ドガーン!
「くっ」
妹紅に爆発が当たる。
妹紅と奏多の戦闘は、妹紅が優勢だ。
だが、先ほどから爆破を受けており、流石に疲労が溜まってきた。
奏多の異能、
その名の通り爆破を起こす能力だ。
物質を起爆させて爆発を起こす。
この物質には、当然空気中の気体も含まれる。
物質であれば有機物・無機物関係なく起爆出来る強力な異能だ。
先ほどからの爆発は、妹紅周辺の窒素を起爆しているのだ。
普通の人間からしてみれば爆発は脅威だ。
至近距離で受ければ、急激な気圧の変化により空気を含む臓器が破裂する。
他にも緊張性気胸や血気胸、眼底出血も引き起こす。
相手が"普通"の人間なら……
「おら!」
「ぐっ」
残念ながら、妹紅は普通の人間ではない。
蓬莱の薬を飲んだ不老不死の人間だ。
いくら爆破しようとも再生する。
奏多からすれば相性最悪の相手だ。
「はぁ、はぁ、いい加減……」
「あ、あああ……」
奏多が感じていたのは、恐怖。
奏多は公安部の軍人。
連邦軍内ではエリートに分類される。
だが、まだ経験が浅い新兵だ。
おまけに、目の前にいるのは常識から外れた……埒外の恐怖。
物理攻撃が通用しない異能者でも、同じ異能なら、魔術なら、霊術なら殺せる。
なのに、目の前の存在は死なない。
奏多はその恐怖に、涙目になっていた。
「……もういいか?」
「ば、化け物……」
「そうか……不死「火の鳥-鳳翼天翔-」」
妹紅から弾幕が放たれる。
その形は火の鳥だった。
奏多は震えながら手の平を弾幕に向ける。
だが、使えば自爆することになってしまう。
それくらい近距離に来ていた。
弾幕が奏多に着弾し、爆発が起こった。
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「恋符「マスタースパーク」!」
魔理沙が十八番のマスタースパークを兵士に放つ。
「シールド、構え!」
「「「イェッサー!」」」
ヴィルヘルムの号令と共に一部の兵士たちが前に出てシールドを展開する。
マスタースパークはシールドに直撃した……が、傷一つ付いていなかった。
「うっそだろ?!」
「突撃兵!一斉掃射!」
続いて突撃兵によるアサルトライフルとサブマシンガンの弾幕が魔理沙を襲った。
魔理沙は咄嗟に飛び上がって回避する。
「グデーリアン中尉、敵は飛びました!」
「対空射撃、開始しろ!」
ヴィルヘルムは間髪入れずに射撃を命じる。
一方の魔理沙は、攻撃の隙が中々なく、反撃できても先ほどのように防がれるという状態になっており、ジリ貧となっていた。
相手の方が数が多いのだ。
消耗戦で不利なのは魔理沙である。
「うわっと?!」
「別躲開(避けるな)」
「日本語で喋ってよチャイナー!?何言ってるかわかんなくて怖い!!」
菫子は魔理沙と違って一人の兵士と交戦してた。
他とは違い強化外骨格は着ておらず生身だ。
「ヨケルナ」
「喋れんのかい!」
「マダスコシシカハナセナイ」
思わずビシッとツッコミを入れてしまった菫子。
片言とは言え喋れるとは思ってなかったのだろう。
「ああもう!調子狂う!」
「? キュウケイ二スルカ?」
「そういう意味じゃねえ!」
「日語很難(日本語難しい)」
彼──李時英は理不尽に(本人視点)キレられて日本語の難しさを実感した。
戦闘中に実感することじゃあないが。
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「ぐぎゃあ!?」
「一つ」
「ぐあ!?」
「二つ」
「ひっ、来るな!」
「三つ」
無慈悲にも白狼天狗が斬り捨てられる。
今の咲斗の姿は、さながら機械である。
「た、隊長怖ええ」
「ほら、よそ見してないで手伝う」
「隊長の仕事モードがホラーなんだよ」
「会話というものもできないんですか?」
「お前は煽らなきゃ気がすまないのか?」
戦闘中にいがみ合う悠里とスヨンだが……
それはそれとして連携して敵を撃破している。
喧嘩するほど仲がいいとはこのことである。
「ま、待って。た、助けて」
「殺す気で来たんだ。殺される覚悟は出来てるんだろ?」
恐怖から腰が抜けたのか、座り込んだまま動けない白狼天狗。
目の前にいる咲斗は、白い長髪が血で濡れており、無表情なのも相まって恐怖を感じるには充分だった。
ただ無感情に殺す。
軍人になってから咲斗が身につけたことだ。
情に流されたら市民を守れない。
だから、戦闘中は感情を極力殺すようにする。
咲斗の刀が白狼天狗に振られるが、寸での所で止まった。
別の白狼天狗が振り下ろされた刀を受け止めていた。
その天狗は咲斗の刀を弾く。
「あっ……楓……」
「逃げろ。私が抑える」
「で、でも。飯綱丸様か守矢神社に援軍を呼びに行け。それとも、足手纏いはいらないって言った方がいいか?」
「わ、わかった……」
楓が物凄い剣幕でそう捲し立てると、白狼天狗は急いで飛んで行った。
「待ってくれるとは、甘いな」
「一服してたもんで」
「戦場でとは、余裕だな?」
「ここまではな……今、気を引き締めた」
その言葉に楓は身構えた。
咲斗の雰囲気が変わったからだ。
楓を脅威と見ている証拠である
「一つだけ聞く。目的はなんだ?」
「人探し。出来れば教えてくれるか?」
「悪いが、敵に塩を送るつもりはない」
「そうか、残念……だ!」
咲斗が猛スピードで楓に肉薄し、刀を振るう。
なんとか反応した楓は攻撃を受け流しながら、隙を伺う。
「隙なんて探させねえよ」
「くっ」
咲斗が振り下ろした刀を楓は自身の剣で受け止める。
だが……
(重っ)
楓の足が地面に沈みかけている。
それだけ重い一撃だ。
「楓!」
「!?」
仲間の烏天狗が咲斗に弾幕を放つが、跳躍で回避される。
「大丈夫か?」
「あ、ああ。何なんだ、あの男。人間の腕力じゃない」
「能力持ちか?」
「少し待て、能力を使う」
楓の能力は、見たものの能力を把握する程度の能力。
彼女が見た存在の能力を可視化する。
異能のみならず、霊力や魔力などのエネルギーも可視化可能だ。
だが……
「!?」
「おい、どうした?」
「やつ……非能力者だ」
「なっ!?それであの身体能力か?!」
「それだけじゃない……霊力も、魔力も持っていない」
楓が見たものは、能力者ではないことだけじゃない。
咲斗が霊力・魔力のどちらも持っていないことだった。
人間は、必ず大なり小なり霊力か魔力を持っている。
なのに、目の前の人間はどちらも持っていない。
「なんなんだ、貴様は……」
楓の心は、それで一杯だった。
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強い。
目の前の男に対しての俺の率直な感想だ。
2振りの西洋剣をあの体躯で軽々と振り回す腕力もそうだが……
それでいて機動力もある。
人間とは思えないな。
ガキンッ
「うーん……強いね」
「奇遇だな。同じことを考えていた」
自尊する気はないが、俺が人間相手にここまで攻めあぐねるとは。
だが……
「見えた」
「!?」
やつの懐に潜り込み、剣を1振り弾く。
そのまま顔面を蹴り上げた。
「ようやく崩れたか。その余裕顔が」
「そうだねぇ……いてて」
顎をさすっているが、見た目以上にダメージはある筈。
「はぁ……どうして邪魔ばっかり。やっぱり連邦は嫌われるのが常なのかな?」
「どうだろうな。少なくとも俺は、あいつの命を助けただけだ」
「優しいねぇ……痛い……」
再び笑みを浮かべ始めたが……
目が笑っていない。
「まぁ……」
「(来る)」
やつが剣を振り上げる。
それを……
ザシュッ
「!?」
「俺のことを忘れんなよ?」
誠斗が背後から突き刺した。
「ガッ……」
「大丈夫ですか?」
「問題ない」
刀を引き抜いた誠斗は俺の横に来た。
あそこまで気配を消すとは……
目の前の相手に集中していたとはいえ、一切気付かなかった。
「あっははは……背後からは、卑怯じゃない?」
「悪いな。手段は選ばない質なもんで。なにせ元殺し屋だから」
「ははは……暗殺は得意分野かぁ……これは僕の負けだね。
ふぁああ……ちょっと……眠くなってきた」
そういってやつは目を閉じた。
あっけない……
そう思ったが、よく見ると出血が止まっている。
どうやったんだ一体。
おまけに、寝顔もかなり良い。
致命傷を負ったようには見えない。
底がしれないな。
「誠斗、腕は?」
「動きません……」
「……」ヒョイ
「……?」
「感覚が消えてるな。痛みすら感じないのか。一先ず、紅魔館に行くぞ」
「へーい」
デカくなったなこいつも。
前は胸辺りまでしか身長がなかったのに、今はほぼ変わらない。
そういえば……もう21になるのか。
時間が流れるのは早いな。
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「おらあ!」
「!?」
上空を飛んでる有翼人に蹴りを入れる。
なんでそんなに跳べるのかって?
気合い。
蹴りを入れた勢いで足を掴んだ。
「!? 離せ!」
「離すか!このまま一緒にヒモなしバンジーと行こうぜ!」
羽を抑えることで飛べなくし、そのまま頭から地面に激突した。
「いてて……」
「ちょっ!?ファングさん、無茶しすぎです!」
「私は頑丈だから大丈夫だっての」
「あなたは二つの意味で石頭すぎるんです!」
「おいコラ、どういう意味だオラ」
私が頑固だとでも言いてえのかよ美鈴は。
そんなことよりも……
「……」
「えっ!?まだ立ち上がるんですか?!」
「頭にでも防御魔法張ったのか?砲撃しか能がねえと思ってたが……」
「フフフ……隅から隅まで筋肉で出来ているあなたが言うと説得力が違いますね」
「照れるな///」
「貶されてますよ」
何を言う。
あれは純然とした褒め言葉だろ。
「ははは!褒めてくれた礼に……一発で沈めてやる」
「お礼になってませんよ?」
「何を言う。私が一撃で沈めるに値すると認めたんだ。むしろ名誉だろう?」
「先程の発言を撤回します。あなたの頭には肉しかないようですね。
それも極上のシャトーブリアン」
「? 何言ってんだこいつ」
「……駝鳥に話しは通じませんか」
「ダチョウかぁ……確かに足は速いけどよぉ」
本当に何言ってんだこいつ。
「……」ブォン
キレた!?
ていうか魔法陣、何個展開する気だあいつ!?
「喜びなさい。盛大に火葬してあげます」
「いや、まだ死ぬ予定はない!」
「却下します」
魔法陣が光り、魔法が放たれようとした瞬間……
「はあ!!!」
「ガフッ!?」
美鈴が強烈なボディーブローをかまして森の方に殴り飛ばした。
「……」
「……話が長いので溜めさせてもらいました」
「あ、うん。よくやった」
消化不良だが……勝ったからいっか。
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「ぐぅ……」
あの女に意識が行き過ぎた。
お陰でこの様……あばらも逝ってる。
「イリアは……こっち」
私は、痛みを堪えながらイリアが戦っていた場所へ移動した。
「……イリア?」
イリア……鳩尾から血……
しんでる?
「い、イリア……死んじゃ、しんじゃやだ」
必死に揺さぶるが、起きる気配がない。
あっ、そうだ。
童話みたいに……
「……」
イリアに顔を近付け、優しく口付けをする。
唇を離すと、イリアがゆっくりと目を開けた。
「良かった……生きてた」
「ああ……白雪姫ってこんな気持ちだったんだ。僕男だけど」
イリアが体を起こす。
「シャーリーは……無事じゃないかな?」
「あばらが、折れた」
「そっかそっか、僕も結構血流しちゃって……今貧血気味」
「どうしよう……輸血キットも何もないのに……」
「あるじゃん、一つだけ」
「イリア?」
イリアが私を見つめる。
綺麗な赤い瞳が、私を真っ直ぐと……
イリアが私の耳元で囁いた。
「血、頂戴よ。血液型同じなんだし」
ドスッ
「えっ?」
よく見ると、腹部にナイフが刺さっていた。
ナイフを引き抜こうとするイリアの手を必死に抑える。
「ま、待ってイリア」
「?」
「やだよ。イリアの中に、こんな穢れた血を入れるのは……」
「いいじゃん別に」
「やだよぉ……
涙目の私を見て、イリアは観念した表情で手をナイフから離した。
「仕方ないなぁ……シャーリーの頼みだし」
「うぅ……」
「それはそれとして、止血するから抜くね」
「アガッ?!」
イリアが私からナイフを引き抜いて、傷口を手で抑え始めた。
私が……回復魔法使えたらなぁ」
「声に出てるよ」
「えっ、あ…その……」
「大丈夫、使いたくないものを無理に覚える必要なんてないんだから」
「うん……」
「……」
「……子ども、どうしよう」
「んぅぅ……遺伝子弄れば良いんじゃないかな。上手く有翼人の遺伝子だけちょちょいと」
「やって、くれるかな」
「咲斗くん経由で頼めばいけるんじゃない?」
「そうかも……」
二人の間に和やかな雰囲気が漂った。
イリアの声色も、心なしか光や誠斗達と会話しているときよりも穏やかだ。
絵面は和やかとは対極に位置していたが……
ちょこっと解説
犬飼楓
第一部の妖怪の山訪問時に登場した白狼天狗。名前が付いた。
今回、終止ため口だが、これは同僚や侵入者相手には遠慮しない故。
客人や上司には敬語になる。