その間の箸休めです。
時系列は第一部エピローグから数日後
「zzz……」
「──夢」
「zzz」
「霊夢、起きろ」
「んー……後1時間……」
「寝すぎだ起きろ。飯が冷める」
朝8時の博麗神社。
ここで居候を始めた誠斗は、未だに起きない同居人を起こしていた。
だが……全然起きない。
「……」
「zzz」
「……(^ω^#)」
起きる気配のない霊夢。
誠斗は最早半ギレの状態である。
「スヤスヤ」
「……」ゲシッ
「うぅん……」
「……」ゲシゲシ
「うんん……何なのよ……」
こうなったら強硬手段だ。
と言わんばかりに霊夢を足蹴にする誠斗。
それでも起き上がる気配なし。
遂に誠斗は霊夢の布団を剥がした。
「ちょっ!?」
「起~き~ろ~」
「ヒエッ」
布団を剥がされたことでようやく起き上がった霊夢だが……
目の前にあった笑顔のまま怒気が漏れ出ている誠斗に軽く悲鳴を上げた。
「女子の布団を問答無用で剝がすなんて何考えてんのよ……」
「ほう?まだ反論する余裕があるようだな?」
「ごめんなさい。何でもありません」
まさに瞬殺。
誠斗の暗黒微笑(仮)を見て霊夢はあっさり撃沈した。
今の誠斗は顔だけ見るなら完全に笑っているのに、対面してみると全然笑ってないのが直接伝わってくるのである。
博麗の巫女を恐怖させるとは……
「……」
「……ねぇ」
「どうした?」
「今日はどうするの」
「特に決めてない」
「そう……」
「……」
「……」
会話が続かない。
霊夢の今の心境だ。
朝の負い目もあるが……話題が出てこない。
後異性への対応も……
霊夢の周りは女性ばかり。
親しい異性と言ったら霖之助くらい。
後は赤の他人で、関係があってもビジネスライクか、敵か、客と店の関係か……
つまり……人間で年も近い親しい異性と何を会話したらいいかわからないのである。
昔話でも聞くかと思ったはいいものの……
トラウマと思わしきものを軽々しく聞くのも……という思いもある。
「ね、ねぇ誠斗」
「今度はどうした?」
「あんた、咲夜にどんな訓練つけたの?」
精一杯絞り出した話題がそれだった。
先日の玉藻前との戦い。
そこで咲夜は誠斗と同じ力を使った。
咲夜の能力の用途は時間停止か、時間の加速か、空間の拡張か。
それ以外の用途で使用することが少ないらしい。
本質的には、時空を自由自在に操れるとんでもない能力なのだが……
「別に、ひたすらやらせただけ」
「えっ、それだけ?」
「それだけ。理論をこねくり回すより、ずっと効率的だ」
「そう……」
「霊夢は能力はどう鍛えたんだ?」
「あまり修行してないけど……ある程度は使えたわね」
「天才肌ってやつか」
誠斗はほぉっと納得してる様子だった。
「そういう誠斗は?」
「吸血鬼異変で使い倒した。その結果がこれだが」
誠斗が自分の頭を軽く小突く。
そういえばこいつ脳が損傷してたな、と霊夢は思った。
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「……」
朝食後、食器を片付けた俺は居間で横になっていた。
ぶっちゃけ、やることがない。
「暇だ……ん?」
ふと、棚の上に倒された写真立てを見つけた。
これまで特に気にしていなかったから気付かなかったが……
気になった俺は写真立てを手に取った。
幻想郷にもカメラはあるんだな。
写真はモノクロ。
まあ現代の物があまり流れてこない都合上、古いカメラくらいしかないんだろうが……
写っているのは三人。
巫女服を着た、大人の女性。
一般的な巫女服を着た少女。
女性に抱えられた幼い女の子。
「あっ、それ」
「!?」
「あっと……驚かせた?」
後ろにいたのは霊夢だ。
「悪い。勝手に見て」
「大丈夫、隠してる訳じゃないし」
「その写真の人達は?」
「抱えられてるのが私。後はお母さんと、お姉ちゃん」
「へぇ……」
霊夢って姉がいたんだな。
「この人達は今何を?」
「亡くなったわよ。2人とも」
「……悪い」
「一々謝らなくて大丈夫なのに」
謝るよそら。
霊夢は俺の過去を聞いてこない。
なのに俺は何も考えずにズカズカと踏み込んだんだから。
「あんたの考えてること、大体わかるわよ?本当に気にしてないから」
「……気を遣わせて悪い」
「あんたは謝らないと死ぬ病なの?」
霊夢の呆れたような言葉が、俺に刺さった。
申し訳ない……
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人里
「ふむ……」
「んー……」
「何か食いたい物はあるか?」
「何でも」
「好物とかないのかお前は」
「んー考えたことない。しいていうならお酒」
「未成年が飲むな未成年が」
「幻想郷では常識に囚われてはいけないのよ?」
「限度があるだろ限度が」
はぁ……ここじゃ当たり前なんだろうが、外の世界出身の俺からしたらな。
まだ適応しきれてないみたいだ。
「じゃあ……適当に買って帰るか」
「そうしましょ」
そうと決まったら、何か買おう。
あと昼飯と夕飯のメニューも……
「おっ、誠斗と霊夢じゃねえか」
「魔理沙か」
「買い物か?」
「そうだけど、あんたは?」
「私?私は鈴奈庵に用事があってな」
「魔導書でも入荷したのか?」
「らしいぜ……ってよく分かったな?」
「パチュリーさんとコアからお前の所業は聞いてるぞ?」
「あ、あはは……」
じろりと魔理沙を見ると、魔理沙は乾いた笑い声を出しながら目をそらした。
「ま、まぁ……2人は、その……ごゆっくり……」
「まあ待て魔理沙。俺も丁度鈴奈庵に用があったんだよ」
後で霊夢から、「あんたって笑いながら怒るタイプなのね」と言われた。
解せぬ。
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「小鈴ー、いるかー?」
「あっ、誠斗さん。お久しぶりです。どうしたんですか?」
「本を探してるんだ」
「どんな本ですか?」
「霊術関連のやつ」
「は~い。少し待っててくださいね」
小鈴はそう言って店の奥に探しに行った。
「誠斗~鈴奈庵に本当に用事があったのかよ~」
「なんだ?俺が説教のためにそう言ったとでも?この件についてはお前の運が悪いだけだ」
「まぁ……自業自得よ」
「(´・ω・`)」
「それはそれとして、あんたって霊術使えんの?」
「あんま。美鈴が習った簡単な気術くらい」
「あれ?誠斗って魔法使ってなかったっけか。人間は霊力か魔力のどっちかしか持てない筈……」
「魔理沙、何事にも例外はいるのよ。極稀に、両方持って生まれる人間がいるの。その逆も然り」
「つまり誠斗は……その極稀ってことか?」
「そうなるな」
魔理沙が「マジかよ」と呟いた。
まぁ……俺は変なところばっか恵まれてるよ。
これしかり、殺人の才能しかり、
人間関係にも恵まれてるんだけど……
「誠斗さ~ん。一杯ありますけどどれにします?」
「どうするか……」
「全部買ったらどうだ?」
「それか私が修行付けてあげましょうか?」
「うーむ……この式神術のやつと……結界術のやつ頼む」
「はーい」
買った後、妙に霊夢が不服そうだったが……
結界はともかく式神は使えるのか?って純粋に聞いたら黙ってしまった。
その後、タイキックを食らった……解せぬ。
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「……」
「よう、久しぶりだな。紅」
「……」
「なんか言えよ。相変わらず無口だなてめえは。白の野郎を見習ったらどうだ?」
深夜の森の中
そこに2人の人?影があった。
一人は角が生えている長身の女性。
もう一人は黒づくめの装束を纏った赤髪の青年
当然、2人とも人間ではない。
「全くよう……玉藻前はへまして死ぬわ、お嬢は見つからないわで……玉藻前の味はどうだった?」
「……」
「まっ、私は絶対食わねえがな。ははっ……!?」
ヘラヘラと笑っていた女性の首元に、鎌が向けられていた。
紅と呼ばれた青年のものだ。
「死にたいの?」
「ま、待て。私が悪かった……」
「はぁ……相変わらずあんたは紅を怒らせるのが得意ね。温厚なそいつを常習的に怒らせる方法を聞きたいわ」
「おい、文句言うなら助けろ蛇帯」
「あんたが100悪いでしょうが」
木の影から出てきたのは髪の先が蛇のような形状をした女性だ。
名前は蛇帯というらしい。
「いやはや、相変わらずだね2人とも」
もう一人、三人の頭上から現れた。
人間と変わらない容姿だが、身体からは妖力が溢れていた。
「……」
「紅、何も仲間割れをしに集めたんじゃないんだろう?
ここは一旦武器を下ろしてやろうじゃないか」
「……」
男性の言葉に、紅は鎌をそっと下した。
「大嶽、君も少しは言葉遣いをね」
「わかってらぁ……刑部殿」
「ならよし。では、どういった招集なんだね紅?」
刑部と呼ばれた男は、紅に本題を聞いた。
「一つ、玉藻前が死んだ」
「そうか、限界だったか」
「人間に手傷を負わされた上、力を失うとは、間抜けだな」
「大嶽、君はいい加減に言葉を慎みたまえ」
「それで、他は?」
話を進めるべく蛇帯が質問を飛ばす。
「主様から命令」
「「「!?」」」
「結花様を見つけて連れていく。それだけ」
「はは、見つかれば苦労しないっての」
「どうするの?」
「まぁ……十中八九八雲紫や摩多羅隠岐奈が隠しておるだろうしな」
「……主様曰く、近々幻想郷で異変が起きる。それも大規模な」
「また仕込みか?」
「運命って言ってた。それが異変を呼び寄せるって」
「抽象的すぎる……」
「まぁ、ようはその異変で守りが強くなった地点を探すということだろう」
「それだけ。俺も捜索には参加する。それまで、各々好きにしていい」
そう言って紅は姿を消した。
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「まさか、内部に不穏分子がいたとはな」
『はい、しかもFIAに』
「リリス、ジェネシスの動きは分かっているのか?」
『いえ……連中、使い捨てのバイトを使っています。直接動く連中も下っ端ばかりで』
「となると……鍵は先日確保した兄妹か」
『そうなります……尋問の日は?』
「数日後だ。移送は特務隊が行う」
『……大丈夫なのですか?』
「彼らは噂以上に理性的だよリリス。我々が轡を意図的に外すだけで」
『そうですか。元帥がそうおっしゃられるなら』
「そうだ。君も引き続き頼むよ」
『はっ、全ては平和と市民のために』
ワルシャワ収容所
「なぁ知ってるか?」
「何が?」
「近々あの兄妹、移送されるってよ」
「へぇー……どこにだ?」
「パシフィック強制収容所だとよ」
「うへぇ……太平洋のど真ん中か」
警備兵達の会話は和やかだ。
吞気とも言う。
まぁそれも仕方ないことだった。
脱獄を企てるやつも設立以来おらず、襲撃を企てる人間もいない。
ある意味では一番安全な勤務地。
そう、今日までは。
「なぁ明日非番なんだけどさ」
「奇遇だな。俺もだ」
「じゃあどっか飯行かねえか?」
「いいなそれ。美味いところ紹介してくれよ」
「OKわかった。それじゃ──」
その言葉は続かなかった。
後ろから殴られて2人とも気絶したのである。
犯人は囚人服を着た三人の人物だった。
「こっちだ」
小声で一番年長と思わしき青年が手招きする。
彼らは暗がりを進み、敢えて警備が巡回しているルートを移動していた。
もしバレても逆に安全だと考えたからだ。
ウゥゥー!
「もうバレたか」
「どうするんだ?」
「一先ず、外壁を目指すぞ。そこにたどり着かなきゃ始まらない」
青年の言葉に、残りの2人も外壁を目指す。
十数分後、外壁の傍に三人は立っていた。
「よし、頼むぞ」
「うん」
少女が外壁に触れると、壁がみるみるうちに崩壊していった。
ポッカリと空いた穴から、3人は外に脱出する。
だが……
「しまっ?!」
後ろを警戒していた青年がサーチライトに引っかかってしまった。
『見つけたぞ!南方外壁の外だ!』
「不味い、見つかった」
「とにかく森へ……」
「いや、俺が囮になる。お前ら、出来るだけ遠くに逃げろ」
「で、でも……」
「いいから!」
青年はそう叫ぶと、わざと姿を見せて2人とは別の方向へ走っていった。
「お兄ちゃん……」
「行くぞ!」
残された2人も……青年が走っていたほうとは逆に全力で走っていった。