Re東方葬想録   作:KUS

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再会と居場所

霊夢視点

 

私は今、誠斗を連れて飛んでいた。

まだ冥界から出たばかりだから、紅魔館までは遠い。

 

『あの子が幻想郷に来てから、若干重しが取れてると思うわ。

 でも、心のヒビまでは修復されていないでしょう。

 そのヒビを治せるのは……数少ない』

『あの子が失ったものを埋められる者』

『貴方達にそれになって欲しいわ。』

 

ふと、私の中で紫の言葉が頭をよぎった。

誠斗のヒビを埋められ者、か……。

そんな事を考えながら、私はふと閃いた。

誠斗のヒビを埋める為には、まず誠斗の事を知らなければならないんじゃないか、と。

早速私は、誠斗に話しかけた。

 

「ねえ誠斗、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「どうした?」

「あんたって、外の世界で何やってたの?」

 

率直に行きすぎたかしら?

誠斗は少し考える素振りをしてから、口を開いた。

 

「………あんまり気持ちの良いものじゃないぞ」

「別に、私は気にしないわよ。

 どんな面があっても、誠斗は誠斗でしょ」

 

それを言った瞬間、誠斗が面食らったような表情をした。

私、何か変な事言ったかしら?

 

「何か不味いことでも言っちゃった?」

「いや……何でもない。俺が外でやってた事だよな?」

「そうよ」

「どうして急に?」

「思えば、あんたの事全然知らないなあって思って」

 

本心だ。こいつは自己紹介の時も、名前と軽い挨拶で済ませて、自分のことを語らない。

普通は自分がどんな事をやってるのかとか、趣味とか言うもんだけど……誠斗は何も言わない。

 

「ほら早く。それとも言えない事なの?」

「………言えない訳じゃない」

「じゃあ言いなさいよ」

「………はぁ、分かった」

 

折れたらしい。

溜息を付きながら、誠斗は説明を始めた。

 

「俺は外で殺し屋をやってた」

「え?」

「主に連邦から依頼を受けてな。対象はテロリストや犯罪者と繋がってた資産家や政治家、企業の重役が殆どで、時々

 テロリスト予備軍や地下に潜伏してる犯罪者、過激な活動家とかも標的になる事があったな。殺し屋になったのは大

 体5年前で、金を奪う為にヤクザを襲撃してたら、偶々連邦のお偉いさんの目に留まったみたいで……」

「ちょっと!ストップ!ストップ!」

 

私が慌てて静止すると、誠斗が心底不思議そうな声で「どうしたと?」聞いてきた。

 

「どうしたじゃないわよ!情報の波を一気に浴びせないで貰える!?」

「え?説明ってこうやるんじゃないのか?」

「情報の波を浴びせるのを説明とは言わないわ」

 

嬉しいことに、誠斗について一つ知れたことがあった。

こいつ説明下手だ。

 

「軽蔑したりしないのか?俺は人殺しだ」

「最初は驚いたわよ?でもその後の洪水で全部流れていったわよ!」

「そ、そうか……」

「はぁ。別に人殺しをどうこう言わないわよ。

 聞くに、あんたが殺してたの、クズばっかっぽいし。

 それに、法を破った奴なら私だって殺した事がある」

「え……?」

 

誠斗が驚いたように声を漏らした。

私が殺したのは、妖怪になった人里の人間だ。

幻想郷では、人里の人間が妖怪になるのは大罪だ。

幻想郷は、妖怪を恐れる人間と人間の畏怖の念を糧とする妖怪のバランスで成り立ってる。

里の人間が妖怪になることは、そのバランスを崩すのと同義。

もしこのバランスが崩れたら、最悪幻想郷が崩壊する。

あの易者は、それだけの罪を犯した。

 

「私はあんたを軽蔑しないわよ。

 人だろうが妖怪だろうが、殺した時点で私とあんたは同類でしょ」

「霊夢と俺じゃあ、殺した数は違うぞ」

「五十歩百歩でしょ。それに妖精を一体何匹退治したことか……」

 

あいつらは死んだ所で暫くして復活するが、一応殺した判定になるだろう。

 

「あんま気負わないこと。

 外の事情は知らないけど、あんたは間違ったことしたの?

 

 それに、もう辞めたんでしょ」

「……っああ」

「ならそれで良いじゃない。

 過去を忘れるなとは言わないけど、一区切りくらい、付けないさいよ」

 

私がそう言うと、誠斗は黙りこくってしまった。

………まさか地雷踏んだ?

 

「ねえ大丈夫……」

「すまないな、気をつかわせて。

 そうだよな……いつまでもあんな連中の為に気負う必要ないよな」

 

どうやら元気になったらしい。

私はちょっとホッとした。

 

「そろそろ紅魔館よ。降りるから準備しなさい」

「りょーかい」

 

それを聞いた私は、一気に急降下した。

さっきの情報の洪水の仕返しだ。

誠斗は吹き飛ばされないように私にしがみつくついた。

 

……腰に掴まるとか、こいつにデリカシーはないのか。※そもそもそんな感情がありません

 

誠斗視点

 

霊夢が突然急降下してから少しして、見慣れた紅い館が見えてきた。

紅魔館だ。

 

霊夢が門の前に降下し、俺も地面に立った。

門の前では、門番が寝ていた。

中国風の服装をした赤髪の女性だ。

俺はそいつに近寄った。

そして、

 

頭に思いっきり手刀を落とした。

 

ガシッ

 

手刀は当たる前に手で掴まれ、防がれる。

そして門番が口を開いた。

 

「いきなり酷いですね。誠斗くん?」

「居眠りをしていた門番に仕置きをと思ってな。

 どうせ防ぐと思ってたし」

 

そう言うと、門番━━紅美鈴は俺の手を離して改めて俺達に向き合った。

 

「誠斗くん、お久しぶりですね。それから霊夢さんも」

「ああ、6年ぶりか」

「やっぱ2人は関係あるのね」

 

霊夢が納得したように言葉を発した。

どうやら薄々勘づいていたらしい。

 

「お二人共、お嬢様がお待ちです。着いてきて下さい」

 

美鈴はそう言うと、門を開けて館に向かった。

俺と霊夢もそれに続いた。

 

紅魔館の中は、俺の記憶と変わっていなかった。

強いて言うなら、前より少し広く感じることぐらいか。

俺は疑問に思ったことを美鈴に聞いた。

 

「なあ美鈴、ここってこんな広かったか?外から見ても何も変わってなかったが」

「咲夜さんの能力で空間を拡張してるそうですよ」

 

あいつの能力はそんなことも出来るのか……初めて知った。

ただ時間を止めるだけかと思ってたんだが。

 

「そろそろ着きます」

 

美鈴のその言葉を聞き、前を見ると他よりも大きめの扉が見えた。

あの先は大広間だ。玉座が奥に置いてある広めの部屋。

レミリア様は、そこで待ってるみたいだ。

 

「さて、心の準備は出来ていますか?」

「大丈夫だ、出来てる」

 

それを聞いた美鈴は扉のをノックして中に向かって声を発した。

 

「お嬢様、誠斗くんをお連れしました。序でに霊夢さんも」

「私はおまけか」

 

霊夢が悪態をつく。

まあ、おまけ扱いされれば誰でもツッコむ。

 

中から「入りなさい」と聞こえると、美鈴が扉を開けた。

広間は相変わらず、広い割に玉座以外何もない。

中には3人の人物がいた。

ゆったりとした紫基調の服装をした紫髪の女性、パチュリー・ノーレッジ。

隣にいる彼女の使い魔、小悪魔。愛称はコア。

そして奥の玉座に座っている水色に近い髪色をした幼い少女。

但し、背中から生えている羽が、彼女が人間ではない事を物語っていた。

 

彼女がこの紅魔館の主、レミリア・スカーレット。

そして、俺の嘗ての主でもある。

 

「久しぶりね誠斗。序でに霊夢も」

「はい、お久しぶりです」

 

霊夢が俺の横でギョッとなっているのが見えた。

敬語を使ったからだろうか。

 

「ふふ、貴方がここからいなくなって6年よ。

 私にとってはとても短い時間の筈なのに、とっても長く感じたわ」

「………」

「単刀直入に言うわね誠斗。

 お帰りなさい。また生きて会えて、とっても嬉しい」

 

そう言いながら、レミリア様は俺に抱擁をした。

俺はそれをとても懐かしく感じた。

美鈴とコアはそれを見て泣いた。

美鈴なんかどこからかハンカチを取り出して目を拭いている。

パチュリーさんは泣いてはいなかったが、微笑んでいるのが見えた。

霊夢は空気を読んでか、黙っている。

 

レミリア様が俺から離れ、改めて言葉を発した。

 

「誠斗、もう一度言うわ。

 

 お帰りなさい」

 

その言葉を聞いて、自然と涙が溢れた。

悲しくなんてないのに。

だが、ここが俺の居場所だと、再度実感する事が出来た。




キャラ紹介
紅美鈴
種族:妖怪
年齢:不詳
能力:気を扱う程度の能力
紅魔館の門番を務める中華系の妖怪。
居眠りが多い為、よく咲夜から制裁される。ただ、侵入する者がいたら直ぐに起きる。
弾幕ごっこより格闘戦の方が得意らしい。

小悪魔
種族:悪魔
年齢:不詳
能力:目的の本を瞬時に見つける程度の能力
パチュリーの使い魔である下級悪魔。普段は大図書館で司書をしている。
パチュリーに振り回される事が多い紅魔館随一の苦労人。

世界観設定
連邦
誠斗の早口説明でしれっと出た単語。
皆さんは大体あの組織を思い浮かべるんじゃないだろうか。
今後登場予定。
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