「お兄ちゃんに意見する権利はないわよ?」

「マジか……」

 

そんな漫才みたいなやり取りをしていると……永琳が病室に入ってきた。

 

「お揃いみたいね」

「永琳、誠斗の状態はどうなの?」

「そうね。心して聞きなさい。」

「「「ゴクリ」」」

「それを口に出す奴は初めて見たよ」

 

割と余裕だな?と誠斗は思わずにはいられなかった。

永琳が、ゆっくりと口を開く。

 

「まず、一番重傷だった腕ね」

「黒く変色してたわね」

「診てみたけど、銃創を中心に神経は焼き切れて、細胞も壊死してる。おまけに血管まで破裂してる。筋肉にも損傷があったから、一歩遅れれば断裂してたかもね」

「どうすればそうなるのよ」

「お兄ちゃんは大丈夫なの?」

 

永琳が誠斗の腕の状態を羅列すると、レミリアや咲夜からは心配の声が上がった。

永琳はそれにゆっくりと答える。

 

「一応、私の方で処置はしたから、安静にしてれば元通りに動かせるようになるわ」

「そう……良かった」

「ただ……私じゃなかったらどうなってたかしらね」

「「!?」」

 

永琳の言葉に、レミリアと咲夜は驚愕の表情を浮かべた。

永琳以外が処置をしたら……そういう想定が頭を過ったのだ。

 

「普通の銃で撃たれただけじゃこうはならない。一体何を撃ち込まれたの?」

「…………言っていいやつか?」

「構わないわよ。貴方達の前で言うのは違うと思うけど、興味があるの」

 

永琳がそう言うと、誠斗も口を開く。

 

「俺も詳しい原理は知らん。DKH弾。小口径の銃弾で、人間を確実に殺す為に作られた銃弾だ」

「小口径……その弾が主に装填されるのは?」

「ハンドガンだ。まあ、ホローポイント弾と同じ設計だとは聞いたことがある」

「なるほどね。体内に残留して、体内を破壊する……殺意が高い代物ね」

「あんた、良く無事だったわね」

 

霊夢が思わずそう口に出した。

実際、霊夢は誠斗が吐血したのを見ている。

 

「早めに弾丸を摘出したお陰だな。こいつの主な用途は逃走している相手を確実に始末する事。死を免れる手段は早めの弾丸摘出だけ。それでも、後遺症は普通に残る」

「永琳じゃなきゃ、本当にやばかったのね」

 

霊夢が末恐ろしそうに言う。

 

「取り敢えず、さっき言った通り安静にすること。日常生活は問題ないけど、くれぐれも激しい動きはしないように」

「どれくらい安静にしてればいい?」

「最低半月。定期検診するから、1週間おきに来て」

「了解」

 

誠斗はそう返事をした。

その後、退院手続きをして、永遠亭を出た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

紅魔館への帰り道。

四人は雑談をしながら歩いていた。

飛ぶ案もあったが、誠斗に負担をかけたくないと却下になった。

話の中で、レミリアがふと思い出したかのようにある言葉を出す。

 

「そう言えば、誠斗への罰の話なんだけど」

「終わってなかったんですか……」

「当然よ。私に心配かけさせたんだから」

「お兄ちゃん……大事にされてる自覚持とう?」

「持ったつもりなんだが」

「う〜……何させよう」

「それなら良い案があるわよ」

 

レミリアが悩んでいると、突然スキマが開き、紫が顔を出した。

 

「げっ、紫」

「げっは酷いわよ霊夢」

「紫……何のようだ?」

「ふふ、レミリアが何か悩んでいるから、私からも案を出そうかと思ってね」

「俺に味方はいないのか……」

 

誠斗がガックリ項垂れているのをスルーして、紫はレミリアの方を向いた。

 

「それで?どんな案なの?」

「ふふふ、単純よ。霊夢の世話よ」

「はぁ?」

「はい!?」

「ふ〜ん」

「?」

 

紫の提案に、霊夢は若干キレ、咲夜は動揺し、レミリアは納得するような反応を見せ、誠斗はそれの何処が罰なんだろうかと思っていた。

 

「霊夢って、生活スタイルが、ね」

「なるほど……確かに良いかも」

「ちょっと待って下さいお嬢様!?嫌ですよ私!?」

「あら何が嫌なの?」

「だってそんな事になったら……

 

お兄ちゃんが霊夢に取られるかもしれないじゃないですか」

「ちょっと黙ってなさいこのブラコン」

 

咲夜の訴えに、霊夢は容赦なく手刀を入れた。

比喩的にも、物理的にも。

気絶した咲夜は誠斗が受け止めた。

 

「でも、あまり腕を酷使するなって永琳は言ってたのよね……」

「それなら問題ないわ。誠斗がやるのは最低限。後は霊夢に覚えて貰えば良いのよ」

「なるほど」

「なんか、勝手に話が進んでないか?」

「当事者を無視してね」

 

紫とレミリアの会話が、段々と保護者会議にしか見えなくなってきた中、誠斗と霊夢はそう呟いた。

その後も、トントン拍子で話は進み……誠斗の博麗神社行きが決定した。

咲夜は最後まで否を叫んでいたらしい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はい……」

「いや、はいじゃないが」

「どうでも良いでしょ?取り敢えず、寝床を作るから」

「布団はどうするんだ?」

「蔵に確かあった筈だから、引っ張り出してくるのよ。あんたは大人しくしてなさい」

 

そう言って霊夢は、蔵に向かって行った。

誠斗は、言われた通り大人しくする為に縁側に座る。

 

ふと、誠斗は空を見上げた。

もう日は傾いており、オレンジ色が広がっている。

 

「やっぱ、空は夕焼けが一番綺麗だな」

「な〜に黄昏れてんのよ」

「早かったな」

「以外とあっさり見つかったのよ。ほら中に入るわよ。夕飯作らないと」

「へいへい。一応、生活スタイルは見るからな」

「分かってるわよ」

「分かってるならよし」

 

誠斗はそう言って中に入ろうとする。

霊夢はそれを見ながら、誠斗を引き止めた。

 

「誠斗」

「どうした?なんか気になるか?」

「別に、ただ……」

 

 

 

「よろしくね。これから」

「そうだな。よろしく」

 

お互いに、微笑みながらそう言った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

中東・イスラエル・レバノン国境付近

 

「……」

「بمیر(死ね)!」

 

一人の男が、荒野に立ち尽くす軍服姿の男に銃弾を放った。

その銃弾は、男に命中する。

だが、男は倒れるどころか血すら流さない。

 

「…………」

「چ-چه هیولایی...(ば、化け物が……)」

「死ね」

 

男が反撃で放った銃弾が、イスラム系と思わしき男の頭を貫いた。

当然、即死だった。

 

「……終わりか?」

『隊長?こちらは済みました』

「柊か。こっちも終わったところだ」

『多いですね。どっから湧いて来たんでしょうか』

「知らん。それを調べるのは上の仕事だ。俺達はただ、湧いて出てくる害虫をを駆除すれば良い」

『了解です。自分はハーバー中尉と合流しますので、隊長も』

「了解した」

『そう言えばなんですが……最近、テロリストが捕まったらしいですよ。ポーランドで』

「ジェネシスか?」

『上はそう睨んでるようですね。しかもビックリ。その捕まった奴。日本人らしいですよ』

「珍しいな」

『珍しいですね。今はワルシャワの収容所にいるみたいです』

「俺達には関係ないな」

『そう言えば、一つ噂が流れてるんですが』

「?」

『件の日本人、冤罪なんじゃないかって。だから上も慎重なんだって。まあ貴重な情報源だから慎重なんだと思いますけど』

「まあその話はいい。害虫の巣を見つけた」

『早いですね。合流は遅れそうですが。助けはいらないですか?』

「いらん」

『了解です』

「あと……その日本人。名前は?」

『隊長がテロリストに興味を持つとは意外ですね』

「良いから言え」

『河野光。それが件の日本人の名前です』

「そうか」

 

そう言って、男は通信を切った。

その後、近くの廃墟から叫び声が聞こえた。




今回で、東方葬想録第一部完結になります。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
第二部についてですが、幻想郷中心だった第一部に比べて、外の世界中心になる予定です。
主人公も増えます(誠斗は続投)ので、新しい小説として投稿するつもりです。
タイトル自体は変わらず、第二部と付くだけなので、第二部も良ければ読んで頂ければ嬉しいです。
ここまでご愛読、ありがとうございました。
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